鎮守府は繁栄します   作:日々はじめ

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パソコン壊れました。悲しいです。


第16話 妖精さんの建築作業

 駆逐艦朝潮は悩んでいた。その悩みの種は洞窟を基準に広がったアトラクション、いえアトラクションが設備された城と思わせる建物を見上げている我らの提督のことであった。

 

 なぜ、ですか。なぜ相談をしてくれないのですかーー。私はここにいます、話しを聞きます。なので、教えてください。

 

 突如、提督をまとう雰囲気と言うのが変わった。それこそ前任を思わせるものであった。

 

 しかし、彼女の言動はなにも変わらない。刺もないし、暴力的でもない。

 

 「どうしましたか?」

 

 彼女がいつも通りにそういった。いつも通り、まるで親に出掛けてくる。そういって出掛けているような、この状況を普通だと受け入れているように感じられた。

 

 怖いーー。

 

 朝潮は一瞬でもそのような感情を抱いてしまった。駄目だ、そのような感情を抱いては。仲間なのだ、そう意識しても恐怖は拭えない。

 

 だからこそ朝潮はこう口にするのだろう。

 

 「何でもありませんよ、提督」と。

 

 ■■■

 

 

 ふぅー、しっかしまぁ、妖精さんたちも酷いことするもんですね。朝潮さんも何か気まずそうにしています。まぁ、先程のやり取りを見てたらそうなりますよね。

 

 頭のなかでこれからのことについて予定を粗方決めながら目の前の白を眺める。さながら王妃がすむような素晴らしい建物だ。隣にはジェットコースター、物理法則無視妖精さん用が稼働しています。見ていて気持ち悪くなります。

 

 「妖精さん、これってあとどのくらいでできますか?」

 

 「しろがたったらできますかと」「ほうしゅうはいかほどに」「ほうしゅうによってやるきがかわりますので」「ぶらっくこーひーのようににがにがだとぼくらやるきうしないますゆえ……」

 

 「心配しなくても戻ったら皆さんでお茶会やりますので気兼ねなく作業してくださいな」

 

 「どれくらい?」

 

 「一週間ほどですかね」

 

 そういうと妖精さんたちが喜んで作業に取りかかりました。というか、お茶会一週間でお城とアトラクション作れるとかいいですね、一家に一人妖精さんです。あと、私の質問にちゃんと答えてくれてないです、悲しい限りです。

 

 さて、そろそろ私も動かないと行けませんね。あちらは既に動いてるはずですし。

 

 「ーー提督は何をなさるのですか?」

 

 不意に朝潮がそう口を開いた。別に何をするつもりもないですが今は敵の排除ですよね。まぁ、ほかにもいろいろありますか……。考えていたら鬱になってきます、私が妖精さんなら頭にどよーんとした雲が出来上がっていたに違いないですね。

 

 「まぁ、それはおいおいと言うことですね。戻ったら出来る限りのお話しますよ。さて、次は食料関連を解決しましょうか、妖精さんたちがもう取りかかっていますので」

 

 「そうですか……」

 

 うーん、こういう空気は苦手ですね。助手さんがいれば少しでも楽になりますがそんなことをいっている暇はありません。

 

 と、思っていると新たな仲間がきましたた。そうあの熊さんである。助けてくれたことに恩義を感じたのかとてもなついてくれています。というか重いので潰されたくないので「わっ」と言って躱します。

 

 「ーーその子も随分なつきましたね」

 

 「まぁ、命の恩人だと本能的に理解しているのでしょう。さて、よしよし」

 

 そう言いながら頭を撫でて上げると気持ち良さそうにしてくれます。というか、この子私がいっていることを理解している節があります。心当たりがありすぎて胃が痛いです。

 

 というか動物も妖精さんが見えるのですね。先程気づいたときはビックリしました。

 

 「それはそのこだけですな」

 

 「おっと、人の心を勝手に読んじゃってるそこの妖精さん。こっちに来なさいな」

 

 「じょおうのめいれいならばー」

 

 この子は新入りさんですね。え、主治医のなかたさんにお話を聞けばいいじゃないかって?それはできません。

 

 「あまどまわしにふびはっけん!」「さすがはそうかんとく!」「たよりになりますな」「たよりになりすぎてぎゃくにふあん?」「ぎわくのねんはしまっておくのがぶなんかと」「せいじょとおなじみちをたどるのはかわいそうなことですな」

 

 何故か総監督といって現場の指示に出ています。なかたさんってこんなにも多芸だったのですか。あと、何故か一人火刑に処されようとしていますが見て見ぬふりです。

 

 「このこはわれわれとそんざいてきにはいっしょみたいな?」

 

 「ほぅ、聞きましょう」

 

 「われわれがなおすときにひゅーじょんして」

 

 「え、ちょっと待ってください。それってどういうことですか?」

 

 「おとこごころがくすぐられたてきな?」

 

 ーーあぁ、納得がいきました。つまり、この熊さんに妖精さんを詰め込んで一体化させて傷を直したわけですか。iPS細胞涙目ですよ。

 

 「提督、そろそろ……」

 

 いろいろと考えをまとめていると朝潮さんが話しかけてきました。日はもう傾きはじめていますね。もうそんなにも時間がたったのですか。

 

 「事情はわかりました。では、私たちはこの熊さんにのって食料がどうなっているのかみてきます」

 

 そういって熊の背中に跨がる私と朝潮さん。さながらナポレオンのようなポージングです。

 

 「こっかのはんえいのためにほねをくだきちをたちますのでー」

 

 

  

 

 あーあーきこえなーい。

 

 ■■■

 

 

 「ヨウセイタチガザワメイテイル……?……………………アソコカ」

 

 

 彼女は導かれるようにして拠点を出発した。目指す先はかの無人島。決着のときは近くまた悲劇が訪れようとしていた。

 

 

 ■■■

 

 「ーー赤城さん」

 

 彼女はそうポツリと溢した。意味などない。しかし、何故か彼女のことが頭をよぎった。

 

 

 昔私を庇って沈んだ彼女の顔が歪んでいった。


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