ところで、王族にしろなんにしろ世代交代って面倒な事が起こりがちですよね。
今でもちょっとした家の方が亡くなると相続の話し合いが大変なんだそうな。
今でこうなんだから昔はもっと血で血を洗うような惨劇が繰り広げられていたのかと思うといろんな意味で昔の方って逞しい。
森で野焼きモドキをした後、少し
はて、今日は何か催しごとがあっただろうかと考え込むウルレシュテムの前には様々な職種の城仕えの者たちが跪き一様に無事を喜ぶ旨を伝えてくる。
かいつまむとどうやら城を抜け出してから既に三日が経過していたようで、捜索隊も出されたらしい。
らしいというのは帰り道で一度も人と出会っていないからである。
ということは情報に虚偽があるか、全く別な方向に行ったかでもない限り十中八九幻想種の餌か、喰われずに放置からの土に還るパティーンかのどちらかだ。
おいおい、捜索隊の捜索隊出すのかよ。・・・まあ仮に出したとして更にその捜索隊の捜索隊の捜索隊を出すことになりそうだけど。
いや、元はわたしが悪いんだけどね。ごめんね。
「姉様ーーーーッ」
何やらじゃらんじゃらんと不協和音の様な金属音と大勢の足音とともにかわいい弟の声が聞こえてくる。
・・・大勢の悲鳴も引き連れて。
「お、王よっ。どうか王子をお止めくださ、ひっ。」
言った老人の頭頂部をかすって何かがザクッと勢いよく支柱に突き刺さった。
「やめるのは貴方達の方ですよー。」
にこにこと笑いながらギルが手に持っていた鎖を思い切り引く。ヴォンという音とともに先ほどまで刺さっていた戦斧のようなものが戻ってくる。鎖鎌の様に繋がっているらしかった。
「ギル。それは。」
「ああ、これですか?武器庫にあったものを少々・・・とそれより聞いてください姉様。この人たち姉様の帰りが遅いからって僕を王様に仕立て上げようとしたんですよ。」
ギルガメッシュがちらりと視線をやった先にいたのはこちらに必死に助けを求めて駆けてきた老人数名。
どれもウルレシュテムにとって見覚えのある顔だ。
「これは極刑案件ですねー。」といつもと変わらない無邪気さで複数名の今後を左右させかねないセリフを言うギルガメッシュの傍らで、この策謀に巻き込まれんとしていたウルレシュテムは決して慌てる様子もなく。
あの頭頂部・・・終わったな。南無。
などと少しずれた。河童ハゲ同然になってしまった相手の頭の今後を考えていた。
かくして、ギルガメッシュ引き継ぎ強制事件は長老会の再構成と捜索隊派遣の虚偽報告の洗い出しで幕を閉じた。この際にこの作戦に関わったと思われる人物が総じて不慮の事故で死亡ないし行方不明になったことは闇に葬られることとなった。
◇ ◆ ◇
「姉様。」
やれやれといった様子で報告を終えた兵が部屋を出て行ったのを見送ると不意に名前を呼ばれた。
「ん?どうした?ギ・・・ル。」
椅子の真横に弟が立っている。それ自体は別段普段と変わらない。が、
「おかえりなさい。」
ボロボロと。ボロボロと。
泣くという表現を知らないのではないか、と思っていた弟が。大粒の涙をこぼしていた。
しかし、口元にはいつもの微笑みが形作られ、目は心なしかハイライトが消えかけている。
泣いているのか笑っているのかわからない。
正直滅茶苦茶怖い。
走り寄るかの様に抱き着かれる。
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
腕の力が強くなる。少し苦しい。
「無事でよかった」
反射的にではあるが背中をさすってやる。
内心で戻れ戻れと思いながら。もうヤケクソだ。
「おいて・・・いかれた・・・かと。」
「次は、僕も一緒にっ・・・いえ」
なんでもありませんと顔を離してちからなげに笑うギル。
もしかしなくても寂しかったのだろうか?
それにしてはいささか必死過ぎる気がするが...まあ、今は置いておくことにして。
「ギル。」
「はい?なんでしょう?」
「今日、一緒に寝ようか。」
「っ・・・はいっ!!」
弟は、花がほころぶ様に笑った。
まだ危なっかしいし、少しくらい姉離れが遅くなっても多めに見てくれる・・・よね?
子ギル君は既に王の財宝を使えますが今回のは単純に武器庫から
より広範囲を一撃で。複数に、重症ないし戦闘不能にできるものをチョイスした結果無断で持ち出したものです。
もうお気付きかと思いますがこの作品の子ギル君は姉に依存といっても過言でないほど執着しています。これには一応ちゃんとした理由があるのですがそれはまたの機会に書きたいと思います。