この平行世界の爆裂娘に祝福を!   作:大夏由貴

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ちょっと文章滅茶苦茶になったかもしれない。


このいずれ辿る爆焔に戦慄を!

「『エクスプロージョン』!」

 

ドゴオォォォオオン!!!!

 

いつもの昼下がり、今日も今日とてめぐみんの日課をこなしていく。

響く爆音、伝わる振動、全てがもう身体に染み付いている。今回の爆裂魔法はいつも以上に絶好調みたいだ。

 

「ふふ・・・カズマ、今のは何点貰えますか?今日の爆裂魔法は中々の出来だと思います・・・。」

「うーんそうだな、九十八点ってところかな。今日は随分調子がいいな。」

「当然でしょう。なにせ今回はいつもの日課と違うのですから」

 

そう、只今絶賛地面とベーゼをしているめぐみんの言う通り今日はいつもの日課とは少し違う。場所もいつもより遠い所にしている。

というのも今回は俺とめぐみんの二人だけではなく・・・

 

「ふむ、流石は私といった所ですね。『こっち』の私はこの歳でも十分強力な爆裂魔法を使えるみたいですし。四年分のキャリアがある身としては複雑な気持ちですが・・・。」

 

・・・大人めぐみんまで一緒について来たからだ。

薄々勘づいてはいたけどやっぱり大人めぐみんもこの日課を毎日やっているらしい。めぐみんも今の自分が違う世界の自分にどう評価されるのか気になったらしいので一緒に来てもらったのだ。

 

それにしてもこうして並ぶと顔つきが本当にめぐみんと瓜二つだ。寧ろ何故今まで気付かなかったのかが疑問だ。容姿は丁度めぐみんとゆいゆいさんの中間辺りに見える。

 

ちなみに何故俺と大して歳も変わらないこの人を『大人めぐみん』と仮称しているのかというとそれは今朝、ウィズの店で起きた事件まで遡る-

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

ここは始まりの街、アクセルにひっそりと建っている魔法道具店。知る人ぞ知るウィズが経営している店だ。

そんな店の店内は今・・・

 

「め、めぐみん!?は、え?どういう事だ!?」

「え?めぐみんったらいつの間に分身を覚えたの?」

「何を言っているのですかアクア。私は爆裂魔法関係のスキル以外取るつもりは毛頭ありません。」

「い、いや!違うだろう!?突っ込む所はそこじゃないと思うんだが!?」

 

・・・ちょっとした混沌と化していた。

そしてその原因とも言える人物は今・・・

 

「ほう・・・『こっち』のウィズの髪は茶色いのですね。皆ほんの少しとはいえ色々違いがあって新鮮です。」

「ええっと、そんなにジロジロ見られると恥ずかしいのですが・・・。」

 

・・・ウィズを興味深そうに眺めていた。ウィズは間近で観察されて困ったように呟く。

今、この場にバニルが居なくて本当に良かった。正直これ以上場が乱れたら収集がつかない。

 

「待て待て待て、ちょっと待ってくれ。おい、めぐみん!お前生き別れの姉とかは居るのか!?ついお前の名前を騙っちゃう残念な感じの!」

「おい、誰が残念なのか聞こうじゃないか。」

 

格好いい(と思ってるらしい)ポーズを決めながら淡々と述べる女性、自称めぐみん。

いきなり自分はめぐみんだと言われたって納得出来る訳がなく、めぐみん(ロリ)に問いかける。めぐみん(仮)が何か言っているがスルーだ。

 

「おい、今私を見た瞬間に何を考えたのか聞こうじゃないか。」

「ああもう面倒くさいなお前ら!いちいち同じ台詞吐くなよややこしい!」

「「おい、誰が面倒なのか聞こうじゃないか。」」

「ハモんな!お前ら打ち合わせでもしてたのか!」

 

畜生なんでこいつらこんなに息ピッタリなんだよ!ていうかめぐみん(ロリ)は適応早すぎだろ!

 

「まあさっきの質問に答えるなら、いませんよ。私に姉妹は妹だけです。姉なんて存在しません。」

「ええ、私の家は四人家族です。・・・まあ一人増えましたけど。」

「それなら一体どういう事だよ!他人の空似じゃないのか!?つーかなんで一番慌てる立場のお前がそんな落ち着いてんだ!」

「ふふふ、カズマ、これが所謂もう一人の私という事ですよ。これは我が心の闇が生み出したもう一つの人格・・・!」

「ああそうだったこいつはこういうヤツだった!」

 

どうみても人格どころか肉体まであるけどな!ていうか全然話が進まん!

