強気な先輩からパンツを召し上げる話 作:まさきたま(サンキューカッス)
なので不定期ですがちまちま更新致させて頂こうかなと思います。
ああ、こんにちは。良く来てくれた。前回の部活では、君は何だか乗り気では無く見えたのでね、ひょっとしたらすぐに幽霊部員になって、私は1人ぽつんと部室で心理学の本を読む・・・・・・なんて事態が発生する恐怖に震えていたんだ。
が、どうやら杞憂に終わったようだね。いや、感心感心。
では後輩君、お待ちかねの部活の時間と行こうじゃないか。
あー、それとだね? 先日、なんだかその場の空気に飲まれてしまって、だね。私としても新入生に浮かれていてとんでもない事をしてしまったと・・・。
分かるよね? とても恥ずかしい話なんだが、アレを返して貰えないかい?
違う、別に私は君にお金を貸したりはしていないだろう。何故君は私に5千円札を押し付けてくるんだ。違うと言っている、そんなモノを受け取ってしまっては完全に下着を後輩に売り付けた変態女になってしまうじゃないか!
ああ、今は持っていないのか。ふむ、部屋に飾っている?
そうか・・・ならば次の部活の際に返して欲しいのだが、いや待て!
今何と言った? 部屋に飾っているだと? それはどういう了見なんだ。
君としてもそれは非常に外聞が良くない状況だろう! わた、女性のパンツを部屋に飾るなどと、ご家族の方が見たら何とおっしゃるか!
飾る際に正直に全て説明しただと!? 私が、その、なんだ、自分で手渡して来た事を!?
しかもそれで受け入れられたのか!? 私のパンツは、君のご家族の方々に心理的にインテリアとして受容されてしまったのか!?
頭痛がしてきた。君のご家族たちと1度、直にお会いして丁寧に心理分析をさせて貰いたいくらいだ・・・。
その、後生だから返してくれないか?
仮にこの事実を教師に知られると、受験を控える私としては非常に困ったことになるのだ。
そう不満気な顔をしないでくれ給えよ、何かしらで埋め合わせはさせて貰うからさ。
うん、聞き分けの良い後輩を持って私は満足だ。では、改めて、部活を始めるとしよう。
今日の議題は、そうだな。これにしよう。
君は今、3人の悪漢に囲まれ、暴行を加えられた末、金銭を要求されている。
そして、君は実は凄腕のプロボクサーで、その気になれば彼等を即座に路上に転がす事が出来るだろう。
ただ、周りに人集りが出来ており、仮に拳を振るえばボクサーとしては終わってしまう可能性が高い。だが、走って逃げればもしかしたらバレずにすむかもしれない。
要するにだね、君はその場でリスクを考えず殴り返す事を選択する人間なのか? その場でリスクを重視し大人しく彼等に従った後、警察に通報する人間なのか? と言うことだ。
これは心理研究としても重要なテーマさ。
ふむ、そうか。君はそちらを選択したか。ふふ、実に君らしいじゃないか。
この質問にどういう意味が有るんだ? と言う顔をしているね。
結構結構。これはどちらを選んでも人としては正常であり、そしてどちらを選んだかによって君の人生観を丸裸にする質問でも有るのさ。
では、解説と行こうか。
人間は感情の生き物である。
不快だと感じる事柄を避け、快感だと感じる事柄を好む。
殴り返す事を選択した人間は、実は手段と目的を見失わぬ賢い人間だ。何故なら、人が生きていく理由は嬉しい、楽しいと言った正の感情を欲するからであり、自分のやりたい事を優先していくと言うのは、一見短絡的に見えて非常に理にかなっている選択だったりする。嫌な思いをしてまで無難に生き続けても辛いだけだからね。
いやいや、人間は理性の生物である。
一時の感情よりも、将来を見据え、リスクを背負わぬ事を選べる事により発展していった生物なのだ。
じっと堪え警察に通報する事を選択した人間は、理性的で大成するだろう人間だ。何故なら、視点が常に未来を見据え、その先における自分の幸福を追求している。その場の事しか見えぬ人に、常に先手を打ち続ける事が出来るのだ。将来の成功は約束されている。
