私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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狙撃銃のアイデアをありがとうございます‼︎迷いました。ボルトアクション、単発式もロマンがあっていいかもしれないけど、現代の銃も捨てがたいぃぃぃぃ‼︎
頂いたアイデアーーさまざまな銃は状況に応じて使い分ける型を取ろうと思います。
今回の話では年代物の狙撃銃が登場します。


山はいいね。

 

滋賀県ーー時刻は10時

 

 

「う〜ん、自然はいいね〜モランもそうは思わないかい?」

 

「はい、主」

 

私は車ーーポルシェ356aから降りると、大きく伸びをした。

私とモランは滋賀県の比叡醍醐山地に来ていた。東京からここまで長かったな〜

何故、ここにいるかというと、

 

「それじゃ、モラン。早速、君の実力を見せてもらおうか」

 

「主の期待に応えられるよう頑張ります」

 

モランの実力を確かめるためだ。

本当なら人間ーー武偵庁が定めた犯罪者を使ってテストしたかったが、丁度いいクエストがなかった為、山での狩猟で把握することにした。

ある程度、分析して実力は把握できていたが、実際にこの目で確かめたくなってモランにお願いしてテストに参加してもらった。

モランは二つ返事で承諾してくれた。本当に素直な子だ。

 

「モランは山育ちだったね。やっぱり狩猟なんかは朝飯前かい」

 

「狩猟は日没後から日の出までの時間帯は禁止されていますので、朝飯前ではありませんね」

 

ははは、そうきたか......ボケを返してくれない。

でも、モランの言っていることは正しい。闇夜の山は危険だ。都会と違って、明かりなど存在しない。一度迷えば、遭難するのは確実だ。

流石は山育ち。

狩猟は本来なら免許が必要なのだが、そこは武偵免許で通った。武偵免許って、便利過ぎでしょう。

 

「そういえば、まだモランがどんな銃を使うのか聞いてなかったね。見せてくれるかい?」

 

「はい、私が使うのはコレです」

 

肩にかけた虎のキーホルダーが付いたライフルケースから銃ーースナイドル銃を取り出した。

スナイドル銃ーーイギリスのエンフィールド造兵廠(RSAF)が前装式ライフル銃であるエンフィールド銃を改造した後装式小銃である。

ストックを始めとした木製パーツはグラスファイバー製に変えられている。おそらく、気象によって膨張・収縮するので木製からグラスファイバー製に変えたのだろう。

 

「ほ〜、なかなかの品物を持っているね。見たところしっかりと手入れされている。100年以上の銃とは思えない」

 

「銃はしっかり手入れすれば何年でも使用できますよ。その証拠に主の銃も100年以上前の物にも関わらず、使用できるでしょう?」

 

「確かに」

 

モランの指摘に私は思わず笑みがこぼれた。

しかし、スナイドル銃か......大概の人間が見たら「それはこだわりじゃない。時代遅れだ」と言うかもしれないが、とんでもない。

当時、高い命中率と1,000ヤードまで延長された射程を実現したスナイドル銃は、歩兵運用の基礎条件を大きく変えてしまった。

スナイドル銃を装備した部隊とマスケット銃を装備した部隊が交戦した場合、マスケット銃側は有効射程の100ヤード(マスケット銃の命中率は50%)まで接近するためだけに、最大で900ヤードに渡る死のロードを友軍の屍を乗り越えつつひたすら進まねばならなかった。

スナイドル銃は30〜40回の射撃が可能であるため仮に1,000人のマスケット銃兵を相手にした場合でもスナイドル銃装備の部隊は理論上25人の小部隊で無傷のまま相手を全滅させてしまう事ができた。

 

「それはひいお爺さんの銃かい?確かモラン大佐は空気銃を使っていたと思うけど......」

 

「確かに曽祖父は空気銃を使用していました。それ以前は様々な銃を使用していたと聞いています」

 

「モランも空気銃を使ったりするのかい?」

 

「御望みとあらば今すぐにでも変えますが......」

 

「ああ、別に今すぐに変えなくてもいいよ」

 

スナイドル銃......ロマンがあっていいと思うよ!

