「君と組むのも大分慣れて来たよ」
森の中で男はそう言った。男はいつも顔を隠しているが、今日は珍しく青い入れ墨の様な模様がある顔を出して目の前で木に寄りかかっている男と話をしている。
「…そうか」
相槌を打ったのは右手を金色の金属で覆われ、片方しかレンズの入っていない奇妙なサングラスをした男。
「なぁ、前から誘っているが俺達のギルドに入らないか? 数年組んでいるが、君ほどの男がどこのギルドにも入っていないのはもったいなく思うんだ。」
「…考えておこう」
「ハハハ、またそれか!」
「…まぁな」
(そりゃ、そうだよ。ギルドってアレだろ。登録して、ちまちまレベルとランク上げるって典型的なヤツだろ? パッと出の目立つ新人を難癖付けて潰したり、逆に返り討ちにあったり…俺そう言う面倒でギスギスしたの嫌なんだよ! だから、俺はこれからも
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「…此処は、何処だ?」
全く記憶にない森で俺は気が付いた。拉致!? と思い自身が何処かに括り付けられていないか、布か何かでくるまれていないか咄嗟に確認したのだが、
「…何だこれは」
右手は変な金属をはめられて指は動かないし、動く左手で何かされていないか体を確認してみたら、何時もの幻想をぶち殺す上条さん似のツンツンヘアーは何故かサラサラヘアーに変わってるし、何故かマントを羽織ってるし、視線は高くなってるし…
「…何だこれは」
だから、何なんだよこれ!! ってか口調に感情が乗らねぇ!! 声も違う!? それと、持っていたスマホや財布は大丈夫か!?
「俺の持ち物が何もない。…あるのは上下二連式『ショットガン』とベルトの弾丸に入った『ソイル』のみ…」
っん!? 今俺『ショットガン』と『ソイル』って言わなかったか!?
「何故『ソイル』と言う言葉が出たんだ?」
ソ、イル? …ソイル!? 覚えている、覚えているぞ!! 『ソイル』の入った弾丸と云えば、途中打ち切りになったFFのアニメで召喚獣を召喚する為に使用する特殊な弾丸だ。ああ、懐かしい。毎週早く家に帰って観てたな~
ってそんな懐かしんでる場合じゃない!! 『ソイル』『右手の金属』でほぼ確定してるけど、その金属で顔を映してみよう。俺の予想があっていれば―
「…黒き風」
ヤベー、予想大当たりだわ。俺、黒き風になってる!! だったら、
「ここはファイナルファンタジーの世界なのか?」
よっしゃ、チョコボ、チョコボはどこにいるぅぅぅぅぅぅぅー!!
~約3時間後~
い、居ない…無駄に高性能の風様ボディーを駆使し、数十キロあるこの森を数時間駆けずり回ったのに!! ぐぬぬ…
「何故だ…」
何でチョコボ居ないんだよ!! FFだぞ! FF!! チョコボの居ないFFなんて、FFじゃねー!!
「…少し、いいか?」
驚いた事にこんな森の中にも人が居た。俺みたいな怪しい人物に声を掛けてくるほどの出来た人だった。よし、第一村人(?)発見!!
「何か、用か?」
ちっがーう!! 『何かようですか?』って気さくに答えるのが普通だろ!? この風様ボディ、身体能力は驚異的だがコミュニケーション…特に会話が思うように出来ない!! てか、この人顔をスカーフで包んでるよ!? ヤ、ヤバイ団体の人だったら殺される!!丁重に断らなければ!!
「い、いや。何かを探しながらここ一帯を走っていたのが見えてね。探し物なら俺も手伝うよ」
「いらん。ここには存在しなかった。他を探す」
うっそー!? あれ見られてたの!? 恥ずかしー!! ってそうじゃない。口調はもう諦めるとして、
「他人に顔を見せないヤツは信用できん」
そうそう。信用できないんだよね。こういう時はこの口調で良かったと思う。絶対元の俺だったらこんな事言えなかったぜ。
「…分かった。俺の顔は見せるが誰にも言わないでほしい。俺の名前は―」
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あぁ゛~、懐かしいな。右も左も分からない中、森でチョコボを探し回ってコイツ(何故割り木に座ってんだ?)に出会ったんだよな。最初は怪しいヤツだったけど、話していく内に俺と同じで、この
「マカロフのバカタレ!!! そんなに死にたきゃ勝手に死ねばいい!!」
で、この婆ちゃんだれよ?
「お前は何「で、何してんだい
「このリンゴ、頂いても?」
「…ミストガン、誰だコイツは?」
おい、無視をしないでくれ、二人とも!!
「人間同士の争いを助長するような発言はしたくないけどね、あんたも一応マカロフの仲間だろ。とっとと出ていきな。そして、勝手に争いでもしてるんだね」
言われなくても、やってましたよ! ちょっと前まで!! 相棒の
『謎の老婆』もとい、
「あんたら、二人で何てことしてんだい…」
だぁー! 二人して俺を無視しやがって!!こっちもこっちで勝手に話に入り込んでやる!!
