肉塊か、奴隷か、権力者か。【1部完】   作:まさきたま(サンキューカッス)

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割と平凡な異世界転生モノ。


転生。

 異世界転生。

 

 

 その言葉に胸を躍らせたのは、僕の前世における最大の過失で有り、今僕が現実から目を逸らし怒りをぶつけるべき呪いの言葉でもある。

 

 神様なんてものがいたような気がする。愚かにも僕は、前世の僕は、「魔法の使える世界に生まれ変わりたい!」などど妄言を吐いて受け入れて貰い、狂喜乱舞して生まれ変わった。

 

 新しく生まれた世界は、僕が期待していたような平和なものでは無かった。

 

 徹底的に保たれた秩序の元、平和や安全と言ったものが一切存在せず。愚図は人間として生まれても家畜として扱われ、知恵の働く人間はその家畜(にんげん)の肉を食らう。

 

 今まで僕が日本で培ってきた倫理観や道徳なんてものが糞ほどにも役に立たないふざけた世界だった。

 

 聞いた話によると僕の父はすり潰され臓器を抜かれ、残りは肉塊として奴隷職の人間の餌にされたらしい。母は見目美しかったらしく、剥製に加工されどこぞの金持ちの部屋に全裸のオブジェとして飾られている。

 

 この世界は厳しい。力が有るものが、幅を効かせる。力有るものに気に入られたなら、平穏に暮らせる。

 

 何も持たなければ、人間とは見なされない。

 

 

 

 

 僕は今日の正午をもって晴れて10才となり、“児童保護施設”から卒業となる。

 

 如何なる鬼才で有ろうとも、どんな愚図で有ろうとも。齢10までは未熟な存在として“闘い”には参加しないでも良い権利(・・・・・・・・・)を与えられている。僕の産まれたこの世界では、この国は、優秀な人間をひたすら選別していき、次の世代においてもこの徹底された秩序を保ち続ける事を目的に運営されたシステムが既に完成されている。

 

 生まれや家柄と個人の能力はあまり関係が無い。その思想の元、僕のような孤児で有ろうとも、齢10までは生存が保証される。それまでに才能が有るならば開花させねばならない。この歳までに開花出来ぬ愚図なら存在する価値は無いのだ。

 

 つまり今日から僕は。“闘い”続けないと飢える。自信が無いなら誰か(権力者)に気に入って貰い、“奴隷”として飼育されなければ野垂れ死ぬ。

 

 僕は男に生まれてしまった。男娼と言う生き方も無くは無いし、同性愛者に取り入れば飼って貰えるかもしれない。だが、女性として産まれた方が生きる上での難易度は格段に下がっただろう。男の方が性欲が強い。即ち、付け込み安いのだ。

 

 労働力としては、10歳で雇って貰える可能性は皆無だろう。なんとかして体が大きくなるまで生き延びればやっと、“野垂れ死ぬ様な愚図では無い”と見なされ労働奴隷として受け入れて貰える。

 

 ぼろ雑巾の如く路上に転がり、国の雇った掃除屋により毎日のように処分される死体は殆どが男のモノだ。明日にも僕が転がっている可能性もある。“罪”を犯すか、長い期間食料を手に入れられなければそうなってしまうだろう。

 

 ここは僕が望んだ魔法の世界。そして、前世の日本なんかより、科学と魔法が融合し発展した高度な文明と、“法の下の平等”などど言った“旧時代的”な政治体系から大きく進化した地獄(せかい)

 

 その名も、“ピューリタニア”。他者を蹴落し続ける事でしか生存できず、安寧と生きるなどど言う自堕落さを許さぬ、人間に進化を強いる国である。

 

 

 

 

 さて、この児童保護施設には、職員は存在しない。1人ぽつんと、寝床と個人ロッカーが機械により割り振られて後は放置で有る。

 

 国に雇われた配達員により、日々の資材や食料が倉庫に備蓄され、定期的に通達が来て分配される。後は全て自己責任。僕はこの施設で最低限の食料の調理方法や、資材の利用法、この国の制度と社会保障等の知識を独学で得た。

 

