ケロちゃんのヒーローアカデミア! 作:諏訪子大好き
根津
さて、今日は事件がたくさん起きた。もっとも、関わっているのは一人なんだけどね。そんなわけで、生徒が帰ってから夜に残って職員会議さ。
「で、今朝警察の人がやってきて蛙吹姉妹の"個性"使用について色々と言われたけれど、まあ人命救助と正当防衛で決着がついた。お小言はもらったけれど、そっちはいい。それよりも、諏訪子君のことだ。相澤先生、どうだったかな?」
「ありゃ、完全な化け物ですね」
「おいおい、生徒をそういうふうに言うのは感心しないな。まあ、正直言ってあれはやばかったけどね」
オールマイト君をもってしても、そう言わしめるのか。
「というか、私は彼女の心臓のことを聞いていないんですが……」
「あれ、オールマイト君に資料を渡してお願いしたはずなんだけど」
「オールマイト先生?」
「えっと、確か相澤君の机の上に置いておいたはずなんだが……」
「あ~もしかして、積み重ねてあった資料の上に置きましたか?」
「うん」
「はぁ……やめてください。後、おいたらおいたで連絡をください」
「ごめん。ちょっと立て込んでてさ」
「危うく
殺しかけたじゃなく、殺されかけたね。
「あれは運が良かったね。もう少し避けるのが遅かったら……」
「確実に死んでましたね」
「"個性"を消せばよかったんじゃね?」
「馬鹿を言うな。話はそんな簡単じゃない。襲われて彼女が離れた時、何度も消そうとしたが、そのまま宙に浮かんで蛇を呼び寄せていた」
「つまり、相澤君が化け物だといった理由は彼女の力が"個性"ではない、ということかな?」
「そうです。最初の、蛙吹諏訪子の場合は"個性"だと思います。通りにくい感じはしましたが、まだ消せました。ですが、別の人格。後から出て来た方には一切の力が通じなかった。そもそも生徒に逃げるように指示をだしましたが、彼女がその気なら一瞬で殺されていたでしょう。それぐらいの力の差を感じました」
「ふむ……」
僕は蛙吹諏訪子君の第二人格が叩き出したデータをみる。
蛙吹諏訪子
ボール投げ:測定不能。摩擦でボールが消滅した模様。
立ち幅跳び:測定不能。空を飛ぶので意味なし。
50m走:0.001秒
握力:機械が粉砕
反復横跳び:一秒間に最低70回。これ以上は計測不能。
持久走:持久力に限界がみられず、本人が飽きたために計測終了。記憶284周。
上体起こし:支えられる存在がおらず、計測不能。オールマイトが押さえれば可能性がある。
長座体前屈:本人が拒否したためにデータなし。
「なにかな、このデータは」
「体力テストですよ。ね、化け物でしょう」
「確かにこれはそうだな」
「それと第二人格本人から名前を聞きました」
「ほう、それは初耳だね」
「なんて言っていたんだい?」
「洩矢諏訪子と、漢字まで教えてくれましたよ」
洩矢諏訪子ね。彼女の蛇、ミシャグジから考えて洩矢神のことだろう。洩矢神はミシャグジ神と同一視されることもあるからね。
「神様ってことか」
「内側に神様がいるってか! とんでもない嬢ちゃんだぜ!」
「こんなオカルトのことがあるとは……」
「ポルターガイストの"個性"を持つ者もいるんだから、神の"個性"を持っていたとしても不思議ではないが……いや、それはやばすぎるか」
「そうだね。どちらにしろ、相澤君の報告からその神様を名乗る存在が、蛙吹諏訪子君の中から出てくるのは時間の問題のようだね」
「そうですね。ですが、問題は彼女の性格です。今回は引いてくれましたが、あれはどちらかといえばヴィラン側です。扱いをしくじった時点で、最恐最悪のヴィランになるでしょう」
「何、このままヒーローになってくれるさ」
「楽観はできませんよ。もし、彼女がヴィランになれば……」
「だいじょーぶ! 何故って? すでに手は打っておいたからさ!」
ふむ。オールマイト君がそういうなら、大丈夫かもしれないね。
「しかし、止められますか?」
「今なら、まだ止めることは可能だろう。蛙吹君ならね。ただし、もう一人の方が相手なら、正直に言うと無理だ。打った手は時間がかかるからね。でも、私見だけど彼女はそこまで悪い子じゃないね」
「こちらが誠意をもって接すれば問題ないかもしれない。彼女が洩矢神かそれをもして作られた存在だというのなら、だけど」
「神話ですか」
「そうだよ。まあ、オカルト染みてはいるが、創造系の"個性"って要は本人の妄想とかで全てが決まるからね」
「だが、それは神話に語られる彼女が神に近い力を持っているということになる」
「そう、どう考えても"個性"の限界を超えているんだよね。まるで、オールマイト君みたいに」
「私の"個性"も特別ですからね。おそらく、彼女と同質の可能性があります。もっとも、私の"個性"は願いですが」
紡がれてきた願いだね。人々の力の結晶が神様に届くかもしれない。
「よし、じゃあ取り敢えずどちらの諏訪子君にしても、現状は生徒に変わりない。だから、よろしく頼むよ」
「「「はい」」」
「それと、相澤君」
「なんですか?」
「入学式は出ようよ!」
「いや、合理的じゃないです。時間の無駄でしょう」
「君はそう思うかもしれないけれど、親御さんや生徒、教育委員会から不満の声がでているんだよね」
「どうにかしてください」
「無理だから。ここ、教育機関だし。これからはしっかりと学校行事にも出るように。これは校長命令だよ。それに思い出作りは大事だよ。特に……」
「蛙吹諏訪子の場合は、ですか」
「うん。リカバリーガールからも、彼女が持つ可能性は一年程度という報告があがっている。オールマイト君の対策はそれで間に合うかな?」
「微妙ですが、やってみせましょう。それに彼女がしっかりと成長し、思い出を作っていればひょっとしたら助かるかもしれない。人の力は偉大だからね」
「確かにそうだよ。並行して、彼女を助ける手段も探してみよう」
「わかりましたよ。今回は私が悪かったようです」
ふう。これでどうにかなるかな。やれやれ、相澤君は生徒思いなんだろうけれど、色々と駄目な部分がある。説明不足だったりもするしね。
蛙吹諏訪子
ここはどこ? 私はだれ?