「…知らん。ミストガンにとって悪害だったから潰したまでだ。それに、」
二人の会話で
「人質を取るようなギルド、俺には到底支持できん」
「で、アンタはミストガンの相棒なんだね。私は、ポーリュシカ。名は?」
「…黒き風」
~楽園の塔~
いや~、ミストガンのギルドの皆が無事で良かったよ。未だにどこのギルドにも入ってないけど。あれからミストガンと別れて、久しぶりに元の世界に戻る方法を探しに海へ出たんだ。
「私もお前を救えなかった罪を償おう」
「オレは…救われたよ」
高い所なら海が見渡せて何か分かるかなって近くにあった塔に登ったら、頭上に大きな光が現れるし、目の前で最期を覚悟した二人が抱き合ってるし
「…何故お前が?」
ホント何で
「き、貴様、どうやって此処へ!? いや、今から急いでここから逃げ「動いた。…ソイル、我が力!」ろ!?」
よっしゃあー!! 初めて魔銃が動いたー!!
風の右腕の金属が形を変え、
「魔銃、解凍」
「ま」
「銃?」
一丁の魔銃が右腕に現れた。最期を覚悟したエルザ、ジェラールは突然現れた男の行動にあっけに取られている。
『お前にふさわしいソイルは決まった!!』
風は迫り来る光へ指を向け静かに叫ぶ。
『大空を超える無限、スカイブルー。』
ベルトに刺していたソイル入りの弾丸を指ではじき一本目を魔銃へ装填する。
『大地を貫く完全、グランドブラウン。』
そして、二本目。
「や、奴は何をしているんだ!?」
「私達の事はいい!! 早く逃げろー!!」
『そして、次元を抉り出すまやかし、マジックバイオレット。』
最後はベルトを叩き勢いよく飛ばしシリンダーに装填した。魔銃にある風の心臓の鼓動が早くなりドリルが唸りを上げる。
『出でよ、召喚獣…テュポーン!!』
風が魔銃の引き金を引きソイルの弾丸を降り注ぎつつある光へ打ち出した。
「しょ、召喚!? いかん!! ルーシィの様な星霊魔導士でもこのエーテリオンは止め―!?」
エルザとジェラールはエーテリオンの光の眩しさに目を瞑った。
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「い、生きてる…」
「エ、エーテリオンはどうなった!?」
あれ? 二人とも見てなかったの?じゃ、説明するわ。
「テュポーンは風と共に歩み、空間と共に消滅する召喚獣。あの光を一瞬受けさせ、その全てを空間ごと消滅させた。」
てか、こんな所で二人とも何やってたんだ?
「き、貴様「なんてことをしてくれたんだ!!」ジェ、ジェラール!?」
へ? ミストガン何でそんなに怒ってんの? 助けたつもりなんだけど!?
「エーテリオンの魔力を吸収し、『Rシステム』を完成させる計画が水の泡になってしまった!!」
「な、ジェラールまだそんな事を!?」
ん?ジェラール?
「…お前、ミストガンでは?」
「違うな。オレはジェラール」
「ミ、ミストガンを知っているのか!?」
「ああ、つい最近共に仕事をした」
あっれー。彼はミストガンじゃないの!? この女性はミストガンを知ってるようだけど…ま、まさか!?
「スマン、人違いだった」
人違いでした。済みません。じゃ、帰りまs―
「クソォ!! エーテリオンが途中で消え、評議会も混乱している!!」
「ジ、ジークレイン!? 何故ここに!?」
おいおい、またソックリさんが出て来たよ。世界に三人は居るって言われているソックリさん全部見たの俺が初めてじゃね!?
「「俺達は一人の人間だ。最初からな」」
ゆ、幽霊さんでしたか!? やべ、呪われそう。
「し、思念体!?」
おっ! そこの姉ちゃん説明乙です。これで呪われる心配は無くなったな。てか、もう俺は居なくていいだろう? 後は当事者だけでやってくれ。
「帰る」
「オイ待て! エーテリオンをも消すその力。オレに寄越せ!!」
知らんがな! やりたくなかったけど、
「お、おいそっちは!?」
「ミストガンに会ったら、『また依頼を待っている』と伝えてくれ」
紐なしバンジー!! ヤッハー!汚物は…止めよう。さて、風様ボディならこのくらい屁でもない! 体は!! でも、やっぱ落ちるのは怖いよー!!
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エルザやナツ達のお陰でジェラールの野望は消え、シモン達『楽園の塔』のエルザの弟分は晴れてフェアリーテイルへの入団が決まった。
一方、評議院ではエーテリオンを消した謎の男の行方を捜している。影からジェラールを操っていたウルティアも…
2017/6/1修正しました。