愛しき龍神と過ごす日々   作:shin-Ex-

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はい、今回はある人物二人を咲良さんが拾います

誰なのかは本編にてご確認を

それではどうぞ


普通に考えたら『うちにご飯食べにこない?』ってナンパじゃね?

爺さんいわく、俺は人一倍お人好しな人間らしい。困ってる人がいたら手を差し伸べずにはいられない、自分の出来ることで助けずにはいられないそんなある種どうしようもないレベルのお人好しだそうだ。

 

正直自分ではそんなことはないと思っている。別に誰彼構わず助けたいと思っているわけではないし、平凡な自分なんかで助けられるひとなんてそんなにいないと思っている。強いて言うなら・・・・・そう、ただ自分の納得のいくようにしたいだけの自分勝手なエゴイスト・・・・・であると思う。

 

故に俺は決してお人好しではない。つまり・・・・・

 

「迷える子羊にお恵みを・・・・」

 

「どうか天の父に変わって哀れな私達に慈悲をぉぉぉ・・・・」

 

・・・・つまり、目の前にいる白ローブを着込んだなんとも哀れな二人組の女性を助けたいと思ってしまったのは俺のエゴであり、お人好しではない。断じて違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に・・・・・本当にありがとうございます!」

 

「助かった・・・・君はまさに天が私達に送ってくれた御使いだ」

 

「うん、感謝の言葉は受け取るけどちょっと大げさだよ?」

 

俺は現在、白ローブの二人の女性・・・・・ゼノヴィアとイリナを連れながら家に向かっている。

 

学校帰りに涙目になって募金活動をしていた二人を見つけた俺は、初めはとりあえず少しだけでも募金しようと思っていたのだが・・・・・なんかそのうち二人が言い争いを始めて、話の流れから金を募っていた理由が空腹だとわかったので『だったらほんの少しのお金を募金するよりもうちでご飯食べさせたほうがよくね?』と自分の中で結論づけて二人に声をかけたら・・・・・是非お願いしますと即答され、現在に至るというわけだ。

 

「というか二人共、そんなに困ってたの?」

 

「ああ。なにせ完全に路銀が尽きてしまってな。全く・・・・イリナが詐欺まがいな変な絵画を購入するからだ」

 

「変な絵画じゃないもん!これはペドロ様の肖像画だもん!」

 

「断じてペドロ様はこんなのではない」

 

「そんなことない!ペドロ様はきっとこんなのよ!」

 

イリナ、仮にも様付けしてる相手をこんなの言うなよ。

 

「二人共、言い争いなんてすると余計にお腹空くからやめたほうがいいと思うんだけど」

 

「「・・・・・はい」」

 

俺の言葉を受け、二人はすぐさまおとなしくなる。かわいそうなほど空腹なのだということがよくわかる。

 

「すまない。本当になんとお礼を言えばいいか・・・・」

 

「主よ。心優しい少年にご慈悲を」

 

イリナが俺に向かって十字を切ってくる。

 

主のご慈悲、ね・・・・・

 

「イリナの言う主っていうのは聖書に記されている神様かな?」

 

「そうよ!全知全能にして慈悲深い神様よ!」

 

「私たちにとっては絶対の信仰対象だ。主のために、私達は生きているといっても過言ではない」

 

「へぇ・・・・うん、そっか」

 

二人共、信仰深い信徒のようだな・・・・・だからこそ余計に哀れに感じてしまう。だって彼女達の信仰する神はもう・・・・まあ、それを俺の口から告げるのは酷すぎるか。

 

「俺の家すぐそこだからもうちょっとだけ我慢してくれ。着いたらお腹いっぱいご馳走するよ」

 

「「本当にありがとうございます」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「到着。ここが俺の家だよ」

 

彼女達を連れて10分ほどして、我が家の門前についた。

 

「随分と古いおうちなのね」

 

「イリナ、失礼だぞ」

 

「別に構わないよ。周りの家に比べて古いってのは確かだからさ」

 

爺さん築何年だったっけか・・・・・確か5、60年だったかな?まあ、爺さんが魔法やらなんやらで強度上げてるみたいだけど。

 

「さて、これからうちに上がってもらうわけだけど・・・・一つ、守ってもらいたいルールがある」

 

「守ってもらいたいルール?」

 