「ここ夢の世界で、君と私は諏訪子だよ」
「あれ? おかしいな。夢の世界なのに私達以外の人がいるよー」
「そうだね~」
「というか、なんで私達は正座させられているのかな~」
「それはと~ても怖い人のせいだよ」
「誰が怖い人ですか、誰が!」
はい、私達は現在森に囲まれた湖にある河原で正座させられているの。私達に正座を強要している人物は蛇と蛙をあしらった2つの髪飾りをした緑色の長髪に、白と青を基調にした巫女服を着ている女子高生巫女さん。そう、その名は祀られる風の人間、東風谷早苗。現人神にして奇跡を操る程度の能力を持つチーターである。
「誰がチーターですか!」
「いや、どう考えてもチーターだよね?」
「だね~、認めたほうがいいよ。この頃、なんでも奇跡で解決しているし」
「……こほん。私のことはいいんです。それよりもお二人がしでかした危険行為です!」
「危険なことってした?」
「あなたは死にかけましたよね!?」
「アッハッハッハ、私達にその程度のことで反省するとでも思っているのかな~」
「片腹痛いね~」
「こ・い・つ・ら! なんでしょうか……手のかかる子供が一人増えた?」
「失礼な。母親は私の方だよ」
「じゃあ、私は妹? あ、でもどっちかというとお姉ちゃんかも」
「こんな姉は嫌です!」
「あっ、それはお姉ちゃんに失礼だぞー」
「それもそうですね。ですが、それなら妹ですね。妹弟子という可能性がありますし」
「いや、ないから……」
「奇跡」
「いま、ぼそってなんかいった!?」
「はい、私はなんですか?」
「それはさ、早苗お姉ちゃん!」
「はい、よくできました」
やっぱりチーターには勝てなかったよ……。まあ、現人神としても私が妹というのは納得できるんだけどね。
「ああ、妹が欲しかったんですよね~」
抱きしめられて無茶苦茶に撫でまわされる。そして、胸で窒息死しそう。
「やれやれ……」
いつの間にか諏訪子様があぐらをかいてお酒を飲んでいた。いいな~。
「飲む?」
「飲む? じゃありません! 未成年ですよ!」
「早苗もだよね」
「うっ……って、違いますよ! 二人の危険行為についてです!」
「まだ続いてたんだ」
「続いています。だって、私が紫さんにぐちぐちと文句を言われたんですよ! 幻想郷を変なところに繋ぐなって」
「あーうー」
「それは仕方ないね。でも、早苗と霊夢でどうにかできるだろ」
「ええ、それはもう二人で、いえほぼ私一人でやりましたよ。うちの神様が迷惑をかけたわけですし。それで霊夢さんにもぐちぐちと言われて……奢らされる約束をさせられたんですよ」
「よし。じゃあ、宴会にしようか」
「いいな~私もいきた~い」
「呼んでやろうか」
「だ・め・で・す! というか、呼んだら戻れなくなるじゃないですか。道がなくなるじゃないですか」
「そのために早苗がいるじゃないか」
「奇跡でどうにかしてよ~。ほら、奇跡、奇跡」
「天誅!」
空から雷がふってきた。痛い。
「けろけろ」
「簡単にいいますけど、それ数ヶ月単位で詠唱がいるんですから、いやですよ!」
「ということで、諦めてよ」
「ふ~んだ。いいもん、いいもん。こっちでも宴会するんだから」
「まあ、それはいいですけれど……本当にいいんですか?」
「なにが?」
「このままだと早いうちに確実に死ぬことになりますよ」
「死が終わりなら、嫌だけど……これ四度目だからね~。それに今度は神様になれるから別にいいよ~」
一度目は普通に死んで転生し、二度目は火傷によって私は死んだ。あれはもう死んだといっていい。三度目は自分で胸を貫いた。四度目は諏訪子様と一緒になる。
「私という存在は消えても、諏訪子様の中で溶け合ってずーと生き続けるんだから別にいいんだよねー」
「そうですか。では、私も可愛い妹に祝福をあげましょう。どうか、あなたに幸せがありますように」
「ありがとう。でも、別にいいのに。もういっぱい貰ってるし」
「貰えるものはもらっといたらいいんだよ」
「それもそっか。それよりもお酒ちょうだい」
「いいよー」
三人で一緒になってお酒を飲む。美味しい。
「というか、何か忘れているような? まあ、いいでしょう」
「よーし、今日はここで宴会だー!」
「神奈子様も呼びましょうか」
「別にいいよー。三人だけで」
「怒りますよ?」
「こないだ、私の酒をこっそり飲んでたからいいんだよ!」
「まったく、あの人は……って、その前に神奈子様のお酒を飲んだのは諏訪子様じゃありませんでしたか?」
「さてさて、なんのことやら~」
ぐびぐびとお酒を飲んでいく。宴会はそのまま続いていく。そして、しばらくしてから私は帰った。