Grand Order Of Fate   作:レモンの人

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やや端折り気味になりますが、いよいよ後半戦です。







オルレアンにて…5

「マリー・アントワネットにヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトか。頼もしい仲間が加わった」

「そう言ってくれるとわたくしも助けた甲斐がありましたわ」

「ボクには音楽くらいしか取り柄が無いけど、頑張らせてもらうよ」

 

いつの間にか戻って来たフォウはマリーの腕の中に抱かれご満悦。マシュは貴重な親友を奪われた事でむくれていた。アルトリアは腹にサラシを巻いて傷を塞ぎ応急処置としてカルデアの医療キットで痕の残らない縫合をしておいた。

彼女達に事情を説明すると力になると言ってくれた。ホントに助かる。

 

「取り敢えず、怪我してるサーヴァント2人を休ませて、動けるようになったタイミングで仕事と行きましょう」

「すまねぇ…父上を助けてくれてありがとう…」

 

モードレッドは半泣きでマリーに頭を下げた。とにかく、アルトリアには栄養のある料理を作ってしっかり傷を癒してもらわないとな。

 

「農民から買い上げた鶏肉と野菜でスープを作った。パンもあるから遠慮無く食え」

「ん〜!トマトスープかぁ!美味いな!!!」

「はい…傷が開かないようホドホドに戴きます」

 

「まぁ!なかなか美味しいですわ!外食ばかりで資金が少なくなってきましたので…これで資金面はある程度解決出来ますわね!」

「ふむ…悪くはない味だ。少し庶民的過ぎるがね」

 

「そちらのサーヴァントさんも食べましょう。栄養が付きますよ」

「フォウ!」

「すまない…呪いのせいで自由に動けなくて本当にすまない…」

 

取り敢えず、評価はそこそこ。さて、大所帯になったはいいが…その分敵に見つかりやすくなってしまうな。

 

「マシュ、呪いの解き方は分かるか?」

「はい、サーヴァントが受けた呪いは聖人の力によって解く事が可能です。が、ジャンヌさんは霊基そのものが低下しており、サーヴァントになりたての状態ですので難しいかと」

「つっかえねぇなぁ」

「酷いッ!?服の件といい私に対して辛辣過ぎませんか!?」

「ジャンヌさん…誰もが通る道です(遠い目)」

 

まぁ、ジャンヌが本当の意味で役立たずと分かったので、頭数にはカウントせず聖人を探す事を考えるとしよう。

 

「じゃあ手分けして探そう。アルトリア・そこのサーヴァント…ジークフリートって言うのか?…それとマシュは待機。俺とモードレッドがAチーム、ジャンヌ・アマデウス・マリーはBチームで捜索しよう。何、どっかに聖人は居るはずだ。気落ちせずに───」

「話は聞かせてもらったわ」

 

その時、俺達の前に見覚えのあるサーヴァントが現れた。黒ジャンヌのサーヴァントの1人だ…おまけにあの時に嫌そうな顔をしていた者の1人でもある。聖人っぽい容姿をしているのが惜しい。仲間に出来れば苦労せずに済んだんだが…。

 

「心配しないで、私は追撃者に任命されて来たサーヴァントだけど貴方達の話は聞かなかった事にするわ」

「用件は何だ?事と場合によっては…」

「──私を倒しなさい」

 

この女を倒せというのか?どういう意味だ?

 

「元々、私にも狂化スキルが施されてるんだけど、精神的に抑え込んでいる。でも、私は今回の一件でこれ以上関わりたくないと思ったの。あのような卑劣な方法を取った時にそう決めたわ。味方になるのはいいけど、私を見つけられるのも時間の問題。何か処置を施せば痕跡でバレてしまう…そうすれば私の所為で貴方達を危険に晒す事になる」

 

なるほど、自殺をご所望らしい。だが、全力で戦わなければ怪しまれると踏んでの判断だ。それなら了解だ。遠慮無くやらせてもらおう。

 

「あと、私が匿ってたサーヴァント…助けてくれてありがとう」

 

ジークフリートの事か。彼女が匿ったという事は重要案件である可能性があるな。流石は聖人といったところか。

 

「じゃあ、覚悟しろよ」

 

モードレッドはクラレントを拾い上げ、杖にした。俺達が固唾を呑む中…2人は激突した。

 

──────

 

「サーヴァント、ライダー。消滅…やはり使い物にはならなかったようですね」

 

アイドル活動の後、舞台裏で黒ジャンヌは舌打ちした。元から反抗的な態度や独断行動が多かった為に彼女も大凡疑っていた。恐らく、自滅したのだろう。

 

「そろそろ私も本腰を入れましょうか…」

 

アンコールの声が響く中、黒ジャンヌは再びアイドルの顔へと表情を変化させた。

 

「みんな〜ありがとう〜!今日は出血大サービスだゾ☆曲は『プラチナ』!盛り上がっていこ〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達Aチームは、閑散とした街を走っていた。ロマンを介してBチームから受けたSOSに応じ、先程まで進んでいた道とは正反対の道を駆け抜ける。

 

「───!」

 

上空を見上げると、そこには俺達など豆粒にしか見えないほど巨大な黒龍が鎌首を擡げていた。これは一体…?