「ああ。揉め事、荒事は原則禁止・・・・それがうちでのルールだ。これは必ず守ってもらう」

 

「え?言われなくてもそんなつもりはないけど・・・・」

 

「恩人の家で荒事なんて起こさないさ」

 

と、イリナとゼノヴィアは言うけど・・・・そうなる可能性が拭いきれない理由があるんだよなぁ。大丈夫であって欲しいが、二人が熱心な信者だとしたらそうもいかないかもしれない。なんか言い争いしてた時『エクスカリバー』とかいう不穏な単語が聞こえてきたし・・・・教会の戦士である可能性がある。

 

「ともかく、ルールは守ってもらうよ。守れなかったらそれなりのペナルティがあると思ってくれ」

 

「ペナルティ?それってどんな?」

 

「まあ、相応のとだけ言っておくよ。さあ、上がってくれ」

 

俺は二人の入居を許可する。家を守る結界は俺の許可を経て、二人の来訪が可能となった。

 

「おかえり咲良」

 

門をくぐり、玄関を開けるとすぐさまオーフィスが俺に抱きついてくる。結婚の約束をして以来、この出迎えはすっかりと定番となっていた。

 

「うん、ただいま」

 

「・・・・その二人は?」

 

オーフィスはゼノヴィアとイリナの方を見ながら言う。

 

「あの二人は・・・・まあお客さんだよ。お腹すいてるみたいだからご飯作ってあげようと思ってね」

 

「・・・・そう。ならいい」

 

ならいいって・・・・前の桐生のことといいもしかして、浮気の心配をされているのだろうか?まあ、婚約者としてそういう心配されてるってある意味では嬉しいから構わないけど。

 

「とりあえず、二人に自己紹介しな」

 

「わかった。我は・・・・」

 

「咲良おかえりー。お腹すいちゃったからご飯早めにお願いするにゃん」

 

オーフィスが自己紹介しようとした時、黒歌が現れご飯を早く作って欲しいとせがんできた。

 

「ッ!?イリナ!」

 

「ええ!」

 

黒歌の姿を捉えた瞬間・・・・ゼノヴィアとイリナは各々剣を取り出し、戦闘態勢に入る。

 

うん・・・・まあ正直こうなるかなぁとは予想はしていた。だって黒歌は悪魔でゼノヴィアとイリナは教会の戦士なんだもん。確証はなかったけど、剣出したってことはもう間違いないだろう。

 

「まさかこんなところに悪魔がいるとはな・・・・覚悟しろ!」

 

「私達のエクスカリバーで裁きを与えてあげるわ!」

 

ああ、もう・・・・二人共黒歌に敵意向けてるし。問答無用とか勘弁してくれよ。連れてきたの俺だけど。

 

「えっと・・・・咲良?これどういうことかにゃ?」

 

「ごめん黒歌、事情は後で説明する。とりあえず二人共剣を納めてくれ」

 

俺は剣を構える二人の前に立ち、剣を納めるように言う。

 

「悪魔を目の前にして剣を納めるなど無理な話だ。ただの自殺行為でしかない」

 

「待ってて湊内咲良くん。私達があなたを騙していた悪魔を倒してあげるから」

 

うわぁ・・・・・剣収める気全然ないよこの子達。イリナに至ってはなんか俺が黒歌に騙されてるとか思ってるし。一体黒歌のことどう思ってるんだろう?いや、そんなことはどうでもいい。早く二人を止めないと大変なことに・・・・

 

「・・・・倒す?黒歌を?そんなの我、許さない」

 

「「ッ!?」」

 

ほらね・・・・オーフィスが二人に殺気ぶつけちゃってるよ。ゼノヴィアもイリナもなんかすっごい萎縮しちゃってるよ。そりゃ当然だ。だって相手は最強の龍神様であるオーフィスなんだからビビらないはずない。

 

とにかく取り返しがつかなくなる前に止めないと・・・・

 

「はいはい、ストップだオーフィス。殺気を鎮めな」

 

「でも、この二人黒歌を・・・・・」

 

「わかってる。だからそうならないように二人のことは俺が説得するから。だから一旦殺気鎮めよう?」

 

「・・・・・わかった」

 

オーフィスは俺に任せてくれた、殺気を鎮めた。あとはゼノヴィアとイリナだな。

 

