ケロちゃんのヒーローアカデミア! 作:諏訪子大好き
入学式当日。冷水を使った禊とお祈りをしてから私は、お絵かきをする。お姉ちゃんは隣で死んだように眠っている。今日まで厳しい訓練をしてきたらか、ある意味では当然かも知れない。
「できたー」
作ったのは私の力で作り上げた特殊なカード。材質は厚手の紙でも力はたっぷりと入っている。絵には私の姿と色とりどりの弾幕が描かれている。
そう、作ったのは東方でお馴染みのスペルカード。開宴・二拝二拍一拝と土着神・手長足長さま、神具・洩矢の鉄の輪。確か、うろ覚えだけど雄英に入ると対人戦がある。
だから、殺さないために出力制限をかけるのだ。あとイメージが固まりやすいから能力で作りだすのも簡単になる。このカード自体には力はなく、材質が特殊なだけ。
「おはよう、諏訪子。朝から元気ね」
「おはよう、お姉ちゃん。冬眠は終わったの?」
「ええ。諏訪子が訓練を手伝ってくれたおかげで、強力な毒が使えるようになったわ」
「えへへ~」
お姉ちゃんが覚えたのは麻痺毒と神経毒。それに運動能力もあがっている。私と組手とかも結構やっているしね。
「今日は入学式よね。朝食を食べてさっさといきましょう」
「そうだね」
着替えてから下に降りると、お母さんが料理を作ってくれていた。
「おはよう二人共。入学式、楽しみね。お母さん達もいくわよ」
「わ~い」
「梅雨ちゃんは小学校と中学校の入学式はいったけれど、諏訪子はいけなかったから……母さんは嬉しいわ」
「私も~」
前の時も入学式なんてまともに受けただろうか? もう覚えていないよ。というか、前世の記憶なんてもうほぼないんだよね。駄目押しがこの身を生贄にして、身体を変化させたことだし。後悔はないし、諏訪子様の記憶も少し流れてきている。
「取り敢えず、お母さん達は後からくるのよね」
「ええ。さつきちゃん達も連れていくからね。それと晩御飯はお祝いだから」
「おー」
「けろけろ。楽しみね」
「だね~」
「ほら、早くお食べなさい」
朝食を食べたら急いで雄英に向かう。高校生デビュー初日として頑張らないと。
「そういえば、諏訪子が出会った友達も一緒なのよね?」
「そうだよー」
「そう。今度紹介してちょうだい」
「いいよー。それでね……」
お姉ちゃんと楽しくおしゃべりしながら通学する。ちなみに蛙の帽子だけはつけている。これがないと落ち着かないし。むしろ、制服なんて着たくない。そんな状態で歌まで歌いながら気分よく進んでいく。
「ご機嫌ね」
「うん。だって……」
次の瞬間。私達の前にトラックが飛んできた。違う。私にだ。
「諏訪子、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
トラックと私の間にはミシャグジさまが現れていて、トラックを受け止めてくれたのだ。ミシャグジさまはトラックを締め付けて小さくして、食べてしまったけれど気にしない。とんできた方をみると巨大化した人が車を投げたり、電柱を持って暴れてだしていた。
「ヒーローは?」
「まだみたいね。諏訪子、危険だわ。って、何をする気?」
「助けに入るんだよ」
私はさっさと現場へと向かっていく。
「遅刻するわよ」
「別にいいよ~人助けして、怒られるヒーロー科なんて、こっちから願い下げだよ」
「それもそうね」
「それに私の楽しい時間を台無しにしてくれたんだから……祟らないとね。あはっ♪」
「諏訪子、殺さないように。私は人命救助をしているわ」
「まっかせてー」
お姉ちゃんがすぐに人助けに入る。私は現場に歩きながら懐に手を入れる。
「さて、そろそろ充分に暴れたよね? 次は恐怖のどん底に突き落とされる番だよ」
「あ? 餓鬼が、何を言って……って、その制服は雄英のじゃねえか。はっ、未来のエリート様が何の用だよ……」
「ヒーロー志望なんだから、人助けにきまってるじゃない。あっ、馬鹿にはわからないか。それにやられたらやり返す。というわけで、天地開闢の調べ。ここに神遊びを始めようか。開宴・二拝二拍一拝」
左右の地面に呼び出したミシャグジさまの口から色の違うレーザーを交互に発射させる。その後、風や水、石を圧縮した粒を作って弾けさせて飛ばし、直後にミシャグジさまの口からまたレーザーを左右同時に放つ。ちなみに天地開闢とかいっているけれど、私に天の属性はないからね。
「あがぁあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!」
手足を破壊され、身体中を散弾でボコボコに殴られたヴィランはそのまま地面に倒れた。
「あれあれ、どうしたの? まだ始まったばかりだよ? ほらほら、頑張ってよ。次だよ、来い、がんだぁぁぁぁむっ!」
別のスペルカードを取り出して、能力を発動させる。土を創り出し、巨大な私の動く石像へと変化させる。がんだぁぁぁぁむっていったのはただのネタ。別にビック・オーショータイムでもよかったんだけどね。ちなみに私の場所は石像の肩だよ。あ、これだとジャイアントロボのほうかも。
「ほら、私を楽しませてよ、ヴィランさん」
「ひっ!?」
足を大きく上げて、踏み下ろそうとしたら、大きな女の人が飛び込んできて足を掴んでくれた。
「は~い学生のお嬢ちゃん。そこまでよ。私はジャイアントレディ。ヒーローよ。後は任せてくれるかしら?」
「……」
さあ、どうしようか。任せてと言われても獲物を横取りされるのは嫌なんだよね。でも、まだヒーローじゃないし、仕方ないよね。石像を戻してついでに壊れた道を土で直しておく。
「それと警察の調書を受けるようにね」
「せっ、正当防衛だよ~」
「市街地で"個性"使ってるからね」
「は~い」
お姉ちゃんを探すと、救助をしていた。傷口を舐めて治療している。毒だけじゃなくて回復系も覚えたんだ。凄いね。といっても、傷口を固めて止血しているだけみたい。
「お姉ちゃん、後はプロの人に任せて警察の調書を受けろって」
「そう? "個性"を使ったから仕方ないわね。」
「時間かかりそうだね~」
「仕方ないわ」
救助活動を普通に手伝っていると、パンダさんがやってきた。パンダさんから警察の人が降りて来たので、私達はそちらにいって事情を説明する。
「というわけで、"個性"を使っちゃた」
「怪我人はそちらに」
「わかった。お前達は聞き取りと現場確認を頼む」
「「はっ」」
「さて、お嬢ちゃん達。ちょっとパトカーの中で話しを聞こうか」
パンダさんに乗ってお話をしだすと、パンダさんが動いていく。
「トラックの激突を防いで、回りを見渡してヒーローがいないから被害を押えるために押さえ込んでいたと」
「警部。確認が取れました。確かにそちらの彼女達は人命救助のために"個性"を使っていますね。ジャイアントレディが来てからは緊急以外"個性"を使わないで救助しています」
「ただ、彼女の場合は過剰防衛になるか微妙なところですね」
「ふむ……まあ、今回は正当防衛ということで片付けておこう。だが、気を付けるように」
「やだ」
「なに?」
「人助けをして後悔することなんてないよ。それがヒーローってものだしね」
「確かにそうね。人が死ぬような状況になったら、"個性"を使ってでも助けるわ」
「まあ、それならそれでいいさ。それよりも今日は入学式だろうから、送って行ってあげよう。あと少しで着くと思うからね」
「お願いします。入学初日から遅刻はまずいわ」
パトカーで送ってもらった。そのおかげではやく到着できました。
ゲートを通り、そのまま下駄箱へと入る。クラスを確認すると1-Aだった。案内図を見てみつけた教室に入る。すると、マフラーを巻いた先生が体操服を出しているところだった。
「遅くなりました」
「遅い。初日から遅刻とはたるんでいる。除籍にするぞ」
「あ~う~人命救助とヴィランを教育していたんだよ~」
「けろけろ。警察の人と一緒にきたから、連絡がきていると思います」
「そうか。緊急時における人命救助や人助けをするな、とは言わん。自分達がひよっこだと弁えればだ。だが、次からは連絡を入れろ」
「わかりました。次から余裕が有ればそうします」
「けろけろ」
返事をしてから教室を見渡すと、出久君もちゃんといた。あと、何故かツンツン頭君が私を睨み付けている。なんでだろ~? 取り敢えず、空いている席に座る。
「では、席に着け。これから、着替えてグラウンドに出てもらう」
「せんせー」
「なんだ?」
手を上げてせんせーに質問してみる。
「入学式は?」
「そんなもんにヒーロー科はでない。時間が勿体ないからな」
「そっ、そんな……」
私は机にべたっとくっつく。凄く楽しみだったのに……というか、忘れていた。確か、そんなのがあったよね。もう、無視して受けに行こうかな?
