お前にふさわしいソイルは決まった!!   作:小此木

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第15話

 

 

 

天狼島(てんろうじま)は、まだ残っている。〟

 

青い天馬(ブルーペガサス)一夜達からの嬉しい情報。そして、

 

「大きくなったな、ロメオ。」

「おかえり!ナツ兄!!みんな!!!」

「「「おかえり~!!」」」

 

7()()ぶりにエルザ達が妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ帰って来た。

7年前アクノロギアの二回目の咆哮(ブレス)に対し、〝幽体〟であった初代妖精の尻尾(フェアリーテイル)マスター、メイビス・ヴァ―ミリオンは皆の絆と信じる心に感化され、絶対防御魔法妖精の玉(フェアリースフィア)を発動し皆を守る為凍結封印を行った。しかし、その封印を解除するのに7()()をも費やしてしまったのだ。

 

「ギルド、なんか小っちゃくなったな~。」

「そう言えば、そうよね。」

 

ナツ、ルーシィの何気ない会話の内容は、帰って来た皆が不思議に思っていた事。以前の見る影もなく小さくなってしまったギルド(我が家)

 

「わ、悪い。」

「こ、これには訳が…。」

 

マカオとワカバがそう濁した。

 

「ダンディに俺達が、」

「説明する、デスヨ!!」

 

その場に現れたのは、以前より大人びたウォーリーと少し髭を生やした()六魔将軍(オラシオンセイス)のリチャード。そして、

 

「エルちゃん!久っしぶり!!元気!最強ミャ!!」

 

女性らしさが溢れ出る肢体を魅せつけるような格好のミリアーナだった。

 

「ミ、ミリアーナか!?」

「前より渋くなったな、四角ー!!」

「えぇ!?貴方ホットアイ!?」

 

エルザ、ナツ、ルーシィが彼らの登場に驚いた。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆から連絡を受けたんだ。でも、本当に生きてて良かったミャー!!」

 

そう、叫びながらエルザに飛び込んだミリアーナ。

 

「ギルドの絆がなせる業、デスヨ!!」

「ダ、ダンディに…ウグ、本当に良がっだ!!」

 

その光景に涙を流すブキャナン兄弟。

 

「あ、貴方捕まっていたんじゃないの!?」

 

何故ここにリチャードが居るのか疑問に思っていたルーシィの質問に、彼は涙を流しながら

 

「…弟と、このギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆さんが!この私の為に数年かけて評議院を説得してくれたお陰で、昨日晴れて自由の身になったのデスヨ!!」

 

そう答えた。

 

「そう、そう。このギルドが小さくなったの「エルザ義姉さん!!」は…」

 

泣いている二人に代わりにギルドが縮小した事を説明しようとしたミリアーナの言葉を遮って、

 

「エルザ義姉さーん!!」

 

前髪は(ひたい)あたりで切り揃えられ、腰まである黒髪を(なび)かせ走る女性。

 

「ミャ!?」

 

咄嗟にミリアーナはエルザから離れたが、エルザと変わらない身長で、誰もが美人と認める人物がエルザの胸目掛け突っ込んで来た。

 

「ま、まさかお前()()()か!?」

 

エルザに飛び込んでいったのは、7()()()エルザに剣を習い彼女と〝風〟を慕っていたカグラだった。今は、東方の()と呼ばれる剣と、何処か見覚えのある()()両刃の剣を帯刀している。

 

「もう会えないと思っていたぞ。7()()()のまま息災で何よりだ。」

「お前はシモン!?」

 

カグラの後に続いて少し大人になったシモンが現れた。

 

「お前達が消えて大変だったぞ。ギルドはガタガタ。カグラはお前達を探しに行くと聞きやしない。」

「…。」

「も、もう兄さん!!」

 

シモンの言葉に何も言えず黙ってしまうエルザと、エルザに抱き着きそれに抗議するカグラ。

 

()()()が居なかったらどうなっていた事か。」

「アイツ?」

 

シモンの言葉を繰り返し、不思議に思うエルザ。

 

「今日は此処で年に一度の情報交換する予定なんだが…。」

「む!!」

 

<ダダッ!!>

 

突然走り出したカグラ。エルザ達の目がそれを追い、その先に居る()()を捕らえた。

 

「あれ?」

「あの姿!?」

「ま、まさか!?」

 

フードで顔を隠しているが、トレードマークだった〝マント〟に色取り取りの薬莢(やっきょう)の入ったベルトを締め、左手に見える上下二連式ショットガン。

 

「「「()!!??」」」

 

幾度となく助けてもらった存在。名前以外、何も分からなかった存在。

 

「奴が居たのなら納と<ガキンッ!!>くぅ!?」

 

エルザが驚愕したのも仕方がない。カグラは持っていた刀の()ごと()()を込めてその人物を切りつけたのだ。そして、ソレは持っていたショットガンで防がれた。

 

「…。」

「クソッ!!大切な銃を防御に使うなど!!」

 

そこから始まった激しい剣撃と銃撃の交差する戦闘。カグラが切りつけ、相手はそれを躱し銃で反撃。カグラが自分に向いていた銃口を鞘付きの刀の先で逸らし、蹴りや拳を繰り出せば、その反撃で蹴りや拳がカグラに飛んでいく。それらは全く加減をしていない。その為、ギルドの至る所が破壊されて行っている。