面白いのはね、この相反する2つの考え方を持つ人は、それぞれお互いを蔑むのさ。
感情に重きを置く人間は、理性を通す置く人間を臆病者だと嘲るだろう。
理性に重きを置く人間は、感情に生きる人間を俗物だと見下すだろう。
どちらを選択しようと、決して間違ってはいないと言うのにね。重視する目的が違うのだから、取る選択は変化して当然なのだよ。
そして、この質問は敢えて2択で解答して貰ったが、正答と言える別の答えも存在する。
考えてみ給え。君がこの状況でとるべき行動の正答とは、一体何だろう? そうだな、ヒントを出すなら、人間なら正答だと知っても、殆どの人が取る事の難しい選択さ。
ふふ、分かったかな? そろそろ答えを言ってしまおうか。
ああ、その通り! 君はやはり、頭が良いな。議論と言うのは君のように明快な人間と行うと実に円滑だ。
さて、答えは先程君の辿り着いた通り。そう、許容だよ。
世界で多くの信者を抱える宗教の教義では、実は大半が許容を推奨しているのさ。
許せるかい? 暴行を受けて、金銭を巻き上げられて。そんな奴等を許せなどと。泣き寝入りでは無いか!
だが、もし許容出来たなら。
貴方は不幸にならず、リスクも犯さず、警察行く等と言った労力を一切使わない。
まさに正答だ。宗教の開祖様は本当に素晴らしい精神で、かつ頭の良い人だと実感したよ。
私もね、流石に殴られたりとかは難しくとも、小さな事は許容するよう心掛けては居るよ。例えばだね、行列で横入りされただとか、同じ清掃班の人にサボられたとか。多少割を食っては居るけれど、それでも笑って許してやると良い。少しずつ許容出来る範囲は広がっていくはずさ。
そしてきっとそれは、後々の人生に響いてくるだろう。君は心理研究会に入部して正解だったろう? 君も日常にほんの一握り、許容を加えると良い。是非試してくれ給え。
ん? 今の話が悪徳新興宗教の勧誘を聞いているみたいだって?
失礼だな君は。私は一円だって君に要求したりはしないし、そもそもこれはキリスト教や仏教等における教義を元にした私の考察だ。新興宗教どころか三大宗教さ。
いや、私は要求していないだろう! あの5千円札は君が強引に押し付けてきたモノだ。言いがかりは止めたまえ。
さて、では・・・そうだな。君はどれくらい許容を出来るか試してみよう。今から君の心理を分析するのさ。ふふ、いやいやそんなに恐がることは無い。
私が君を軽く罵倒してみようと言うだけさ。君は、それを笑って受け流せばよし。出来なければ右手を上げてくれ。その場で私が発言を訂正し謝ろうじゃないか。では、行くぞ。
女性の下着を部屋に飾る
・・・なんで今、微妙に嬉しそうな顔になったんだ君は。なってない? 気のせい? そ、そうか。
いや、ち、違うぞ? 別に私は心理分析にかこつけて、恨み節を君に叩きつけたいだけだなんて、そんなの濡れ衣にも程が有るぞ!
ん? 構わないぞ。分かった、なら私も君と同様に罵倒を受けて見せようでは無いか。ふふ、これでも私は何年も心理研究会に所属して精神を磨いているのだ、ただの心理分析と分かっている罵倒なら、例え君のどんな言葉を聞いても笑って許して見せられるに決まっている。
今だけは何を言っても構わない、先輩だの礼儀だのを一時だけ忘れよう。こんな機会は今後有り得ないぞ? くく、好きにしたまえよ。
ん、なんだい?
・・・懲りないな、君は。もし許せなかったらパンツを返さなくて良いかだと? 駄目だ。返して貰うからな。その手には乗るものか。
私は馬鹿じゃ無い、今日君は1度、パンツを返すと言っただろう。
自信が無いかだと? 馬鹿を言い給えよ。当然、私は何を言われても笑って許す事は出来るさ。だが、1度君はうんと頷いた事に譲歩してやる義理は無いと言うだけだ。
絶対、何としても返して貰うからな、私のパンツ・・・。
な、ななな! 確かに何処で返せとは指定してないが!
