お前にふさわしいソイルは決まった!!   作:小此木

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tak00様、まりも7007様誤字脱字の報告ありがとうございました。


第26話

 

 

 

その日、王都は炎に包まれた。

 

だがその炎は、世界を無慈悲に焼き尽くす絶望のモノではない。

 

未来へと続く為の〝希望〟の灯火だ。

 

 

 

~Side 未来のローグ~

 

 

 

王国の娘に嘘の情報を流し、無事ドラゴン達をこの世界へ向かい入れる事が出来た。フッフフ、それも100体を超える数だ。これでこの世界のアクノロギアを倒せば俺がこの世界を牛耳る事が出来る!

 

俺はそう思っていた。

 

が、

 

だが!!

 

「何なんだあの〝召喚獣〟と云う存在は!?それに(はく)(えい)竜の(あしぎぬ)!!ヌォォォォォ!!」

『後は任せろ!咆哮(ブレス)!!』

 

奴が何らかの方法で呼び出した小さな生物が空へ消えたと思ったら、無数の火球がこの王都全体に降り注ぎ始めた。それも、その一個が俺の全力の滅竜魔法とドラゴンの咆哮(ブレス)でやっと破壊できる魔法だと!?

 

「…ハァ、ハァ。クソッ!予想外にもほどがある!!俺のいた時代にはあのような魔導士は何処にもいなかったぞ!!だが、恐らく強力なのは奴の右手の銃で召喚した生物のみ。召喚に頼っている奴自体の戦闘力は無い筈!此処は一旦ドラゴン達を壁にし、銃を奪って…ど、どう云う事だ!?」

 

な、何なんだ奴は!?あんな存在がこの世に存在するのか!!

 

 

 

~Side Out~

 

 

 

『全員、死ぬ気で魔力を絞り出せ!此処で私達がやられてしまったら、全て水の泡だ!!』

 

周りにある建物を遥かに超える大きさの火の玉―〝メテオ〟が降り注ぐ中、エルザが魔導士達に激を飛ばしている。

 

『…これが、ブラック『風だゾ!絶対に間違えるんじゃないんだゾ!!』…失礼、風本来の力か。2年間も一緒に過ごして只者ではないと思っていたが、此処まで桁外れの力だとは思わなかった。』

『何?お主、あのブラッk『風殿だ!間違えるな!!』…す、済まぬ。(何故、妾が謝らなければならんのだ!?)フィンガースお主、あの風と共に過ごしておったのか!?』

『…はい、そうです。俺はジエンマの強襲を運良くエドラス世界の〝アニマ〟と云うモノの〝他の世界の魔力を吸収する〟作用に助けられ、エドラスと云う世界で生きていました。そして、7年前何故か再びこの世界に『ハイハイハイハイ、そんな事どうでもいいです!早く魔力の出力を上げて下さい!!』…あ、あぁ。』

 

剣咬の虎(セイバートゥース)のフィンガースとそのギルドマスターの娘ミネルバの会話を強制的に中断させたのは、現フィンガースの雇い主の猫耳付きテンガロンハットが良く似合うダフネだった。

事実、彼女が言ったようにフィンガース達が話していた場所の防御壁は他より薄くなっていた。

 

『お嬢!今は、この危機を乗り越える時!!』

『分かっておるわ!事が済んだら存分に語り明かそうぞ!!』

 

もう死んでしまって会えないと諦めていた存在が、生きて自分と肩を並べ戦っている。ミネルバにとって、これ程心強い存在は他には居ないだろう。そのお陰かは分からないが、自身でも想像が付かない程の魔力を出しているにも関わらず、全くと言っていいほど疲労は感じずドラゴン達も驚異とは思えなくなっていた。

 

 

が、

 

 

『脆弱な人間共め!』

 

 

ピンチとチャンスはどちらの勢力にも存在する。一瞬防御壁が緩んだ隙を狙って一体のドラゴンが空から突っ込んで来た。

 

『我が咆哮(ブレス)で焼き殺してy「舞乱(ブーメラン)!!」…。』

 

だが、そのドラゴンの首は何者かの蹴りと、その爪刀で無残にも切断されてしまった。そして、首と離れた胴体は重力に従い大きな音と共に、地上へ落ちて行った。

 

そう、その相手のチャンスを(ことごと)く潰して来たのがこの男、

 

『風どn『風ぇー!!』邪魔をするなエンジェル!!』

「…皆、無事か?」

 

黒き風である。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

さて、トンベリ…じゃないよ!メテオマスター先生ですよ!メテオマスター先生!!…が、飛び立って行かれました!!

いや~、俺もこんな大規模殲滅召喚獣はあまり出したくないんだよね。俺以外の生物は全部死んじゃって、大地は無残にも更地に変えてしまうからな。そして、これで俺の仕事は終わりって、

 

「…何時から勘違いしていた?」

『風?…あぁ、行くんだね。』

 

俺のターンは、まだ終わってねぇんだよ!!雲も俺がやろうとしてる事に気付いたみたいだし…いっちょ、ヤッタるか!!

