お前にふさわしいソイルは決まった!!   作:小此木

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第19話

 

 

 

『お前達に相応しい()()()は決まった!!』

 

―風は業火の中の()()()を指さし、静かに叫ぶ。―

 

『全ての源、マザーブラック(ブラックソルト)!!』

 

―風は装備して(持って)いた一つ目の弾丸(薬莢の中身)を少し火の通った赤い()()装填し(かけ)た。―

 

『全てを焼き尽くす、ファイヤーレッド(レッドソルト)!!』

 

―先程とは違い二つ目は少量別の()()装填(かけ)

 

『そして、全てなる臨界点、バーニングゴールド(ゴールドソルト)!!』

 

最後は容器を叩き、勢いよく弾丸(薬莢)を飛ばし回転している弾丸(薬莢)が三つ目の赤い()()へ中身を装填(かけ)た。―

 

それを見ていた()の心臓は自然と早くなり、歓喜の声と(よだれ)が込み上げてくる。

 

『出でよ、召喚獣(調理された)フェニックス(三種ステーキ)!!』

 

()の目の前に召喚獣(調理された)フェニックス(三種ステーキ)が現れた。

 

「……あ、あぁ!!さぁ、何処からでも掛かってこい!!」

 

気付いた時にはもう……

 

 

 

 

 

()負け(美味しく食べ)ていた。

 

ブラックソルトの乗った肉は、成分である硫黄が炎で消え、肉の旨味が引き立っていた。

レッド(ピンク)ソルトは少量しか使用していないにも関わらず、調理された肉の旨味が増し、空腹だけでなく同時に()の中にミネラルを補給してくれる。

ゴールドソルトが掛かった肉からは、柑橘(かんきつ)類の香りが豊かに広がり、さっぱりとした食感で()の食を更に掻きたてる!!

 

…これは!

 

これは!!

 

「う、うーまぁーいーぞぉー!!()殿()!カグラは、お代わりを所望する!!」

 

さぁ!早く!ハリー、ハリーハリーハリー!!

 

「ど、どうしたカグラ!?」

 

あぁ、シモン兄さん?そ、そうだ!!

 

「は、早く、綺麗なお皿を()殿()に渡し、装ってもらってくれ!!」

「……は?」

 

何をモタモタしてるんだ兄さんは!!

 

「早く、かぜ、どの、の料理、ステーキを…を?」

 

風殿の三種ステーキ………あぁ、さっきのは桃源郷(シャングリラ)だったのか。

 

「ステーキがどうしたカグラ!?何か逢ったのか!?」

「いや、風殿はひもじい思いをしていないだろうか。そんな事を考えていたら声を出してしまったらしい。風殿にステーキを食べさせてあげたい…。」

 

咄嗟に付いてしまった嘘…兄さんにこれ以上心配事を増やさないよう気を付けよう。

 

「そうだな。そうなっていたら、俺達の特性料理を食べさせてやろう。…そ、そうだ!!今、映像魔水晶(ラクリマ)を持ってくる!!」

「ん?どうしたんだ兄さん?」

 

一体どうしたんだ兄さんは?

 

「今日は大魔闘演武(だいまとうえんぶ)の2日目だからな。空いた時間は応援をしようと思って持って来たんだ!!それに、今日からバトルパートになるらしい。今年も俺達"捜索組"は出場しないからな。今回ぐらい応援したっていいじゃないか!!」

 

あー。そう言えば兄さんは毎年見てみたいって言っていた。自身の魔法を他人に見せながら戦うなんて…私はそういう()()()は好きではない。私の表現が悪いが、死地での戦いの中、既に相手に自身の手の内や()()()を見せている。或いは、見られ知られていると同等なのだ。そんなモノやれと言われても私は断固拒否する。が、エルザ義姉さん達も無事だったし、それも出場しているんだ。兄さんにこうした息抜きは必要だろう。

 

「私は否定していないよ、兄さん。今日は、捜索活動は休みにしているんだ。一緒に義姉さん達を応援しよう。」

「今日は、ゆっくり観戦し、明日からまた風のヤツを探しに行くとするか!!」

『僕も観戦していいかい?』

「おお!雲!!お前も俺達のギルドの応援宜しく頼むぜ!!」

『分かっているよ。』

 

この頃、兄さんは以前の元気を取り戻してきている。これも義姉さん達が帰って来てくれたk「あれ?何で()()()()()が出場しているんだ?」な、なんだとぉ!?