 5歳未満で有れば一応は監督者が付く施設で過ごせるのだが、そこでも精々食料の調理や洗濯の仕方などの家事を指導して貰えるだけで基本は本人の事は本人が行う。

 

 生後すぐ僕の首筋に埋め込まれた情報チップを、この施設がスキャンし僕の実年齢を判断するシステムの為、今日の正午を過ぎてなお僕がここに滞在したままなら違法侵入として自動的に通報され即座に射殺されてしまう。

 

 因みに、この情報は僕が足繁く通い詰めた児童保護施設の図書館により、自ら入手したものだ。もしも1度も図書館に行かなかった児童は、10歳を過ぎてなお施設に滞在出来ない事を知らず即座に殺されるだろう。

 

 情報の重要さを理解せぬ愚図にはお似合いの最期と言える。

 

 僕が施設に滞在していた折にしばしば、掃除屋が現れ児童が殺されていたし、その事に疑問を感じ調べるか、或いは僕のような図書館に通う者と友好を深め質問していれば直ぐに手に入った筈の情報だ。

 

 知らぬのは余程の愚図しかいないだろう。

 

 児童保護施設を後にし、外に出た僕は5年ぶりのピューリタニアの首都“タダイ”のメインストリートを闊歩する。当然、道の端を目立たぬように。

 

 当面の目標は優先度の高い順に、“飲料水を入手”と“食料の入手”と“住居の確保”“収入源の確保”だろう。

 

 まずは、最低限の目標を達成するため、僕は裕福な商人や家の格が低い貴族の住む西の住宅街の外門へ向かう。

 

 まずは“乞食”をするのだ。それが最善で有ると、図書館で得た中で比較的信用度の高い電子書籍の情報に記されていた。

 

 児童保護施設を出た直後の今の僕のような「成人」が腹を空かしいきなり闘技場などで誰かに“闘い”を挑んだ所で、即座に尻の毛まで毟られて人生終了らしい。

 

 プライドが高すぎず、金銭に余裕が有り、もしかしたら取り入れるかもしれない商人を相手に乞食をする。それで取り敢えずの資産を得る。

 

 

 

 

 

 

 

「憐れなこの私めに“水”をお恵みください!」

「どうか、どうか。もうひと月も固形を口にしていないのです。」

「どんな命令にも従いますから、1日だけでも雇ってください。何でも致しますから。」

 

 西の住宅街の外門は、情報の通り乞食で溢れていた。僕もわらわらと蠢く人と人との隙間を見つけて、するりと入りしゃがみ込む。立っていたら、後ろの人が見えなくなるから怒られるのだ。

 

「今日、施設を卒業したばかりのこの僕に、目をかけて頂ける心優しい方は居りませんか? 僕に水の一滴でも頂けたなら、将来きっとご恩を返しに参りましょう!」

 

 声を張り上げ、少しでも目立とうと頑張る。

 

 生まれて初めての乞食だが、なかなか僕の口は回ってくれる。僕には、乞食の才能が有るのかもしれない。

 

 

 

「どいた! どいたどいた! “闘い”が始まるぜ!」

 

 暫くその場で通りかかる商人達に慈悲を乞いつづけ、やっと2、3日分の“飲料水”を恵んで貰った頃。

 

 僕がこの場所での乞食を選んだもう一つの理由であった“闘い”が遂に発生した。まさか、初日から“闘い”が見られるとは思っても居なかった。幸運を“神様”に感謝しながらいそいそとその場を離れる。

 

 この外門は、住宅街の中でのトラブルの解決する為の“闘い”を行う指定区域になっているため、ここで週2.3回程発生する“闘い”を乞食達は見る事が出来るのだ。経験の浅い僕には何にも代え難い貴重な“情報”である。

 

 黒光りするスピーカーから淡々とした機械音声が流れ、今まで物乞いの声でうるさかった外門がしーんと静まりかえる。

 

『“闘い”が始まりマス。現時刻を持って、それぞれの領地に居る人を互いに対戦者と認定致しマス。両者、同意するならば所定のチップ読み取り機の前まで移動くだサイ。』

 

 初めて見る、生の“闘い”。それは、図書館で見たことの有る動画や資料と同じで、それでいて緊迫感が違った。それは、僕もこの場において役割を持っているからなのだろうか。