個人的にはマルティニ・ヘンリー銃と空気銃も捨てがたいと思うけどな〜。

きっとモランに似合いそう♪来年の高校入学祝いに送ってあげよう。

装備科にはある程度顔がきくから見つかるだろう。

 

「今、主は空気銃がいいかもしれないと思いましたね」

 

「何故それを⁉︎君はエスパーだったのか!」

 

「私は超能力者ではありません。主の顔を見ればわかります」

 

いや、それはある意味では超能力かもしれないよ。顔を見ればわかるか......今度から気をつけないとね。

 

「現在、曽祖父が使っていた空気銃はドイツの知人に預けていますので、主が用意するまでもありません」

 

「ドイツの知人......それはガンスミスかい?もしかして装備科だったりする」

 

「ガンスミス......間違いではありませんね。しかし、あの人は重火器が好きで、狙撃銃はあまり作らない変わった人でしたね」

 

重火器が好きなガンスミスか。重火器は男のロマン!なんちゃってね♪まあ、重火器はぶっ放す感じがたまらない。その辺りでは気が合いそうだ。今度、モランに紹介してもらうとしよう。

 

「おっと、話し過ぎましたね。さあ、主」

 

モランが山へ入っていく。私もその後を追って山へ入っていた。

 

 

 

今の季節は7月とあって暑い。少し歩いただけでダラダラと汗が出てくる。

モランは山育ちとあって、山に慣れているようだ。

その証拠に足場の悪い獣道をザクザクと歩いていく。おまけに汗を1つもかいていない。

背には銃だけでなく、リュックまで担いでいるのに不自由していない様子だ。

 

「止まってください。主ーーあれを」

 

モランが突然止まり、指差す先には一頭のツキノワグマがいた。

本来は夜行性だが、果実が実る時期になると昼間でも活動する。

名前の由来通り胸部に三日月形の白い模様がある。しかも、大きい......立ち上がれば170〜180はあるだろう。この目で生のツキノワグマを見たのは初めてだ。

熊ならモランの相手には丁度いいかも。

 

「主はこのまま草陰から見ていてください」

 

私が感動しているのに対し、モランは落ち着いていた。熊など見慣れているのだろうか......

このまま草陰から狙い撃ちするかと思ったが、モランはリュックを置いて草陰から出た。狙撃手がターゲットに姿を見せるなんて......。

モランの姿を捉えたツキノワグマは「ヴオオオオ」と唸り声を上げて、モランに接近した。このまま襲われると思われた。

 

「落ち着けチビ」

 

モランは迫り来るツキノワグマにビビりもせず、落ち着いた口調で話しかけた。

 

「ヴオッヴオッ......ヴオッ」

 

「クマに出会ったら背を向けて逃げるのは自殺行為。死んだふりも意味がありません」

 

背を向けると熊は獲物とみなし追いかけてくる。死んだふりが意味をなさないのは熊は腐った死体も平気で食べる。熊からしたらご馳走が落ちているのと同じだ。死んだふりをしたら、そのままパクリで終わり。

 

「カフッカフッ」

 

「ジッと動かず落ち着く。怒ったままで襲い掛かられたら撃っても勢いが止まらないので危険です。目を逸らさず興奮が鎮まるまで待つ」

 

熊と出会ったら目を見るのは危険だ。目を見つめると熊は相手の出方を窺う。まあ、腕に自信があれば見つめてもいいかもしれないが......

ツキノワグマはヌウッと立ち上がった。私の見た通り、180はある。

モランは170、1人と1頭は頭一つ分くらいの差しかない。

 

「立ち上がるのは攻撃のためではなく、私と主のほかに敵がいないか安全確認です」

 

「ハゥ、ハゥ......ハゥ、ハゥ」

 

「呼吸がだんだんと落ち着いてきたら、あとはゆっくり......」

 

「おや?予備の弾は出さないのかい?単発銃を使う人間はみんな、撃ち損じたとき素早く予備の弾を装填できるように、指にいくつか挟んでいたけど」

 

モランは予備の弾を1発も指に挟んでいなかった。

狙撃科には単発銃を使う人間もいる。そういった人は必ず予備の弾を指に挟むものなのに......

