銀時「ちっかいなぁ・・・」
穂乃果「前回のと次回の予約投稿してから銀ちゃんの誕生日に気がついたんだよね?」
うん。
今回最速で出来上がったんだけど。
なんか書きたかった話で捗った。
銀時「オムライスの過去話?」
そうなのー!
てかその話書いたら果てしなく長くなったんだけど。需要ある?これ。
独立した方がいい意見あったらどうしよう。
穂乃果「でも割と大丈夫じゃないかな!」
もう、終り際が迷子だった・・・。
本当、終わってよかったぁ。
穂乃果「そんなに?」
じゃあ始めよう。
銀時「よし来た」
穂乃果「うん!」
銀時・穂乃果「「ラブ魂!始まります!」」
商店街を歩きながら話を弾ませていた神楽と新八は、穂乃果の言葉に首を傾げた。
神楽「誕生日会の準備、銀ちゃんに内緒で進めないアルカ?」
穂乃果「うん」
新八「何でですか?今までの誕生祭回の時は基本的にサプライズだったじゃないですか」
そうなんだけどね、と苦笑いをしながら穂乃果は言った。
穂乃果「私達がまだ子供の頃の話なんだけど、その時は本人も誕生日を祝う準備をしようって形だったんだよね、ホントは」
新八「だから敢えてオープンに?」
穂乃果「うん。流石に準備は今回私達だけでやるけどね」
それも理由の一つではあるけれど、本当は自分の誕生日をサプライズされるのに慣れていない銀時が、予め穂乃果にサプライズは辞めてと進言したとは、流石に神楽と新八には言えなかった。
更に盛大にやるのも性にあわないから、祝われるのなら万事屋でささやかな感じがいいとも言っていた。これは流石に万事屋で祝う理由として、神楽と新八には言っといた。祝われる立場で注文の多い男である。
穂乃果「一応毎年祝ってたんだけどね。未だに慣れないみたいで」
新八「祝われるのがですか」
穂乃果「うん、そうなの」
新八「まぁ、らしいですけどね」
神楽「らしいアルナ」
定春「わん!」
じゃあと神楽が呟き、聞いてきた。
神楽「海未とかは来ないアルカ?」
穂乃果「ううん。海未ちゃんとことりちゃんとお妙ちゃんと空ちゃんは最初っから万事屋で一緒に祝うことになってるよ。他の──絵里ちゃんとかは時間が合えば来てねって形にしたんだ」
新八「まぁちゃんと来るとは思いますけどね」
穂乃果「そうだね」
十中八九、(銀時などは認めたがらないが、ある程度忙しいらしい)真選組以外は来てくれるのではないかと、穂乃果は思っている。
新八「ところで随分と卵を買いますね?」
穂乃果「銀ちゃんの誕生日に備えて、オムライスを練習しようかなって思って。前の私の誕生日の時に作ってくれたのって、銀ちゃんでしょ?」
あれで意外と照れ屋なところがある銀時は、絶対に穂乃果に向かってオムライスは自分が作ったとは言わなかったし、(露骨な程邪魔を重ねて)周りにも言わせなかったが、穂乃果には一口食べただけでも分かった。
あのオムライスは穂乃果にとってとても思い出の詰まった特別なものだった。もちろん、(本人は認めたがらないが)銀時にとっても。
そんなふわとろなオムライスを、穂乃果が間違うわけがなかった。
新八「分かるんですか?」
穂乃果「分かるよ。それにちょっと変わってたでしょ?あのオムライス」
新八「そうですね・・・流石に器用すぎて少し引きました」
穂乃果「そんなに?」
穂乃果曰くのちょっと変わってるオムライス。
それは、デミグラスソースを掛けた上に生クリームを少し薄く掛けて、その生クリームで絵を描いていたのだ。因みに、穂乃果の誕生日の時のオムライスの絵は、定春だった。しかもかなり上手かった。
穂乃果「一応ね。難しいけど出来なくはないんだ。ほら、ラテアートとかあるでしょ?あれみたいな感じ」
新八「ああ・・・」
神楽「ラテ?何アルカ、それ」
穂乃果「カフェ・ラテとかの上にミルクで絵を描くのを、ラテアートって言うんだよ」
神楽「凄いアルナ!それ、どうやるアルカ?」
その言葉と神楽の輝かしい目線に、穂乃果は暫し難しい顔で考えて、記憶の奥底を探る。
そして思い出したのか、パッと輝かしい表情を浮かべて神楽に嬉々として聞かせた。
