お前にふさわしいソイルは決まった!!   作:小此木

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第5話

 

 

 

このアースランドに来て様々な人に出会った。

 

まずはウェンディ。彼女はこっちに来て初めて出会った娘だ。当時の俺はこの()()の事を良く知らなかった。それで、

 

「僕の名前は()()()()()。君の名前は?」

「ウ、ウェンディ…」

 

彼女にジェラールと名乗ってしまった。そして、〝アニマ〟を止める為、彼女を一人の老人に託し(後の化猫の宿(ケット・シェルター)マスターローバウル)俺は彼女と別れたんだ。

 

次に出会ったのが、今所属しているギルドのマスターマカロフ。

 

「おぬし、儂のギルドに来るか?」

「…いいんですか?」

「ああ。大歓迎じゃ!!」

 

温かい心で俺を受け入れてくれた。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入っても〝アニマ〟を消す事を目的としていた俺を理解してくれた人物だ。合間合間に受けたクエストが好成績だった為、俺はS級への試験を受けられるようになり、見事合格。これで、俺が長期間ギルドに居なくてもS級クエストを受けに行ったと思ってくれる。…でも、皆を騙しているようで心苦しい。

 

そして、同じエドラスから送り込まれたと思われる記憶を失った男、風。

 

「…俺もお前が受けるクエストを手伝おう」

「いいのか?君、探し物があったろう」

「いい。お前と行動しながら探す」

「因みに何を探してるんだ?(恐らく失った記憶に関する何かだろう。下手に思い出して敵対されたら危険だ。でも、今()()を聞き出し()()に関係するモノから遠ざければ心配ない筈だ)」

「…黄色い走る大きな鳥だ。俺を超える高さの奴もいた」

「は、走る黄色い鳥!? お前を超える大きさだと!?(この世界を旅している俺でも見た事も聞いたことも無いぞそんな鳥!?)」

 

風とは様々なクエストを一緒に受けて行った。当初、監視も込めて一緒に行動していたんだが、

 

「これより、催眠魔法を使用する。後はいつも通りだ」

「…分かった。サポートは任せろ」

 

俺が眠らせ、風が様々なフォローに回る。風の射撃は目標を一度も外さないし、驚異的な身体能力で目当ての物を即座に取って来て内心驚いたり。今まで一人でこなしてきた事が二人になった事で楽になり、知らず知らずのうちに、彼が本当の相棒(パートナー)の様になっていた。

 

「ッ!? アニマ!?」

「…どうした?」

「す、済まない。どうしても一人で行かないとならない任務が―(アニマを見て記憶が戻っても大変だ)」

「行って来い。このクエストは俺が代わりにやっておく」

「―やはりダメk…い、いいのか!?」

「行って来い。お前にしか出来ない事だろう」

「済まない!! 行ってくる!!」

 

突然発生したアニマの対応も風は快く承諾してくれた。それに、俺が受けたクエストも代わりにやると言ってくれる。彼の存在で即座に〝アニマ〟対策が出来て助かっている。

 

「…この前受けたクエストの報酬だ。半分は依頼主に返した。…悪いな」

「この前…あれは、確か捕らわれた人質が何処にいるかの調査だったか?」

「ああ。で、救出した」

「は?(あれ? 俺の耳が悪くなったのか? 今、救出したって聞こえたが?)」

「警備がザルだったからな。簡単だった。それに、人質が捕まっていた檻も脆弱だったせいもあって、思ったより早く終わったぞ」

「そ、そうか…では何故報酬を半分返したんだ?」

「依頼は『調査』だったのに『救出』してしまったからな。それでだ。…ダメだったか?」

「い、いや。君がいいなら問題ない」

 

ど、何処を突っ込んだらいいか分からなかった。確かあのクエストは、闇ギルドに連れ去られた領主を捜索する依頼だったはず。目星を付けたのは、その闇ギルドが縄張りにしている大きな城。本当なら城の構造と領主が捕まっているだろう場所を特定後、数人の正規ギルド員で敵を殲滅。同時に領主を救出するという手筈だった。なのに、風はそれを一人でやり遂げたらしい。

報酬も今後領土の警備や整備に回せるよう配慮したんだろう。普通なら助け出せたんだから報酬を上乗せするヤツが多いのに…全く、頭の回転もいいのに他人を気に掛ける事の出来る変わった奴だ。

 

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

 

「…君は偶に俺を驚かせてくれるね」

「…」

「でも、これはどう言う事だ!!」

「…スマン」

 

