鎮守府は繁栄します   作:日々はじめ

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だいいちわ らばうるはすいたいしてました

 「はぁ……私が提督をやれと。」

 

  何を言っているんですかねこの目の前にいるお爺ちゃんは。

  いきなり呼び出されたと思ったら海の平和を守る仕事に就けというお達しがいきなり下された私の心情は誰にも理解できないでしょうに。

 

 「いやな。近年、深海棲艦というのが出現してそれを食い止めるために提督という存在をその大本営が求めてるらしくてな。調停官として行ってくれ。」

 

 ここで行ってくださいというよりも行ってくれという命令形でお願いするのはこのお爺さんの良いところです。

 

 「何でしたっけ?艦娘という女の子しかその……。」

 

 「深海棲艦だ。」

 

 「そうです、それです。そいつらを倒せるんですよね?何故、こんなにも衰退した人類に対して更なる追い討ちを掛けるのか……。助手さんもそう思いませんか?」

 

 そう言って私は横を見る。そこには幼い体をアロハシャツで身を包む金髪の男の子が居た。

 

 助手さんはいつも通り何も言葉を発することなく静かに頷く。

 

 流石は助手さん。サイレントという称号がついてるだけのことはあります。え、誰が着けたかって?勿論私ですよ。

 

 「しかし、調停官というのは本来妖精さんたちについてのお仕事ですよね。なのに、何故にそういう仕事が回ってくるんですかね。」

 

 「呼びましたか?」「呼ばれて飛び出て……なんでしたっけ?」「お菓子をくれるのです?」「すうぃーつですとッ!?」「それは、善きかな善きかな。」「甘菓子ぷりーず」

 

 ……、呼べばすぐに出てくるなんて妖精さんたちの特徴を知っている私からしてみれば恐怖です。あと、お菓子はありません。

 

 「お菓子ないのですか?」「無いものをねだってもしょうがないのです。」「あぁ、白い粉がほしいのです……。」

 

 こらこらこら。その言い方は不味いでしょうに危ないでしょうにやばいでしょうに。

 

 この可愛らしい小人は妖精さん。今の現人類です。そして、私たち人間が旧人類です。そうです、人間はとっくの前に衰退したのです。ちなみに、妖精さんは甘いのと楽しいことが好き。楽しいと増える。

 

 「まぁ、聞いてくれ。その艦娘の装備を妖精が作っているらしんだ。つまり、これも調停官の仕事と受理される訳だ。」

 

 「はぁ!?それって大丈夫なんですか?勝手に動いたりとかは……。」

 

 というか何をやっているんですかねこの妖精さんは。前にチキンが動くという事件を起こして騒ぎを起こしたこの妖精さんたちの技術力は恐るべしです。

 

 「それは大丈夫らしいな。……、わかったら準備をしてこの紙に書いてある場所に向かってくれ。助手と一緒にな。」

 

 「あっ、助手さんも来るんですね。」

 

 なんだ、なら少し安心です。ん?何々、ラバウル鎮守府という場所に向かえばいいんですね。これがそこの概要欄ですか。ふむ、戦果はとても申し分ないものじゃないですか。けど、悪い噂が耐えないと……。何だか嫌な予感がします。ブラックなオーラが漂う鎮守府ですね。

 

 「わかりました。では、失礼します。」

 

 「あぁ、頑張ってくれ。」

 

 私は一礼をして部屋を出た。

 

 *

 

 「人間さんや」

 

 「おや、なかたさんじゃ有りませんか?どうしたんです?」

 

 私が荷造りをしていると妖精さんが話しかけてきました。この子はなかたさん、可愛らしいお髭がチャームポイントの妖精さんです。

 

 「私も行ってもよろしですか?」

 

 何を言っているんですかねこの子は。妖精さんは楽しいことがあると瞬間的に数千人という単位で増加しあっという間に一つの文明を築き、飽きると散ってしまうのです。そのようなものを連れていく?頭がおかしいとしか思えません。

 

 「駄目。」

 

 「ああぁぁあぁ~」

 

 あぁー!失禁しましたよ、この妖精さん!もうしょうがないですね!!

 

 「わかりました!わかったので落ち込まないでくださいね、ね?」

 

 ちなみに、純水らしいです。何がとは言いませんが。

 

 助手さんはもう準備が終わっているらしくずっと待っててくれてます。では、車も待たせていることだし早く行きますか。最後のお別れの挨拶はすぐに終わりましたまる

 

 *

 

 嗅ぎ馴れない塩の香りが鼻を擽る。それは、海の近くにいるのを証明すると共に目的地に着いたことをもわからせた。

 

 「ここがラバウル鎮守府ですか。なんか思っていた以上にボロいですね。」

 

 目の前にある建物は形容しがたいものだった。窓は割れ草は伸び、壁にはヒビが入ってる。

 

 「ここがあたらしいすみかですと?」

 

 「はいそうですよ。なかたさんはこれを見てどう思いますか?」

 

 「あぁー」

 

 どうやら妖精さんでも言葉がでないようです。

 

 「さて、まずは執務室というところに行けばいいらしいですね……。」

 

 そういって私は扉を開けました。不用心に開けた扉はギィという不快な音を立てると共に啜り泣く音を耳から耳へと届けてきました。

 

 床は染みだらけで衛生面は最悪と行ってもいいでしょう。助手さんも顔に出すレベルです。

 

 「は、初めまして。私は大淀と言います。提督様、遠路遥々お疲れさまです。」

 

 目の前に眼鏡をかけた女性がやって来ました。それにしても『様』という敬称はむず痒いものがありますね。

 

 話を聞く限り提督不在だった鎮守府はこの人だけで運営しているらしいです。あと、妖精さんと会話すると驚かれました。どうやら人間は妖精さんが見えないらしいです。

 

 案内された執務室は思った異常に綺麗にされていてよかったです。着任早々小汚ない部屋で仕事などしたくないです。

 

 「じ、実はここの艦娘たちは傷をおっているので出撃とかは控えてもらませんでしょうか……?この大淀いかなる罰をも受けますので!!」

 

 おぉ、これが土下座ですか。どうやら前提督がつけた傷は思った異常に深いらしいです。なんせ先程から殺気溢れてますからね、廊下のほうから。

 

 艦娘が傷を直すためにはどうやら入渠という云わばお風呂にはいる必要があるらしいのですがそのお風呂が壊れてしまったらしいのです。それを直す妖精さんたちはいつの間にか消えていてもう絶体絶命だと……。

 

 あまり頼りたくはありませんが仕方ありませんね。

 

 「なかたさん、いますか?」

 

 「わたしはここにいますゆえ」

 

 ポッケから出てきたときなかたさんに山吹色のお菓子をあげましょう。

 

 「お風呂を直してくれたらこれをあげますけどどうします?」

 

 「山吹色のお菓子です?」

 

 「文字通りそうです。」

 

 そう言うとなかたさんはそれは楽しいことがありますなといった引き受けてくれました。妖精さんはチョロいです。

 

 けど、後に私はもっと妖精さんに対しての警戒度をあげておけば良かったと後悔しました。

 

 まさかあのような悲劇になるなんて…。

 

 

 

 




誤字などの報告があれば宜しくお願いします!指摘やアドバイスもあれば差し支えなければ宜しくお願いします!!

 妖精さんはかわいい。

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