「ゼノヴィアとイリナも剣を収めてくれ。家に上がる前に言ったよな?うちでは荒事は禁止だって」

 

「だ、だが・・・・」

 

「目の前に悪魔が・・・・」

 

「ルール破るって言うならご飯食べさせないぞ?」

 

「イリナ、剣を納めろ。私達には悪魔と戦うこと以上に大事なことがある」

 

「そうね。今は空腹を満たすことが先決だわ」

 

ご飯を食べさせないというと、二人は即刻剣を鞘に納めた。うん、まあどうにかなるかなぁとは確かに思ったけど・・・・・チョロすぎじゃない?

 

「ゼノヴィア、イリナ。もうこの家にいる間は剣を抜いたりはしないでくれよ?教会が悪魔のことをどう思っているかは多少は理解しているけど、黒歌は人様に迷惑をかけてるわけでも悪事を働いてるわけでもないんだ。だから、一方的に敵意を向けるのはやめてくれ。頼む」

 

俺はゼノヴィアとイリナに頭を下げて頼み込む。

 

はっきり言ってしまえば、この二人がその気になったとしても黒歌が倒されるということはないだろう。オーフィスがいるからっていうのはもちろんだが、おそらくオーフィスが手を出すまでもなく二人では黒歌には敵わない。黒歌は結構な実力者みたいだからな。

 

だが、だからといって黒歌に敵意が向けられるというのは俺としては気分のいいものではないからな・・・頭ぐらいいくらでも下げる。

 

「・・・・恩人にそう言われてしまってはな」

 

「恩人の言葉を無視するのは流石に失礼よね」

 

「ありがとう」

 

どうやら二人共わかってくれたようだ。とりあえずはこれで大丈夫そうだな。

 

さて・・・・次は黒歌に謝らないと。

 

「ごめんな黒歌。この二人が悪魔と敵対してる教会の人間だっていうのはわかってたんだけど・・・・だいぶお腹空かせてて困ってるみたいだったからさ。放っておけなくて連れてきちまった」

 

「別に謝る必要はないにゃ。咲良がそういう人間だからこそ厄介な事情を抱えてる私もこの家においてくれてるってことはわかってるし。だから私は気にしないにゃ」

 

「黒歌・・・・・ありがとう」

 

「お礼を言う必要もないにゃん♪」

 

ほんっと、普段は飄々としてるけど黒歌っていい奴だよな。

 

「あ、それはそれとして今日は鰈の煮付けが食べたいんだけど」

 

「ははっ。了解」

 

まあ、ちゃっかりしてもいるけど・・・・それはそれで黒歌のいいところか。

 

あとは・・・・

 

「オーフィスもゴメンな」

 

「なんで咲良謝る?」

 

「いや、事前に何の説明もせずに二人のこと連れてきちゃってこんなことになっちゃったからさ」

 

「・・・・別にいい。咲良の決めたことなら我文句言わない」

 

「そか・・・・サンキュ」

 

「ん」

 

オーフィスの頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。

 

「えっと・・・・ちょっといい?」

 

恐る恐ると、イリナが声をかけてきた。ゼノヴィアもなんか神妙な面持ちだ。

 

「ん?なんだイリナ?」

 

「その・・・・湊内くん、その子のことオーフィスって呼んでるけどもしかして・・・・」

 

・・・・ああ、なるほど。そういうことか。

 

「イリナが思ってるとおりだよ。コイツはオーフィス・・・・あの無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)のオーフィスだ」

 

「・・・・・うそ」

 

「まさか・・・・そんな」

 

よもやこんなところに世界最強の龍神たるオーフィスがいるとは思っていなかったのか、二人は呆然としていた。

 

「咲良。もっと撫でて」

 

「はいはい」

 

そんな二人などお構いなしといったように、いつも通りなオーフィス。うん、やっぱり俺の婚約者可愛いわ。

 

 




というわけで咲良が拾ってきたのはゼノヴィアさんとイリナさんでした

咲良さんの交友関係を考えるともはやそれぐらいことは普通のことのように感じてしまう

だって、ほかと比べると・・・・教会の戦士ぐらい・・・ね?

そして黒歌さんを守ろうとするオーフィスちゃん可愛い

それでは次回もまたお楽しみに!

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