ありがとうございます。
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
よろしければご覧ください。
・・・切実に機械と相性の悪い自分を改善したいです。
簡素な作りの寝台にこれまた簡素な作りの机と椅子、そしてテーブルが置かれているだけの部屋に二人の人影があった。
一方の男・・・ウル・ルガルは机とセットになっている椅子に腰かけて本を読んでいる。
その様子を寝台に寝っ転がった少女、白野はちらりと盗み見た。
足を組んで椅子に腰かけて本を読む様はまるで絵画のように様になっている。
・・・たまたま目に入った本のタイトルが「これで奴もイチコロ!!バレない最期の作り方!!」だったのはこの際見なかったことにした。
ーーーいつもと変わらない・・・みたい・・・だけど。
自身の中の疑念のようなものが沈下せず、燻ぶっているような不快感が波のように揺らめいている。
ついさっきあった、ことの発端である出来事を回想する。
確か、アイリスフィール?と呼ばれていた女性の進言からだった気がする。
彼女の進言にいつの間にか近くに戻ってきていたルルが一瞬眉根を寄せた。大方指図されるのが嫌いだからとか・・・いや、もしかしたら他の、自分には考えつかないようなことも多分に含まれていたのかもしれないが。不快感と・・・自分に向けられているわけではないとわかっているのに、のにも係わらず寒気の止まらない殺気が垂れ流された。ルルが静かに、けれど確かに怒りを表現しているのが伝わってくる。
その場にいるマスターはそれが何なのかわかっているのかは定かではないが、動けない。もちろん自分も。
動いたら確実に死が待っている。
足先と手先から冷たく重くなり、徐々に石化でもしていっているかのような錯覚に陥る。
極度の緊張と恐怖から歯の根がガチガチと音を立てそうになるが、それすらも、許してくれない。
ここでの挙動の継続を、彼は許していない。
ここでの暴挙の成立を、彼は認めていない。
ここでの生命の継続はーーーー彼に見定められている。
唯一自分が自由に動かせる部位・・・目を使って周りの様子を見ると固まったマスターに、警戒または感心といった表情のサーヴァントたち。特に誰に対しての殺気か如実に察知しているセイバー?らしき青いドレスに甲冑の少女がアイリスフィールの前に歩み出て、完全とは言えないが、ウル・ルガルの視線からその姿を隠し、剣を握るような構えを・・・いや、恐らくは見えていないだけで持っているのかもしれないが構えを取る。
その少女騎士の強気な態度にルルの口元がかすかに綻んだ。
・・・笑い方からするにまだ取り繕えているのだろうが、きっとこんな大衆の面前でなければニヤリとかという擬音が似合いそうな笑みを浮かべていたに違いない。そういえば、月の裏側で彼のSGを取得した際に更新したプロフィールの好みのタイプにかなり当てはまってるな彼女。確か、金髪碧眼で、スレンダーで、反骨精神溢れた乙女だったか・・・。あ、なんかモヤッとしてきた。
・・・話がかなり脱線してきているのを自覚し、軌道修正を図ろうとしたとき。
ガシャリと自分の、牽いてはルルのすぐ近くから硬質な鋼の音が聞こえる。
そちらに目を遣ると先程の少女とよく似た、同時に対照的な少女がこちらに剣を向けていた。
こちらというか、正確にはルルに。
「おい。あの人は俺の獲物だ。勝手に手えだそうとすんじゃねえ。それでもやるってんなら・・・まず俺が相手になるぜ。」
きわめて冷静な声音のそれを聞いたルルは先程までの笑顔とは打って変わってはあ、と溜息を吐いた後、唐突に「飽きた。帰りましょう。白野」と言って自分を抱えてその場を後にした。
そのままこの仮宿であるホテルにチェックインしたのだが・・・。