穂乃果「確かラテアートには「フリーポア」と「エッチング」って二つの方法があってね。フリーポアは、ミルクピッチャーっていう道具を使って、ミルクを注ぎながら絵を描く方法なの。エッチングはミルクピッチャーで注いだ後に楊枝とかカクテルピンとか、先が尖った物で絵を描く方法だよ。こっちの方が細かい絵が描けるね。文字も書けるし」
新八「随分と詳しいんですね・・・穂乃果さん」
穂乃果「一時期ハマってて、凝ってたんだよね」
その時期はいちいちカフェ・ラテやコーヒーを入れる度にラテアートにチャレンジをし、自分は飲めないからと飲める人達に押し付けていたのも、いい思い出である。穂乃果的に。
穂乃果「まぁラテアートよりも重大なことがあるんだよねぇ」
新八「まぁ脱線してましたしね」
神楽「話が進まなすぎてきっと皆ビックリしてるアルヨ」
そんな事よりも穂乃果にとっては重大なことがあった。
それこそが、これからオムライスを作る練習するという理由に繋がった。
穂乃果「銀ちゃん、オムライスはかなり上手くて、私じゃ銀ちゃん以上の出来になんないのが、困ってるんだよねぇ」
新八「・・・え?」
*
穂乃果「という訳で、是非とも園田家と志村家の今夜の晩御飯は穂乃果特製オムライスに!」
海未「はぁ・・・別に構いませんけど」
新八「って、うちもですか。別にいいですけど」
海未「それにしてもオムライスですか・・・。穂乃果の好物だってのは聞いてましたけど、銀さんもだとは思いませんでした」
穂乃果「オムライスは私達の中で誕生日の料理と言えばこれって奴だからね」
ここは園田家だ。
その台所に穂乃果は食材を置いた。
穂乃果「昔、私が銀ちゃん達と出会った時より少しだけ皆に慣れてきた頃の事なんだけど、あの頃はオムライス症候群というかオムライス欠乏症というか・・・兎に角オムライスが食べたかったんだよね。それで食べれるようになったらなったで毎日のように催促してたから、銀ちゃんのオムライススキルが爆上がりで」
空「オムライススキル」
海未「なんですか、それ。初めて聞きましたよ」
神楽「基本的には料理上手な穂乃果も、オムライスにおいては銀ちゃんの方が上手らしいアル」
ことり「でも確かに美味しそうだったよね〜。食べたかったくらい」
ことりの言葉に海未は確かに、と頷いた。
その脳裏に蘇っているのは、美味しいというのが疑いようのないようないい匂い、綺麗に包まれた卵を包丁でそっと切り、ふわっとろ状態の卵をご飯の上に広げ、その上から特製らしきデミグラスソースを掛けたあったかふわとろオムライスだ。最後の仕上げに描かれた定春も見ていて楽しかったものである。
ことり「見てるだけで幸せだったけど、正直食べたかった」
空「わたしは食べたよ?」
海未「え、そうなんですか!?」
神楽「私も食べたアル」
新八「実は僕も。穂乃果さんの誕生日準備の時に」
空だけではなく、神楽と新八も食べさせてもらったことあると聞いて海未とことりははっとした。
海未・ことり(ち、小さい子贔屓と身内贔屓だ、これっ・・・!!)
あまり知られてはいないが、穂乃果の影響で小さい子、引いては身内にはとことん甘い男であるのだ。
きっと海未達が頼んだところで、適当な理由をつけて断るだろう。恐らく本心的には面倒なのが理由で。
空「すっごい絶品だったよね!」
神楽「本当にあのマダオが作ったものとは思えなかったアル」
新八「人間、特技の一つや二つはやっぱりあるもんだよね」
そこまで凄いのかともっと詳しく聞きたい気持ちが湧くが、しかし今ここで食べれない故にとても苦々しい思いも同時に沸いたので、海未とことりは早速オムライス作りを始めた穂乃果の手際を眺めることにした。
*
穂乃果はいつも、オムライスを作る時は自分の為に苦労に苦労を重ねて何とか美味しいものを作ろうとしていた銀時達の背中が思い浮かぶ。
松陽を中心に銀時と高杉、そして遊びに来ていた桂があーでもない、こーでもないと試行錯誤して作り上げた最初のオムライスは、今銀時が作れるオムライスとは程遠い出来で、穂乃果はあまりの酷さに大泣きした覚えがあった。
当時、銀時達と出会ったばかりの穂乃果は今と違って人見知りが酷く、泣いてばかりの子供だった。特に大人相手には酷く、兎に角松陽以外の大きい人は大の苦手だったのだ。
