そしていまいち話が話になってないという絶望的な事実にも。
・・・すみません。近々書き直したいと思います。
目の前には素材狩りに使った銀色に輝く木刀。
さて、どうしたものか。
咄嗟に魔力を込めた結果に出来た即興品。
原材料はそこら辺の木の棒。
「どうしてこうなった」
いや待て、もしかしたら見た目だけのポンコツかもしれない。...と思っていた時期がわたしにもありました。
どんなに魔力の出力を調整してもあの銀色の光線が出る。
こないだなんて稽古のついでに精々アミュレット作る程度の魔力注いだら壁ぶち壊して。否、1区画吹き飛ばしてお空に飛んでったんだけど。どうなってんのコレ。
まあ、見た目はユキムラ1/3に似ているから気に入ってるけど。
ウルレシュテム は ユキムラ1/3(偽) を てにいれた。
ただこれには1つ問題がある。
耐久性が無い。
耐久性が絶望的に無い。
見立て通りなら後一発あの光線を撃ったらこの木刀は壊れる。
加減して撃っても2、3発が限界の使い捨てだ。
使い捨てなら使い捨てらしく量産すればいいんじゃないかとかも考えた。
だが、しまう空間ならわたしにもあるが目録見たとき光線剣がゲシュタルト崩壊とか嫌だ。
という訳で却下。
本当にどうしようコレ。
誰かにあげるか?---イヤ、だめだ。下手したら国の一部が更地になる。
飾り物にするか?---これも無し。この間の様にギルが勝手に持ち出して使いかねない。
自分で使うか?---無し。出所尋ねられても困るし、不思議剣持ってるなんて噂されても困る。3回くらいしか使えないから。武器一つ満足に扱えないとか言われたら滅茶苦茶恥ずかしい。
なるべく不自然じゃない、それとなく
そもそもこれ目立つんだよね。常時光ってるから。
売るにしても簡単に足が付きそうっていうか・・・。
まあ、自分の手元にあるよりはましかと思って身支度を始めた。
◇ ◆ ◇
ある商人の息子、ヘアフスは困惑していた。
「で、いくらですか?」
「・・・。」
ある商家の玄関らしきところに人影が二つ。
一つはその店の店番らしき男性。もう一つは背の低い、子供の物だ。
真剣に物品を検分する男性とは対照的に、子供の方は肘をついてさして興味がないかのように振舞っている。
しばらくしてから溜息をついて眉間の皺を伸ばした男性・・・ヘアフスの視線が剣からその持ち主の子供に移る。
剣は材質はよくわからなかったがとんでもないほどの神秘を内包した逸品だ。装飾などの外装はどこか粗削りだが将来性を感じさせる。
しかし、それを持ってきた人物。目の前の子供は到底そういった場所に縁はなさそうな外見をしていた。
どこか後ろ暗さを感じさせるフードが顔を覆っている。
身に着けている服もそこらの子供と同じようなボロを纏っている。
手脚は包帯で包まれ一切肌色が見えない。
どこをどう見ようが怪しいとしか思えない。
怪しい子供が、その身の丈に合わなそうな剣を持ってきた。
追い返してしまった方がいいのか。それとも、このまま外出している親父が来るのを待っていた方がいいのか。
前者は手っ取り早いがそうするとこの剣の出所がわからない。それは惜しい。
後者は頼みの綱である親父が帰ってくるまで相手を足止めしておかねばならないという任務が発生する。
後者は絶対に無理だと早々に切り捨ててヘアフスは口を開いた。
「お嬢ちゃ」
言葉は続かなかった。
二人の間を横切った男が物のついでの様に慣れた動作で剣を持ち去ろうとする。
一瞬何があったのか理解できなかったヘアフスがハッとして慌てて相手の腕を掴む。
「ち、ちょっと困るよっ。お客さん。」
それはこの嬢ちゃんのっと言おうとして鈍い痛みを感じるとともに呼吸が止まる。
ふと下を見ると鑑定していた剣の刃の部分が自身の腹と密着していた。
刃の切っ先が見えない。ということは今その切っ先は。