わざわざ私の教室に持ってくるとか君は馬鹿なのか!?
下手しなくても停学食らってしまう案件じゃないか! なんだ、君は私を破滅させたいのか!? 部室で渡したまえよ! そんな義理は無い? 君は悪魔か何かなのか!?
そ、そうだ、こう言うのはどうだ。先程の勝負、私が勝てば君はこの部室まで誰にも見つからずパンツを持って来る。その条件で受けてやろうじゃないか。
何? ならば君が勝った際に今日の私のパンツを貰い受ける?
何を馬鹿な事を言っている! 先程君はパンツを返さない事だけをレートに乗せた筈だ!
確かに、私も条件を足したが・・・とは言え、でも。
うぐぐ、なら制限時間だ! 制限時間は5分で、私が全て笑って許せば、私の勝ちと言うことでどうだ。君はコッソリと部室にまで隠して持ってきて、そこでパンツを返したまえ。
よし、うむ。それで良いな? はぁぁ、本当に肝が冷えたよ。とんでもない新入生が入ってきたもんだ・・・。
では始めようか、スタートだ! くくく、どうした驚いて。当然、考える時間なんか与えないぞ? 今、この瞬間から5分だ。
・・・なんか思ったより冷静だな君は。まあ良い、5分だけ私を好きに罵倒したまえよ。
ん? はは、それはセクハラだぞ? まぁ確かに私の胸は大きめでは有るがな、そんな程度で怒りはしないさ。許そうじゃないか。
髪型? ああ、毎日手入れも手間暇かけてキチンとしている自慢の髪だ。と言うかそれは罵倒なのか? 当然許すけれど、むしろ褒められたと感じたぞ。
ふふ、確かに初日は無様を見せたね。だが事実さ、自信満々に勝負を吹っかけ言い負かされたのはね。許そう、私は確かにチョロかった。
・・・それもセクハラだな。君に下着の色を答える義理は無いから黙秘するよ。だが、そんな質問をしたことは許そうでは無いか。
それで終わりかい? どんどん時間は過ぎ去って行くぞ?
ろ、露出狂は違うだろう! 露出狂呼ばわりは許すが、そうさせたのは君だ!
む、確かにこの部活は部員が少ない、と言うか去年先輩が卒業し私1人となった。私は変わり者と思われても仕方ないかもしれんな、許そう。
はっはは、それも良いよ許そう。時間が減ってきて絞り出て来た言葉が馬鹿とか阿呆とかとは、案外君は語彙が少ないな? 何だか君が可愛く思えてきたよ。
さて、もう時間は無いぞ? そろそろ最後かな?
────ん、なんだい。いきなりスマホを見せてきてどうしようと・・・
空が茜色に染まる頃。
今日も校庭には、少しだけ哀愁の漂うメロディーが響き渡る。
「それは、反則では無いのか後輩・・・。」
駅まで1本道となる通学路には、片手でスマホを弄くり、もう片方をポケットに手を突っ込む男子生徒の後ろに、スカートを抑え恥ずかしそうにモゾモゾと歩く女子生徒がぶつくさと文句を言っていた。
「写メを一斉送信していいですか? なんて罵倒では無いだろう。そんなの許せる訳が無いではないか・・・。いや、確かに何を言っても良いとは言ったのは私だが・・・。」
そんな怨嗟の声を我関せずと右から左へ聞き流している彼の弄くるスマホの画面には、自らの手でパンツをまさにずらしている女生徒が映っていた。最近のスマホは音も無くシャッターを切れるのだ。
壁にパンツを額縁に入れ、目立つところに飾っている彼の個室に、今宵また新たなコレクションが加わる事となった。
本日の戦利品。
薄い水色調の簡素なパンツ。触り心地がよく、通気性に優れた先輩愛用の一品。