ケロちゃんのヒーローアカデミア! 作:諏訪子大好き
緑谷出久
大変なことになった。スタートと同時に駆け抜けようとした。でも、入口に向かった瞬間、出口が土の壁で封鎖された。僕はこれをやらかした犯人をみる。彼女はスタート地点から動いていない。嫌な予感がしてすぐに引き返して取り押さえにかかる。
でも、押し寄せてきた人に防がれた。その間に楽しそうに笑った諏訪子ちゃんは大量のゴーレムを作り出した。そのゴーレムが参加者を襲いだして周りが混沌としていく。その中を諏訪子ちゃんはゴーレムや観客席の縁などを足場にして飛び出していく。まるで、猿のように飛び上がっていった彼女は観客席のひさしに飛び乗る。
やばいやばいやばいやばい! 天井すら封鎖する気だ!
そう思ってワン・フォー・オールを発動させながら飛び上がる。しかし、ひさしから伸びた蔦が無情にも封鎖していく。
『1-A、蛙吹諏訪子! 他の連中を閉じ込めて抜け出したぁぁっ!』
「あっと、言い忘れてたよ。この壁は中に居る参加者が残り四名になると自動的に崩壊するから、潰しあってね」
『悪辣だな、おい! どういう教育してんだよ』
『勝つために手段を選んでいないんだろう』
「けろけろ」
封鎖されていく視界の中、僕はなんとか受け身をとって着地する。足は問題ない。諏訪子ちゃんと訓練したお陰でコントロールできるようになってきている。地面に着地した僕はすぐに横に転がる。すぐ側にゴーレムの手が掴もうとしていた。起き上がりながら、ゴーレムに触れて一割の力で吹き飛ばす。
「出久君、大丈夫?」
「うん。それよりも……」
爆音が轟き、こちらに衝撃がやってくる。
「あ~ぜんぜんダメですね~」
「ちっ」
ゴーグルをかけたピンク髪の女の子とかっちゃんがやってきた。どうやら、爆発させて破壊できるか試したみたいだ。残念ながら、そうもいかない。とりあえず、先にゴーレムを破壊して安全圏を確保する。幸い、ゴーレムは弱いようだったので皆もすぐに倒せた。
しかし、問題は諏訪子ちゃんの発言。それを真に受けた人達が互いに潰し合いを始めようとしている。解決策を提示しないと本当に目も当てられない状態になる。
「厚さ10メートル。材質は土ですが、鉄以上の硬さです。これはまずいですね」
女の人がこちらにやってきて教えてくれる。確か、諏訪子ちゃんは鉄製の武器を使っていた。なら、確かに鉄を作ることもできるのだろう。
「なら、脱出方法は……」
「そんなもの、全員ぶったおせばいいだろ。っと、言いたいが、本当に出れるかどうかわからねえからな。俺なら、絶対に出さないしな」
「爆豪ちゃんならそうでしょうね。諏訪子なら出したうえでねじ伏せそうだけど」
「そうなんだよね。まあ、脱出方法だけどやっぱり上じゃないかな」
「そうね。なにせ本人もそこから出たのだし。植物なら、燃やせばいいのだし」
「つまり、協力すれば出られるってことね」
「ああ、そうだろうな。俺が足場を作ってやる」
轟君もやってきた。彼のおかげで足場は大丈夫だろう。後は……
「かっちゃん」
「言われなくてもわかってる。ぶっ壊してやるよ」
すぐに計画を発動して爆発させる。しかし、天井の蔦が邪魔をしてくる。僕達は守りながら進む。かっちゃんが爆破し、轟君が凍らせたお陰道が開けた。外にでると諏訪子ちゃんが戻って来ていた。
「よくもやってくれたな!」
「このクソガキが!」
轟君とかっちゃんが諏訪子ちゃんに文句を言っていく。
「あ、抜け出せたんだね。おめでとう、ヒーロー諸君。
笑いながら人差し指を唇にあてる諏訪子ちゃん。
「ぶっ殺す」
「あーうー。ちょっとしたお茶目じゃない~。あははは、皆殺気立ってるね。いいよ、やろうか。私は皆を抜けてゴールする。皆は私を防ぐ。じゃあ、始めようか」
そんな時間はないので、僕はさっさと進んでいく。
「嫌よ。時間の無駄ね。だいたい、諏訪子の考えていることなんてお見通しよ」
「ああ、そうだね」
僕もいいながら、呆然としている諏訪子ちゃんの横を通り過ぎる。
「後でだ。覚えてろ」
「あーうー! カッコつけたのに! カッコつけたのに!」
地団駄を踏んでいる諏訪子ちゃんの姿が想像できた。そのまま進んでみたのはとてつもなく広く、物凄い高低差で構成された石柱。石柱と石柱の間に蔦がある。そして、何かが這いずる音が複数聞こえてくる。