そう、切っ先はヘアフスの背中から生えていた。
なんせ、貫かれたのだから。
「がっ、え・・・?」
「邪魔だ。どけ。」
言って、ヘアフスを刺した男は剣を引き抜こうとする。
きっとそのまま事も無げに立ち去るつもりで。
自分はゴミを捨てるかのように殺されるのだろうか。
いや、きっとこの自分を刺した男にとっては
そこらへんに転がっている
こんな形で終わってしまうのかと意識を手放そうとした。
「ねえ、おじさん。」
幼い声が聞こえた。
この声は。
この声はさっきまで自分と話していた
剣を抜き取ろうとしていた男の手が止まる。
まずい。
「あ?」
「まず、そのお兄さんに謝りましょう?で、その剣を返しましょう?今ならまだ見なかったことにできますから。」
「んだこのガキ?俺は長老会の×××××の子の×××だっ。その俺が邪魔だって言ってんだよっ。」
なるほどなとヘアフスは危機的状況に一周回って冷静に現状を整理する。
長老会といえば国王陛下にも意見できる集まりだと聞く。いまここにいる男はたぶんその中でもかなり位の高い貴族の子息といったところか。確かに身なりは少々汚れてはいるものの商家の次男であるヘアフスには一目で上等なものだということがわかった。その割に目は血走り髭と髪は鳥の巣の様に伸び放題の荒れ放題だ。いったいお前に何があった。
唐突に男が髪を掻き毟りだす。
「なんなんだよおっ揃いもそろってよお・・・親父はいなくなるしょお...そうだそうだ全部あいつだアイツのせいだ。俺がこうなったのもぜんぶっ...あのウルレシュテムとか言う生意気なクソガキのせいだっ」
口から唾液を飛び散らせながら男がわめき散らす。
口の端には泡。この錯乱具合からして何かの中毒者か何かなのだろうか。
不意にその動きが、騒音がピタリとやむ。
「まずはお前だ、ゴミ。俺の邪魔してくれたんだ。消えろ。」
今度こそヘアフスからその刃を引き抜かんとする。
その先には、変わらず子どもが立っていた。
たぶん、このまま大人しく死んだふりでもしていればイチかバチかだが自身は助かるだろう。
だが、目の前の子どもは?
あの細さにボロ切れだけ。防具等の類いは一切見受けられない。
きっと。きっと、死んでしまう。
ああ、俺は助かるために子どもを見殺しにするのか。
自身のために。保身のために。
本当にそれでいいのか?
鈍化していく意識の中で、滲んでいく感情を手繰り押せながら違うと思い直した。
思った直後。自身に刺さる凶器が半分ほど引き抜かれたところで、目視出来ている刀身を思い切り両手で掴んだ。
「待ちやがってくださいお客様。」
無理に動いたためかせり上がってきた血が口から溢れるけれど、そんなの知ったことかと歯を食い縛って耐えた。
「お代がまだだぞコノヤローっ」
渾身の一撃を打ち込もうと腕を振り上げ、一気に相手の顔面目掛けて下ろす。
さて、時間は稼げるだけ稼いだ。ちゃんと逃げろよ、嬢ちゃん。
そんなことを考えていると、視界の中に白い、包帯が巻かれた細い腕が映った。
「ごめんなさいお兄さん。やっぱり、買い取りはなしの方向で。」
子供を少女だと判断できた唯一の材料であった声。
その声はいまだに震えることがなく、ひたすらに平坦だった。
視界に映った手はためらうことなくヘアフスの手。正確にはその下の刃へと伸ばされる。
「なっっ」
何しようとしてんだ、早く逃げろよっ。
心の中でのみ絶叫にも似た叫びをあげる。口を開けたら今度は吐血という表現では生ぬるいような血反吐を吐き出しそうで現実でその叫びをあげることは叶わなかった。
「んだ?ガキ」
男が子供を視界に捉える。
一方子供の方はそれすらどうでもいいらしく、緩慢な動作で刀身に触れた。
瞬間、剣を持っていた男が。男の身体が隆起しだす。
否、隆起するとまとめるにはいささか言葉が足りない気がする。
