ケロちゃんのヒーローアカデミア! 作:諏訪子大好き
病院を退院した私はお姉ちゃんとお母さんとお父さん。妹のさつきと弟の五月雨、おばあちゃんと合流して家で数日を過ごした。もっとも、皆は学校や仕事があるので基本的におばあちゃんと一緒にいる。
自宅療養中の私は学校にいけない。なんとか、雄英体育祭には復帰できる予定。身体は問題ないけど気分の問題がある。この頃、長い、長い夢をみるので、睡眠時間が多いのだ。だから、基本的に落ち着く諏訪大社や諏訪湖にいってで過ごしたりしている。
それはおいておいて諏訪湖でぷかぷか浮かびながら雄英体育祭のことを考える。体躯祭は"個性"出現後、画一的ルールを適用するオリンピックは衰退し、形骸化してしまった。現在はこの雄英体育祭が日本においてオリンピック級の注目度を誇る一大イベント。
全国ネットテレビ中継はむろんのこと、プロヒーローも将来のサイドキック候補を探すため注目している大きな大会。他にもヒーロー育成校の体育祭はあれど、セメントス先生やリカバリーガールなどがいる雄英が一番有名。
ステージは学年ごと3つに分かれており、例年の注目はもちろん経験豊富な3年生ステージなんだけ、今回は私がとっても目一杯楽しんで面白くしてあげる。とても楽しみだよね。ケロケロ。そのために準備しないといけない。
水中で身体の調整をする。意識と身体を擦り合わせていくと、融合はかなり進んでいることがわかる。私の身体は調子が良く、どこまでも潜っていける。なにより、帽子と離れても普通に活動できるようになった。
周りが真っ暗になって水圧で身体が押さえつけられる中でも行動が普通にできる。肺活量も増えているみたいで、まだ余裕がある。適当にお魚を捕まえてお土産を持って諏訪湖からでる。
次の日は森で森林浴。大地と一体になるような感じで力を集めては放出していく。
「け~ろけろけろ、蛙の子。諏訪の国からや~てきた~」
歌いながら山の山頂にある原っぱで寝転んで、ぼーと空をみる。手をあげてみると、小さな手がみえる。この小さな手にとてつもない力が宿っているなんて信じられない。もう思い出せない前世。"個性"を得て……諏訪子になることで私の前の記憶はどんどん消えていって、今はもう完全に消えた。その代わり、あるのは今の私の記憶と幻想郷の中にいる私の記憶。
生誕、農作、軍事、様々な事柄の祟り神であるミシャグジ様を統括していた私は洩矢の王国を作り出した。
ミシャグジ様は少しでも蔑にするとたちどころに神罰を与える恐ろしい神様であり、コントロール出来るのは
しかし、そんな私の元に、大和の神々の魔の手が迫った。古事記にも謳われる国譲り。
破竹の勢いで勢力を拡大する大和の神々は、単一の神話を持って全ての国々を統一するという大望のため、私の地をも併呑しようとした。この侵略行動に対し、私は国の王として天津神の先兵である神奈子を迎え撃った。
私は当時としては最先端の兵器であった鉄製の武器を持って抵抗したものの、結局は神奈子の圧倒的な力の前に敗北。潔く王国を明け渡し、隠居生活に入った。
しかし事態はそうもスムーズに行かなかった。嫉妬深く執念深い祟り神であるミシャグジの恐怖を忘れることが出来ない王国の人間達は、新しくやってきた見知らぬ神を受け入れようとしなかった。
結局、ミシャグジの影響力を越えることが出来なかった天津神達は、この王国を手中に収めることを諦めた。そのかわり、元々の支配者であった私と交渉し、自分が表向き実務を取り仕切り、実際は諏訪子がミシャグジの恐怖を持って国を治める体制を提案してきた。私はその提案に乗った。これで表向きの為政は神奈子が、実際に政を執り仕切るのは私が、という、世にも珍妙な二巨頭体制が実現された。
しかし科学万能の時代がやってくると、信仰の正当性以前に、神に対する信仰そのものがどんどん失われていくようになった。すでに隠居の身である私はこれをさほど気にしていなかったが、これに焦った神奈子は、事前の相談もなく、勝手に神社を湖ごと幻想郷に持って行くという荒業を実行した。あちらの私も第二の人生を楽しむことのようにした。
