愛しき龍神と過ごす日々   作:shin-Ex-

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今回は前回の最後で登場した彼女のことが中心となります

もっとも、それは後半からになりますが

それでは本編どうぞ


食事とは偉大なものである

「よかった・・・・大した怪我じゃなさそうだ」

 

ひとまず門前で倒れていた女性を家の客間に連れてきて、怪我の具合を見る。怪我は全身に見られたが、幸いどれも傷は浅く、大事にはならなさそうだ。なんですぐに手当をしたいところなのだが・・・・・いかんせん全身に怪我が見られるため服を脱がせなければならない。

 

「・・・・・手当のため手当のため手当のため」

 

「咲良、どうした?」

 

暗示をかけるように何度も自分に言い聞かせる俺に、オーフィスは不思議そうに声をかけてくる。

 

「オーフィス・・・・とりあえずこれは治療のためっていうことをわかってほしい。決してやましい気持ちはないから」

 

「わかった」

 

へんに言い訳してると余計にやましいこと考えてるように思われそうだけど、オーフィスはわかってくれた・・・・いや、そもそもやましいってことを理解してるかわからないけれど。爺さん、そのあたりのことはさすがに吹き込んでいないのかもしれない。

 

「それじゃあ・・・・失礼します」

 

俺は女性の服に手をかける。着物なので前の合わせを開くだけ女性の裸体が俺の眼前にさらされる。オーフィスと比べてかなりグラマラスで・・・・・俺も男なので、どうしても豊満な胸に視線が釘づけになってしまう。

 

「・・・・・」

 

「いって!?」

 

突然、俺の太ももに激痛が走る。見ると、オーフィスが俺の太ももを抓っていた。

 

「咲良・・・・やましい気持ちはないって言ってた」

 

「あ、ああ。ごめん」

 

なんかドス黒いオーラをまとったオーフィスが促してきた。無表情な分、怖さが余計に引き立っている。そっち方面の知識あったんだな・・・・というか無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)に抓られるってヤバくないか?下手すりゃ肉が抉れてたんじゃ・・・・オーフィスが爺さんに細かい力加減を教わってたおかげで助かった。帰ってきた時の説教のレベルを少し落としてやろう。

 

「・・・・・おっぱいが見たいなら我のを見ればいい。だから今は手当に集中」

 

「ごめんオーフィス。集中したいんだけど今聞き捨てならないこと言ったよね?」

 

なんかすんごい爆弾発言してるんですけど。

 

「・・・・確かに我のおっぱい小さい。けど、大きいのがいいなら咲良が揉めばいい。そうすれば大きくなるって伊槻に教わった」

 

よし、やっぱり説教のレベルを落とすのはやめよう。むしろ上げちまおう。まったく変なこと吹き込みやがって・・・・・・少しだけ感謝しなくもないけど。

 

って、そんなことよりも今は手当だ。

 

「オーフィス、手伝ってもらうけどいいか?」

 

「うん」

 

かなり余所事で逸れてしまったが、ようやく女性の手当を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、ひとまず終了」

 

しばらくして、女性の手当が終わった。今は客間に敷いた布団で眠らせている。ちなみに、着ていた着物も傷んでいたので今は俺の学校のジャージを着せている(オーフィスが着せてくれた)。

 

「にしてもこのひと・・・・一体何者なんだろう?」

 

猫耳と猫尻尾を生やしていることから、おそらく猫又に分類される種族なのだろう。問題は、彼女がどうしてうちの前で傷ついて倒れていたのかだ。

 

怪我をしてるということはそれなりに厄介な目に合っているというのは想像できるが・・・・詳しい事情までは本人に聞かなければわかりようがない。となると、目が覚めるまで待っていなければ考えても仕方がないし・・・・・よし、ここは・・・・

 

「オーフィス、俺は夕食を作るからこのひとのこと見ててもらっていいか?」

 

「うん。我、見てる」

 

「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ」

 

俺は女性のことをオーフィスに任せて、夕食の準備をしに台所に向かう。彼女の分も含めてだから3人分か・・・・・和服着てたし、とりあえず和食でいいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、できた」

 

調理を開始して1時間ほどして、料理は完成した。肉じゃがとほうれん草のお浸し、卵焼き、焼きサンマ、味噌汁がオカズでいつもよりも多めに炊いた白米。とりあえずこれで十分かな?