剣の柄を握っていた男の手から何かが体の方に向かっていく。
その際の男の身体は、生き物が入っていたのかもしれないし、はたまたは内側から沸騰していたのかもしれない。生物なのか、はたまたは巨大な泡なのかわからない何かが体中を這いずり回っている。
一瞬止まったかのようなそれになぜか見ていただけのヘアフス自身も胸をなでおろすような心地を覚える。
が、その一瞬は所詮一瞬でしかない。
先程とは違い最早風船に突起物を三つつけたかのような肥大した何かになった後、さらにそれは膨張し、
飛び散った肉片に放射状に広がる赤。
意外にも
ガシャンという音とともに剣が砕け散る。
「壊しちゃいました。」
それは
くるりと軽快な動作で大通りに向かおうとした少女が振り返った。
「それじゃあまた今度。お父様によろしくね。ヘアフス?」
今度こそ、ボロをひるがえして少女は立ち去った。
いつの間にか戻ってきた喧騒の中。
ヘアフスの脳裏には去り際に見えた少女の紅玉の様な紅い瞳だけが強烈に残っていた。
腹の傷と周囲の赤はいつの間にか無くなっている。
ただ、口内に残った鉄の味だけが先ほどの出来事が現実だったのだと如実に表していた。
◇ ◆ ◇
ある一室の窓から室内へと人影が飛び込んでくる。
その人影はその勢いをものともせず、ふわりと床に着地した。
そのまますたすたと奥の方にある衝立の向こうへと消えるとするすると衣擦れの音が聞こえてくる。
衝立の向こうの少女---ウルレシュテムはおもむろに取り終えた包帯を握りしめた。
包帯は瞬く間に色を変えてブロンズ色の硬質な何かへと変化していく。
その様を見ていたウルレシュテムはふふっと微かに笑うとそれを放り投げ、自身は寝台へとその身を投じた。
「なるほど」
望んだものを望んだ形へ、望んだ
他の神秘の助力を受けない、神秘そのものを作成する作成能力。
「アレが集め、
今回の木刀の件から考えるに自身の作り出したものになら出来上がってからでも手を加えることは可能だということも分かった。
クインケも作れるし修復もできる。ほんとに便利だ。
これからはこのチカラを使いこなす訓練もしなくては。
彼女の心は今白い死神にまた一歩近付けたと狂喜乱舞していた。
それはもう読んで字の如く小躍りするくらいには。
武器の問題はだいたい解決した。さて、次はやはり容姿だろうか?たとえ顔は真似ることができなくとも白髪に位はなりたいものだ。
それとも誰かふさわしい役者でも揃えて先に舞台を整えるか?今のところの最優候補はギルガメッシュだがアレはあれで既に手を加えるには完成しすぎている。一応は候補内に入れておくか。
道徳的なものから非人道的なことまで。全てを混ぜて歓喜する。
そして、だからこそ彼女は気づかない。
自身から伸びる影に異常なほど巨大な二つの突起が頭から伸びていたことに。
相変わらずの出来ですが読んでいただきありがとうございます。
本作の主人公、ウルレシュテムですが。
まず、彼女には己の性別という概念が既にありません。
平気で有馬さんみたいに脱いだらすごいみたいな筋肉を目指す(ゴリラ案件)
みたいなことを平気で実行するのもここにあります。
彼女の魂は浄化は受けませんが代わりにその状態を維持するために肥大した部分の一番古い箇所を削がれて輪に入っていきます。そのため一番古い記憶である始まりのあたりは在ったことはわかっていてもどんなものかはもう思い出せないといった状態です。
元々の自分は男だったのか女だったのか、それすらも思い出せないので自分の自意識すらどちらの物だったのかわからない。転生のし過ぎで摩耗しかけのところにほかの理からの介入という今まではなかったことがあったため多少の期待はしてますが、それもあくまでも多少程度。諦めながらも内心では期待せずにはいられない。
それが彼女です。