 

「…ああ。行ってくる。」

『フフフ、何だか夫婦のやりとりみたいだね。』

「…行ってくる。」

 

や、ヤバイヤバイヤバイヤバイ!何がヤバイって?あの雲が俺に向かって頬を染めて微笑んで来てんだぜ!?ヤバイに決まってんだろ!!一瞬ツナギを着た某人物が頭を過ぎったぜ!!この恐怖を蜥蜴(トカゲ)共へ叩きつけてやるぜぇ!!それも何と、手加減しなくていいしな!!(此れを人は八つ当たりと言う。)ってか、してたらこっち(カグラちゃん達)()られてしまうからね!!

 

「…居た。叩き落す。」

 

お、目標発けーん!!それもカグラちゃん達を狙ってる!?でも、この俺がやらせねぇぜ!!

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。彼の者達しかドラゴンとは渡り合えず、そして唯一倒せるのも彼の者達だけである。

 

そう、語り続けられてきた。だが、

 

砕竜(スクリュウ)!!」

『その様な技でオレの甲殻がやられる<ドゴッ!!>…グアッ!?』

 

岩でできた体のドラゴンの皮膚を、地面スレスレを回転しそこから跳ね上がった風の蹴りが容赦なく粉々にする。

 

『あ奴、只者ではない!!熟練の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)か!?えぇい!皆の者、距離を取れ!長距離からの咆哮(ブレス)で<ドン!!>ぬ!?…クソォ!空から落ちて来る邪魔な火球め!!』

「…神移(カムイ)!余所見とは余裕だな。聖爆(セイバー)!!」

 

距離を取って咆哮(ブレス)で風を倒そうとするも、空から降って来る〝メテオ〟を避け風から目を離した隙に、風は神移(カムイ)で肉薄し手加減無しの蹴りを放った。

 

『…無念。』

 

その蹴りでドラゴンは上半身と下半身に別れ絶命した。

 

「…次。」

 

ドラゴン達は空から降って来る〝メテオ〟と、縦横無尽に動き回りドラゴンを(ほふ)る風、雲の一刀獣を相手にしなければならない。

 

『上に咆哮(ブレス)を放て!!』

『『『オオ!!』』』

 

何体かのドラゴンが落ちて来る〝メテオ〟へ咆哮(ブレス)を放つも、

 

『ま、まだ降って来るのか!?』

 

一個だけなら数体のドラゴンの咆哮(ブレス)でなら問題ないが、幾つも降って来る為処理しきれない。

 

『我は無敵なり、』

 

そして、動いていない敵を見逃すなど風はしない。

 

『我が影技に敵う者無し、』

 

傲慢で偽善だが、風は知り合いに危害を加えようとする輩は許さない。

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

神移(カムイ)でそのドラゴン達に肉薄し、超振動の蹴りを放った。

 

神音(カノン)!!』

 

ドラゴン数体が吹き飛び、1体のドラゴンが息絶えた。そして、未来から来たローグは此れを目の当たりにし、呆然とするしか術はない。

 

「…両手を使う。(さて、もう一か所蜥蜴(トカゲ)共がたむろしてる所がある。風、両手を使いたいから、アレ頼めるか?)」

(…任せろ。但し、60秒しか両手は使えない。)

「…十分だ。(それなら十分だ。全然問題ないぜ!!)

 

風の右手にあった魔銃の手首部分が金色の粒子に変わり、腰のベルトに魔銃専用のホルスターが精製され、それに風は魔銃を仕舞う。

 

『我は無敵なり、』

 

そして、ドラゴン達が集まっている箇所に神移(カムイ)で肉薄。

 

『我が〝拳〟に敵う者無し、』

 

今度は両手へ渾身の力を籠め、

 

『我が一撃は無敵なり!!』

 

ドラゴン達へ叩きつけた。

 

霊悪(レイア)!!』

 

両手の指先から10本の強力な真空刃が生まれ、数体のドラゴンは肉塊に。他のドラゴンも重傷を負い満身創痍だ。そこへ、

 

『クソッ、この滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)強すぎ<ドン!>…』

 

無慈悲に〝メテオ〟がドラゴン達へ降り注いだ。

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

「…な、なんだこの光景は!?」

 

何体ものドラゴンを使い、自身を〝メテオ〟から守らせながら、未来から来たローグが目の当たりにしたのは…一人の男が繰り出す蹂躙劇。

 

「貴様は、貴様は一体何者なんだ!!」

 

その両目に映るのは、ドラゴン達にあったアクノロギアへの恐怖を瞬く間に塗り替えた(バケモノ)

 

「…俺か?俺の名は〝黒き風〟。」

「黒き、風…」

 

未来から来たローグは、その名を繰り返す。

 

「…訳あって妖精の尻尾(フェアリーテイル)に居候している身だ。」

「…は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「…済まない訂正する。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に居候してい()身だ。」

「な、なんだそれは!!!!」

 

この日、ドラゴン達は一人の男によって殲滅させられてしまう。

 




や、やっちゃったゼ。

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