 

「まあ私はめぐみんといってもこの世界に存在するめぐみんではないんですけどね。」

 

と、いい加減頭を抱えそうになった時、大人めぐみんが説明を始める。

 

「この世界?どういう事だ?」

 

ダクネスが大人めぐみんに問いかける。

 

「いや、さっきアクアが言ってたじゃないですか。他の世界に繋げるだのなんだの。」

「ああ、確かに・・・って待て。てことはアンタは異世界から来たって事か?未来とかじゃなくて?」

「いえ、どっちかというと平行世界でしょうね。けど未来というのは当たらずとも遠からずって感じですね。私は『この世界の未来』ではなく『平行世界の未来』からやってきた、というのが正しいでしょう。」

「平行世界?なんでだ?」

「いえ、だって辻褄が合いませんし。」

「辻褄?」

「ええ。だって私がカズマ達と出会ったのは十七の時でしたから。」

「ああ、なる程。じゃあそっちの俺はめぐみんより年下なのか。」

「いえ、向こうのカズマは二十歳でした。ダクネスも二十二でしたし。アクアは・・・まあいいでしょう。」

「えっ、マジか!?」

「マジです。だからこっちのカズマを見た時驚きましたよ。カズマの方が年下になっているんですから。」

「ねえ、何で今私だけ外されたの?」

「ん?じゃあ今アンタ幾つなんだ?」

「・・・躊躇無く女性に歳を聞くなんて相変わらずブレませんね。・・・十八歳ですよ。」

「なる程、道理で大人っぽい訳だ。」

「な、なあカズマ。どうしてそんな簡単に信用出来るんだ?正直私はまだ半信半疑なのだが・・・。」

「ちょっと待って無視しないで。なんで今私だけ外されたの?」

 

一人で納得しているとダクネスが困惑した様子で聞いてきた。アクアが何か言っているが面倒臭いからスルーで。

まあ確かに別の世界からやってきたなんて頭のおかしい説明なぞ普通誰も信じないだろう。しかもよりにもよって紅魔族だ。ただの戯れ言の可能性がかなり高い。

だが俺は実際にそれを体験している。世界を移動するという事は有り得ない事ではないのだ。使用されたのが神器なのだから尚更。

それに実際その理由だったらアクアが言っていた程の膨大な魔力が消費されているのも納得出来るし、何よりこのめぐみん(仮)はめぐみん(ロリ)に似すぎている上に、俺達の事について詳し過ぎる、というより全く嘘を吐いている様には見えないのだ。

紅魔族はそういった設定を作ると大抵、

 

『フフフ、此処が彼の地とは異なる世界か…。そしてまずは挨拶といこうか。初めまして。この地の我が親愛なる仲間達よ。』

 

みたいな感じで話しかけてくるからなぁ…。

それに比べるとこのめぐみん(仮)は最初から素の状態で会話をしている。なんというか、『作ってない』のだ。

これで実は全部設定でしたなんて言われたらもうアークウィザードじゃなくて役者を名乗った方がいいと思う。

 

そんな感じの説明をしたらダクネスも納得したのか、なる程といった顔をする。

 

「確かにそうだな。それにまあ元々私達が強く言える立場ではないしな。」

「まあ勝手に呼び出したのこっちだからなぁ…。」

「全く・・・それで?私はどうやったら元の世界に戻れるんですか?」

 

めぐみん(仮)がそう言って・・・

 

「「「「・・・・・・・・・。」」」」

 

・・・俺達全員が顔を見合わせる。

当然だ。何せ俺達が使用した神器は使い魔を呼び出すという情報しか知らない。

 

「・・・ウィズ、ウィズ。この神器って使い魔を召喚する以外に何が出来んの?」

「・・・ええっと・・・えっと・・・。・・・すみません、私はその情報しか知らなくて・・・。」

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 

 

・・・えっ。

 

 

 

「・・・あの、どういう事ですか、それ。えっと、つまり、その・・・帰れないと?」

 

 

どんどん不安そうな表情を浮かべ始めためぐみん(仮)。

そしてそれに比例するように冷や汗を流し始める俺達。

 

俺は出来るだけ明るい雰囲気を出そうと声を上げる。

 

