失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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誤字報告ありがとうございます。・・・すいません。ほんとに、わざとではないんです。ほんと・・・。助かります。


更新遅くなってしまい申し訳ありません。
今回のは少し短いですが、投稿させていただきます。


赤い従者は追憶する。

あはは うふふ それでーー が、

 

ある家のよくある団欒の一時。

 

この家族も例に漏れず一家四人でリビングに集まり、テレビを見ていた。

 

今日の出来事。学校での愚痴。

様々な話題が飛び交う暖かな談笑がピタリと止まる。

 

ガタリと父親が、母親が、息子が、娘が立ち上がる。

 

「行かなきゃ。」

 

一様に声を揃え、動き出す。

 

その目に光はなく、その動きは人形じみていた。

一家は暗い夜の町へと繰り出す。

 

外にはその家族と同じように人形じみた人で溢れかえっていた。

ドアの開閉の音と共に現在進行形で増加しているそれは、一挙手一投足乱すことなく歩みを進めている。

ぼそぼそと聞こえてくる呟きはみな同じもので行かなきゃと抑揚のない声のみが響く。

 

まるで覇気のない軍隊の様に統率された動きを見せる人々。

大人も子供も、女も男も、老人でさえ頼りない足取りで動いている。

その中に一人だけ、幾分か急ぎ足な人間が一人。

 

「おじいさん、おばあさんっどうしちゃったんだよっ僕がわからないのか!?」

 

少年、ウェイバー・ベルベットは自身の居候先の老夫婦の前に立ちふさがり、必死に呼びかけている。

しかし、その呼びかけも虚しく二人はウェイバーを避けて進もうとする。

 

「待て、坊主。」

 

必死なウェイバーをライダーが制止する。

 

「ウェイバー。多分これ、洗脳系の魔術だ。・・・臭い嗅いでみて。」

 

周囲を警戒しつつ久遠に促されてウェイバーはすんと臭いを嗅いだ。

鼻腔に甘ったるい異臭を感じ、げほっと盛大にむせる。

 

「なっんだ・・・これっ。」

 

まるで果実を腐らせたような、甘い腐敗臭が漂っている。

咳き込むウェイバーの背中をさすりつつ片目を抑えて何事かを呟いた久遠は、その押さえていた手を上に向かって突き出した。瞬時に手の平から放たれた鳥型の使い魔が上空へと上昇し、3分も立たないうちに落下し消えていった。

 

「・・・なるほどね・・・。ねえウェイバー。」

 

此処から海岸までどれくらいかかる?という久遠の問いには?と間の抜けた声で返したウェイバーが考える仕草をすると久遠が再び口を開き、極めて静かな声で言った。

 

「・・・たぶんこれ大掛かりな術式の前座・・・というかこの人たち、人質か・・・生贄だよ。きっと。」

 

 

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

ーーーマスター。

 

念話によって脳内に直接響いてくる音声にああ、わかってる。とモードレッドは静かに返事を返した。

 

「くせえな、きっとこの匂いのせいでこんなだるい列ができてんだろうが・・・。」

 

鼻を擦るとその場を立ち上がった。背後に赤い外套を纏った男が動作とほぼ同時に姿を現す。

 

「この列を辿ってみたが、一様に海に向かって伸びている。それと、この匂い。これは恐らく川・・・というより水辺を中心に発生しているらしい。川以外のルートを辿ってみたがそこにはマンホールが多く設置されていた。湿度もこころなし上がっているし・・・何者かが意図的に流したものを気化させて誘導しているとみて間違いないだろう。」

 

残念ながらサーヴァントどころか魔術師の姿すら確認できなかったが、とため息をついている背後のサーヴァントをそのままに、モードレッドは現在いるビルの屋上から飛び降りた。

赤いロングスカートをはためかせながら華麗に着地を決める。

 

「んじゃ、一狩り行くとするか。」

 

取り敢えず片っ端からぶん殴って気絶させるかと言う赤い騎士。

いつの間にか手元に自身の武器である剣を出現させ、肩に担ぐように乗せる。

その肩、否。全身は既に銀に赤の装飾が施された重厚な鎧に覆われていた。

 

「いつになくやる気だな、マスター。」

 

後ろからかかる声に振り向かずに赤い騎士は答えた。

 

「・・・このまま放置するなんてのはまっぴらごめんだ・・・それに。」

 

アイツも父上も、きっとこうする。っとぼそりと呟くとそのまま歩き出した。

 

 

「・・・まあ、その意見には私も概ね賛成だがね。」

 

言って、自らの主人である騎士の後を霊体化してついてゆく弓兵。

既に霊体化しているため周囲には聞こえていないが、それ故に彼もぼそりと呟いた。

 

「・・・犠牲は、多くないに越したことはない。」

 

弓兵の脳裏にざざっと壊れかけのビデオテープのような古い記憶が蘇る。

 

色とりどりの花が咲き乱れた美しい庭。

そんな庭を窓越しに見ていた一人の少女。

 

ーーー正義の味方・・・そう、素敵ね。とても・・・眩しい。いい夢だわ。

 

ガラガラと崩落する大空洞。

手には弓。地には自身が放った矢を受けたーーー

 

ーーーありがとう。これで・・・。

 

あの時、自分はなんと言ったのだったか。はたまた既に言葉は無く咆哮じみた叫びをあげていたのか。

彼女はなんと言ったのだろうか。

 

ただ一つだけ、わかったのは。

この時点で自分が助かったであろう救いの可能性を潰してしまったのだということだけだった。

 

 

「進め、止まるな。前を向いて、歩みを進めろ。」

 

 

既にこんなことしか私には許されていない(できない)

こんな私を見たら、いったい君はなんと言うのだろうか。

 

 

 

「っ。感傷に浸っている場合ではないな。」

 

マスターの直感を頼りに現場に急行する。

頭の中の映像(彼女)は闇へと溶けて消えた。




タイトル名を悩んで悩んで・・・あ、そういえば赤主従の話最近出してない。と思い、タイトルだけでもと赤主従にちなんだものにさせてもらいました。


モーさんとドンファ・・・アング・・・アーチャーの拠点は主に廃墟。
常に転々としているので拠点というのも怪しいです。
モーさんがあまりに豪快なのでアーチャーはハラハラしているというよりきっとオカン化してくるのかもしれませんが、まあその時はその時ってことで。

閲覧ありがとうございました。

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