失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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戦う力

「gaaaaa――」

 

盾を叩きつけられた敵が消滅する。

 

「敵性生物、排除しました。先に進みましょう。」

 

「あの怪物を見た時はどうなるかと思ったけど、さすがはサーヴァント体、スペックでは圧勝ね。」

 

所長がマシュさんに向かって安心したような声でそう告げる。

その声にマシュさんは怖いのは変わらないと言いつつこの特異点となってしまった冬木の現状について所長に質問を繰り出していた。

 

―――どうして、僕もデミサーヴァントのはずなのに・・・。

 

心の中で呟いた。危機的な状況に陥ってレイシフトしたことも、おそらくではあるが製造された期間だってそう変わらないはずなのに。

なのに、どうして彼女は英霊に成れて(戦えて)僕は何もできないの(戦えないのだろう)か。

 

僕と彼女。いったい何が違うというのだろうか。

 

僕は浮かない顔のまま、足を動かした。

 

 

 

   ◇ ◆ ◇

 

 

 

「はあっ、はっ」

 

走る。ただ、ひた走る。

 

「ディルメアっもっと足を動かしなさいっ死にたいの!?」

 

斜め前から所長の声が聞こえる。

無茶を言わないでほしい。こう見えて生まれてこの方培養器から出たことすらなかったのに出て早々に全力疾走しろとか、包丁を使わずに綺麗にスイカを割れと言われるくらい難易度が高い。というか高すぎる。

そんなことを考えていると踏み出した先にあった小石に躓いた。

 

「っあ、」

 

そのまま転倒する。

あ、僕。やられ―――

 

「メアっ」

 

そのとき、僕の前に歩み出る人影があった。

白い制服に、黒い髪の毛の。

藤丸、立花。

 

瞬間ぞわりと、背筋を何かが、脳天まで駆け抜けた。

 

 

――――――

 

 

迫る刃/迫る瓦礫

 

それは僕の方に近づいて

 

現れる人影

 

立ち向かう立花さん/覆いかぶさる誰か

 

止まらない、止まらない。

 

なんで

 

だめだ。

 

僕なんか庇わなくていいから

 

やめて

やめて

 

―――

 

「やめてえええええっ」

 

刹那、閃光。

立花さんが驚愕をその顔に浮かべてこっちを見る。

 

―――敵が、吹き飛んだ。

 

何が起こったのかわからず、光の発生源である自分の手元を見る。

と、そこには一振りのシンプルな直刀が握られていた。

妙な安心感とともにぎゅっと柄を握りこむとどう使えばいいのかが自然と胸中に蘇ってきた(・・・・・)

 

―――これなら・・・戦えるっ。

 

 

目の前の吹き飛んだ敵に追撃のように一閃。

 

「せりゃあっ」

 

ガキンっと攻撃が防がれる。

 

「―――話ニナラン。コレデハ 私一人デ 充分ダッタカ。」

 

「マシュっメアっ」

 

その言葉に立花さんが慌てたように叫んだ。

その直後、背後で誰かの斬りつけられる音がする。

 

「くっ、つあ・・・。」

 

「マシュっ」

 

背後を確認しようと振り向いたと同時に斬りかかられる。

 

「っ・・・。」

 

咄嗟に得物を構えて相対する。ギャリギャリと得物同士が擦れ、耳障りな騒音が鳴った。

 

―――重いっ。

 

あと何分。いや、何秒持たせられるか・・・。と思考し始めた時、自分と敵サーヴァントの間に炎が舞った。

 

「ヌウ、何者ダ・・・」

 

「何者って、見れば分かんだろご同輩。なんだ、泥に飲まれちまって目ん玉まで腐ったか?」

 

薄青の衣を纏った、戦士と見紛う藍色の髪の賢人がその場に現れた。

 

「おう、よくやったな坊主、嬢ちゃん。そら、呆けてねえで構えな。腕前じゃああんたらはヤツに負けてねえ。気を張れば番狂わせもあるかもだ。」

 

「は、はい。」

 

「頑張りますっ。あ・・・れ・・・?」

 

立花さんの指示を受け、戦闘を開始しようとして、意識がふとブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 




ディルメア・ストルファイス

現在の装備

そこらへんで拾ったぼろ布

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