 

「カ、カグラは何をしているんだ!?」

「アイツと会った時はいつもこうだ。所構わず互いに全力でぶつかり合い、周りに被害を出していく。最近では被害を抑えるため、このギルドの近くでやらせている。カグラはお前が居ない寂しさと、()が見つからない焦りと悔しさ。」

()が見つからない!?なら奴は!?」

 

どう見ても〝黒き風〟を彷彿とさせる格好なのだが、驚いたことにシモンによれば目の前でカグラと戦っているのは黒き風ではない。

 

「ハァ、ハァ、さっさとその()()置いて行け!!」

「ハァ、ハァ、もう(いさぎよ)く諦めるんだゾ!!」

 

(あらわ)になった右手には〝風が召喚獣を出す為使っていた()()〟が待機状態で装備されていた。そして、聞き覚えのある語尾。カグラと対峙している人物は()六魔将軍(オラシオンセイス)()()()()()だった。

 

()を探しに旅をしている時、カグラは寝言でお前と風の名前を発しながら泣いていた。それをアイツに相談したら、何かガス抜きが必要だって言ってな。ああやってガス抜きを買って出たんだが…何時もマジでやり合うからギルドはボロボロ。俺達が仕事して稼いでも、お前達の捜索依頼の費用に風を探す為、長期的に組んだ費用。被害を出した場所の修復費と謝罪金で吹っ飛んで行った。その影響でギルドの修復費も出せなくてな。申し訳ないが、こんな状態だ。」

「「「ああ、成程。」」」

 

帰って来たエルザ達は、目の前の惨状を見てボロボロになったギルドに納得してしまった。

 

 

 

■□■□■□■□

 

 

 

「久しいな。リチャード殿!」

「おぉ!!ジュラ殿!!」

 

そして次の日、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のジュラがリチャードに話しかけた。しかし、彼の周りには誰もおらず、一人で来ていた事が分かる。ほとんど死亡扱いされていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の主戦力が帰還したとの知らせと、()()()の為に仲間達より早く駆けつけた。

 

「よーし、みんな聞いてくれ!!」

 

他の蛇姫の鱗(ラミアスケイル)メンバーと青い天馬(ブルーペガサス)の面々が揃った時、四代目マスターを押し付けられ…失礼。請け負ったマカオが全員に聞こえるよう叫ぶ。

 

「皆が帰ってきて嬉しい…が、更に嬉しい事に、この度新しい家族が増える!!」

 

その言葉に動揺を隠せない面々。

 

「ウォーリーの兄、『リチャード・ブキャナン』を新しい()()として歓迎する!!異存のある奴は出てこい!!この決定だけは死んでも譲らねぇ!!」

 

そして、起こる歓喜の叫び。

 

「わ、私が!?」

「リチャード殿。私はこの瞬間を〝友である貴殿と一緒に立ち会う〟為に来た。(はや)る気持ちを抑えられず、早く此処に着いてしまった事は反省すべき点だ。しかし、嬉しい事に昨日、皆が帰って来たのだ!この日に立ち会えた私は幸運だな!!」

 

ジュラはリチャードが釈放された事をマカオから聞いた。そして、彼を妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ入団させることを提案したのだ。弟のウォーリーも入っている事もあり、とんとん拍子で話が進み、今日晴れて入団が決まったのだった。昨日、エルザ達が7年ぶりに帰って来たのは嬉しい誤算であった。

 

「エルザ義姉さん、風殿は…。」

「済まんカグラ。私達も天狼島(てんろうじま)中を探し、メイビス…初代マスターにも聞いたが奴は何処にもいなかった。」

 

ドンチャン騒ぎが起こっているギルドから少し離れた場所で、カグラはエルザに風が天狼島(てんろうじま)で一緒に封印されていなかったかと聞いていた。

 

「そう、です、か…。」

「そんなカグラへ、エンジェルちゃんからの有り難~い情報、だゾ!!」

 

突然聞こえたエンジェルの声。彼女も宴会から抜け出し、二人をこっそり付けていたのだ。

 

「…フゥ、また貴女が変装して響いている〝黒い疾風〟の噂でしょ。」

「フッフッフ、今回は全く違う。2年前から突如現れた凄腕の拳法家。」

「そ、その人物は足技を!?」

「残念だがあまり使わないそうだゾ。主に()()での格闘を得意としているらしいゾ。」

「ハァー。」

 

その言葉を聞いて落胆の色を隠せないカグラ。

 

「だけど、()()()()()()()()()を使用すると云う噂を耳にしたんだゾ!!」

「な、何ぃ!?」

 

エンジェルの言葉を聞き、さっきの態度とは一変し歓喜の色を隠せないカグラ。

 

「その人物に会えば、「風殿の手がかりが掴める!?」…そう言うことだゾ!!」

「フゥ、乗りかかった船だ。その場所には私も同行しよう。」

「エ、エルザ義姉さん!!」

 

風の居場所を突き止める手がかりを掴んだカグラとエンジェル。そこにエルザも加わり、現地調査を行う事が決まった。

 




オリ主が2話連続登場していない事実。…実は次の話も出てこない予定です。

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