ちらりともう一度己の相棒を見ると今度こそ完璧に目が合った。
「・・・さっきから視線を感じるんですが。何か。」
「・・・別に。何にもありませんよ。好みの少女が続々現れて両手に華状態のウル・ルガル・サン。」
思考をごまかすために少々憎まれ口をたたいてみることにした。
「は?両手に華?」
「本当に何でもないので気にしないでください。前半子供の自分にまかせてたウル・ルガル・サン。」
あ、なんかこれ楽しくなってきた。
「・・・・。」
「SG2のせいで本当に大切になった相手にはプラトニックでピュ「白野」
強い調子で名前を呼ばれて反射的に相棒の方に顔を向けると滅茶苦茶いい笑顔のルルがすぐそばまで移動していた。
「それ以上言っても一向に僕は構いませんが・・・もれなく君の寝床はそこになりますよ?」
指さされたのは冷たくはなさそうだが硬そうな床だった。
あの校舎のマイルームと違って木で無い分まだマシだろうがカーペットの毛が短く硬いため、やはり硬いことに変わりはない。あの月の裏側での前半の苦しみが頭をよぎった。
「ごめんなさい。調子乗りました。ほんとスミマセンでした。」
正直に謝っておくが吉。ということで速攻で謝罪した。
ベッドの上で正座はなかなか難しい。足が痛くなってきた。と、足を気にしていた、ら。
いきなり放り投げるかのような勢いで体勢を崩された。
不時着の際ぐっっと少しうめき声をあげるとさらにその上にルルがドスリと乗っかってくる。
思わずグエっというカエルの潰れたような、おおよそ年頃の女の子が出してはいけないような情けない声を上げてしまう羽目になった。耳元でふふっと笑う声が聞こえてくる。あと何気にいい匂いがする。ムカつく。
謝ったのに。
「何考えているのかは知りませんが。僕があの場を何もせずに離れたのはなにも邪魔が入ったからとか。好みのやつがいたからとかじゃないですよ?あの人形の今後が見たくなったからです。」
「え」
普段からいろいろとムラがありそうで、且つ自分勝手で全部おじゃんになっても楽しければそれでいいとか言っちゃう災害みたいな奴なのに!?見たくなったからっていう理由だけで抑えて帰ってきたっていうのか?
ありえ・・・るな。うん。
「・・・なんか君の中の僕がどんな奴かすごく気になりますがまあいいでしょう。」
言って、バビロンからワインを取り出し呑み始める。
その前にこの体勢を何とかしてほしい。正直キツイ。
「あの様相から鋳造されて数年ってところですか。それであんな確固たる自我を得ているとは恐れ入ります。いい教師に恵まれでもしたんですかね?・・・あの一心不乱な献身、
そんなことをいいながらさらにワインを一口口に含む相棒。
いや、だからさ。そろそろ・・・。
「早く退けろください。GSO(それが理由?というかモデルケースって・・・。)」
間違った。
思わず発した言葉に自分の口をふさぐ。
が、時すでに遅し。ズシリと更に体重が掛けられた。
「おっと急に眩暈が・・・。」
わ、わざとっ。絶対に楽しんでやがるこのGSO。
と、とりあえず抵抗しないと本当につぶれる。
ガシャンっと部屋の窓ガラスが割れ、何かが室内へと突っ込んできた。
羽をばたつかせるそれは蝙蝠の形をしている使い魔だった。首に何かが巻き付いている。
ルルがその首についた紙を取って使い魔を窓の外へと放り投げる。
酷く雑な扱いをされた使い魔はそのまま落下し、ホテルを囲むように設置されている塀の突起のデザインの部分に突き刺さって消えた。自分はその様を窓から口を開けてみていたのだが、そこまでの動作を行った当の本人はその出来事に一瞥すらくれてやらず、使い魔の運んできた手紙に目を通している。
その口元はよく見れば笑っていた。やばい。絶対にろくでもないこと言いだすぞこのGSO。
「ふふっ・・・白野。疾く身なりを整えよ。出掛けるぞ。」
