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「この、
「クッ…ん?(あれ?ブドウの衝撃は?)」
が、その房はユキノには当たらず、
「おい、クソジジイ!食い物を粗末に扱うんじゃねぇ!!作物は、ベスの様な農家の人が汗水垂らして作り上げてんだ!!」
一番後ろの扉に待機していた筈のブラックが、ユキノの前に立ちそれを防いでいた。
「ほぅ、ワシに感知されずアレを容易く掴むとは…」
「さっきから聞いてりゃ、ガキかテメェは!この嬢ちゃんは俺に勝っただろう!勝ち方が気に入らねぇのは分かるが、食いもんを投げつける程じゃねぇだろうが!!(クソ、このギルド第一印象から最悪だぜ!!)」
マスターのやり方に異見を堂々と言うブラックに、その場にいた全員が驚愕していた。
「小童が、言わせておけば…」
「あぁん?数十年ぐれぇしか生きて来てねぇガキが吠えるんじゃねぇ!!(あれ?俺って何年生きてんだっけ?ま、記憶喪失中だからいいか。)」
一触即発の中、
「ユキノ、何故そこに立っている?とっとと失せろ、ゴミめ。」
「あ゛ぁ゛ん?」
その一言でその場にいた
「おい、カス。この嬢ちゃんに何て言った?ゴミだと!失せろだと!!」
ソレは、たった一人の男から出る怒気。
「…話にならん。ユキノ嬢ちゃん。行くぜ。」
ブラックから放たれているものだった。そして、このギルドのやり方が気に入らなくなったブラックは、動けないでいるユキノの手を引いてその場を出ようとする。
「待て、お主はワシの「うるせぇなガキが!!」…何だと!?」
しかし、ジエンマがそれを静止した。
「俺は、
が、完全にブチ切れたブラックはそう言って立ち去ろうとする。それを止める者は…いや、止められる者は誰も居ない。体が動かないから。本能的に自身では勝てないと悟ってしまったから。
「それと、そこに隠れている女。これ以上変なことすると…殺すぞ!!」
「ッ!?」
そして、隠れて機会を伺っていたミネルバも彼には筒抜けで何も出来ない。だが、ミネルバと一瞬話していたその隙を狙ってジエンマが攻撃魔法を展開。
「唯で帰すと思う『
「父上!?」
だが、ブラックはジエンマが拳を振り上げたと同時に、俊足を生かし一瞬で肉薄。影技の蹴りを放ちその一撃でジエンマを気絶させた。
「邪魔したな。それと、女。ユキノの嬢ちゃんが付けているギルドのマーク消せるか?」
「…は、はい。消せます。」
「じゃ、消してくれ。そしたら、俺達は此処を去る。」
ミネルバにギルドマークを消させ、ブラックはユキノを連れて
「…あれがユキノと戦った男。今のオレじゃ〝最強〟などほど遠い…それに、アレが魔法じゃねぇってのが増々信じられなくなった。」
「オルガ…皆、マスターを部屋へ。ユキノはあの男と対峙し、戦った。あれ程強い男だったとは思いもよらなかった…今のオレ達はユキノを笑えない。いや、笑う資格すらない!!」
「…ス、スティング君の方がt「いいんだ、レクター。オレを思って言ってくれてんだろ。」スティング君…」
「
「う゛、う゛ん!!」
ブラックが立ち去り、その強さの片鱗を垣間見たオルガは自身の力を過信していたと真摯に受け止め、スティングは新たな目標を見つけた。
「フロッシュ。この大会が終わったら、スティング達と修行をやろうと思う。」
「フロー、ローグがそう言うと思ってた。」
「…付いて来てくれるか?」
「何を言ってるのさローグ。フローは何時もローグと一緒だよ!!」
「…そう、だったな。よし、スティング達を追いかけるぞ。
ローグはフロッシュと共にスティング達を追いかける。
「フフフ。」
「ん?どうしたフロッシュ?」
「何でもないよ。」
今までにない、やる気に満ちた凛々しい顔しながら。
~side ブラック~
だぁー!胸糞悪い
「
「……い、いえ。し、しかし、ブラック様があれほどお強いお方とは思いませんでした。」
「ん?俺が強い?ただガキを蹴り飛ばしただけだぜ。あんな奴より以前戦ったサルや自己中ジジイの方が…ん?いや、最後のは忘れてくれ。(サル、自己中ジジイ。何だ、何か思い出しそうなんだが…)」
やっぱり、旅に出て正解だったな。断片的だが俺の記憶が戻りつつある。
「ジ、ジエンマ様を子供扱い…そう言えば何処へ向かっているのですか?」
「…何処いこう。」
「へ?ま、まさか行く当てが無いのですか!?」
「
ま、デートは冗談だけどな。可愛い嬢ちゃんだからな。役とk<ゾクリ!!>な、何だこのプレッシャーは!?
「デ、デートォ!?」
「わ、
何ださっきの寒気は。どんな相手でも今まであんなことは無かったハズ…いや、一回あったかもしれん。何なんだ一体。
「じゃ、宿を取り直して「ダブルを!?まさか、シングル!!」…いや、普通に別々の部屋だ。ユキノ嬢ちゃんどうしたんだ?」
「にぁ、オホン。何でもありません。」
「そ、そうか。」
さて、この
~side out~
「ム、此処だな。」
「じゃ、俺が殴り込んで「バカ者!今回は絶対に問題を起こすな!!」…あい。」
「ププ、やっぱりエルザには勝てないね。ナツ!」
「今回は
「分かってるって。」
事情を宿屋のカウンターで話していた時、
「あれ?ナツさんじゃん!!」
「お前は、確か…」
「俺はスティング。で、ウチのギルドに何か用?ぶっちゃけ今アンタらと話す時間もないくらい忙しんだけど?」
気分転換にカウンターまで降りて来たスティングが話しかけて来た。
「なに、ブラックと云う男に話があってな。忙しいのなら、此処に呼んでくれさえすれば問題は無い。」
「あ~、ブラック
「成程、出て行ったのなら仕方な…出て行ったぁ!?どう言う事だ!詳しく聞かせろ!!」
鬼気迫る形相のエルザに両肩を掴まれ、揺さぶられたスティングはついさっきの事をエルザ達へ話し、漸く解放され宿屋の一室で行われている会議へと戻って行った。
「…胸糞
「そう、カッカするなナツ。それに、ブラックが既にお灸を据えて行ったと言うんだ。今後あのギルドは良くも、悪くも変わって行かなければならない。」
「でも、これでまた〝風〟のヤツの手掛かり無くなっちまったな~。」
「ま、また探せばいいさ。〝生きている〟事は確証が持てているんだ。カグラ達には私から連絡しておく。」
「じゃ、明日も
「あい!!」
■□■□
「ま、待てカグラ!もう少しペースを落とさないと倒れるぞ!!」
「恋する乙女に、止まると云う選択肢は、無いデスネ!!」
「此処は、クールに行こうぜカグラ。」
木々が生い茂る森の中、カグラ達は
「……ああ。(今すぐ行きます!風殿!!)」
「ハイハイハイ!フィンガース早く、疾風さんに置いて行かれてしまうわよ!ブラックを応援に行くって言ったのは貴方なんですから!!」
「……分かっている。だが、こんな無茶なペースで走り続けると付く前に倒れてしまうぞ?」
「ハイハイハイ!分かってませんねフィンガースは。恋する乙女に〝不可能〟の文字は無いんですよ!」
「今度こそ、女としてエンジェルちゃんを扱わせてやるんだゾ!!(小声)」
それぞれ『黒き風』の情報を掴み、当の本人がいる