お前にふさわしいソイルは決まった!!   作:小此木

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ふまる様、骸骨王様誤字報告ありがとうございました。


第2話

 

 

 

彼に最初に会ったのは、クエストに行く途中の森だった。

 

「何故だ…」

 

ここら一帯を駆けずり回り、何かを探していた。そして、俺は気が付いた時

 

「…少し、いいか?」

「何か、用か?」

 

声を掛けていた。

 

「い、いや。何かを探しながらここ一帯を走っていたのが見えてね。探し物なら俺も手伝うよ」

「いらん。ここには存在しなかった。他を探す。…他人に顔を見せないヤツは信用できん」

 

そ、それはそうだ。だが、見ず知らずのこの男に俺の顔を見せるわけには…いや、『エルザ』に知られなければ大丈夫か。それに、最後は俺に関する記憶を消せば問題ない。

 

「……分かった。俺の顔は見せるが誰にも言わないでほしい。俺の名前はミストガン。フェアリーテイルの魔導士だ」

「俺の名は…黒き風だ」

 

それから俺は彼と行動を共にするようになった。魔力をほとんど持っていない彼と行動するのは少し心配だったが、それは杞憂に終わった。魔法無しで魔導士を軽く蹴散らす身体能力。狙ったものは外さない射撃能力。それに、周りにある魔力を弾丸として撃ち出すマシンガンには驚いた。多くを語らない彼は、ぽつりぽつりとしか自身の事を話してはくれなかった。そして彼について分かったことは、

 

「な、何!?お、お前も此処ではない()()から来たのか!?」

「…ああ。気が付いたらあの森に立っていた。それ以前の記憶は無い」

 

此処ではない世界から来た事。それ以前の記憶が無い事。そして俺は一つの仮説を立てた。

 

〝エドラスの世界にある、どこかの国か俺の国が寄越したこの世界の魔力を奪う為の先兵〟

 

そう考えれば色々な事に合点がいく。

まずは、体内にほとんど無い魔力。エドラスの子供は元々魔力を持っていない者や少しある者がほとんどだ。そして、魔力が枯渇しそうな()のエドラスで育ち、鍛えられたのならあの身体能力も頷ける。

次に武器。微量の魔力でも弾丸に変える技術ならエドラスにも存在するだろう。

最後に右手の金属だが、

 

「そう言えば、お前の右手のそれは何なんだ?あっ、いや、話したくなかったら話さなくてい「魔銃だ。」ま、がん?」

「このベルトにある『ソイル』の入った特殊な弾丸を打ち出す銃だ。…今は動かないが―」

 

魔銃。恐らく強力な魔法を撃ち出す銃だったんだろう。彼がこの世界に来る時、彼の記憶が無くなったと同時に壊れてしまった…壊れていて、良かったと思ったらいいのかどうか。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

話をしよう。あれは今から36万………いや、1万4000年前だったか?―オホン。

 

〝カグラ・ミカヅチ〟

 

彼女の話をしよう。

 

つい最近、変な塔(楽園の塔)から飛び降り、各地を転々としている時出会ったのが彼女である。

 

「風殿、私を鍛えて下さい!!」

「…無理だ」

 

まだ幼い少女が、トテトテ可愛く俺の後を付いて来て『鍛えてくれ』と言ってくる。今日もこれで4回目だ。

 

「何故!? 私は強くなりたい!! エルザ姉さんを見つけ、シモン兄さんを救える力を!!」

 

獣に襲われている所を偶然助けてから俺に付いてくるようになった女の子。でも、こんな可愛い子を俺が鍛えるなんて…

 

「悪い、出来ない」

 

ゴメン。出来ないわ。それと恐ろしい事に、この風様body(ボディー)力加減を間違えたらこの娘、肉塊に変えちゃう危険性があるんだよ!!

 

「何故です!! 私が小さいから? 女だから? 何故鍛えてくれないんです!!」

 

あらら、とうとう泣いちゃったよ。ち、ちくせう。元の口調だったら少しは慰めてやれるが、この無感情な口じゃ

 

「…悪い。教えられん」

 

わ、分かってましたよ!!本当は『ごめん。俺は君に教える事は出来ないんだ』って言おうとしたのに!! 何で教えられないって? だって俺、この風様body(ボディー)の身体能力だけで戦って来たから、戦い方を教えようにも知らねぇんだわ!!

 

「そ、そんな…」

 

ヤッベー、この世の終わりって感じの表情してる………こ、こうなったら!!

