ケロちゃんのヒーローアカデミア! 作:諏訪子大好き
「くそっ、くそっ、なんなんだよっ、あの化け物はっ! オールマイトどころじゃねえ! むしろ、ヒーローよりヴィランだろうがっ!」
なんとか逃げ帰れた。もう少し、あそこに居たら俺も脳無のように殺されていた。ヒーローを目指しているくせにガチで殺しにくるなんて、想定外だ。
『お帰り。その様子だと失敗したようだね』
『脳無はどうしたんだ?』
「脳無なら殺された! クソガキにな!」
『何?』
「本当です。それもオールマイトではなく、生徒の少女にです」
『生徒が脳無を殺すなど、にわかには信じられないが……』
「あれは風か? なんかよくわからんもので斬り刻まれて、溶岩みたいなので溶かされて最後には大きな白い石でできた蛇に喰われた」
『それって、もしかしてそいつか?』
「え?」
振り向くと、そこには白い蛇の頭が迫っていた。慌てて両手で首を掴んで粉々にしてやる。すると土くれみたいになりやがった。
『興味深いサンプルだ。是非回収するんじゃ』
『いや、その前にそこを捨てるんだ。来るぞ』
「畏まりました」
「ちっ!」
土くれから慌てて飛び退くと、そこに無数の目が現れていた。いや、部屋中に現れている。
「お早く」
「ああ……なっ!?」
黒霧の下へと走ると、途中で足が絡まって転んでしまう。転んだ先に割れた瓶があって、顔を切り裂く。急いで向かうが、足の小指をぶつけて悶える。
「何を遊んで……」
「違うっ!」
『……白い石の蛇……祖奴を操っていたのは蛙の帽子を被った奴ではなかったか?』
「そうですが……」
『かっかっか。なるほど、なるほど。それは祟りじゃ』
「祟りだと?」
『うむ。祖奴はミシャグジ。祟り神じゃよ。むろん、本来の神ではなかろうが、それと同じ力を持つように生み出された存在じゃろうて』
『報告にあった死人の少女か。彼女のカルテは興味があって取り寄せていたが……』
「とりあえず、飛びます」
黒霧が俺を抱えて逃げてくれる。しかし、逃げる先々で現れて襲い掛かってくる。俺の身にも不幸がどんどん降りかかってくる。なんでタライが落ちてくるんだよ!
『無駄じゃろう。ミシャグジならば日本に居る限り、追ってくるじゃろう。一旦、国外に逃亡するのじゃ』
「了解しました」
イギリスに飛ぶと、確かに蛇は居なくなって俺の不幸も止まった。
『日本限定のようじゃな』
『もっと正確なデータを集めれば日本でも問題ないかもしれない。休んでから一旦戻ってくれ』
「了解しました」
「ちっ、仕方ない。ああ、そういえば……オールマイトみたいな"個性"を使う奴もいた」
『それは興味深いのお』
『興味深い連中が多いようだ』
ちっ、本当なら今頃、うまくいっていたのに。いや、そもそもあのガキがいなければ……絶対にぶっ殺してやる。まずは家族構成を調べて、人質を取るか。
だが、脳無を殺したアイツは性格がかわったように感じた。後の方なら、人質なんて一切気にしないかもしれない。俺自身が手をだすより、使い捨ての奴で試した方が良いな。
オールマイト
連中の襲撃から数日。あれから諏訪子君はすぐに倒れた。今も入院しており、意識不明なそうだ。何時死んでも……いや、彼女の場合は……違うな。彼女はしっかりと今も生きている。それに呼吸もしっかりとしているようだし、きっと大丈夫だろう。
「ふう……さて、会議を始めよう。お願いするよ」
校長先生の言葉で、会議室に集まった私達は話始める。
「はい。ヴィラン連合と名乗る連中を警察の方で洗ってみましたが、死柄木という名前。触れた名前を粉々にする"個性"。また、ワープゲートの黒霧という者は該当する人物はありませんでした」
「つまり、裏の人間か」
「そうなります」
「しかし、戦いはプロとは言えないな。報告を聞く限り、わざわざ"個性"を相澤に教えたんだろ」
「そうだね。ヒーロー戦で"個性"を教えるのはアドバンテージがなくなる」
「死柄木達のデータは不足しているので、引き続き調査します」
確かに私でもできるが……しかし、これはひょっとするとそこまで悪い子じゃないのか? いや、確か私よりも年上とのことだったな。
「それだけかい?」
「蛙吹諏訪子についてです。今回、彼女がまるで襲撃を予想していたかの動きから、確保して尋問してその身体を解明しろと、政府から指令がでたようですが……」
「即刻解除すべきだな」
「そうだろうね」
「ええ、解除されました。命令した者が
「まさに祟り神だな」
「ああ、彼等は毎晩、白い蛇に食い殺される夢をみてうなされているようです。あと、地味に足の小指を角にぶつけたり、よく転んだりするそうですよ。特に植物が多いところでは被害が多いそうです」
自己防衛は完璧か。下手に突いたら藪から蛇がでたってところだろうが……本当に祟られるからたちが悪い。もうここまで
「現状、私達にはどうすることもできないか」
「諏訪子少女はヒーローとして成長していっている。このままいけば、人類平和の良き守り手になるだろう」
「平和の象徴が言うと、説得力があるな」
「まあ、それに彼女が協力してくれれば色々とな問題も解決できるだろうしね。食料問題とか、自然環境とか」
「確かにそうですね」
教え導くのが大切だな。それに兆しは見えている。最後のもう一人の諏訪子君の表情は驚きに満ちていた。まるで身体が勝手に動いたかのように。
その後はまるで子供の成長を喜ぶかのような歓喜の表情になっていた。
つまり、もう一人の諏訪子君はどちらかといえば母親といえなくもない。娘にしか興味のない厳しい母親だろうが。しかし、このことから少なくとも関係は良好であり、彼女を消そうとはしていないことが伺える。しかし、一年後にどうなるかもわからない。二人には頑張ってもらわねばならない。