失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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遅ればせながら、誤字の訂正ありがとうございました。

取り敢えず、こちらにはこれからFGO編を掲載しようと思っています。

我ながら懲りないなと思いつつもこれからも書いていく所存ですので、よろしければ見ていってください。


こうして始まりの鐘は鳴るのです。

―――大好きよ。

 

白い人はそう言って僕を抱き締めました。

 

―――お前がもっとしっかりしていればっ。

 

青白い人はそう言って僕を打ち叩きました。

 

―――貴方は、まだ彼女を覚えているのか。

 

茶色の人はそう言って僕に語り掛けました。

 

 

 

けれど、ごめんなさい。

 

 

貴方に掛ける言葉を僕は持ち合わせていません。

 

だって僕は、どの『僕』も本当の僕だと思えないのですから。

 

 

 

   ◇ ◆ ◇

 

 

 

―――ふぉ・・・ふぉ・・う。

 

頬の上を何か暖かいものが這う感覚がする。

これは・・・なめられているのだろうか。

 

「う、うーん。」

 

「おーい。君。大丈夫ー?おーい。」

 

次いで、誰かの呼び声。

 

「はあ、ファーストオーダーまで時間もない。起きろ。夢遊病患者。でないと今にこれを貴様の鼻先に叩き込むぞ。」

 

1、2、3のカウントの後に顔面・・・正確には鼻に衝撃が走った。

 

「ぐがっ!?」

 

衝撃に意識を覚醒させると、いつの間にか見知らぬ廊下で、これまた見知らぬ二人の少女と少年、それとリスのような生き物に囲まれていた。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

どうぞ。と薄ピンク色の髪色の少女がハンカチを手渡してくる。不思議に思い顔に触れるとひたりと濡れた感触。

手を見てみると血が付いていた。恐らく鼻血。

ありがとうと言いつつ素直にハンカチを受け取る。

 

「ええと・・・君たちは・・・?」

 

「あ、と・・その・・・」

 

「もーマシュったら初々しいなあ。あ、私はリッカ。リッカ・アームストレイム。一応魔術師、だけどそんな代数も積んでないし、私自身は人数合わせで呼ばれたようなものだから、気軽にリッカでいいよ。」

 

「す、すみません。あまり口にする機会がなかったもので・・・えっと、マシュ・キリエライトと言いますっわっ。」

 

「フォーウ!!」

 

「あ、フォウさん。そうですね。失念していました。こちらのリスっぽい方はフォウ。カルデア内を散歩する。謎の特権生物です。」

 

先輩を見つけたのもフォウさんなんですよ。といって少女は謎の生物フォウの頭を撫でようと手を遣るも・・・フォウはその手をするりと抜けて廊下の向こうに消えていった。

 

「・・・あのように特に法則性もなく散歩しています。」

 

少し肩を落とした少女の肩にポンと橙色の髪の少女が手を置く。

と、わざとらしい咳払いと橙色の少女が「あ、」と呟くのとが重なった。

橙色の少女が音の発生源である青髪の少年の後ろに回り込む。

 

「ととっ。忘れる所だった。こっちはアンデルセン。現在カルデアにいるサーヴァントのうちの一人だよ。言い方はきついけどいい人だから。困ったら頼るといいよ。ね。」

 

「何が、ね。だっ。そんなものはごめん被る。ただでさえ子守りなんていうめんどくさい業務を請け負っているのに更にもう一人だと?はっカルデア(ここ)は余程オレを過労死させたいと見える。そんなものはどこぞの王にでも請け負ってもらえ。・・・そういえばお前らそろそろ時間だがいいのか?」

 

「何が?」

 

「何だと?ファー「ああ、そこにいたのかマシュ。」ちっ」

 

突如聞こえてきた声に青髪の少年・・・アンデルセンは舌打ちをすると「それではオレはこの辺で退散するとしよう」と言って足早に歩きだした。

 

「あ、待ってよアンデルセンっ。じゃ、また後でねー。」

 

そのあとをリッカがこちらに手を振りながら小走りでついていった。

 

「ああ、また後で。」

 

言って手を振り返す。

・・・アンデルセンとレフ教授って仲が悪いんだろうか。

 

 

   ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

「・・・ふーん。じゃあ今日がレイシフトの初起動なんだ。」

 

「うんうん。というわけで今日はバトルスーツに袖を通してみたわけだけど・・・どう?似合ってる?」

 

薄暗い、培養器のみの設置してある室内でリッカがクルリと回って見せる。

 

「馬子にも衣裳。とはまさにこれだな。おいメア、今すぐ目を閉じろ。こんなピチピチの服を着て喜び、あまつさえこんな痴女同然の格好でカルデア内のほぼ全域を歩き回るような女が目の前にいるぞ。確実に教育どころか目にもよくない。・・・いや、やはり見ておくべきか、後学のためにも目に焼き付けるべきだ・・・と考えたほうがためにはなるか。」

 

「お、おのれっ言わせておけばこのショタ爺めっ」

 

その掛け合いに培養器の中の・・・おそらく10にも満たないような少年、メアが苦笑する。

 

「アンデルセンは素直じゃないなあ。大丈夫ですよリッカさん。ちゃんと似合ってます。特にカラーリングがオレンジな辺りリッカさんって感じがして、僕は好きです。」

 

「よっしゃ!メア君、私も好きだよ!」というリッカをアンデルセンがうわあっと言いそうな若干引き気味の表情で見ている。

 

「うんうん。いい感じにメア君成分を充電できたし、じゃ、私行ってくるね!!」

 

手を振ってリッカが駆けていった。

溜息を吐いてアンデルセンが肩を竦めて見せる。

 

「やれやれ、あの猪女。ちゃんと会場にたどり着けるのか?」

 

「だ、大丈夫だよ。リッカさんはアンデルセンとここの管理人の人たち以外に初めて僕を見つけた人だよ?」

 

「ああ、フォウとかいう謎の生物を追っていて迷った末にな。」

 

「・・・。」

 

「まあいい。何かあったらきっとさぼり癖のあるロクデナシかあのヒステリック強情女のどっちかが回収するだろう。」

 

所で、調子はどうだ?とアンデルセンがどことなく不安げな光を宿しながら少年に声を掛けた。

その問いにメアはにこりと笑ってアンデルセンと目線が同じになるよう培養器の下方へ移動する。

 

「今日も夢は見たけど、それ以外は全然。うん。すこぶる絶好調かな。」

 

「そうか、お前が絶好調とは明日は槍でも降るんじゃないか?せめて調子がいいくらいにとどめておけ。」

 

ふんと鼻を鳴らしつつ不敵な笑みを浮かべるアンデルセンは安心したように軽口を叩くと、二人でどちらともなく笑いあった。

 

次いで、爆音。地鳴り。

 

ヴー。ヴー。

 

非常事態を知らせるアラートが鳴り響いた。

 




もう主人公が主人公してない・・・。

で、でも一応出るんですよ?出番はあるんですよ?一応・・・。

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