何処に行くにも松陽の後ろに隠れ、松陽がいなければぐずりながら探し、一緒に住んでろうが住んでなかろうが銀時達には絶対に近づかなかった。
その代わり松陽が居れば特にぐすりもせず、我儘も言わない、その年頃にしてはかなりいい子ではあったのだが。
銀時に話を聞けば、その割には遠くで気になるのかすっごく見てきたから、少し困っていたと言っていた。
あの頃は何を考えていたのか。覚えている出来事ではあるのだが、その心情は幼すぎて今の穂乃果は全く覚えていない。
穂乃果が銀時達に慣れるまで一年はかかった。その頃には既に銀時にべったり・・・という訳ではなく、寧ろ高杉にべったりだったもんだ。その次ぐらいに桂にべったりだ。
当時の穂乃果にとって、銀時は近寄り難い子供だった。
表情筋が死んでいるとまではいかないけれど、それでも周りの自分を見ると表情を緩める人達ばかりが居た中では、少し困ったような顔をする銀時は、やはり穂乃果にとっては理解し難い【お兄ちゃん】だったのだ。
その認識が変わり、銀時大好きと全身で表すようになった第一のきっかけは、やはりオムライスだったのだろう。
*
穂乃果(幼)「オムライス・・・オムライスが足りないの・・・」
高杉(幼)「あ?オムライス?」
穂乃果(幼)「オムライスが食べたい!!」
やっと人見知りがある程度マシになり、松陽から離れても平気になって来た頃の事。丁度松陽の元で暮らすようになって一年半ぐらいである。
そんな穂乃果を外に連れ出してやろうと言う想いから、高杉と桂、そして(半ば連行された形で着いて来た)銀時は、すっかり行くのが日課になっている公園へと来ていた。尚、今ではもう銀時は自主的に着いてくるようになった。
それは丁度昼ご飯時の時間帯だった。
腹時計がそれはそれは正確な穂乃果は、お腹がすいたとお腹を鳴らしながら、唐突にオムライスが食べたいと主張を始めたのだ。
銀時(幼)「・・・オムライスを買えってか?」
穂乃果(幼)「銀ちゃん・・・違うの、穂乃果が食べたいのは・・・ふわっとろな、手作りオムライスなの!」
これには三人揃って首を傾げた。
今までオムライスが食べたいと主張をしても、そこにふわっとろなんて付いたことがなかったからだ。
桂(幼)「どうしたんだ、穂乃果。急に」
穂乃果(幼)「こーくん・・・あのね、ふわっとろなオムライスは穂乃果のママがよく作ってくれたの」
桂(幼)「マ・・・マ?」
穂乃果(幼)「うん。だからね、穂乃果、ふわっとろなオムライス食べたいの!」
どこからか雷が鳴り響くような音が聞こえた。
銀時と高杉と桂が固まってるのに気づかず、穂乃果はひたすらにねぇ?いいでしょ?という瞳でこちらを見やる。
この純心無垢な瞳に対して、ハイかイエス以外の選択肢など、銀時達の中にはなかった。
松陽「え、ふわっとろなオムライスですか?」
銀時(幼)「一応、材料は一通り買ってきたんだけど・・・」
桂(幼)「先生、作れますか?」
松陽「いえ、作ったことありません」
だよなーという顔で銀時達は松陽を見やった。
松陽は中性的で穏やかな見た目とは裏腹に、その手料理は大雑把である。所謂男飯だ。最初っから期待なんかしていなかった。
高杉(幼)「作れるような知り合い、います?」
松陽「そうですね。・・・この近くにはいないかと」
銀時(幼)「じゃあやっぱり・・・」
松陽「ええ・・・。自分達で作りましょう!」
諦めるなんて選択肢は、松陽の中にもなかった。
松陽「やはりあの年頃の子には母親は必要。恋しくなるのも当然ですからね。その分、私達が頑張らねば」
銀時(幼)「ああ・・・うん・・・そうだな」
そうして始めたオムライスは、オムライス初心者しかいない中でのスタートだった。
銀時(幼)「こんなもんか」
高杉(幼)「あんま詳しく知らねーけど、玉ねぎ大振りすぎじゃね?もっと細かくしろよ」
桂(幼)「これでよかろう」
銀時(幼)「おまっ!ご飯焦げすぎだろ!お焦げで済ませる領域じゃねぇ!」
松陽「あれ?」
桂(幼)「先生!火が強すぎです!卵はとろっとしなきゃいけないんですよ!」
本人達は至って真剣ながらも、何一つ上手くいっていなかった。
穂乃果は四人の背中を眺めてニコニコと笑っている。まだ幼い彼女には、料理が上手くいっているのか、上手くいっていないのか、判別がつかなかった。ただ、賑やかで楽しそうだなと呑気に眺めていたのだ。