 

「予備があれば、その分だけやり直せるなどと、勘違いしてはいけません」

 

ゆっくりと銃をスーッと、構えた。

 

「1発で決めなければ殺されます。1発だから腹が据わるんです」

 

その言葉とともに、ダアァン!と発砲した。

銃声とともにツキノワグマはズズーンと、音を立てて地面に倒れた。

私は草陰から出て、見てみると銃弾はクマの心臓を撃ち抜いていたーー即死だ。

 

「お見事。心臓をドンピシャとはやるね」

 

「熊は急所を狙わないと倒せません。それ以外を撃っても興奮させるだけですから」

 

「それなら頭を狙ってもよかったんじゃないかい?」

 

「熊は頭の大きさの割に脳が小さいので、脳に弾が入らないかぎり死ぬことはありません。お望みとあらば、次は頭を狙ってみせますが」

 

「別に構わないよ。でも、何故自分から姿を現したんだい?狙撃手がターゲットに姿を見せるのはまずいんじゃ......」

 

「それは......主に私と獲物の真っ向勝負を見てもらいたかったから」

 

モランは顔をポッと赤くして答えた。

その反応に私は思わず、「ブフォッ‼︎」と吹いてしまった。

 

「ぷははははは、ひーはははははは、ハハハハハ」

 

「あ、主......‼︎そんなに笑わないでください......!」

 

「ははは、ひー、ごめんごめん。つまり私にカッコイイ所を見せたかったらかー。いいね。ますます気に入ったよ」

 

「あ、ありがとうございます......」

 

まさかその為だけにあんな行動に出るとはやるね〜。

道理で変だと思ったよ。狙撃手は待つのが基本なのにさ。

 

「ところでコレはどうしようか?せっかく仕留めたのにこのまま放置するのは勿体無いし」

 

「でしたら昼食にしましょう」

 

そう言ってモランはサバイバルナイフを取り出し、慣れた手つきでツキノワグマを解体していく。

 

「おお〜慣れているね。やっぱり、山で生活するならこれくらいはできないとダメかい?」

 

「自然と身につきました。熊以外も解体できますよ」

 

顎から肛門まで真っすぐナイフを入れ解体の始まりだ。

まず、手、足も先に向かって切り裂く、後はひたすら毛皮を破かないようにナイフで剥いでいく。

 

「この毛皮は貰ってもいいかな。寮で敷皮にしてみたい」

 

「別に構いませんが、しっかりとナメさないと酷い悪臭を放ちますよ」

 

ナメス......防腐処理のことかな。ふーむ、装備科か衛生科に頼めば加工してくれるかも。

ふっと私は切り落とされたツキノワグマの手足に目がいった。

 

「大きな手足だね。私の頭くらいはあるかな」

 

「丁度、主の頭部くらいはありますね」

 

なんか見ていると背筋が凍ってきた。おお、怖い怖い。こんなので殴られたら一発で天国行きだね。

そんな手足を持った獣と真っ向で向かい合えるモランは凄いね。

そんなモランは内臓を取り出し始めた。色鮮やかだね。

 

「さあ、コレもどうぞ」

 

「それは何だい?プルプルしているけど」

 

「クマの胆嚢です。乾燥させれば生薬になりますよ」

 

ほぉ、これがクマの胆嚢か。採れたてとあって、真っ赤な色をしている。

 

「ありがとうね。モラン」

 

衛生学部のお土産になりそうだ。ありがたく頂こう。

 

「内臓を取り出したけど、全部食べられるのかい」

 

「熊は捨てるところがありません。肉はもちろん食べられますし、毛皮は防寒着になり、骨は装飾品、脂は火傷の薬になります」

 

骨ーー装飾品。カッコイイかも!

 

「ねぇ、モラン......」

 

「はい、骨はちゃんと取り出し、装飾品にしますのでご安心ください」

 

ははは、もう君はエスパーで決定だな。なんで私の考えがわかるの?もしかして、また顔に出てた?

 

「さて、今日の昼食はこのモランが獲れたての熊で腕を振るった料理をお作りいたします」

 

モランはリュックから鉄串を取り出し、熊の内臓ーー心臓を突き刺し、そのままライターで起こした焚き火で焼き出した。

パチパチと火を立てながら、心臓を焼いていく。時折、心臓から垂れた脂と血が火に降りかかる。

 

「心臓上手に焼けました」

 

こ、このネタは某狩人ゲームのセリフではないか!モランも知っていたんだね。

 

「さあ、主。熱い内に召し上がって下さい」

 

「それじゃ、遠慮なく。いただきます」

 

私は心臓にかぶりつく。うまい‼︎噛めば噛むほど肉と血の味がする。新鮮な証だ。

 

「熊の血は滋養効果がありますから、怪我をしていたら食べるといいですよ」

 