「あーうー……やる気がなくなったよ……」
「諏訪子……」
「いっそ教育委員会に訴えてやろうか……」
そんなことを言っている間に、私はお姉ちゃんに更衣室へと連れていかれた。帽子はちゃんともっている。そのまま着替えさせてもらったあと、グラウンドへと連れていかれた。
「すっ、諏訪子ちゃん」
「あ~出久君だ」
顔を赤くしながら、挙動不審な姿でこちらへやってきた。
「だるそうだね」
「やる気がなくなっただけだよ。あ、こっちはお姉ちゃん」
「蛙吹梅雨よ。妹がお世話になったようで、申し訳ないわ」
「いえいえ、こちらこそ面倒をみてもらって……」
お姉ちゃんと出久君の挨拶が終ると、他にも女の子が寄って来た。彼女は麗日お茶子。ヒロインの一人で、ゲロイン。でも、とてもいい子。
「こんにちは。私は麗日お茶子。よろしくね~!」
「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんって呼んで」
「私は妹の蛙吹諏訪子。よろしく」
挨拶をしている間に相澤先生が説明していく。どうやら、最下位は除籍みたい。でも、やる気がおきない~。
「実技試験でトップは蛙吹諏訪子だったな。"個性"を使っていいから、このボールを投げてみろ」
「ボールを?」
「そうだ」
「えっと、じゃあ……」
貰ったボールを上に投げて、作った石のバットで適当に打つ。すると、100メートルくらい飛んだ。
「おーとんだとんだ」
「お前、やる気ないだろ」
「ないよ~」
「そうか。では次だ。爆豪、手本を見せてやれ」
「おうよ!」
それから、彼は700メートル越えという結果をだした。そのあと、私にドヤ顔をみせてくる。けど、私は地面にのの字を書いている。
「諏訪子ちゃん……」
「あ、出久君。そういえば鉄の輪をつけたままだったよね」
「そういえば、忘れていたよ」
「じゃあ、外してあげる」
彼の身体につけていた10個の鉄の輪を消滅させてあげる。
「うわ、身体が凄く軽い!」
「それなら大丈夫だと思うよ。頑張ってー」
「うん! やってみるよ!」
それから、出久君は頑張った。相変わらず、私は最下位を独走中。これで除籍されるなら、それはそれで……いいかも知れない。
うん、私、諏訪子様ってどっちかっていうと異変を起こしたりする暗躍側だし。そんなことを考えていると、出久君が能力を使って投げようとする。だけど、それを相澤先生が邪魔をしようとしたので、私が彼の前に立って視界を封じてあげた。
「お前っ!」
能力をちゃんと発動させた出久君は1090mという数字を叩き出して、腕が折れなかった。小指は痛めたようだけど。
「あれ、成功したのか?」
「四六時中、私の鉄の輪をつけていたんだから、当然の結果だよ」
「……お前、なんで邪魔をした」
「なんのことかな? 私は応援していただけよー」
そっぽを向いて、そんなことをいうと……
「あ、れ?」
身体に力が入らなくなって、寒くなって、そのまま地面に倒れる。苦しくて、胸を押さえる。
「諏訪子っ!?」
「おい、どうした!? っ!? 心臓が……」
「ちょっ!?」
「ど、どうすれば……」
「……ゴーグル? そっ、そうか! せっ、先生っ! 直に"個性"を解除してください!」
「なに? どういうことだ」
「彼女は常に"個性"を使っているんです」
「ちっ、報告書にあったアレか。まさか、体内のまで消えるとは……」