「んにゅ」
気が付けば眠っていた。私は同じ夢を起きてから毎日見ている。夢として追体験を行っているのだと思う。夢を見る毎にどんどん夢はリアルになり、現実へと近付いていく。融合が進むと、これが私の本当の記憶となるのだろう。
「ん~~」
身体を起こして猫の様に背中を伸ばす。帽子を被りなおして周りをみると、草木が生い茂り、木々が存在していた。松とかもできていて、根本をみると松茸が生えていた。今日は山菜を取って帰る。
数日後、私は無事に学校に復帰して雄英体育祭でられることになった。残念ながら、挨拶は別の人に取られてしまった。これは私が参加できるかわからなかったせいだ。残念だ。本当なら、ヒーローなのに他者を蹴落とし勝利するとはいかに、とか凄く言ってみたかったのに。
「諏訪子、あくどい事を考えているでしょ」
「けろけろ」
「二人共、しっかりと見ているから頑張ってね」
「姉ちゃん達がんばれ」
「諏訪子ねえちゃ、派手にやって~」
「任せて! 派手に楽しんで来るよさつきっ! だから、帽子を預かっていてね」
「うん」
さつきに大事な帽子を渡してから二人でゲートを通り、半袖半ズボンの体操服に着替えて1-Aの控室で待機する。
「諏訪子ちゃん、もう身体は大丈夫なの?」
「無理はしないでくださいね」
「平気だよ~。もともと、怪我とかはちゃんと治ってたけど、念の為に休んでただけだから」
女の子達で楽しくお話していると、轟君が出久君に喧嘩を売っていた。
「実力は俺の方が上だが、お前はオールマイトに目を賭けられているよな」
面白そうなので聞いてみる。
「だが、俺が勝つ。それだけだ」
「僕も本気で優勝を取りに行く」
「面白そうだね」
「うわっ!?」
後ろから出久君に飛び乗って頭の上に顎を乗せる。
「ちょっ、諏訪子ちゃん!?」
「けろけろ」
「なんだ?」
「二人が楽しそうにしているから言ってあげるよ。勝つのは
「おいおい」
「言ってくれるじゃねえか」
出久君の肩を利用して、逆立ちの要領で二人を飛び越えて着地する。
「だから、みんな。私を楽しませてね。例年通りのぬるい遊びにはさせないよ。死ぬ気で挑まないと最初でリタイアで、決着がつくよ」
皆の視線が私を貫いていく。私は楽しくなってきて、くるくると回っていく。
「ああ、お姉ちゃん。どうする? お姉ちゃんが望むなら、お姉ちゃんだけは例外にしてあげるけど」
「いらないわ。私は自分の実力で諏訪子を超えるわ」
「それでこそ、だね。じゃあ、皆。私のステージ、楽しんでね」
訝しんでいるみんなを置いて、私は控え室からでていく。そして、そのまま入場していく。その後は並んで主審であるミッドナイト先生に従っていく。代表に爆豪君が呼ばれる。
「宣誓。俺が一位になる」
物議を醸し出すけど、私はただ笑うだけ。これからのことに都合がいいから。
「第一種目は障害物競走。このドームを出て役四キロのコースを走って戻ってくる。我が校は自由差が売り。コースを守ればなにをしてもいいわ。さあ、位置に着きなさい!」
私は真ん中でゆっくりと待つ。ゲートの上にあるランプが点灯していく。
「さあ、神遊戯を始めようか」
「スタート!」
皆が一斉に走り出す瞬間、私はスタートという言葉と同時に地面を踏みつける。
「なっ、なにぃいいいいいいいいぃぃぃぃっ!!」
「「「「おおおおおおおおおおいい!」」」」
「ちぃっ!?」
ドームの外周全てに大きな大きな天上を超える土の壁を作った。これで誰もここからでることはできない。壁を壊さない限り。でも、この壁は生半可じゃ壊れない。
『どうなってんだこれええええええええええええぇぇぇぇっ!?』
『早速仕掛けやがったか』
なにより、ガーディアンも設置するから。
「だいだらぼっち、適当に遊んであげて」
土人形を沢山生み出して、襲わせる。同時に私は地面を蹴って、観客席に移動。そこから更に蹴ってミシャグジを呼び出して足場にし、そのまま上から抜ける。同時にドームの天井を閉じるように植物を操作して土に絡めて天井も封鎖する。