それはいいね。滋養効果か......金次君と武藤君に飲ませたい。特に金次君に飲ませてあげたいな。どうなるんだろ♪

 

「それとコレも美味しいですよ」

 

そう言ってモランが取り出したのは熊の小腸だ。

いくつかに切り分けてあるが、元はかなり長かったはず。

さらに続けてモランはリュックからミネラルウォーターを取り出し、

 

「小腸を裏返し水で洗い、熊の腹腔に溜まってプルプルになった血の塊を詰めて縛り焼くと.....血の腸詰めの完成です」

 

これはソーセージじゃないですか!熊のソーセージなんて初めてだ。

早速、ムグムグと食べてみた。うん......これも血の味がしてうまい!

これはさらなる料理の発展ーー高みに登れそうだ。

私が食事に夢中になっていると、

 

「アオーーーーン‼︎」

 

背後から犬のような遠吠えが聞こえてきた。

後ろを振り向いてみるとそこには大きな犬がいた。

 

「ガウッ」

 

「うるさい」

 

私に向かって飛びかかってきた犬に向かって、モランがダアァン‼︎と発砲した。

銃弾はそのまま犬に直撃するかと思われたが、犬はくるっと身を捻って躱した。銃弾は犬の背を少し掠めただけだ。

しかし、犬はごてんとその場に倒れた。

 

「やるじゃないか。わざと弾を掠めて脊髄を麻痺させるとは」

 

「主を襲った不届き者の正体を確かめるためにしました」

 

敵の正体を明かすためとは味な真似をするじゃないか。

私は犬に近づき観察する。

 

「これはニホンオオカミじゃないか」

 

ニホンオオカミとは、かつて日本に生息していた、イヌ科イヌ属の、その名の通り日本固有のオオカミである。

絶滅動物であり、日本固有の絶滅動物としては有名な種類の一つ。過去は山狗(ヤマイヌ)と呼ばれており、ニホンオオカミという呼称は明治頃に定着したものである。

 

「明治の末に絶滅したと言われていたのに、生き残りかな」

 

「おそらくそうかと......大方、人の目から隠れて生きている犬でしょう」

 

どうしたんだい、モラン?なんだかオオカミが嫌いに見えるよ?

私が疑問に思っていると、モランはニホンオオカミの頭にチャッキと銃を構えた。

 

「主の食事を邪魔するとは......死ねクソ犬」

 

ちょっと、モラン。オオカミに対して犬はないでしょう。せめてドッグと呼んであげたら?

しかし、このまま死なせるのは勿体無い気がするけどな〜。

モランが引き金に指を入れたその瞬間、バズと銃声が響いた。

その音を聞いて、モランが「主‼︎」と叫んで私に覆い被さる。

なんだろう?

 

「そのオオカミから離れて下さい」

 

草陰から人が出てきた。

緑色の髪にヘッドホン、武偵高の女子制服を纏い、その手にはAKー47を再設計した銃ーードラグノフを構えた女子がいた。

 

「あ、レキさん。どうしたのこんな所で?」

 

現れたのはレキさんだった。『ロボット・レキ』と呼ばれるほど、無口で無表情だが、狙撃成功率99%以上の狙撃科所属のSランク武偵だ。

有名人でミステリアスな人だが、私は嫌いじゃない。そんな人が私たちに向かって銃を構えている。

 

「レキさん。とりあえずソレを下ろしてよ」

 

私の問いかけにレキさんは反応しない。ただジッと私を眺めて銃を向けてくるだけだ。

そんな私を見て、モランが盾として前に出る。

 

「なんですかアナタは?主に銃を向けるとはいい度胸ですね」

 

「そういうアナタこそ、そのオオカミを殺そうとするとはいい度胸ですね」

 

「私はただ主に害を及ぼす害獣を駆除しようとしただけですが?何か問題でも?」

 

「オオカミは害獣などではありません。人間が勝手にそう決め付けただけです」

 

あー、ヤバイね。モランは何かキレそうだ。目元がピクピクしているのが証拠でわかりやすい。

 

「寧ろ害を与えたのはあなた達のほうです。この辺りはそのオオカミのナワバリ......そこへ勝手に侵入したあなた達のほうに非があると思いますが?」

 

「獣のナワバリなどイチイチ気にしていられませんね。まあ、こんな小さな山をナワバリにしているようでは、ソレの器量が容易に測れますが」

 