そうして出来上がったのが、卵はスクランブルエッグ状に、ご飯は焦げが多めのチキンライス、具材もいちいち大きめ。穂乃果の小さい口では、食べるのに苦労しそうな程である。
その上に穂乃果が予め掛けるのはケチャップではなくデミグラスソースがいいとお願いして買ってもらってたのを普通に掛けられているのが、オムライス自体が酷い有様故に、何だか可哀想に感じてしまう。いや、寧ろ全てが可哀想だ。ニワトリや農家に謝り倒したいぐらいである。
基本的にちゃんと食べられる物しか見た事のない穂乃果にとって、それはとても衝撃的な”物体”であった。
故に穂乃果はギャン泣きした。
それは過去一凄いギャン泣きであった。
一年前、松陽が近くにいないからとぐずり、泣いていたあの頃とは比べ物にならないレベルである。
思いっきり泣いた穂乃果は少し落ち着いてきた頃に、ふと銀時に目をやった。
未だに止まらない涙、更に鼻をぐすぐすとしながらも、穂乃果は少しだけぽかんとしたのを覚えている。
穂乃果の視界に入っている銀時は、松陽達と変わらないオロオロとした心配そうな表情をしていた。
それから丁度一週間。
松陽を含む銀時達は、穂乃果の為だけにひたすらオムライス作りを練習し、完璧な出来に仕上げる事が出来た。
その日の晩、かなり穂乃果の理想に近づいたそのオムライスは、最初の見るも悲惨な可哀想なオムライスを生み出していたのと同じ人達が作っているとは到底思えないとてもいい出来で、穂乃果はとても幸せそうな笑顔を零したのだ。
はぐはぐとオムライスを食べながら、穂乃果はまた何気なく銀時に視線を向け、銀時は安心したような表情のまま、その視線に気付いて笑顔を返してくれたのだ。
今まで見た事のないその笑顔を向けられた穂乃果は、はぐはぐと咀嚼したまま、胸の辺りがぎゅっとなったのを覚えている。
その時はそれが何だか分からなかったけれど、それでも銀時を好きになったのだけは分かった。
それから更に三週間程。
穂乃果の完璧なオムライス理想像に、デミグラスソースの上に生クリームで絵を描いた物と言うのが分かり、四人揃って猛練習した末に会得していた。尚、その頃から器用だったのか、銀時が一番上手であった。寧ろ芸術並みである。
この頃はまだ親愛で
けれど、この頃から穂乃果は銀時に着いて周り、挨拶はどんなものでも銀時に一番に言い、銀時がいなかったら泣きはしないけれど、探す。
傍から見ても、銀時本人から見ても、この頃の穂乃果は兎に角銀時大好きと行動でも表情でもダダ漏れであった。
*
穂乃果「銀ちゃん!誕生日おめでとう!」
神楽・新八「(おめでとう/おめでとうございます)!」
銀時「ああ、うん。まぁ、ありがとう」
海未「随分と気のない返事ですね。あ、おめでとうございます。こちらどうぞ。苺です」
銀時「いや、なんで苺単体?」
海未「好きでしょう?穂乃果が」
銀時「いや、好きだけども!ありがとな!」
空「おめでとー!」
朝一番に(と言っても銀時は寝坊した為、昼時である。)この言葉を投げらた銀時は、寝ぼけた頭で何とか言葉の意味を考えた。故にあの気のない返事になった。
銀時「ああ、もう誕生日だったっけ」
銀時に思い起こされる記憶は一週間前、穂乃果が唐突にプチ誕生日会をやると宣言した事であった。
穂乃果「絵里ちゃん達、少しだけ暇を作ってとりあえずプレゼントだけ持ってきてくれるって」
銀時「マジか。何くれんだろ、高給取りさん達は」
穂乃果「真姫ちゃん達は、旅行中だから向こうからプレゼント送ってくれるって」
銀時「あ?そう言えば最近見ないな」
穂乃果「1ヶ月くらい海外旅行だって」
銀時「うわっ、ボンボンかよ」
穂乃果「ボンボンだよ」
そんな訳で、穂乃果とかに比べると集まりは(まぁ銀時のお願い通りではあるけれど)悪いものの、例年の事を考えると、これでも集まった方である。
ことり「銀さん、私からはこれだよ」
銀時「・・・何これ」
心無しか、銀時の頬がピクピクとしている。
ことり「ひよちゃんだよ。ひよこのぬいぐるみ」
銀時「おまっ!銀さんひよこのぬいぐるみ貰って喜ぶようなキャラに見える?」
