失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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お久しぶりです。

一応生きてます。


・・・いろいろガリガリ削れているが一応生きている・・・。


少年の決意の一片

場所は戻ってアインツベルン城広場。

宴も終わりへと差し掛かった頃。

 

轟音と共に城が倒壊した。

 

周囲が茫然とそのさまを見るなか、同じ様に固まっていたアイリスフィールがハッとしたように城に向かって駆け出す。

 

「切嗣っ」

 

「っ無茶ですっ。アイリスフィールっ」

 

そんな彼女を先程まで意気消沈していたセイバーが制止する。

 

「離してセイバーっまだ中に切嗣がっ」

 

その声とほぼ同時に二度目の轟音が響き、今度は広場そのものが崩落する。各陣営はマスターを抱え、何故かランサーのマスターであるはずのケイネスは己がサーヴァントを呼ぶことなく自らとソラウを礼装である水銀に乗せて難を逃れる。

 

更に今度はアインツベルン城内部からと、外部から。それぞれ1発ずつ中央に向かって弾丸が放たれ、ともに地面を穿った。

 

「あ、アイリ・・・。」

 

その直後、倒壊した城の中からザリリと瓦礫を踏みしめて衛宮切嗣が姿を現した。その腹からは止めどなく血が流れ落ち、片手の令呪は皮膚を剥がされ喪失している。

口唇からこぼれ落ちる血をそのままに彼はおもむろに口を開いた。

 

「に、逃げっろっ、セイバーっアイリを連れって・・・」

 

ゲホッと吐血しその場に膝をつく。

「キリツグッ」と血相を変えてアイリスフィールがセイバーと共に駆け寄っていくと、そこに今度は反対方向から銃弾が放たれ、セイバーに弾かれる。

 

「くっ、そこかっ」

 

セイバーが弾丸の放たれた物陰へと切り込むがそこには壊れた遠隔操作型に改良された猟銃がセットされているのみ、そんな様子を見てソラウが自身の懐から魔力指針を取り出し、周囲の痕跡を探る。

彼女の持つ指針は特注品であり、使用者に方角と共にその方角にある魔力の大きさを光と数で伝える仕組みになっていた。それを見た彼女の顔がどんどん青褪めていく。

 

「け、ケイネス。」

 

ガクガクと震えだした彼女のただならぬ雰囲気にケイネスが「どうした。」と多少固くはあるもののできうる限りの優しい表情で聞く。そんな彼の気遣いを知ってか知らずか意を決したように彼女は衝撃の事実を口にした。

 

「城の向こう側の、町の方にサーヴァント級の反応が4つ。それと魔術師の反応が一つ。・・・ここに、私たち以外のサーヴァントの反応が8つもっ・・・。せっ・・・ケイネス。不味いわ。向こうから一騎、こちらに近づいてきてるっ。」

 

「・・・君は私から離れずにそのまま探知を続けていてくれ。・・・少しこちらに集まってくれ給え。マスター諸君。」

 

その言葉に切嗣を介抱しているセイバー陣営以外のここにいるであろう人物がじりじりと周りを伺いつつ集まってくる。

 

「心して聞いてほしい。今、こちらの戦況は絶望的だ。・・・ついさっき、狙撃手が何処にいるのかソラウに調べてもらっていたんだが・・・こちらに八つ、向こうに四つ。サーヴァント級の魔力反応が確認できた。・・・向こうにいるうちの一騎がこちらに移動していることもな。」

 

「さっ、サーヴァントが僕ら以外に十二騎!?いくらなんでも」

 

蒼白になって驚愕の声を上げるウェイバーにケイネスが溜息を吐く。

その溜息は今まで向けていた蔑みやら皮肉やらの籠ったものではなく、純粋に苦渋に満ちたものだった。

 

「ああ、そうだなウェイバーくん。いくら何でも多すぎる。これでは正に大戦ではないか。」

 

そんな会話の最中でも狙撃は止まらず、絶えず彼らの足元にめり込んでは弾痕を作っている。

 

「あちらは魔術師が一人にサーヴァントが十二騎。対するこちらは魔術師が五人に、もどきが一人。サーヴァントは六騎。多少の小細工くらいならなんとかできるだろうが・・・全て殲滅するというのは難しいだろう。・・・そこで、だ。ウェイバー君、君ならここをどう乗り切る。」

 

「う、ええ!?ぼ、僕ですか!?」

 

急に話題を振られ動揺するウェイバーと打って変わって対面するケイネスは苦し気な表情の裏側で冷静に思考を巡らせていた。

 

「なに、そう慌てなくていい。今ここで君がどんな答えを言ったところで君に何かしようというわけではない。そもそも私は今のサーヴァントがいる状態の君を殺すことは到底不可能と言っていい。言ってみたまえ。」

 

ーーーさあ、言え。ウェイバー・ベルベット。(ロード)ではなく半人前(生徒)が言う。それこそ効果があるのだから。

 

ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは魔術師である。それも魔術の系譜の中では古き血の中に入るロードの一人。それゆえに周りの人間は決まって魔術師であった。

そんな彼だったからこそ、この場で誰よりも発言権を有するにふさわしいのは、指示を任せるのにふさわしいのかは既に決定していた。

この場で一番未熟で、良くも悪くも裏表がなく、それを持つような余裕もない。もちろん、誇れるような肩書もない。それは、言い方を変えれば縛るものが何もないということだ。

故に、優秀な。・・・正確には腹に一物抱えてそうな自分よりもこの目の前にいるウェイバー(無鉄砲なバカ)に任せたほうが不信感もなく烏合の衆もまあ何とか円滑にまとめられるのではないか、といった所である。

・・・もっとも、変な方向に向かないとも限らないので絶え間なくフォローを入れなくてはならないだろうが。

 

 

 

「ええっと、た、たぶん狙撃手・・・というか、犯人は此処にはいない・・・と思う。」

 

「ほう?」

 

「ひっ・・・だ、だって、攪乱目的の囮だったとしてもいくら何でもこの用意された銃の多さはおかしい。まるで自分がいなくてもどこにでも当てられるように等間隔で設置していったみたいに弾が発射されてくるし。な、何より魔術師だったら魔術の正体や使う戦法の仕組みがわかる前に速攻でつぶしにかかってきてもよかったはずだ・・・時間稼ぎとかじゃないなら。だ、だから。ええと、その、僕たちを二手に分けて、少数精鋭で向こうを撃破、恐らく監視されているだろうから、こっちはなるべく派手な奴が残ってわざと目を引くように立ち回ってみるっていうのは?」

 

ケイネスの言葉に怯えつつも自分の意見を言うウェイバー。

最初こそ怯えていたが、話している途中に仲間の少女のことを思い出して自分を奮い立たせる。

 

ーーーここをなんとか切り抜けて早くあいつを助けに行かないと。

 

瓦礫の下敷きか、あるいは脱兎のごとく既に逃げ出した後か。なるべくなら後者であってほしいが、現状は確認すらままならない。

 

ーーー待ってろよ。必ず、助けに行くからっ。

 

「取り敢えず人選の候補としてはーーー」

 

こぶしを強く握って先程とは打って変わって堂々と作戦を話し始める。

そんな少年の様子を隣で彼を庇うかのように立っていた(ライダー)はまるで眩しいものでも見るかのように目を細めていた。

 

 

 


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