「よっと」
『1-A、蛙吹諏訪子! 他の連中を閉じ込めて抜け出したぁぁっ!』
「あっと、言い忘れてたよ。この壁は中に居る参加者が残り四名になると自動的に崩壊するから、潰しあってね」
『悪辣だな、おい! どういう教育してんだよ』
『勝つために手段を選んでいないんだろう』
「けろけろ」
飛び降りて土の柱を作って、階段にする。地上に降りたらコースを走っていく。すると機械のロボットがいっぱいでてきた。全部、最低限の回避だけで壊さずに抜ける。
『さあ、早速の妨害だ! って、倒さないのかよ!』
『残しておいたほうが妨害にちょうどいいと思ったんだろう』
そのまま走っていると後ろから爆発音が聞こえてくるけど、無駄。とっても硬いからね。コスチュームがあれば別なんだろうけど。
『このまま終わるのか!』
協力すれば抜け出せるだろうけど、他者を出し抜こうとする心理が協力を阻む。四名だけは抜け出せて、合格することができるんだから。
『おおと、速い速い! もう第二ステージだ! ロープを伝って移動しろ! 落ちたら奈落へ一直線! それが嫌なら這いずりな!』
『流石にとまったか』
一杯ある岩山。ここがベストだね。
「ほいっと」
数分間、止まって力を溜めてから解放する。すると岩山の高低差が激しくなって、ロープが引きちぎられていくので代わりに蔦を設置。一部には切り目を入れておく。そして、ミシャグジを複数放つ。隠れながら通るといいよ。
『この野郎っ、難易度を跳ね上げやがった!』
『どうやら、難易度を徹底的にあげるつもりのようだな』
『だが、本人も進めてないぞ!』
岩の柱に飛び乗ってすぐに飛んで蔦を足場にジャンプ。切れる前に飛んだり、蔦をわざと切ってターザンごっこのようにして先を進んでいく。同時に私もミシャグジに遭遇して、見つからないように隠れて進む。駄目なところは修正しないとね。
『ちゃんと攻略できるかどうかも試しているようだな』
『それってステージ作ってるってことじゃねえか!』
『ぬるいってことだろう』
『いやいや、難易度HELとかルナティックじゃねえか!』
そのまま突き進んで地雷原に到着。
『ここは地雷原だが……どのようにコーディネートするのかもちょっと楽しみになってきたぞ! というか、蛙吹諏訪子の"個性"ってなんだ?』
『大地に関すること全般だな。今までのを見た限り、土の操作と植物の操作だ。蛇も石でできているからな』
『なるほど……って、動いたな』
『今度は植物の迷路か。地雷原ありの』
地雷原に植物の迷路を作って、迷わせて正解以外の道だと戻るように仕上げた。正解の道? 上からいくしかないけど、なにか? ちゃんと地雷以外のトラップも仕掛ける。落とし穴とか滑り台とか。
『上から攻略するのか』
『固定概念を持つと迷う仕掛けだな』
地雷原を抜けた私はそのままゴールへと到着する。同時に上の蔦が焼き払われた。すぐあとに氷の道が出来て外にでてくる。
「よくもやってくれたな!」
「このクソガキが!」
「あ、抜け出せたんだね。おめでとう、ヒーロー諸君。
「ぶっ殺す」
「あーうー。ちょっとしたお茶目じゃない~。あははは、皆殺気立ってるね。いいよ、やろうか。私は皆を抜けてゴールする。皆は私を防ぐ。じゃあ、始めようか」
「嫌よ。時間の無駄ね。だいたい、諏訪子の考えていることなんてお見通しよ」
「ああ、そうだな」
「後でだ。覚えてろ」
「あーうー! カッコつけたのに! カッコつけたのに!」
皆、私を放置していく。ラスボスが最初にでてくるってやりたかったのに! くっ、さすがはお姉ちゃん! 仕方ないから大人しくゴールして皆を見学することにする。
『一位は1-A蛙吹諏訪子! ヘイトを大分稼いでいるが、これから大丈夫か!』
『気にしていないだろうな』
ゴールすれば拍手で皆が迎え入れてくれた。私も手を振って答える。その瞬間、こふっっと血を吐いた。力の使い過ぎみたい。まあ、ゆっくり休んでおこう。まずはリカバリーガールのところかな。