その質問にことりは首を傾げてしばらく考える素振りを見せてから、にこやかに笑顔のまま首を横に振った。
ことり「ううん。全然見えない」
銀時「だよね!?なのになんでこのチョイスにしちゃったのかなぁ!?」
ことり「ひよこのぬいぐるみ一択だったよ!」
ことりの言い分に銀時はツッコミ疲れた。元より彼は寝起きなのである。
穂乃果「あ、そう言えば急にお妙ちゃんがヘルプで働かなきゃ行けなくなったからって、さっきハーゲンダッシュ貰ったから、冷蔵庫に入れといたよ」
銀時「マジか。あのお妙が?何個?」
穂乃果「一個」
銀時「マジか。それ、誕生日プレゼントじゃなくて差し入れじゃねーか!」
海未「お妙にしては大盤振る舞いですよ」
海未の言葉に新八はそっと頷いた。
たかが一個と言うなかれ。一個まるまるくれた事が凄いのだ。
穂乃果「さて銀ちゃん!お待ちかねの誕生日メインだよ!今年は去年より上手くいったと思うんだけど。味は」
そう言って出したのは穂乃果が一番気合いを入れていたオムライスだ。
もちろん、他にも料理は沢山あるが、それでも先にオムライスを食べて感想を聞きたかったのだ。
神楽「メインって、ケーキじゃないアルカ?」
新八「確かに銀さんなら言いそうだよね」
空「糖尿病だもんね」
銀時「予備軍だっつーの」
空の言葉を訂正しつつ、銀時は首を横に振る。
銀時「良いんだよ、メインで。俺の誕生日に限り、メインはケーキじゃなくてこのオムライスだからな、昔から」
穂乃果「もちろん、ケーキだって銀ちゃんが好きなやつだけどね!」
すっかり料理上手に育ったもんだ、と銀時はオムライスを一口掬い食べる。
銀時「・・・うん。確かに美味いな。去年より良くなってる。絵も・・・まぁ、去年よりは良いんじゃね」
穂乃果「むぅ・・・正直に言っていいよ!絵の上達見込みはないって!」
銀時「いやいや、細かい所が良くなってるって」
銀時程じゃなくとも、様々な事をこなす程には器用ではある穂乃果だが、絵は割と苦手であった。簡単なものなら可愛く描けるが、凝った物は全然ダメだった。それでも、一応何か分かる程度ではあるのだが。練習の賜物である。
その後、一時間ぐらいしてから絵里、希、にこが来てプレゼントを置いていってくれた。全員もれなく食べ物である。何を思って用意したのか。
穂乃果「しばらくデザートに困んないね」
銀時「・・・そーだな」
銀時は穂乃果が好きな分類の甘い食べ物ばかり送ってきたヤツらに、素直に喜んでいいか迷った。迷った末、まぁ誕生日プレゼントだし、一応と受け止めることにした。深く考えるなかれ。何もかも今更な気さえする。
そうして午後を半分程使って銀時は祝われた。ご飯を食べてから、スナックお登勢に降りてひたすらボードゲームをしたのだ。
*
夜になって神楽が寝てから、銀時と穂乃果はリビングで話をした。
穂乃果「今日、楽しかったね」
銀時「騒がしかったけどな。疲れたし」
穂乃果「でも楽しい疲れでしょ?」
銀時「まぁ・・・」
お登勢からプレゼントだと貰ったビール(こちらは1ダースだった。)を煽りながら、銀時は静かに頷いた。照れくさそうである。
穂乃果「初めてだね。こんなに賑やかな誕生日」
初めて。確かにそうだ。
今までは松陽達とだけの些細なものだったし、攘夷戦争時代は祝う暇などなかった。
穂乃果「ふふっ。また来年も出来るといいね。誕生日会。今度は今回も来れなかった人達もいる中で」
銀時「・・・そうだな」
そう頷く銀時の表情は穏やかな物で、穂乃果は心底嬉しそうに笑った。
良かったよねぇ。間に合って。
銀時「3日で書いたとは思えない量だよな」
穂乃果「捗りすぎ」
じゃあここで予告もやっちゃおうか。いい機会だし。
穂乃果「もう予告?」
話すことないんで・・・。
*
穂乃果「じゃあ私がやります!次回はそよ姫様が、神楽ちゃん、真姫ちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃんと仲良く遊んで仲良くなる話です!」
*
ちょうどいい所にあってよかった、誕生日。
穂乃果「ホントにね!」
銀時「お前ら・・・そんな置物みたいに人の誕生日を・・・」
じゃあ、次回は来週です!
お待ちください!