大轟竜転生奇譚〜これが私の大轟竜としての、生き様だ〜(友人の金の月もいるよ!)   作:熨斗付けた紅白蛇

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あらすじ

捕食対象を待ち伏せる


つまるところ、人間の感性は役立たないから無くなりかけているんだよ

水は全ての源である。

大抵の生物には血が流れている。その血の源は水であるし、水が不足すれば動けなくなる。

人間であろうと、体の半分以上は水。どのようなな生物であろうと、体は水でできている。

ゆえに、川という場所は全ての生物にとって重要な場所になり得る。

だが、同時に天敵すらもやってくる危険な場所にもなり得る。

 

数頭の頭に小さなツノを生やした白っぽい毛を持った鹿のような生き物と似たような形のより大きなツノを生やした緑っぽい生物がやって来た。

ケルビと呼ばれる生物の雌個体と雄個体である。

彼らは群れで行動している。

非常に臆病な生物で、隣のエリアに大型モンスターが居るのを感知すればすぐに逃げていくが、それはある意味では隣り合ったエリアのいずれかに大型モンスターが居るという指標になる。

また、時折見る互いの首をすり合わせ合う愛情表現は、狩りの最中であれ狩人たちの癒しとなっていたりする。

 

そんな彼らが川にまでやってきたのは、当然水を飲むためである。

彼らは水を飲むにあたり、最初に辺りを警戒する。

彼らは生態系の中では一次消費者。草食動物である。

二次・三次消費者である肉食生物に食われる定めである。

残酷などとは言ってはいけない。彼ら一次消費者が増え過ぎれば、生産者である植物が減りすぎるのだから。最終的には食糧不足となり、一次消費者は飢えて死んでいく。

そして数を減らす。その間に生産者は再び増えていく……のだから。

それはより上位の消費者にも当てはまるが、今はその話では無い。

 

 

 

いかに警戒をしたところで、狩られる時は狩られるのだし、

逃げるられる時は逃げられるのである。

 

 

_______?!

 

水を飲んでいたケルビの1匹に、草むらから飛び出てきた小さな赤いティガレックスが食らいつく。

首に食らいつき、嚙み砕き、息の根を止める。血が溢れる。

突然のことであれ、他のケルビたちは逃げ出す。

だが、一瞬動き出すのが遅れた1匹が、逃げ損ねる。

最初のケルビの息の根を止めたティガレックスは、その1匹へその牙を向ける。

 

 

がちんっ

 

だが、間一髪のところでケルビはその牙を避けた。

そして、そのまま逃げ去り、他のケルビ同様姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__________________________________

 

つまるところ、私の初めてのおつかいならぬ、初めての狩りは、成功を収めたのである。

初めてにしては上等で、ケルビを1匹仕留めた。さすがに2匹目は仕留め損ねた。ギリギリで避けられたから。

……手を使っても良かったのかもしれない。そしたら、爆破煙が付いて、あのケルビは逃げたところで爆破で傷を負った……無駄なことかもしれない。私の目につかないところで傷を負ってそのまま死なれたら、他の生物の食糧が出来ただけだ。どちらにしろ、あのケルビが私の腹に入ることは無かっただろう。

まあまずは、このようやくありつけた食糧を持ち帰ろう。安全に食らえる場所は大事だ。

 

そうして、私は爆破して抉れた木を頼りに一度巣に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巣に戻った私は最初にケルビのツノをケルビから切り離すことにした。ケルビのツノは、薬になると説明文にあったことを覚えていたから。

ツノを噛み切る形で引き離し、口の中から出す。それを二回繰り返し、小さなツノを2本入手し、他の使えるものと同じように巣の一角に置く。

そして次に、巣から少し離れた場所に移動し、本体であるケルビに食らいつくことにする。

よくよく考えればわかることだが、血の匂いが巣にこびりついた場合、嗅覚の鋭い他の生物がやってくる可能性が出てきてしまう。それは非常にダメだ。今の巣には親となるティガレックスは居ない。いるのは私と二つの卵だけ。

逃げられる私はともかく、卵を危険に晒すわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巣から少し離れた場所に移動した。

 

腹に食らいつく。

毛の感触、皮の感触、血の味が溢れ出る。

肝は食べない。後で埋めてくる。なにしろ、美味いのは肝臓や心臓ぐらい。他は食えるものでは無い。(特に腸はね)

 

肝を取り除くと、いよいよ本格的に喰らう。

 

皮も毛も関係なく

骨を砕きながら食べる。

コリコリという食感が楽しい。美味しい。

まだ暖かい血を啜り味を楽しむ。肉を喰らう。

血の匂いがすごく良く感じる。すごく芳しく感じる。本当に本当に

 

 

 

 

堪らなく、美味しいと感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………気づけば、あれだけ美味しかったケルビは無くなってしまっていた。

美味しかったなぁ……また獲らなくては。

 

 

それにしても、あれだけ前世では何かを傷つけるのが苦手だった私が、良くケルビを狩れたものだ。現世であるティガレックスの感性に引きづられているのだろうか。

それならそれで、良いことだろう。

つまるところ、この世界は弱肉強食。何かを喰らおうとすれば何かを狩らねばならないような世界だろう。生き残ろうと思えば、何かを排除しなければならないだろう。命をやり取りせねばならない世界だろう。

ならば、この感性の方が使えるだろう。

私が狩られる側になるわけにはいかない。排除される側になる気など無い。

私は生きるのだから。

 

 

さて、つまるところまずは強くなろうか。

強くなれば動ける範囲は広くなる。

強くなれば邪魔するものは叩き潰せる。

強くなれば喰らいたいものは喰らえる。

強くなれば出来ることが増える。

 

ふふっ……やってあげる。

ハンターとの協力は私の種族的にまず無理だろう。

だから、強くなってやる。

ついでだから、あのバカも探しに行こう。会えたら、意思疎通が出来れば……




ティガレックス希少種(幼体)
生体記録(変化なし)

捕食対象の狩りに成功。
以後、ケルビを中心とした草食動物を狩り続ける。


ティガレックス希少種(幼体)
生後25日
体長5.6m
体重__2kg(前半は切り裂かれていて読めない……)

成長によってケルビでは足りなくなったのか、アプトノスを中心として、時々アプケロスなど(俗称:ホーミング生肉含め)の草食動物を狩る。
後、巣のタマゴが孵る。ティガレックス通常種×2
ある程度の世話と狩りを教えた後…………



ーーー
さて、次の話では時間が飛びますよ。キングクリムゾンしますよ。
そのための生後25日記録ですから。

なお、前世の主人公は下手に想像すると傷を見ただけで自分も痛くなるという……無駄に想像力が豊かすぎた人間です。
そんなままだったら、ケルビの首骨を噛み砕いて息の根を止めるなんて真似は出来ませんでしたよ。当然、狩るということも、ケルビを喰うということも。(かなりグロいですし)

あと、人間の感性が残ってるところはあれですよ。美的センスとかそういうの。

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