 

「ほ、ほぉ~。ミ、()()()()()が出場しているんだ。」

「ああ。でも、もう元いた世界に帰ったんじゃなかったか?」

「こ、この日の為に帰って来たんじゃないか?」

「成程。よし!行けぇ!!ジュラさんに負けるな!!」

 

さて、あの()()()()何枚に下ろしてやろうか?

 

『どうしたんだいカグラ?殺気なんて出して。』

「ああ、雲殿。()()を切り刻む良い()()()が見つかったんだ。……武者震いが殺気に変わっただけだ。」

『そ、そうかい。』

 

間違いない。あれは()()()()()だ。エルザ義姉さんの周りを飛ぶ()()が!今から行って、この私が引導を渡してくれるわ!!

 

<カシン!キン!!カシン!キンッ!!>

 

「ど、どうしたカグラ?刀の(つば)を上げたり下げたりして…。」

「ああ。気にしないでくれ兄さん。思い出し笑いと同じように、"思い出し斬り"って云うのがあって、思い出しただけで斬りたくなる人物が頭に過ったんだ。」

「そ、そうか……。」

 

ヨシ、殺ソウ。ソウト決マレバ……

 

「お、おい!ミストガンが急に苦しみ出したぞ!?」

 

そのまま、死んでくれないかな~。

 

「あ〝、アイツ突然気絶して負けちまった!?」

 

兄さんがあんな悔しそうに地面を叩いている。そりゃ、あのジュラさんに善戦出来ていたんだ兄さんが悔しがるのも納得だな。さて、

 

「……兄さんを落胆させた。行ッテ殺ソウ。」

 

サクッと()って来マスカ!!

 

『新人同士の対決になりました。な、なんとブラック選手は一週間前に入ったばかりと言う異例の新人。女性ばかりの人魚の踵(マーメイドヒール)に唯一の男だそうです!羨ましい!!そして、その実力は未だベールに包まれたまま!!一方最強ギルド剣咬の虎(セイバートゥース)に所属しているだけでユキノ選手の強さは期待がかかります!!』

 

ん?まだ最終試合があったな。これを見たら………はぁ?

 

『記憶がなくても、技の威力は変わらんぜ!!クルダ流交殺法・陰流!!空牙(クーガ)!!』

 

あ、あの一瞬消える様に躱す動き!それと、髪を下したら……ッ!!?

 

『こ、こんなことが!?始まりは圧倒的有利だったユキノ選手ですが、ブラック選手の放ったたった一つの技で星霊<ビシ!!>ッ!?訂正!!星霊を倒し、驚く事に闘技場を守る魔法壁にヒビを付けました!!よって勝者ブラッ―』

 

ま、まさか!まさか!!まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか!!!

 

「ど、どうしたカグラ?映像魔水晶(ラクリマ)を両手で持って。」

 

兄さんの声が何故か遠くに聞こえる。

 

『―ですが今回驚くべき事に、あれ程大きな威力にも関わらず、ブラック選手から大きな魔力反応が全くありませんでした。その為、魔法を使()()()にユキノ選手と戦った事になります。その為ブラック選手は規定上失格。勝者はユキノ選手になります!!』

 

こ、この…

 

「このクソ審判共が!!」

 

<斬!!>

 

「あぁっ、苦労して買った魔水晶(ラクリマ)だったのに……。」

「兄さん!大魔闘演武(だいまとうえんぶ)は何処でやっている!!」

「俺に何か恨みでもあるのかカグラ……あるなら、謝る。だからその刀を鞘に仕舞って、話し合おう。」

 

何を言っているんだ兄さんは!!

 

「兄さん!魔水晶(ラクリマ)は必ず弁償する。そんな事より、さっき映っていた人物ブラックは、恐らく()殿()だ!!」

「な、何だって!?」

『僕もそうだと思うよ。』

「やはり雲殿もそう思うか!!」

 

善は急げだ!!

 

「兄さん!ウォーリー達に連絡し途中で合流!その後、」

「分かっている。俺達"捜索組"も大魔闘演武(だいまとうえんぶ)へ乱入だ!!」

 

何故あの様な口調になっているかは後だ!()殿()!!今からカグラが貴方に会いに参ります!!

 




今回はカグラ視点です。

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