やっぱりいいい。そうだよね。そうだと思ったっ。
「え、さっき帰ってきたばっか・・・」
「気が変わった。何、寝るだけなら向こうで済ませればよかろう。」
「いやあの・・・」
「んん?なんだ?先程の戯れで足が動かんのか?よし、今
「それ只単に私に拒否権無いって言ってるだけだろっ・・・ってぎゃああああっ。」
この後白野はウル・ルガルに俗にいうお姫様抱っことやらをされながらライダー陣営にお出掛けという名のカチコミを掛けることになった。
後に白野はこう言った。
「もうヤダ。白野、
◇ ◆ ◇
ウェイバーはザッザッと箒と塵取りを使ってガラスの破片を集めながらふうっと溜息を吐いた。
なぜこんな作業を仮宿にしているマッケンジー家の部屋で行っているのかと問われれば侵入者が来たからに他ならないのだが、自分が幾重にも厳重に掛けた自信作の結界やら暗示のトラップやらを難なく抜けられてしまったことは思った以上に彼の心に堪えていた。
最も、その侵入者である妙なサーヴァントとそのマスターらしき少女も「呼ばれてないけれどお邪魔します」とか言って自身のサーヴァントであるライダーにアインツベルンの招待の件で何か持って行かないかなどといったまるで遠足の打ち合わせのような話をして帰って行った後なのだが、正に嵐の如くである。
バカにしやがってとか、いつもの自分なら言うのであろうが今の自分にそんな余裕はない。
「ライダー。久遠の様子。どうだ?」
「どうだ・・・と言われてもなあ・・・さっきからずっと何事かを呟いておるぞ。」
「そう・・・か。」
先日拾った可笑しくも何処か頼もしい・・・否、何処か危うげな少女は現在何か、自分の殻に閉じこもるかのように部屋の隅で膝を抱えて何やらブツブツと独り言を呟いている。時折ノートを取り出してはそこに何かを書いて、それを塗りつぶして消すという作業を繰り返すそれは頭の整理をしているというより狂気のそれに近い。
かと思えば出会った当初のように自身の世界とこの世界の聖杯についてすり合わせを行いこの戦争の解明やら、アドバイスやらをしてくれる良き協力者に戻るときもあったりと・・・ともかく不安定なのだ。
「坊主・・・悪いことは言わん。あ奴を遠回しに引き入れたのは余だが、あまり深入りしようとするな。」
「・・・っけどっ。・・・僕にだって何かできるかもしれないだろ。」
納得いかなそうな表情のウェイバーに諭すようにライダー・・・イスカンダルは続ける。
「お前のそういう放っておかない所は美点だろう。が、お前はまだまだ未熟だ。故に隙も多く、何より引っ張られやすい。」
ああゆうのには特にな。とイスカンダルは顎をしゃくって久遠を指した。
「・・・あの娘は物事を客観的に捉えているようでその実主観的に、一方向しかみとらん。それも今にも堕ちそうなほうにだ。ああいうのは周囲に影響を与えやすい、良くも悪くも、な。」
普段はそんなところはおくびにも出さないんだがなあと困ったように頭を掻くイスカンダルから久遠に視線を移したウェイバーは言い返したかったが、そのあとに続く言葉が見つからず、ただ、久遠を見つめることしかできなかった。
そんな二人を余所に少女はブツブツと話し続ける。
「姉さん。どうして。」
「彼岸。何処にいるの。」
「■■。あなた。」
「獣、泥、セイバーの・・・?」
「残りは何騎?」
「許さない。許さない。許さない。」
ーーー果たして。その言葉は誰に向けられたものだったのだろうか・・・?
久遠さんは一応中身のイメージは遠坂凛・・・というよりオルガマリー所長に近いです。
ただ、元居た世界での出来事と、そのあとにある人物からちょっと記憶とかその他もろもろいじられているので滅茶苦茶不安定かつ性格とかも元とは大分違います。
では、閲覧ありがとうございました。