 

「…行くぞ」

「へ? 風殿!?」

 

カグラちゃんを脇に抱えた俺は、

 

「フィオーレに俺の知り合いのギルドがある。そこで鍛えて貰え。お前と同い年の娘もいたはずだ」

「わ、分かった!! ありがとう風殿!!」

 

相棒のミストガンの所属しているギルドを目指し走り出した。フッフフ、ミストガン。本んんっっ当に申し訳ないが、この娘俺には荷が重すぎる。君んとこのギルドで世話してくれ!!(人は此れを丸投げと言う)

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

あれから数日カグラちゃんと野宿をして、ミストガンから貰った地図と道中出会った人に道を尋ね(カグラちゃんがほとんど聞いた。最初、俺が聞いたら避けられたからである。解せん!!)(ようやく)く辿り着いたのだが、

 

「うわ~、街の真ん中に丸い変なのが浮いてる~!!」

 

カグラちゃんが言ったように、何故か()()している球体がいくつも浮いていた。あれは、何かヤバイ!! 俺の直感がそう言っている!!…かも。

 

「何だ、あれは?」

「か、風!?」

 

あら? ミストガンじゃないか。今日はフード取ってんだな。そっちの方がいいぞ。顔はハンサムだから隠さなかったらモテモテ間違いなし!!

 

「済まない! せっかく来てくれたのに…俺達のギルド内でイザコザが起きてしまって…」

 

ミストガンから聞いた話を簡単に纏めると、

・マスターの孫の考えは、力こそパワー、弱い奴は要らない!!

・その孫と孫寄りの部下が新入団員が気に入らないと(かん)(しゃく)を起こし、街を全体を人質に暴れている。

ま、こんな感じか。

 

「…下らん」

「か、風!?」

「風殿…」

 

本当に下らない!!俺みたいに意思疎通が難しいんじゃないのに、話もせず一方的にやってんだろ? ま、新入団員が前イザコザを起こしてた所だから仕方がないだろうけど!!

 

「街を人質とは…見ていて気分のいいものではない」

 

ホント、気分の良いもんじゃねぇな!! 関係ない人を巻き込んで!! って…は、初めて思考と口調が一致した!! ってそんな事は置いておいて、カグラちゃんをそんな危ない所には向かわせられない! 保護者として!! どうにかあの黒いのを消せないかな<ウォン>こ、これは!?

 

「動いた。…ソイル、我が力!」

 

よっしゃー! 2回目は都合のいい時に動いてくれたー!!

 

「魔銃、解凍」

「か、風殿これは!?」

「な、何と云う魔力!?(壊れていたのではなかったのか!?)」

 

 

 

『お前にふさわしいソイルは決まった!!』

 

風は街を包む様に浮遊している(かみ)(なり)殿(でん)へ指を向け静かに叫ぶ。

 

『死を包む眠り、スチールグレイ。』

 

ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を顔の前に持って来て、指ではじき一本目を魔銃へ装填する。

 

『湧き上がる血の滾り、ヒートクリムゾン。』

 

更に、二本目。

 

『そして、闇を貫く閃光、ライトニングイエロー。』

 

最後はベルトを叩き、弾丸を勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。

 

『唸れ、召喚獣……イクシオン!!』

 

風が魔銃の引き金を引きソイルの弾丸を(かみ)(なり)殿(でん)へと打ち出した。

 

そして、現れたのは

 

「き、綺麗~!!」

「ま、魔獣か!?」

 

雷を纏い、翼の生えた白馬。

 

「浮遊しているアレを全て消せ」

 

風の指示に吠えて答えたイクシオンは瞬く間に(かみ)(なり)殿(でん)を破壊していった。

 

「す、凄い!!」

「これが、魔銃の力…」

 

呆然としている二人を他所に風はマントを(ひるがえ)し、

 

「…カグラをフェアリーテイルで鍛えてくれ」

 

それだけを伝えると風はその場から離れて行った。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

し、死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!! おいちゃん痛いのと痺れるの同時は我慢できんよ!!

 

誰も居ない小屋で風は、先程破壊した(かみ)(なり)殿(でん)のダメージでのたうち回っていた。

 

ミストガンが大丈夫って言ったギルドだ。カグラちゃんを任せても心配ないはず!! ま、何かあったら、イフリートでも召喚して塵も残さないよう消し炭にしてやろう。…あっ、俺自由に魔銃起動できないや…やっぱ、痛い! 痺れるよー!!

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

この日、ラクサスはギルドを追い出され、旅に出た。入れ違いでミストガンが連れて来た女の子、カグラ・ミカヅチは幸運な事に偶然妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ入団していた兄と再会。そして、

 

「…お、お前カグラか?」

「エ、エルザ姉さん!?」

 

風に助けてもらうより以前に助けてもらった恩人、エルザにも再会できた。

 

(風殿!! 本当にありがとう!!)

 




2017/6/2修正しました。

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