失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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遠坂時臣の困惑/バーサーカー陣営会議

遠坂時臣は焦っていた。

 

自身が最強のカードとして引き当てたであろう存在が脱走し、実は偽物だったという最初から難題にぶち当たったこともあるが、その後に契約し直した本物の方の件で今は頭を抱えている。

 

まさか、最強のカードが初戦で敗退直前にまで追い込まれることなど、その後に何者かに回収されて行方知れずになるなど誰が考えようか。

 

極めつけは、時臣自身が浅ましい落伍者だと軽視及び蔑視していた間桐雁夜のモノと思わしき歌うバーサーカーが自身のサーヴァントである英雄王を敗退直前にまで追い込んだという認めたくない事実。

 

 

常に優雅たれ

 

この家訓に沿って日常動作を意識して継続することで何とか冷静になろうとする。

というよりも、この家訓があるからこそ、縛られているからこそ時臣はこのような不測の事態に対処しきれないともいえるのだろうが。

 

 

味のしない紅茶を嚥下しながら時臣が物事の整理を始めようとしたその時

こんこんと扉がノックされる。

「誰だね。」

「私です、時臣師。ご報告の方をしに参りました。」

扉越しの声は師弟関係にあり情報収集に徹していた言峰綺礼のモノだった。

「・・・入り給え。」

失礼しますと言って綺礼が入室する。

彼からの報告を聞いた時臣の内心は先程までの動揺を混乱にまで変えざるえなかった。

「報告します。ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが教会に、聖杯の経過とメンテナンスの方の確認を至急お願いしたいと抗議にみえられました。

二つ目に、間桐家の三分の二が黄金のキャスターの手によって潰されているそうです。

幸い死体などは見つかっていないようですが・・・。」

思わずティーカップを取り落としそうになる。

そんな時臣の混乱に追い打ちを掛けるようになーうという鳴き声が聞こえた。

見ればいつの間に入り込んだのか黒猫の形の使い魔がテーブルの端によじ登り、何やら紙を銜えて時臣を見ていた。

「これは・・・。」

その手紙の内容を見て時臣は目を見開いた。

 

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

幸せだった。

 

厳しくも優しい■、優しくて穏やかな■、一つ上の自分にはないものを持った勝気な■。

 

■せだった。

 

当たり前にあった穏やかな時間。

木漏れ日の中で過ごす緩やかな午後。

 

ーーー■せになりたかった。

 

ーーーー

 

ーー

 

 

意識が覚醒し、瞼を開く。

 

隣には桜とギル。いわゆる川の字というやつだろう。

 

どうか昨日のことを見られていませんようにと念じつつ桜のサラサラの髪を撫でる。

 

「・・・ママ?」

 

どうやら起こしてしまったらしい。

桜がこちらへとすり寄ってくる。

 

「さびしいの?・・・悲しい、の?」

 

ああなるほど、さっきの夢は記憶の共有だったのかと納得する。

 

「わたしじゃ、代わりになれないかな・・・。」

 

もう一度髪を梳く。

 

「桜は桜のままでいてください。代わりなんかにならなくていいんですよ。」

 

ただ、あの頃は何かを遺したかっただけだ。それに必死になっただけだった、たぶん。

アイツの事だから何か遺していかないとあと追ったりろくなことにならなそうだったし、と一応言い訳をつけてみる。

ぎゅっと抱きしめると抱きしめ返される。

ぬくぬく。ああ、幸せ。

 

桜も同じようにおもってくれていればいいな・・・。

 

 

 

 

 

 

「えーではこれより、チキチキ第一回陣営会議を始めたいと思います。」

 

無事だった部屋のテーブルを囲んで雁夜を筆頭にギルガメッシュ、ウルレシュテム、桜が顔を合わせる。鶴野は心労とアルコールの過剰摂取から入院することになったため不参加である。

 

「はい、ではまず(ボク)の方から。ギルの尽力もあって、まあ御覧の通り意思疎通が可能になりました。」

 

周囲から拍手が起こる中、少々気まずそうに雁夜が疑問を投げかける。

 

「ええーと、つかぬ事をお聞きするが、生前二人は何か関わりがあったとか?」

 

昨日一直線に走ってて泣いてたし・・・。と言われて気まずげに目をそらした。

 

「「姉弟兼夫婦/愛人です/だ。」」

 

声が揃う。

 

「「・・・え?」」

 

認識の誤差が確認されるやいなや雁夜が「オッケーわかった。じゃあ次。」と素早く議題を切り替えた。これ以上はだめだと判断したらしい。

おかしい、式上げた覚えすらないんだけど。気づいたら軟禁状態だったんだけど。

隣にいたギルが抱き着いて「姉上、姉上。」と言いながらめそめそ泣いている。

・・・こんなんで(ボク)がいなくなった後国は回ったのだろうか。

そんなギルの頭を撫でて宥めている桜。優しい、いい子だ。

 

「じゃあまず今後の対策について。」

 

はいっと手を上げる。はい、じゃあバーサーカー。と指名を受けて意見を述べる。

 

「捕まえてきたマスターを片っ端から蟲蔵に放り込めばいいと思います。」

 

泥で染めて絶対服従もあるが個人的にあんなおっさん連中を我が子に加えたくはない。

 

「それはTOKIOMIくらいにしてやってください。再起不能になります。では次」

 

震えながら雁夜がギルガメッシュに掛ける。そんなに酷いことだっただろうか。

 

「ぐすっ・・・ふむ、ならばピーーを■■■■にして〇〇〇〇を△△「あーっあーっもういい、もういいから黙れくださいっ。」・・・。」

 

「てめーらは何でそう物騒な方にしか話いかないんだよ。片方は最早規制音の塊だよこれ!?」

 

雁夜の怒鳴り声に物怖じすることなく、桜が純粋に質問する。

 

「おじさん。ピーーを■■■■ってなあに?どうするの?」

 

「桜ちゃーん。それ言っちゃダメな奴うううう。」

 

桜の質問に血涙を流す勢いで雁夜が膝を付く。

難航した会議は結局マスターを見つけ次第即ボコって身包み剥いで生け捕りにすることで一応の決着を見た。要はガンガン行こうぜスタイルである。

 

そんな賑やかな会議の喧騒の中にピンポーンと軽快なインターホンの音が鳴り響いた。

 




時臣さんは教会と組んでいることもあって今回の戦争は何かと大変なんじゃないのかなと思います。

Q.前回桜ちゃんが何故ギルと一緒にいたのか
A.姉ちゃんの魔力の残滓を追っていたギルがたどり着いたのが間桐家で試しにぶち抜いたらそこに桜がいたため。・・・というか姉ちゃんとのパスの繋がりを確認したため。

ちなみにこの時桜ちゃんの護衛としてついていたのはあのお菓子奪ってくのが早い小鳥の大群です。

時臣さんの運命やいかに。

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