モランが倒れているニホンオオカミを指差しながら答える。

こらこら、モラン。ソレ呼ばわりは失礼だよ。せめて、ワンちゃんと呼びなさい。

 

「人間の目から隠れて暮らすには、この山は最適だからです」

 

「成る程、つまり人間の目から怯えながら暮らすには最適だと」

 

「オオカミは賢く強く良い生き物です。決して、怯えてなどいません」

 

気のせいかレキさんから怒気のようなモノが伝わってくる。まるで自分の好きなものを侮辱されたような怒りだ。

 

「あー、はいはい。そこまで、モラン?ダメだよ〜目上の人にそんな口きいちゃ」

 

私は2人の間に入って仲裁に入る。

 

「しかし、主......」

 

「しかし、じゃないよ。この人はレキさんと言って、私の所属する東京武偵の一年生ーーつまり君の先輩。そんな人に向かって失礼な態度はダメ。ほら、謝って」

 

「......失礼しました。センパイ」

 

「私にではなく、その子に謝ってください」

 

レキさんは倒れているニホンオオカミに目を配る。

 

「はぁ?何故、ケモノごときに私が謝らないと?」

 

あっ、これもう手遅れだ。

レキさんを観察する。

 

ドラグノフの発砲、それも躊躇いなくモランの頭部に向けたもの。

しかし、モランは私を突き飛ばすとそれを躱す。同時にレキさんに接近し、手加減なしーーフルスイングの右ストレートパンチを顎にヒットさせる。

レキさんは倒れるが、それは油断させるためのフェイク。

すかさず立ち上がり懐に仕込んだナイフで切りつける。やるね。狙撃科は接近戦が苦手な人が多いが、レキさんはそうじゃないみたいだ。しかし、それはモランも同じだよ。バックステップで躱し、距離を取る。

レキさんはナイフをドラグノフに装着、銃剣術に変えたか。

突進とともに突き刺すが、モランは掴んで止める。同時に再装填しておいたスナイドル銃をレキさんの頭に至近距離で発砲。防弾制服を警戒してかーモランも容赦ないな。

しかし、同時にレキさんもモランの心臓部......だけではなく、その後ろにいる私もろとも撃ち抜く。防弾繊維を貫く貫通弾だね。

結果、三者とも死亡。

 

相打ち覚悟か......死ぬのが怖くないのかな?

私は腰のホルスターから拳銃を引き抜き、空に向かってパァン!と発砲した。

 

「はーい、レキさん。怒りを鎮めて。レキさーん、静まりたまえ〜なんちゃって♪」

 

私のギャグにレキさんは笑ってくれなかった。某国民的映画のシーンを真似てみたのに......

 

「貴様ぁ......主のギャグを受けないとは......いい度胸ですねぇ」

 

いや、モラン。そこは怒るところじゃないよ⁉︎

それとジ◯リ映画は知っていたんですね。

 

「さて、話を纏めてみるとレキさんはオオカミに謝ってほしい。そうだね」

 

私が問うとレキさんはコックリとうなづいた。

 

「しかし、モランはオオカミに頭を下げたくはない。そうだね」

 

続けてモランに問うと「はい」と答えた。うん、正直で宜しい。

 

「なら、ここは武偵らしく、戦いで決めようじゃないか」

 

「主、戦いといいますと、狙撃ですね」

 

「その通り!それも狩猟での狙撃じゃない。いや、ある意味では狩猟だね。マンハントと言う名のね」

 

「......お互いが獲物」

 

「うん、正解だよレキさん。狩るもの狩られるものーーそれは君たち2人を意味する。お互いが狩人であり、獲物でもある」

 

私は手を広げ、山を見渡す。

 

「君たち2人には狙撃勝負をしてもらう。この山全てが戦いの舞台だ。ああ、勿論使う銃弾はペイント弾かゴム弾ね。一発でも、一発でも被弾すれば即終了。被弾した人は狙撃した人の要求を飲む。これでどうかな?」

 

「主の決定とあらば従います」

 

「私もそれで構いません」

 

承諾してくれたね。さあ、面白くなってきたよ。

Sランク武偵の狙撃手レキさんと、ヨーロッパ随一の狙撃手セバスチャン・モラン大佐のひ孫との戦い。

勝つのはどっちだ⁉︎できればモランに勝ってもらいたいな。

 


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