ども、風です。評議院に連れて来られて、変な光(エーテリオン)を消した事と数個S級クエストを一人でこなした内容の中で、一番最初に請け負ったヤツを話したぜ。

S級クエストだった『人質が何処に攫われたかの調査』はミストガンが受けたクエストだったんだけど、急な『任務』ってのがミストガンに入ったから俺一人で行ったんだ。んで、この風様body(ボディ)を駆使し、捕らわれた領主が居そうな城のてっぺんに侵入。見事領主のおっちゃんを見つけ出した俺は―

 

「…助けに来た」

「ど、どうやって此処まで侵入したんじゃ?」

「そんな事はどうでもいい。逃げるぞ」

「ど、どうやってじゃ?」

 

話しかけ、脱出路へ案内し、

 

「わしゃ、まだ死にたくないー!!」

「…黙ってろ。舌をかむぞ」

 

紐なしバンジー!! スタッ!! 華麗に着地!! 10点! おっさんも、

 

「うぅ~」

 

死んでない!! やったね! ミッション成功!! 後はこのおっさんを領地に戻せば終わりだ。って、

 

「な、何だお前!?」

「…」(※BGM:目と目が逢う瞬間~)

「そ、そいつはこの前攫った領主!?」

 

見つかっちゃったぜ。こ、こうなったら!!

 

「隠れてろ、此処を潰す」

「は? な、何言っているんじゃ!?」

 

もう、形振(なりふ)り構ってられるか!! 此処を潰す勢いで反撃だぁぁぁぁぁぁ!!

 

で、そんなに強くなかった(風感覚)からそいつらを全員無事殲滅。紐なしバンジーと戦闘になってしまった事のお詫びに報酬を半分にしてもらったぜ。

 

 

 

話は戻るが評議院で俺は、

 

「S級クエストはミストガンから頼まれたから実行した。(正直簡単だったからサクッと終わったぜ)」

「エー、テリオン? あぁ、あの光の事か。テュポーンで空間ごと消した(初めて魔銃が動いた! 召喚獣ならあんな光一瞬だぜ!!)」

 

正直に話したんだぜ! 正直に!! それで、

 

「エンジェルちゃん驚いたゾ。あれが反転した影響だったなんて思わないゾ。」

「…話掛けるな」

 

って、エンジェルの嬢ちゃん、今は話し掛けないでよ!! 今ついさっきのこと思い出して俺、沈んでるの!!

 

「何したんだゾ。…まさか元闇ギルド員だったゾ!?」

「違う。今までどこのギルドにも所属したことはない」

 

闇ギルドって!? そ、そんな危ないとこに俺は、お世話になってませんよ!! って話し掛けてくれるのは良いんだけど…

 

「ま、変な事をしていないって言うのは、エンジェルちゃんもそうだと思うんだゾ。お前は、こんな美人のエンジェルちゃんと()()()()に入れられているんだゾ。闇ギルド員の犯罪者だったら異性を同じ牢屋に入れないんだゾ!」

「…そうだな」

 

エ、エンジェルの嬢ちゃん、俺を慰めてくれるのか!? 嬢ちゃんは他の奴らとは違ってすげぇ(わり)ぃ奴じゃなかったんだな!!

話は戻るが、俺を危険視した評議院にこの牢屋にぶち込まれちまった。んで、牢屋が足りないからって六魔将軍(オラシオンセイス)のエンジェルと同じ牢屋って………どう言うこと?

まぁ、他の六魔将軍(オラシオンセイス)は全員男だから当然彼女は別の牢屋に入れられるのは必然だ。それに、ブレイン、ジェラールは超危険人物だから厳重な個別の牢屋に入れられ他は一つの牢屋に入れられている。

この牢屋に入って通りかかる評議院の話をちょくちょく聞いてみたら…俺が使った召喚獣(テュポーン)が危険だから此処にぶち込まれたらしい。そりゃ、そうだよな。召喚獣を使って攻め込まれたらどんな奴でも一溜りもないぜ。

でも、このぐらいの檻なら簡単に破壊できる。が、ミストガンに迷惑掛かるからな~。誰か知り合いが来て事情を話してくれないかな…ってミストガンしか知り合いいねぇ!? ミストガンに迷惑掛けるばっかじゃん!! おっ、誰か来た!!

 

「…君は偶に俺を驚かせてくれるね」

「…。」

「でも、これはどう言う事だ!!」

「…スマン」

 

本当にスマン、ミストガン!! それに、ファーブラ様に誓ってエンジェルちゃんには手を出していませんから!!

 




2017.6.19修正、加筆しました。
BGM「目が逢う瞬間」コード143-9133-3

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