 

「さて、彼女は目を覚ましたかな・・・・・・」

 

料理と皿を机に並べ、彼女が目を覚ましたかどうか確認しに行く。できれば暖かいままで食べて欲しいから目を覚ましてくれてるといいんだが・・・・・

 

「オーフィス、彼女の様子はどう?」

 

「まだ目を覚まさない」

 

客間に入って彼女の様子をオーフィスに聞くが、どうやらまだ目を覚まさないらしい。困ったな・・・・でも仕方がない。彼女を見ていてくれたオーフィスに冷めたご飯を食べさせたくはない。

 

「彼女のことは俺が見てるから、オーフィスは先にご飯食べてきな」

 

「・・・・いい」

 

「え?」

 

女性の眠る布団のすぐ傍に腰掛けながらオーフィスに促すが、オーフィスは拒否した。

 

「咲良が見てるなら我も見てる。ご飯、一緒に食べたほうが美味しい」

 

「そっか・・・・うん。そうだよな」

 

確かに一人で食べるご飯は覚めたご飯よりも味気ない。彼女が目を覚ました時に、一緒にご飯を食べよう・・・・・食べてくれるかはひとまず置いておくとしよう。

 

「ん・・・・にゃ」

 

「お、どうやらそこまで待ってる必要はなさそうだな」

 

布団で眠る女性の口から声が漏れ、同時にゆっくりと目を開き始めた。どうやら意識が戻ったようだ。

 

「おはよう。体はどう?痛いところあるか?」

 

「ッ!?」

 

目を覚ました女性に容態を尋ねると、ビクリと大きく体を震わる。急に話しかけられて驚いてしまったのかと思っていると・・・・

 

「おろ?」

 

彼女に引き寄せられ、布団に組み敷かれてしまった。

 

「何者だにゃ!私をどうするつもりにゃん!」

 

彼女はすごい剣幕で激しく詰め寄ってくる。予想はしていたが、この様子からして相当に厄介な目にあっているらしい・・・・これはマズイな。

 

「落ち着いて。危害を加えるつもりはないからとりあえず放してくれ」

 

「そんなこと信じられないにゃ!」

 

「急に知らない人間が目の前にいれば警戒するのはわかるよ。けど、俺の身はともかくとしてこのままじゃ君が危険だ。見てみ?」

 

女性は俺が指差す方向に視線を向ける。そこには、怒気をまとったオーフィスが、こちらに向かって手をかざしていた。

 

「脅してるみたいだからこんなこと言いたくないんだが・・・・・もしも俺に怪我でも負わせようものなら消されるぞ?あの子にはそれだけの力がある」

 

「そ、そんなことしたらあんたまで巻き込まれて・・・・」

 

「・・・力の加減はできる。咲良を傷つけずに消せる」

 

オーフィスがすっごい物騒なこと言ってる。まあ、言い始めたのは俺だけどさ。ただまあ、オーフィスのおかげで身の安全は保証されているとは言え・・・・さすがに目の前で誰かが消されるのを見たくはない。放してもらえるといいんだが・・・・

 

「・・・・・」

 

俺とオーフィスに言ってることを信じたのか、女性は俺から離れてくれた。これで一安心だ。

 

「オーフィス、もう手を下ろしていいよ」

 

「・・・・いいの?」

 

「ああ。脅してたんじゃちゃんと話できないだろ?」

 

「わかった」

 

俺の言うことを素直に聞いて、手を下ろしたオーフィス。これで落ち着いて話ができるな。さて、何から話したものか・・・・

 

「・・・・聞いてもいいかにゃん?」

 

俺がどう話を切り出そうかと悩んでいると、向こうから声をかけてくれた。

 

「ん?なんだ?」

 

「怪我・・・・手当されてるけどあんたがやったのかにゃん?」

 

「そうだけど・・・・・もしかしてうまくいってなかった?どこか痛むか?」

 

