まずは自己紹介をしたいと思う。
私の名前はぐだ子。
周りからはマスター、とか嬢ちゃんとか呼ばれているがこちらの方が通りがいいのでそう名乗らせてもらう。
さて、早速だが私の話を聞いて欲しい。
私が経験した人理修復の旅に対することでも、個性あふれるサーヴァント達に対する話でもなく、私とともに人理を救ったもう1人のマスターに対する話だ。
それでは早速だが彼との初めての出会いについて語ろうと思う。
身長は165前後と成人男性の平均身長に対して少し低めで、左目を隠す金に染まった長髪と好戦的なつり目をした、黒の生地に所々赤い雲が浮かぶ独特のマントを身につけている彼は、所長の説明会へと向かう私たちの向かい側からゆったりとした足取りで歩いて来た。
つまりはサボりだ。彼は説明会をほったらかして何食わぬ顔で歩いていたのだ。
そのことに少し驚いていた私をよそにマシュは彼へと近づいていった。
「デイダラ兄、何しているんですか?!」
落ち着いた印象を受けるマシュが声を荒げたことにも驚いたが、その内容にも驚いた。
デイダラ兄とはなんぞや。
「なんだマシュじゃねえか。急に叫んでどうしたんだ…うん」
「どうしたもこうしたもありませんよ!!今から説明会だって分かってるんですか!!」
「ああ、あれか。オイラにはじっとしてるなんて性に合わねえからな。部屋でアート作りをすることにした。見てみろよこの洗礼されたラインに、二次元的なデフォルメを追求した造形!まさにアートだ!!うん!」
「バカなんですかデイダラ兄は!!………いや、バカでしたね」
「おい!!それはどう言う意味だマシュ!!いくら寛大なオイラでも堪忍袋が爆発するぞ!うん!!」
「堪忍袋が爆発って………はぁ」
「マシュてめェ!!!」
どんどんヒートアップしていく会話を眺めながらマシュって意外と毒舌だったんだと現実逃避をする。
この時の私の彼に対する印象は、短気で髪を金髪に染めたなんちゃってヤンキー(笑)だった。
暫くして会話(と言う名の口撃)が終わり、冷静さを取り戻したマシュが少し恥ずかしげに謝罪して来たがあれは仕方がないと思う。
少なくともマシュが言ってたことは全て正論だったし
未だに機嫌の悪い彼をマシュが引きずって歩き目的地に辿り着いたのだが、前で立っているオルガマリー所長の機嫌が悪かった。
はじめは遅刻した私のせいかと思ったが、一目散に彼の元に向かったのでそれだけで理解する。
また彼がやらかしたんだと。
「あなたね。いきなり席を立ったと思ったらどこに行ってたのよ!!」
「所長。デイダラ兄はマイルームに戻ろうとしていました」
「はぁぁぁぁぁああああ?!この私の演説を無視して部屋に戻ろうとしたですって!!」
この人も大概苦労しているんだな
「うるせえな。お前のどうでもいい話よりアート作りの方が大切なんだよ…うん」
「あ・な・た・ねえ!!」
「所長落ち着いてください。デイダラ兄の頭がおかしいのはいつものことです」
「マシュ!!お前いい加減爆発するぞ!!」
「はいはい」
マシュの彼への対応が塩対応すぎて少し泣ける。
まあ悪いのは彼だから仕方ないよね。
いい加減説明会を始めて欲しいとざわめきたつ他のマスター候補達をガン無視して言い争う所長と彼だが、だんだんと内容がおかしくなっていく。
「だいたいあなたはいつもそうやって勝手なことばかりするんだから!!」
「やることはやってるだろ!!お前は根を詰めすぎなんだよ!!」
「あなたとは違って立場ってものがあるんだからしょうがないじゃない!!」
「だから少しは手伝うって言ってんだろ!うん!!」
「素人に任せる訳にはいかないのよ!!」
「それで無茶するのは違うだろ!!いい加減お前は正しい評価を受けるべきだ!うん!!」
「正しい評価って何よ!!」
「お前の努力はオイラが認めてやるって言ってんだよ!!うん!!」
「う、うるさいうるさいうるさいうるさい!!あなたの評価なんて要らないわよ!!」
「芸術家たるオイラの評価を要らないだと!!いいから黙って受け取ってろ!!」
「急に優しくすんなバカああああ!!」
お前ら彼氏彼女か!!
