爆豪勝己に成ってたんだが以下略   作:大仙

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シリアス回。ぐーるぐる考え続けてゲシュタルト崩壊しそう。

アニメ体育祭!!さぁ!!!
も り あ が っ て ま い り ま し た ! ! !


弱肉強食すぎないですか?

 

 

  走り込みをやっていた為に荒くなっていた息を整えながら滴る汗を乱雑に袖で拭った。暑い。くそ暑い。溶けそう。

 

  扉を開けるとひんやりとした風が頬を撫でていくのを感じて深く息を吐いた。どうやら父母とは入れ違いで帰宅してしまったようで、リビングのテーブル上には出掛ける旨が書かれた母直筆の置き手紙があった。夕飯には帰ってくるようで安心した。ご飯作るのは別に良いんだけどまた外に出て材料調達というのも面倒くさい。きっと帰りついでに買ってくるだろうと信じよう。

 

 

 

 

 

  テレビをつけると丁度(ヴィラン)がヒーローに確保される所だった。辺り一面豪々と炎が上がっているのにも関わらず勇猛果敢に立ち向かい見事な連携で敵を沈めている。

 

  僕はそれをぼーーっと見詰めていた。

 

 

 

  ────そもそもに、『個性』とは何なのか。

 

 

 

  最近僕のなかで専ら脳内会議の議題として取り上げられる『個性への価値観や見方』。

 

  いつの日からかぐるぐると僕の頭の中を回り巡って戻ってくる『それ』は未だに納得できる解答を見つけ出せていない。一度気になるとどうしても靄が掛かったようで不快になるために僕の精神衛生上大変よろしくなかった。

 

  大変よろしくないのなら気にしなければいい話なのだけれど優秀な頭脳は暇な時間さえあれば一瞬でも『それ』を脳裏から引っ張り出してくるのであるからほとほと困ったもので。

 

 

 

  超人社会となった現在は誰もがヒーロー(英雄)に憧れを抱くし、彼等を信頼する。

 

  正義が悪に勝つ。勝たなければならない。それがヒーローなのだから。

 

  いつの頃からか、ヒーローへの敬意は畏敬に変わり、遂には盲信へと流れ着くのではないか。

 

 

 

  『個性』が発現し始めた初期の頃は『個性』に対する法律案を決め世を平定することが最優先事項であり、『個性』が街中で発動されてもそこまで厳重なモノではなかった。それがいつからか『個性』を悪用し、悪事を働こうとする輩が急激に増え続けていった中で現れたヒーローはさぞや輝いて眩しく見えたことだろう。

 

  力弱き者を救い、悪事を働く者には制裁を下す。それは今も昔も変わらずヒーローに求められる。

 

  ……確かに、それこそがヒーローだ。何も間違ったことなんかしちゃいない。

 

 

 

  只、周りの風潮が良くない。ヒーロー、ヒーロー、私達を救うのが仕事のヒーロー。何で救ってくれなかったんだ、とか、仕事なのだからちゃんと救ってくれ、とよくテレビのインタビューだのインターネットの書き込みで見掛けるが全くもってお門違いな意見ばかりで、前世でのコンビニ経験を思い出して、ヒーローも大変だなと思ったのはここ最近で。

 

  一応ヒーローは公務員として括られる。つまりはそういうことだ。ヒーローだって人間だ。だのに周囲はそれを許さない。ヒーロー自身も。それは、順位が高くなればなるほどに正義と期待にがんじがらめに縛られていくのが分かった。オールマイトなんて、まさしくそう。見てるこっちが辛くなる。人一倍正義感に溢れているからこそ、期待と正義をその背中一つに背負いながら前に進んでいく。休むことなく。

 

 

 

  ─────……休んだっていいだろ。彼だって人間じゃないか。

 

 

 

  ………誰に言うでもないその台詞はきっとこれからも誰に言うでもなく、僕の中だけで呟かれて終わるんだろう。

 

 

 

  強い『個性』はヒーローになって、皆を守る。

 

  弱い『個性』は市民になって、ヒーローに憧れる。

 

 

 

  分かりやすくて実にシンプル。大いに結構。だが、その思想は他人に押し付けるもんじゃないって分かんないのだろうか。

 

  僕は、………爆豪勝己は『爆破の個性』持ちだ。

 

  そのためか、ずっと「ヒーロー向きの良い個性ね」と言われ続けてきた。言われるのは別に良いけど、強い個性とヒーローが必ずしもイコールで繋がってる訳ではないと声を大にして叫びたかった。

 

  幼馴染みである緑谷出久は、『無個性』。

 

  彼が『無個性』だと知るや否や掌を返したように人が遠ざかっていくのを、僕はただ黙って見ていた。彼も、遠ざかっていく人を繋ぎ止めようとはしなかった。ただ、下を向いてただけで。

 

 

 

  ─────僕にも『個性』があれば、かっちゃんのこと助けられるんだけどなぁ。

 

 

 

  いつの日か、言われた言葉だった。その瞬間、臓腑を焼くような熱さが身体を巡った。身体は熱いけれど、頭は驚くほどに冷えきっていた。

 

 

 

  『個性』が強い、弱いで強制的に決められるヒエラルキー。それは、前世でも似たようなモノはあった。

 

 

 

  ─────それでも『無個性』を引っ括めて全部がお前の個性だろ。

 

 

 

  ─────なんで、そんなこと言うんだ。

 

 

 

  怒りと悔しさで上がってきた言葉は喉の所でつっかえて、あと一歩と言うところで出ずにはくはくと口を開閉させるだけで終わった。

 

  見てられなかった。『無個性』を与えられた幼馴染みの顔は泣きそうだった。まだ社会にも出てないのに、社会の一端を見てきたようなそんな達観した瞳をさせた世間に怒りを覚えて、どうしようもできない自分が猛烈に悔しかった。

 

 

 

  ──────出久は、そのままで充分だ。

 

 

 

  充分、君は君らしい。『無個性』込みで君なんだ。

 

  瞳を見て真っ直ぐに伝える。『無個性』は恥じゃない。もっと胸を張れよ。後ろ指指されても堂々としてろ、上にいけば、関係なくなる。

 

 

 

  友達の悲しんでる顔は見たくなかった。ただ、どう慰めて励まして良いのかも分からなかった。素直に自分の思ってることをほんの少しの言葉に詰め込むしか方法を知らなかった。

 

 

 

 

 

  その一連のやり取りから、僕はずっと、考えていた。ヒーローって何なのか。『個性』とは何なのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かっちゃん主の思考回。

珍しいシリアスだ。

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