ケロちゃんのヒーローアカデミア! 作:諏訪子大好き
蛙吹梅雨
私が私になるだけ。そう諏訪子はいうけれど、本当にそうなのかしら? 諏訪子の話が本当なら、相手は数百年を軽く超えて生きている存在。そんなのと融合して人の意識が残るの?
そんなことはありえない。でも、これは私の責任。あの時、私が諏訪子から離れたのがいけなかった。
小さいころ、諏訪子と私の立場は私が妹だったの。諏訪子は2歳で言葉を話し、四足演算までできていた。漢字の読み書きもすぐに覚えて完璧だった。
それはもう天才や神童とうたわれて将来を期待視されていたわ。でも、逆に私は落ちこぼれや妹の絞り粕とか言われたこともあったのよね。
だから、私は四歳の時に"個性"が発現し、諏訪子に"個性"がなかったことに少しほっとしてしまった。それからの評価は逆転した。どんなに諏訪子が賢くても、"個性"がなければ評価されない。それからの私は少し調子にのってしまった。
友達もできて、楽しい日々が始まった。でも、逆に諏訪子からは友達が離れていったのよね。
そして、あの日。諏訪子が私と一緒に帰ろうと手を差し出してきた。今思えば、何かを感じていたのかもしれない。それでも、私はたいした用事もないのに諏訪子の手を取らなかった。
家の外をふらふらしてから、帰ると家にいるはずのお母さんも誰もいなくて不思議に思っていると、電話がして諏訪子のことを知らされた。急いで病院に向かうと、全身火傷で集中治療室に寝かされている諏訪子をみた。
治療が終わり、退院してから諏訪子は毎日、夜中に悲鳴をあげて目覚めている。昼間でも激痛で悲鳴をあげている。傷は完治していても、心の傷が治っていないらしい。
それでも、諏訪子の悲鳴で近隣住民から苦情がでて、諏訪子は人里離れたところに住んでいるおばあちゃんのところに引っ越すことになった。私達はついていこうとしたけれど、それは諏訪子が拒否した。1歳になる幼い弟の五月雨がいたからもある。
諏訪子がおばあちゃんに引き取られてからしばらくして、諏訪子は宗教に嵌っていた。それにおばあちゃんの家にいった時は幼い弟の五月雨や妹のさつきの面倒をみてくれていたので、順調に回復しているように私達は思っていた。でも、それは間違いだったのよね。
中学二年生の時、諏訪子が行方不明になって回復しているなんて、間違っていたことをはじめて知ったの。ただ、私達に心配をかけないためにやせ我慢をしているだけだった。
行方不明になった諏訪子の手掛かりを一生懸命に探し、諏訪湖へと潜って手掛かりをみつけたけれど、それは諏訪子が死んでいることを裏付けていた。それでも身体が見つかるまで諦めきれずに必死に探していった。
そしたら、半年後に諏訪子は帰ってきた。ただ、帰ってきた諏訪子をみた時には理解してしまった。諏訪子は前の諏訪子じゃない。
抱きしめた身体は異様に冷たくて、不気味な雰囲気を身に纏っていた。けれどすぐに私達のしっている諏訪子になった。
それから話していても、やっぱりどこかおかしい。それでも諏訪子は諏訪子に違いなかった。何処か行ってしまわないように、抱きしめて眠ることにしている。
翌日。ホームルームの時間となって相澤先生が話していく。
「爆豪はこれでいいとして。緑谷はまた手を壊したのか。さっさと"個性"のコントロールをするように」
「はい」
「で、一番の問題は……蛙吹妹」
「ふえ?」
「お前、火がだめなのか?」
「そうだよー。パニックになってどうしていいかわからなくなって、この子達が私を守るためにコントロールを外れて近づいてくる人を全部襲っちゃうの。言い聞かせている人は大丈夫だけど」
「しゃれにならねえな、おい」
諏訪子の周りに沢山でてきた白い石の蛇達。一体一体が強力な"個性"を持つ神獣として生み出されているのよね。噛まれたら呪われて腐っていくから、本当に危険。ミシャグジさまだけらしいけれど、"個性"を持つ生物を生み出せるとか、本当に神様の領域の力よね。
「というか、さっさと治せ。そうじゃなきゃヒーローになんてなれないぞ。レスキュー訓練もあるからな。何より危険すぎる。救助にいったはずが、ヴィランよりも被害だしてちゃ話にならん」
「あーうー」
「というわけで、お前は授業のあとに特別授業だ。詳しい内容はオールマイト先生に任せてあるから、そっちで話してくれ」
「はーい」
諏訪子のことを治せるならぜひ協力してほしいわね。