何叫びながら照れてんですか所長!!
周りみてくださいよぽかーんってしてますよ!!
あの高圧的な感じはどこ行ったんですか!!
それじゃただの素直になれない女の子じゃないですか!!
「あの2人はだいたいいつもあんな感じですよ、先輩」
マジか!!
これが彼と私の初めての出会いである。
廊下で出会った時と印象が180度変わって、面倒見のいい短気な兄ちゃんになったことをよく覚えている。
まあそれよりもオルガマリー所長の方が印象に残っているのだが、それはまあいいだろう。
あの後爆発に巻き込まれかけた所長を救ったのも彼だった。
彼自身爆発を得意とするためか、爆弾の存在に気付いた彼は全員を助けるのは不可能と判断して彼にとって仲のいい存在、マシュや所長、ロマンとたまたま近くにいた私を助けてくれた。
生き残ってしまったことに思わないことがないとは言えないが、『悪運ってのも才能だ。この程度で死ぬような奴が、この先生き残れるわけもねえしな』非情にもそう切り捨てた彼のセリフに少し救われて、結局人理を救うための旅に出ることを決意した。
以上で話は終わりだ。
それでは次は人理を救った後、つまりは現在について話したいと思う。
あの頃とは違い多くのサーヴァントで溢れかえっているカルデアだが、彼はまるで変わることなくあのよくわからないアート製作を続けている
現に今も食堂の中心で子供サーヴァント相手に自慢げに造詣がどうとかを語っている。
まあ子供達はそれを無視して粘土で遊んでいるが。
「デイダラ!!あなたまた変なもの私の部屋に置いて行ったわね!!」
怒鳴りながら所長が入ってきたが割といつものことなので誰も驚くことはない。
「変なのはねーだろ。まったく、これだから芸術が分からない素人ってのはダメだ、なあマシュ?…うん」
「そうですね。変なのを芸術と呼ぶ人はダメですね」
「まったくだ。…………ん?おいマシュ、今のは少しおかしくなかったか?…うん」
「さて、なんのことだか私には分かりませんね」
「あらら、反抗期か?目を見て会話はするもんだぜ?」
ちなみにマシュの毒舌は磨きがかかり出している。敬語で毒舌は意外と心にくるものがあるが、鋼メンタルな彼は腹立たしいことにまるで動じない。
っていうか大抵は「オイラのアートは時代の先を行くからな。理解に時間がかかるんだよ…うん」と受け流す。
ほんと腹立たしい
「そんなことはどうでもいいのよ!!これ以上私の部屋にあなたの作品を置いていかないでちょうだい!!」
「欲しいって言ったのはお前だろうが!うん!」
「あなたの作品を欲しいとは一言も言ってないわよ!!」
「じゃあ何が欲しいんだよ!!」
「そ、それは……えっと……」
「うん?」
口ごもる所長に周囲がざわめき立つ。
かくいう私もその仲間だ。
恋人みたいな会話をしながらその実付き合っていない2人にいい加減我慢の限界を迎えそうなのだ。
ついに結ばれるか。言っちゃう?あなたが欲しいって言っちゃう?
「あ」
「あ?」
あ?
「あ、」
「あ?」
あ!!
「あ、あなたにいうわけないでしょバカああああああ!!」
「何キレてんだよテメェ!!」
今回もダメだったよ。
「まあ見ていて楽しいんであの2人はあのままの方がいいですね、先輩」
マシュが変な愉悦に目覚めたあああああ
あとがき
やっちゃった感は否めませんし、締りのいいラストではありませんがこれで書きたいものは書けたんで今作は終了とします。あまりダラダラと惰性で書いても面白くありませんからね。
本当ならアルトリアズとの絡みとか全員ヤンデレの逃走劇とか書きたかったんですけど文章にできなかったんで諦めました。
文才なくてすみません。
たくさんの感想、評価ありがとうございました。