鎮守府は繁栄します   作:日々はじめ

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だいさんわ かんたいがきとうしました

 「おっ、あれが……」

 

 防波堤から双眼鏡で海の方を眺めていると第一艦隊から第四艦隊までの姿が見えてきた。

 

 へぇー、艦娘というのは海の上を走行するんですね……。流石は妖精さんの技術力ですね、末恐ろしいです。

 

 そんなことを考えていると海から上がった艦娘の一人が口を開いた。

 

 「……、貴方は?」

 

 綺麗に纏められたサイドテールが揺れる。

 

 彼女は確か加賀さん……でしたっけ?思った以上にやつれてますね、顔に覇気がありません。

 

 「皆さん、初めまして。私は調停官事務職のものです。今日からここの提督として皆さんを指揮していくので宜しくお願いします。」

 

 提督と言った瞬間、場の雰囲気が最悪と言っていいほどのものになった。

 

 「ひっ!て、提督様ですかッ!?すみません!無礼な物言いをしてしまって!」

 

 加賀が取り乱してる。それに反響するように悲しみや憎悪の念が込められた視線を浴びる。

 

 ……流石に何度もそういう目を向けられるのは堪えますね。まずは、意識の改善をした方がいいかもしれません。

 

 「あの、ここに着任して思ったんですけど『様』という敬称は誰に教わったんですか?」

 

 そう言うと加賀は大淀と同じく土下座をして懇願する。

 

 「すみません、提督様というのは前の提督様が言えといわれましたので!気に障ったのでしたら罰はどうか私だけが……!!」

 

 「……ねぇ、響。私はあの提督様が悪そうに見えないんだけど……女性だし。」

 

 「騙されないで、暁。最初はそうでもアイツと同じく途中からは豹変するさ。女でも関係ないよ、大丈夫だ。私がちゃんと守ってあげるから。」

 

 ヒソヒソ声が耳にはいるとすごい言われようですねと感じるしかなかった。ほかにもいろんな声が聞こえますがやはり皆似たようなことばかり言っています……。

 

 「ーーーでは、その『様』という敬称について罰を与えます。ということで今後私のことは司令官または提督と呼んでください。」

 

 「では、その罰というのは……。」

 

 「皆さん、入渠してきてください。」

 

 「……は?」

 

 加賀が呆けた声を出すがそれは当然のことだ、この子達は妖精さんと言うオーバーテクノロジーの塊に直してもらったことが知らないからだ。

 

 「ちょっと何それ!!入渠するためにはドックが必要なのよ!?それが壊れているのに入ってきてって当て付けのつもり!?」

 

 「ッ!瑞鶴!」

 

 瑞鶴と呼ばれるツインテールが提督と言う地位に対して異議を唱える。つまり、反抗だ。反抗は提督の暴力の対象となるーーー。それを知っているものたちは焦る、このままでは瑞鶴がひどい目に会ってしまうと。

 

 しかし、ここにいるのは毎日妖精さんたちに振り回されている人物である。故に、何も思わない。

 

 「いえ、ドックは直しておきました。見たらすぐにわかるはずですよ。では、私は執務室にいますので入渠が終わり次第旗艦の方々は来てくださいね。」

 

 それでは。といって私はクールに去ります。あとで、色々と面倒くさい目に会うのが目に見えてます。妖精さんと戯れて癒されるとしましょうか。

 

 *

 

 「助手さん、すみません。書類作業ばかりやらせてしまって……。え?やりがいがあっていい?ならいいんですが大変でしたら言ってくださいね、大淀さんも。」

 

 私が大淀さんに話しかけると体をビクッと震わせる。

 

 うーん、私的には友好的に接しているつもりなんですが……。前任は性的暴力などを振るわせていたらしいですし当然と言えば当然ですか。

 

 「さて、前任は高速修復材を密かに多数所持していましたし資源もたくさん隠されていると踏んだんですがどうでしたか?」

 

 「……はい。提督さんの言う通りでした。前任の書類を確認してみたところ数ヵ月は困らない資源とお金が見つかりました。」

 

 ふむ、それならこれ以上危険な出撃をやらずにここでぐーたらな生活を送れば万々歳ですね。え、なんですか助手さん?仕事しなきゃ大本営に怒られるって?うーん、ならしょうがありません。前任が決めていた出撃スケジュールと遠征スケジュールを見せてください。

 

 「えっと……どれどれ。」

 

 助手さんに渡されたスケジュール表を見せてもらうと目を疑いました。

 

 「なんですかこれっ!!月月火水木金金っていうの始めてみましたよ!!休みなんて無いじゃないですか……。だから、あれほど疲労困憊状態な訳なんですね。」

 

 うーん、これじゃあ効率が逆に落ちるような……。まずは、これの見直しですね。

 

 私はそう思い自分の執務机へと腰を下ろすと背中に食べ物を担いでいる妖精さんが一人やってきました。

 

 「にんげんさん、にんげんさん。」

 

 「あら、なんですか妖精さん?」

 

 「おなかはへっておりますか?」

 

 そう言われれば朝からなにも食べていませんね……。

 

 「はい。お腹ペコペコです。」

 

 「でわ、これをおさしあげー」

 

 妖精さんは背中に担いでいたホットドックを私にくれました。

 

 「あら、いいんですか?では、いただきます。……って、味しませんよ、これ!」

 

 「味要ります?」

 

 なんですかねその味をつけ忘れたみたいな言い方は。そんなことを言われてしまうと今しがた胃袋の中へと流し込んだこの物体について気になるんですが……。あれ、そういえば前もこんな目に遭ったようなないような……。

 

 「それでわ、ひきつづきおたのしみにー!」

 

 そう言うと妖精さんはどこかに行ってしまいました。

 

 執務室の扉が2回叩かれる。

 




卒業しました   

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