「ま、まあともかく!状況は分かった事だし!もう少し情報交換でもしないか?」

「あの、ちょっと本当に怖いんですけど!?大丈夫なんですよね!?私ちゃんと帰れるんですよね!?」

「い、いや、こういうのは俺達みたいな一端の冒険者じゃなく、専門家に任せた方がいいと思うんだ。という訳でちょっと安楽死が出来て死後の世界に行ける方法知らないか?」

「もしかしてその専門家ってエリス様の事ですか!?あなたは私にいっぺん死ねと!?」

「いやまあ大丈夫だって!もし収穫が無くてもアクアに蘇生魔法かけて貰えばいいんだから。」

「嫌ですよそんな馬鹿みたいな理由で死ぬなんて!」

 

激しく抵抗するめぐみん(仮)。正直これが一番手っ取り早い方法なんだが、まあそうだよな。俺だって嫌だ。

 

と、そこでめぐみんが物珍しそうに大人めぐみんをジロジロ見つめる。

 

「しかしこれが十八歳の私ですか…。意外と私と違う所が多いですね。髪とか服とか。」

「そうだな。少なくともこの人の方がまともな魔法使いに見えるな。」

「おい、私のどの辺りがまともじゃないのか聞こうじゃないか。」

 

めぐみんの抗議の声を聞き流してめぐみん(仮)の姿を見る。

 

しかし確かにめぐみんの言う通り所々違う姿をしている。

 

めぐみんは黒いローブの上に黒マントを装着し、トンガリ帽子を被っている。それだけなら普通の魔法使いに見えるのだが、片足だけに包帯を巻き(只のファッション)両手に指ぬきグローブを着け(これも只のファッション)首にチョーカーを着け(これまた只のファッション)左目に眼帯を着けている(やっぱり只のファッション)お陰で厨二病全開のちょっと痛い格好をしている。

それに比べてめぐみん(仮)は黒一色の格好で如何にも熟練のアークウィザードといった姿だ。

それにめぐみんと違い、めぐみん(仮)は髪を腰の辺りまで伸ばしている。ぶっちゃけ俺のストライクゾーンど真ん中です。

 

・・・つーかヤバい。なんか段々意識し始めた。なにこれ?めぐみんてこんな綺麗になんの?

 

「・・・?どうしました?カズマ?」

「い、いや、何でもない・・・ってちょっと近い近い近い!」

 

めぐみん(仮)がいきなりズイッと近づいて問いかけてくる。すいません、少し心臓に悪いです。

 

「お、おい!めぐみん・・・さん?カズマに少し近すぎないか?」

「?・・・ああ、すみません。ついいつもの癖で。」

「く、癖?」

 

成長しためぐみんをどう呼べばいいのか迷っているダクネスが注意をしたらめぐみん(仮)は今気付いたとでも言うように俺から離れる。

なんだ?めぐみんて人に近づく癖なんてあったっけか?

するとその台詞を聞いためぐみんがピタリと固まった。

そして数秒かけて何かに気付いたのか、めぐみん(仮)に信じられないとでも言いたそうな、けど何処か期待を含んだ目をしながら問いかける。

 

「あ・・・あの・・・少し聞きたいのですが・・・いつもカズマとはどういった事をしているのですか?」

 

それを聞いためぐみん(仮)はめぐみんの言いたい事を理解したのかニッコリ笑い・・・とんでもない爆弾を投下した。

 

 

 

 

 

「それは勿論一日中ずっとくっついていたり甘えたり甘えられたりですね。妻としては嬉しい限りです。」

 

 

 

 

 

「「「「……………はい?」」」」

 

今日、何回目か分からないフリーズ状態に陥りながら、

 

俺は今日からこの人を大人なめぐみん、略して大人めぐみんと呼ぶ事にした。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

-朝の事件を思い出しながら、俺はふと気付いた事を伝える。

 

「つーか今更だけどさ、俺流石に二人も背負える程体力無いぞ。ただでさえ遠出してんのに。」

「相変わらず低ステータスですね。もう少しレベルを上げたらどうですか?」

「おい、俺は別にこのままお前を置いて行っても構わないんだからな?」

 

こいつ人におぶって貰っておいていい度胸だな…。

 

「いえ、その辺は大丈夫です。問題ありません。」

「いや、大丈夫っても…」

「では少し待ってて下さいね。」

 

そう言って俺達より少し前に出て詠唱を始める大人めぐみん。

瞬間、俺もめぐみんも黙って見守る。

というより黙らざるを得なかった。

 

何故なら大人めぐみんが放つプレッシャーが尋常では無かったからだ。

 

ゴクリ、と唾を飲み込む音が聞こえる。それは俺から鳴った音なのかめぐみんから鳴った音なのか分からなかった。

やがて詠唱が終わり、大人めぐみんの右手にはソフトボール程の大きさの紅く輝く球体が出来上がった。

 

「それではいきます!見ておいて下さいね!もう一人の私よ!これがいずれ貴女が手に入れる力の一端です!」

 

大人めぐみんがそう言い放つと遠くに鎮座する巨大な岩に向けて右手を突き出した。

 

「『エクスプロージョン』ッ!!」

 

 

ドゴオォォォオオン!!!!