 

『観客の数を測定。113名の観客のチップを確認しまシタ。では、互いに主張、勝利による報酬をコールしてくだサイ。』

 

 そう、僕達は観客であると同時に証人にもなる。この“闘い”において、万一勝利の報酬が従われなかった際に、元々の対戦者同士の主張を証言する事が出来る立場になる。

因みに証言することにより国から報酬が貰えたりする。だから積極的に“闘い”は観戦すべきなのだ。

 

「わたし、ロック・バーレイは! 対戦者のザストが我が家の財産を損傷したと主張する! 勝利報酬はグレイ家の保有資産、人的資源、公的権利の全てである!」

「私、ザスト・グレイは。対戦者ロックが有りもせぬ罪をなすり付けたことを主張する。勝利報酬は、バーレイ家の保有資産、人的資源、公的権利の全てである。」

 

『両者、互いの勝利報酬を受け容れることに、同意しマスカ?』

 

「「同意する!」」

 

『では、始めてくだサイ』

 

 両者の合意により、即座に“闘い”は始まった。最初に主張をしたロックと言う男の側には、10人程度の黒い服を着た男達が立っていた。

 

 一方ザストと名乗った男の方はと言うと、たった1人のフードを被った女性が控えるに留まっていた。明らかに人数の差がある。

 

 ロックとその周りの10人の黒服の男達は、即座に銃を構え、連射する。数の理を生かすべく、小回りが聞いて連射に優れる小銃を選択したらしい。

 

 反対にザストと女性はと言うと、大きなランチャーの様なものを構え撃ち出した。多人数が相手だから範囲のある爆発物を選んだようだ。

 

 “闘い”のルールはシンプルだ。相手を殺すか、相手に降参をジャッジに向けて宣言させるかである。

 

 そこに、闘技場などで有れば特殊な条件が足されることも有るが、普通の“闘い”の条件はこれだけとなる。

 

 いわば、力による裁判なのだ、これは。

 

 金で人を雇い入れ多人数で闘うも良し。信頼できる人間に助力を乞うも良し。・・・雇われた人間を裏切らせ不意打ちさせるも良しだが、今回はどちらも裏切る気配は無さそうだ。

 

 さて、互いに向け合われた恐るべき兵器は、互いに当たる直前に掻き消える。魔法による防壁だ。

 

 人に危害を加えるなら科学。人を脅威から守るなら魔法。

 

 これはこの世界における基本的な価値観で有り、攻撃は銃や爆発物など近代兵器を用いてる事が多く、防御は魔法による防壁が採用される事が多い。当然、例外は存在するが。

 

「ザスト、年貢の納め時だ! とっとと地獄に落ちやがれ! お前の嫁と娘は肉屋に売り飛ばしてやるよ!」

「囀るなロック。直ぐに冥土に送ってやる。」

 

 お互いに全てを賭けあった“闘い”。

 

 その結末は、負ければ悲惨なモノだ。全てを失い、何も残らない。まるで外で見ている観客(ぼくら)と同じ様な結末を迎えるハメになる。

 

 そう、路傍の石であるかのように屍を晒し、権力者であったにも関わらず、墓すら残せない。

 

 

 戦局が動いたのは、ロックさんの周りにいた黒服の1人が急に痙攣して倒れた辺りからだった。

 

 ばたん、といきなり白目を向いて失神した黒服。そして釣られるかの用に、また1人、また1人と黒服達は気を失っていく。

 

「あのおねーさん、さてはエルフかー。」

 

 僕はその魔法の正体を見破った。動画で似たようなシーンを見たことが有る。風魔術で恐らくだが、少しずつ酸素濃度を落としていったのだろう。

 

 恐らく黒服達は、自分が妙に息が切れるのが早いと疑問に思っただろうが、それを雇い主に悟られてしまっては体力が無いと判断される。つまり、減俸される可能性が有るために皆、少しも表情を変えなかったのだ。その結果、意識を失うまで気が付かなかったのだ。

 

 その時、おもむろにザストの隣に居た女性がフードを脱いだ。思った通りの長耳で、その女性はエルフだと確定した。

 