 

「ぐだ男さん!」

 

ジャンヌの声が聞こえ、行ってみると彼女とアマデウス、そして長髪の男が町民達の避難誘導を行っていた。俺とモードレッドも加わり、彼らの迅速な避難を行う。感謝の言葉が飛び交う中、避難は無事に完了した。しかし、それもさっき目の前に展開された巨大な硝子城があってこそだ。

 

「ぐだ男さん…私…わたし…!」

「しっかりしろジャンヌ!今はマリーが作った隙を無駄にしない事だ!」

「───ッ、分かりました!行きましょう!」

 

大凡の事情は察した。オマケに現行戦力ではあの龍と戦うのは困難だろう。1を捨てて1を獲る…悔しいがそうするしか無かった。

 

「チッ…!乗り越えてくる奴が1名!迎撃するぞマスター!」

「私も盾となります!!!」

「よし、2人とも俺の指揮下に入れ!おっさん─ゲオルギウスって言うんだな!─とアマデウスは避難民を連れてもっと遠くへ!」

 

乗り越えて来たのは黒き鎧の騎士。剣を手にした彼は奇声を上げながら襲い掛かってきた。

 

「Arrrrrrthurrrrrrrrr!」

「その剣…テメェまさか!!!」

 

モードレッドは何か察したようで、その剣先をクラレントで受け止めた。

 

「マスター!当たらなくていい!矢で援護してくれ!コイツは俺1人ではキツイ!!!」

「分かってる!」

 

彼女の反応といい…恐らくバーサーカーながら、円卓の騎士に匹敵する戦士なのだろう。と、すると厄介極まりない!

 

「A──urrrrrr!!!」

「何で私に!?」

 

バーサーカーはモードレッドを弾き飛ばすと今度はジャンヌに襲い掛かった。必死に旗でフェイルセーフを繰り返す彼女だが、彼の攻撃はさらに苛烈さを増していく。

 

「いい加減にしろ!!!」

 

大振りにクラレントで薙ぎ払い、牽制したモードレッドは間髪入れずに力を抑えた連撃を叩き付ける。反撃を許さぬ嵐のような攻撃に俺の矢を追加した波状攻撃だが、バーサーカーはそれら全てを嘲るようにひらりと躱し、モードレッドを無視してジャンヌに突撃する。

流石にブチギレた彼女は体当たりを敢行し、怯んだ所でクラレントを振るい彼の剣を叩き飛ばした。だが、バーサーカーは冷静に後退すると目の前の壁に手を突き刺し、フライパンを取り出した。そのフライパンに赤い線が幾つも入り、禍々しいものへと変わる。

 

「騎士は徒手にて死せず───やっぱテメェか!ランスロット!!!」

「Arrrrrrthurrrrrrrrr!!!!!!!!」

 

再び、モードレッドとバーサーカー…ランスロットが何度もぶつかり合う。円卓最強のランスロットとなると苦戦するのも頷ける。

だが、それ以上に目の前の城が崩れ始めている事に俺は焦っていた。

 

「モードレッド!もうここは保たない!撤退するぞ!!!」

「あと少しで──!!!」

「バッキャロー!今退かねーと逃げられなくなる!頭を冷やせ!」

「───ッ、了解!!!」

 

モードレッドは目の前に落ちていた樽を叩き割ると中に入っていた葡萄酒がランスロットに向かって噴き出し、一瞬注意が逸れた隙に撤退を開始した。俺も矢を放ちながら威嚇しつつ離脱。ジャンヌも後ろ髪を引かれる思いを持ちながらも撤退した。

 

*********************

 

「───よし、呪いの解除が終わったぞ。これで自由だ」

「皆、迷惑を掛けてすまなかった。だが、呪いが解けた今…俺は今一度ファヴニールを倒す事を誓おう!」

「ありがとう!竜殺しのジークフリートがいるなら百人力だ!」

 

周りが嬉しさのあまり騒いでいる中…ふと、マシュがアマデウスに連れられて戻って来た事に気付いた。何か思う所があったのか、少し思い詰めた顔をしている。

 

「どうした?マシュ」

「あ、先輩…」

 

アマデウスと別れた後、マシュは座ってシチューを食う俺の横に座った。

 

「先輩は…どんな人生を過ごしたのですか?」

「俺の人生?ロクなモンじゃねぇよ。貴重な学生時代をタバコと酒と喧嘩に使って親父と仲違いしたまま死別した。俺の人生なんざ頭の悪いガキのそれだ。誰かと恋愛した訳じゃなし、ガキみたいに相手を殴って『俺サイキョー』とか叫んでた…それだけだ」

「は…はぁ…」

 

飯を食べながら、俺は目の前で仲良くご飯を分け合うブリテン親子を眺めた。アルトリアの傷はすっかり綺麗に修復されており、明日にはもう戦えるらしい。無理しない程度に頑張って欲しい。

 

「ま、今はカルデアに来て…モードレッドとアルトリアに出会って…お節介だがあいつらを仲良しに出来た事は人生の中で1番良い事だったんじゃねぇのかな?って話だ。後は…もう少し気楽なミッションを受けたら料理の腕をも少し上達させてぇと思ってる…まぁ、人生の目標はそんな感じ」

「因みに…私はカルデアの皆んなの中で─」

「マシュ?お前は……俺の肉壁兼ベースキャンプ設営要員だな。他に役割見出せねぇや。馬車馬の如く働いて死ぬ時は盾置いてけよ」

「酷いッ!?でもいつもの先輩で良かったー!」

 

取り敢えず腹ごしらえはした。明日に備えて寝るとするか。

 

「今夜は寝るぞ。明日に備えてな!!!ジャンヌ、お前見張りな」

「えっ?でも私、避難者の誘導で──」

「うるせぇ!今日はお前が当番なんだよ!何しようが当番は別だ!」

「酷いッ!?」

「3時間後に代わってやるから文句言うな!彼氏に逃げられるぞ」

「彼氏居ませんって!───ゲオルギウスさんとアマデウスさん!そこの所詳しくって顔しないで下さい!!!」

 

 

 

 




※プロフィール紹介はしばらくお休みします。理由ですが、現在の主要キャラが軒並み揃った為です。新たに追加され次第随時掲載致します。

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