 

 

聞き慣れた、内臓まで響く爆音。そして肌を撫でる熱風。

それらを感じながら目の前の惨状を確かめると・・・

 

・・・そこにはめぐみんが作ったものより少し大きめのクレーターが出来上がっていた。

 

「あれっ!?・・・思っていた以上に威力が出ませんでしたね・・・。」

 

大人めぐみんが慌てたような声を出す。

それもそのはず。あれだけの啖呵をきってめぐみんより少し威力の高い程度の爆裂魔法を見せる事になってしまったのだ。大人めぐみんにとってこれはいただけないだろう。

 

一方俺はというと・・・

 

 

 

 

 

ゾクリ、と鳥肌が立っていた。

 

 

 

 

 

確かに結果は微妙と言う他ないだろう。なにせ出来たクレーターの大きさは大した違いは無く、めぐみんがちょっとレベルを上げればすぐに追いつける程度の差だ。

 

しかし。俺はこの瞬間まで、どう考えても大人めぐみんよりめぐみんの爆裂魔法の方が強いと確信していた。

 

何故なら大人めぐみんは今、何も持っていない。

そう、何も持っていないのだ。

つまり、

 

 

 

大人めぐみんはマナタイト製の杖を持っているめぐみんの爆裂魔法を、なんの武器も持たずに凌駕したのだ。(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

俺は正直、杖を持っている状態と持っていない状態でどれ程の違いが出るのか詳しく知ってる訳じゃないが、それでも話を聞く限りでは魔法の威力の補正がかからない、制御が困難等、色々不便な事が多いのだとか。下手したら普段の威力の半分程度しか出せないなんて事もあるという。

 

以前アクセルにデストロイヤーがやって来た時もウィズがめぐみんと共に爆裂魔法を放ち、武器を持たないウィズに軍配が上がったが、あの時とは訳が違う。

まず単純にレベル差の問題だ。あの時ウィズとめぐみんには何十ものレベルの違いがあったが故にウィズが勝ったが、そもそもまだ十数程度のレベルのめぐみんが高レベルの、さらにはリッチーであるウィズに張り合える事自体が異常なのだ。

その上あの後アクアから魔力を渡され、ウィズの爆裂魔法を上回った事から考えてもあの時点でのめぐみんの爆裂魔法のスキルはとんでもない事が分かる。

 

しかしめぐみんはあの時とは違い、レベルも充分上がり、上級魔法習得の為に取っておいたスキルポイントも残らず威力上昇のスキルに注ぎ込んだ為、今やその威力は過去のものとは比べものにならない程になっている。

ウォルバクとの戦いの時には既にウィズの爆裂魔法を完全に上回ったとか言っていたしな。

 

それに俺がめぐみんの方が強いと思ったのは、例え相手が今より成長しためぐみんとはいえそこまでレベル差が開いているとは思えなかったというのもある。

この世界では弱ければ弱い程、才能が無ければ無い程レベルが上がりやすい。

それはつまり強ければ強い程、才能が有れば有る程レベルが上がりにくいという事だ。

今では立派な爆裂狂だがめぐみんは紅魔族の中でも類を見ない才能の持ち主だ。いくらめぐみんとはいえ今のレベルを更に何十も上げるにはとてつもない苦労と時間が必要だろう。それ故にここまで力量に差が出るとは思わなかった。

 

そして、何より爆裂魔法を放った後も大人めぐみんは倒れる事無くしっかり立っていた。

それはつまり魔力を全て使い果たす程爆裂魔法に魔力を込めていなかったという事だ。

 

少し視線をズラせばめぐみんも目を見開いている。恐らくめぐみんも大人めぐみんのレベルとスキルの高さに気付いたのだろう。その頬には冷や汗が流れている。

・・・そしてその瞳には爆裂魔法の力比べで負けた上に全力を出させる事が出来なかった悔しさと、この先自分が手に入れる事が出来る力に対する大きな期待が浮かんでいた。

 

全く、楽しそうな顔しやがって。

 

「さ、さて。ちょっと気まずい感じになってしまいましたがそろそろ帰りましょうか。」

 

大人めぐみんがそう言って帰る支度をする。といっても特に準備する事など無いが。

 

「おう、んじゃ帰るか。」

 

めぐみんを背負い、アクセルへと足を運ぶ。

と、そこで大人めぐみんから強い視線を感じた。

 

チラッと見ると結構近くでこっちをジーッと見つめてって近い近い近すぎ!!