 エルフは風魔術の使い手として有名なのだ。わざわざフードを被っていたのは、この戦法がバレて即座に対策を練られてしまうことを恐れたのだろう。でも、この段階だと流石にエルフなのはバレバレになってしまったから隠す必要が無くなったのだ。

 

 エルフは耳が長いのは別にハッタリでは無く、魔力のセンサーにもなると情報に有った。つまり耳を隠さない方が強いのだ。そのまま、バタリバタリとロックの陣営は倒れ続け、ロック本人も泡を吹いて気を失ってしまったようだ。

 

 これは勝負有ったか・・・に見えた。

 

 

 

 

「うおっ!罠だったのかよ。」

 

 倒れているロックにトドメをさすべく、1人歩いてきたエルフに四方八方から銃撃が襲い掛かった。

 

 意識を失い倒れた様に見えた黒服達は、実は1人として気絶などしてはいなかったのだ。

 

 恐らく何が起きたかも理解できないままに頭が吹っ飛び、そのエルフの女性は事切れた。

 

 慌てたザストは、ロックに向けてその場で銃を乱射するも、当然の様に魔法に阻まれ、そして。

 

 遂に数の暴力による銃弾の嵐にとうとう耐えきれなくなり、ザストは全身を血で濡らしながら、彼の家族が泣き叫びながら見ていた方向に手を伸ばし、そのまま倒れ込んだ。

 

 

 

 

『西方が死亡しまシタ。西方は東方の提示した勝利報酬を支払ってくだサイ。繰り返しマス。西方が・・・』

 

 さて、今からが本番だ。

 

 僕は、エルフのお姉さんの方はどうせ倍率が高いだろうからと諦めて、家族へ手を伸ばし倒れたザストさんの方へ狙いを絞る。

 

 この段階で、2人の屍の所有者はロック氏だ。それを盗んだりしては射殺される。でも、こう言った“闘い”の後は証人も兼ねている観客へのサービスとして・・・。

 

 

「あー、観客の皆へ告ぐ。私は先程勝利を収めた、薬屋を営むロックと言う者だ。私の勝利は、諸君らにより証明されるもの。その代価として、ここに落ちている“資産”は諸君らに分配するものとする。」

 

 その言葉を待ってましたと言わんばかりに、飛び出してきた乞食達が死体に群がる。当然、僕もその1人だ。

 

 エルフの方がやはり人集りが多い。ザストさんに的を絞って正解のようだ。彼の身に着けていた装飾品が手に入れば最高なのだが、流石にそれは直ぐに回収されてしまった。

 

 因みに、余り欲張って1人で何もかも取ろうとしたらマークされ今後餓死するまで邪魔され続けるという。取れるのは1人で1つまで。これが暗黙の了解らしい。

 

 僕はその暗黙の了解のお陰で、服や装飾品は流石にかっぱがれてはいたものの、多少食べれそうな肉塊は残っており、なんとかそれを手にすることは出来た。

 

 入手したのは右前腕。出来れば上腕が良かったが既に持って行かれていた。

 

 掌は健と骨だけなので、主に食べれるのは肘から手首にかけて。だが、現在資金も資産も何も無い僕にとって何にも代え難いたんぱく質だ。

 

 絶叫が木霊する。ロック氏が売り飛ばすと言っていたザストの娘や妻だろうか。半狂乱になり、此方へ来ようとしているものの、黒服達に取り押さえられている。恐らくだが、僕は彼女らはザスト氏を怨み、死体であろうと唾を吐き付け罵りたいのでは無いかと推測する。

 

 何故なら彼女らは、自分は負けてはいないというのに惨殺され肉屋へ卸されるらしいのだから。だが、“闘い”に負けてしまうような愚図の家族で有ることを許容していた自業自得である。思い違いも甚だしい。

 

 手を頂戴しその場を離れた後も資産の分配は続き、やがてその“闘い”の場には2つの血溜まりと、骨の欠片や髪の毛の切れ端だけが残された。それが、ザスト氏と、その仲間で有ったエルフの女性の成れの果てだ。

 