苦しくて、苦しくて、でも、とても暖かいものが中から浮かび上がってくる。
緑谷出久
まずい。諏訪子ちゃんが動かない。先生は"個性"を解除してくれたみたいだけど……これってかなり、まずい。
「っ!? 目覚めたか!」
目を開けた諏訪子ちゃんはニヤリと笑いながら、先生の首に掴みかかった。先生はなんとかそれを避ける。すぐに立ち上がると、二人は対峙する。でも、なんだかいつもの雰囲気とは違う気がする。
「ふ~ん、これがこっちか」
両手を握ったり開いたりして、まるで身体が動くことを確かめるように。
「全員、下がれ。いや、今すぐに逃げろ」
「先生?」
「いいから早くしろ! こいつは……」
「ああ、名乗らないと駄目だよね。でも、名乗ってあげる理由もないか。どうせ消えるんだから」
彼女は空に浮かび、両手を広げる。すると、地面が振動して無数の白い蛇達が現れていく。
「諏訪子、何をする気なの?」
「ああ、君が梅雨ちゃんなんだね~」
「……」
「何をするかって言われたら、簡単だよ。治療? でも、その前に危険分子は消えて貰わないとね」
「諏訪子ちゃんの身体で何をする気だ!」
「あははは、面白いことをいうね。この身体は私のものだよ。彼女からもらい受けたものだから」
「多重人格。という訳ではないな。完全に別人か?」
「違うよ。もう、どちらも私だからね。まあ、今回は警告だけにしてあげるよ。おいで」
無数の蛇が諏訪子ちゃんの身体に襲い掛かって、取り込まれていく。傷口が治っていく。
「さて、私はもどるけど……いや、そうだ。体力テストだっけ。アレを私がやろう。どちらも私だから問題ないしね。うん、どうせ退屈だったんだから問題ないよね」
「まて、彼女は無事なのか?」
「見ての通り、無事だよ。あの子も私の一部なんだから、死ぬことはありえないよ~」
「戻るの?」
「今は眠ってるだけだから、時間があれば今はまだ目覚めるよ。それより、せっかく出たんだから、遊ばせてもらうんだからね」
「詳しく聞きたいが、身体は本人に変わりなければいいだろう。続きを行うか」
その後、諏訪子ちゃんはとんでもない記録を連発していく。何もせずにオールマイトクラスの力を発揮し、多種多様にみえる"個性"を使いこなす。しまいには空を飛び、色とりどりの綺麗なエネルギー弾を放ってくる。
楽しそうに遊んでいる彼女は僕の知る彼女に似ている。でも、やはり別人だと思う。
「ああ、最後に忠告してあげる。帽子を離させないでね。あと、"個性"を消すなんてしないこと。さもないとどんどん私達は一つになっていくから。私は彼女がどう足掻き、最後にはどうなって私の完全な一部になるのか、とても楽しみにしているんだからね」
そう言って消えていった。恐ろしい気配が消え、残ったのは元の彼女だけだった。ちなみに他の生徒には多重人格ということが伝えられた。
実際、似たようなものかも知れない。そして、今。元に戻った諏訪子ちゃんは入学式をやっている。というのも、校長先生が気を利かせてくれた。
参加したい人だけ残ってやる入学式はそれはそれで楽しかった。それに僕のお母さんも泣いて喜んでいた。しかし、オールマイトが警戒していたことが現実になるかもしれない。
彼女がヴィランになる可能性があるというのは僕でもはっきりとわかった。あのもう一人の諏訪子ちゃんはやばい。しっかりと支えないといけないだろう。