 

「な、なんだ!?少々ビックリしたんだですけれども!?」

「っと、すみません。少し気になって。あと落ち着いて下さい。なんかおかしな口調になってますよ。」

 

スッと体を離す大人めぐみん。正直朝の爆弾発言のお陰で凄くドキドキするし無駄に期待してしまうから止めてほしいのだが。

と、そこで大人めぐみんが興味深そうに聞いてくる。

 

「あの、『こっち』の私はまだ最大魔力が消費魔力に追い付いていないのですか?」

「まだっつーか今後もずっと追い付く事は無いと思うぞ。こいつ今までのスキルポイントとか全部威力上昇とかに注ぎ込んでいるからな。これからもそうするつもりらしい。」

「え?本当ですか?あ、いえ、別に私的にはそれほどまでに爆裂魔法を愛している事にこれ以上無い程感心と納得をしていますが、これからも使う度に動けなくなると流石に危険ですよ?」

 

と、大人めぐみんが何やら妙な事を。

 

「・・・?何を言っているのですか?そういう時こそカズマのドレインタッチでしょう?」

「・・・?更に吸ってどうするんです?」

「「え?」」

「え?」

 

・・・・・・・・・。

 

「よし、少し情報を整理しよう。」

 

なんかアレだ。俺達の間に認識のズレがある。

 

「ええと、すみません、『こっち』のドレインタッチってどんな効果なんですか?」

「えっと、相手の体力や魔力を吸いとったり、逆に分け与えたりする事が出来るスキルですね。」

「はい!?なんですかそれ!?便利過ぎじゃないですか!」

 

大人めぐみんが驚愕の声を上げる。そんなに便利なのか?『向こう』と比べてこっちのスキルって。

 

「え、ちなみに『そっち』のはどんな効果なんだ?」

「相手の体力と魔力を両方同時に吸いとるだけです。」

「「うわぁ。」」

 

思わずめぐみんと一緒に声を上げてしまった。確かにこの差は大きい。何せその効果では味方に使用してサポート、なんて使い方が出来ないのだ。どちらか片方だけ吸いとるなんて事も出来ないので余計に使い勝手が悪そうに感じる。

 

「はあ~、こういう細かい所も色々違うのですね。流石は別世界。」

「成る程、だから大人めぐみんは既に最大魔力を上げているのか。『そっち』じゃドレインタッチでの回復が出来ないから。」

「はい、本当に偶にですが戦闘等でダクネスが気を失う事もあったのでカズマの負担を減らす為にもこういった対処を取らざるを得なかったんです。」

「・・・おいめぐみん、お前も大人めぐみんを見習って・・・」

「嫌です。それは『向こう』の話でしょう。『こっち』のドレインタッチは受け渡しも出来るのですからいいじゃないですか。」

 

それに・・・と続けてめぐみんがギュッとしがみついてくる。

 

「・・・カズマにおぶって貰えるのは結構好きなんですよ?」

 

・・・だから急にそういった事を囁くのは止めてほしい。期待しちゃうだろ。

 

と、そこで大人めぐみんが黙ってこちらを見ている事に気付いた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「な、何だ?少し、いやかなり気になるんだけど。」

「いえ、少し羨ましかったので。・・・あの、側に居てもいいですか?」

「お、おう?」

 

予想外の頼みについ何も考えずにそう言うと大人めぐみんが嬉しそうに寄ってくる。

どうしよう、なんか大人めぐみんが凄い可愛い。

 

え?何これ?なんかハーレム系主人公にでもなった気分なんですけど。やはり今の俺はモテ期なのか。そうなのか。

 

「・・・うん、やっぱり違う世界とはいえ貴方の隣は居心地がいいです。」

 

そう言って安心したように俺に寄り添う大人めぐみん。

・・・どうしよう、『向こう』の世界の俺が物凄く羨ましく感じる。というかもうめぐみんルートに入るしかないんじゃないかな。

 

二人のめぐみんにくっつかれ、俺は結構真剣に悩みながらアクセルへ帰還した。


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