 いつしか叫び声は聞こえなくなっており、ザスト氏の家族達は居なくなっていた。黒服に運ばれたのだろう。

 

 こうして、思いもかけぬ幸運により食料まで入手した僕は、1度血抜きをする為人工河川へと向かった。この河川は飲み水としては使えないが、洗濯や調理用の水としてはギリギリ使える。運が悪いと神経がやられて死ぬが、飲料水を使って調理できるほど今の僕に余裕は無い。

 

 手際良く血抜き、手揉みを行い、ほどよく肉がほぐれた所で今夜の宿泊施設へ向かう。

 

 国営の地下待機場。ここは、児童保護施設と同様に申請すれば1日区切りでロッカーを使う権利と待機場にて睡眠を取る権利を与えられる。待機場、とはその名の通り待つだけの場所。布団も無ければ仕切りも無い。体育館程度の広さの中で、地べたで雑魚寝出来る施設なのだ。

 

 一応男女別に分かれているので夜這いは少ないが、運が悪いと掘られてしまうから注意。最も注意したところで特にどうしようも無い。

 

 そもそもここは治安維持目的で作られた施設で、僕らのような非労働者のために存在する。定員は200人であり、ここ以外にも幾つも存在する為、取り合いになることも無くソコソコのスペースは確保できる。この世界は人口が言うほど多くない。何せ人の命なんてゴミ屑程なんだから。

 

 そして何と言っても、30cm四方程度とは言え個人用ロッカーが貰えるのがとても有り難い。国営のロッカーと言うことは一番警戒すべき盗難を確実に防げるのだ。肉を安全に保管出来る。

 

 本当、この施設の情報を持っていないと間違いなく人生詰むまさに当面の生命線となる施設だ。

 

 ロッカーの中で、僕は先程処理した肉を一食分だけ抜いて、後は並べ干す。一応ロッカーにも通気性は有るため、肉を布でくるみ暫く置くと干し肉もどきが出来る。ホントは塩に漬けたり熱を加えたりしたいのだが・・・今はそんな手段が無い。

 

 取り敢えず肉は2、3日分は有る。それまではこの施設に寝泊まりだな。

 

 目の前の生肉を、むしゃむしゃと丸かじりする。キチンと火を通して食べる日が来る事を祈りながら。

 

 

 

 何時から僕は、人の肉を食べることに抵抗が無くなったのか。

 

 児童保護施設に備蓄される食料は、基本が“掃除屋に射殺された死体”であるから、生後ずっと主食としてきたのは人肉だ。それと生きていく上で必要な成分がまとめられたカプセルが定期的に支給された。

 

 そのカプセルは今後も入手し続けるには資金が必要になる。資金の入手手段の確保も、追々考えねばならない。

 

 この世界に貨幣や紙幣と言った概念は無い。埋め込まれた個人のチップにより識別され、国によって管理された個人の電子マネーの様な形で金銭は表現される。

 

 単位はLP(ライフポイント)。人生の得点とは、全くこれ以上に相応しい単位は無いだろう。

 

 

 そして、牛や豚と言った、前世で肉を代表していた家畜たちは今世において手に入らない。

 

 この世界における生物とは。

 

“ヒト”“エルフ”“オーク”等と言ったファンタジー世界の代名詞たる亜人のみだ。

 

 牛も、犬も。虫や、ウイルスでさえも存在しない。

 

 この世界に置いて、虫やウイルスとは。今の僕らなのかもしれない。権力者達が支払った税金により維持される施設が無いと生きていけない、寄生虫なのだから。

 

 感染や腐敗が存在し無いことは有り難い。だが、それはつまり。

 

 この世界で生きていく上で、今後も一生人を食べ続けねばならぬと言うことでも有る。そして、油断すれば。

 

 明日にも僕は屍を晒し、奴隷共のたんぱく源となっているかもしれないと言うことだ。

 

 この世界にヒト以外の畜産物は存在しないのだから。

 

 

現在の所持品

 

水入れケース(3日分の飲料水入り)

布にくるんだ肉(3日分)

無地の衣服(血付き)

身分証明書(非労働者)

 

健康状態:良好

精神状態:正常

 

LP:0




不定期更新です。

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