「そんなことはないにゃ。ただ・・・・どうして手当をしてくれたにゃん?」

 

どうやら、どうして手当をしてくれたのか気になってるようだ。まあ、向こうからしたら俺は他人。手当される理由などありはしないからもっともな疑問だ

 

「んー・・・・別に大した理由はない。だって、自分の家の前で傷だらけの女性が倒れてたんだぞ?手当してあげなきゃって思うのは特別おかしなことじゃないだろ」

 

「・・・・お人好しにゃ」

 

「お人好し結構。あそこで放置して罪悪感に苛まれるよりずっとマシだね。何があってもオーフィスがいるから大丈夫だって確信してたし」

 

「我、咲良守る」

 

世界最強の無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)が傍にいてくれるのだ。大抵のことでは物怖じしないし大事にもいたらないだろうと思っている。まあ、男としてはこの考えは非常に、泣きたくなるほど情けないのだが・・・・

 

「なんで泣いてるにゃん?」

 

「あ、ごめん。女の子に頼っちゃう自分の情けなさについ・・・・・それはそうと、君お腹空いてない?」

 

「そ、それは・・・・・その・・・」

 

俺が尋ねると、女性は小声でそう言った後にふいっとそっぽを向く。まだ警戒心を解いていないから素直に答えたくないといった様子だ。

 

でも、お腹は空いてるっぽいし・・・・・よし、話を聞く前に先にご飯だな。

 

「詳しい話をする前にご飯にしよう。君の分も作ってあるし。ほら、いこう」

 

「え?ちょ・・・・・」

 

戸惑う彼女に構わず、手を引っ張って食事の準備をしてある居間に向かう。ちなみに、彼女を引っ張る手とは逆の手をオーフィスが掴んでるのだが・・・・まあ、愛嬌ってことで気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

料理の置いてある机の前に彼女を座らせる。だが、彼女は料理に手をつけようとはしなかった。

 

「遠慮せずに食べていいんだよ。その為に作ったんだから」

 

「咲良の料理美味しい。食べなきゃ損する」

 

俺とオーフィスの二人で食べるように勧めているが、それでも手をつけてくれない。どうしても警戒してしまっているようだ。

 

こうなったら・・・・人情に訴えてみるか。

 

「食べてくれないのかー。困ったなー。お客さんに食べてもらわないと俺としてもご飯食べづらいもんなー。このままじゃ今日夕食抜きかー。マジかー。辛いわー」

 

「辛いわー」

 

多少どころか、わざとらしく煽ってみる、オーフィスも察してくれたのか、乗っかってくれている。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「うっ・・・・」

 

そして畳み掛けるように無言で見つめる作戦。少しバツが悪そうな表情をしていることから、効いてはいるようだ。

 

「わ、わかったにゃ・・・・食べるにゃん」

 

とうとう根負けしたのか、女性ははしを手にしてくれた。やったぜと言わんばかりに、俺とオーフィスはサムズアップし合った。

 

女性は恐る恐るとサンマにはしを入れ、一口口に含む。

 

「・・・・美味しい」

 

一言そう呟いた後、彼女はほかのおかずにも手をつけはじめる。恐る恐るだったはしの動きは、少しづつ早くなっていった。

 

「こんなにおいしい料理・・・・初めて食べたにゃん」

 

「当然。咲良の料理は世界一」

 

「世界一の料理・・・!」

 

彼女が食べ始めたので、自身もご飯を食べながら、俺の料理のことを誇らしげに褒めてくれるオーフィス。ただ、そう言ってくれるのは嬉しいけどさすがに世界一は言いすぎだ。なんか彼女も納得したような表情してるけど違うからね?

 

けどまあ、ともかくちゃんと食べてくれてよかった。なにせご飯の力は偉大だからな。その証拠に・・・・彼女の笑顔をようやく見ることができた。

 

さて、俺も食べるとしよう。このままじゃ俺の分まで二人に食べられかねないからな。




彼女が誰なのかは原作愛読者なら当然わかるでしょう。私も原作の中で結構好きなキャラです

そして今回もオーフィス可愛い

では、次回もまたお楽しみに!







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