鎮守府は繁栄します   作:日々はじめ

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だいごわ ひようはさくげんされていました

 「何も考えていませんよ?」

 

 …は?

 

 「私は、今一番すべきことを成すべきことをやっているだけです。」

 

 本当にこの人はそういう人種なのだろうか、いや、少しの期待は前の提督と同じ結果しか生まないのは身を持って体験しているはずだ!!けれど、なんだこの違和感は…。確かに、前とは違う。それも根本的に違う気がしてならない。この人が纏う空気はいつも私たちの身に一番近くにいていつも手助けしている―――。

 

 「どうしました、加賀さん?」

 

 「ッ!すみません…。」

 

 考え事するとどうやら自分の世界に入るのは悪い癖だとあの人に注意されたことがある。

 知らぬ間に流していた冷や汗を感じながら言葉を紡いでいく。

 

 「私は…私たちは貴方を信じてもいいんですか?」

 

 提督は微笑みを浮かべて口を開いた。

 

 *

 

 「加賀さん!」

 

 「朝潮ですか、どうしました?」

 

 提督室から自室へと戻っていると同じく旗艦だった朝潮がやってきた。

 

 「どうしましたじゃありませんよ!提督に逆らえばどういう目に会うかそれは貴方が一番知っているはずじゃ!」

 

 「けれど、何もありませんでしたよ。」

 

 「確かに、そうですが…。」

 

 朝潮は口ごもる。確かにアイス券を渡されたとき以外は警戒していたが最後に言った言葉。あれは、予想だにしないものだった。

 

 『信用はそうやって許可を取るものじゃありませんよ?そして私はその信用に答えられませんですしご勘弁ください。』

 

 まさか、私からの意見を笑顔で断るとはね…。いや、実際問題そっちのほうがよかったのかもしれません。

 

 「加賀さんは…どうするんですか?」

 

 「どうするですか…。それこそ私が一番すべきこそ為すべきことをやってみるつもりです。」

 

 加賀の微笑みは提督のものと重なった。

 

 *

 

 「しかし、提督。あのようなことを言ってしまってよかったのでしょうか?」

 

 「いいんですよ、大淀さん。あのような夢の狭間で彷徨っているような曖昧での信頼は彼女らにとって枷になるんですから。」

 

 「提督―――嬉しそうですね。」

 

 どうやらわたしはいつの間にか上機嫌になっていたようです。それもそうですか。

 

 「そうですね、大淀さんがわたしのことを提督と呼び捨てにしてくれたのがうれしいんですかね。」

 

 「あっ!」

 

 大淀は自分の口を手で押さえる。どうやら自分の意志とは無関係で発していたらしい。

 

 「大丈夫ですよ、それより書類作業はもう大丈夫ですから残り時間を自室に戻って休養に充ててください。」

 

 「…、提督が前の提督とは違い妖精さんと話し私たち艦娘に対して変わった対応してくる奇人ということがわかりました。」

 

 「失礼な。」

 

 大淀さんはもう最初出会った時とはもう違う。笑顔でこういう毒舌を吐いていることが何よりの証拠だ。

 失礼します。といって退出した大淀さんを見送った後私はスケジュール表を見る。

 

 ---これは、当分の休みを充てたほうがいいですね。しかし、大本営から課されているノルマも達成しなくてはいけません。ノルマ達成しなければいけない期限と残りの日数を逆算して取れても3日ですか…。っと、助手さん。今日はやけに張り切ってますね。えっ?この紙にも目を通してほしい?それぐらいなら別にいいんですけど。

 

 「えっと、なになに…?」

 

 艦娘における食事費用の書類ですか…。確か私たちのところには60人ぐらいの艦娘にいましたっけ。それで食事費用はっと…。

 

 「ひゃ、百万!?」

 

 思わず声を上げてしまいました。何度も目を擦って確認しても0の数は変わりませんし見間違いでもありません。

 

 「にんげんさんや」

 

 驚いていると数時間ぶりになかたさんが話しかけてくれました。そういえばお風呂場のあの件で妖精さんを呼んだとき姿が見えなかったですね…。

 

 「かんむすについておしらべー?」

 

 「はい、今そうするつもりでしたが。その手に持っているものはなんですか?」

 

 「これはかんむすのまぬあるかと」

 

 ふむふむ、どうやら私がお風呂場に出っ張らってるときにここでそのマニュアルを作っていたんですか。

 

 「くれるんですか?」

 

 「にんげんさんのおやくにたつならー」

 

 「ならいただきます」

 

 私はなかたさんから頂いたマニュアルについて目を通すと案の定艦娘に対してかかる食事費用も記載されていました。なかたさんぐっじょぶです。妖精さんらしい可愛らしい字でこう書かれていました。

 

 【かんむすにかかるしょくじのおかね】(いっかげつぶん)

 

 せんかん 10まん

 

 くうぼ 13まん

 

 けいくうぼ 8まん

 

 じゅうじゅんようかん 8まん

 

 けいじゅんようかん 5まん

 

 くちくかん 2まん

 

 せんすいかん 1まん

 

 (れいがいがあるかと)

 

 「…あれ?これに沿って考えても一か月100万というのは明らかにおかしいですね。」

 

 「これひとりぶんかと」

 

 「りぴーと!?」

 

 「ひとりぶんかと?」

 

 なんで疑問形になっているんですかね。えっと、所属艦娘の資料は・・・ありました。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 【所属艦娘】

 

 戦艦 長門 陸奥 金剛 榛名 伊勢 日向 扶桑 山城

 

 空母 加賀 瑞鶴 飛龍 蒼龍

 

 軽空母 瑞鳳 隼鷹 飛鷹 鳳翔

 

 重巡洋艦 鈴谷 熊野 最上 三隈 羽黒 那智

 

 軽巡洋艦 北上 大井 木曾 多摩 球磨 神通 大淀 鬼怒 阿武隈 天龍 龍田

 

 駆逐艦 暁 響 時雨 夕立 朝潮 雪風 島風 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 

     菊月 長月 吹雪 白雪 文月 白露 五月雨 初霜 綾波 陽炎 不知火

     敷波 潮 曙 霞

 

 潜水艦 伊168 伊58 伊8 伊19 U⁻511

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 戦艦の方々だけでもう80万は消費されていますね…。えっと、合計は一か月で325万!?三分の一にも満たない金額での食事なんて質素に決まっています。スケジュール表も見直しなければいけませんし・・・。

 

 「にんげんさん、おやくにたちましたか?」

 

 「はい。これはご褒美です。」

 

 私は、お菓子をなかたさんにあげるとまずは優先度について考えます。

 

 食事は人間にとって一番大切なことです…。しかし、莫大な量であるスケジュールも見直さなければいけない…。なかなかにヘビーな仕事です。秘書官でもあとでつけますか。今は助手さんに頼ったほういいかもしれません。

 

 「助手さん、このスケジュール表の見直しをお願いします!私は、食堂のほうに行って調理担当の鳳翔さんと話をしてきます!」

 

 助手さんはコクリと頷き書類と睨めっこする。

 

 私は、今出せる最大の速さで食堂へと向かった。

 

 ---私がおいしいご飯を食べるために。




秘書官はこの人がいいという意見がありましたらお願いします!

ご指摘などもよろしくお願いします。

(あと、評価を付ける際に低評価する場合はなぜそうなのかを教えてくださると幸いです。そうでなければ直せるものも直せないので(´;ω;`))

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