少し短めですがどうぞ閲覧ください。
ーーーここは遠坂邸の一室。
この家の家主、遠坂時臣の書斎である。
その中世ヨーロッパの貴族の部屋の様な高級感溢れる自室で
遠坂時臣は深い溜息を吐いた。
ーーー聖杯戦争とは、こんなにも予想外が起こりうるものなのだろうか。
・・・事は数刻前、サーヴァント召喚へと踏み切った際に起こった。
時臣は慎重に慎重を期して召喚に臨んだ。故にやはりというか。来たのは予想通りの人物。
光と共に現れたのは黄金の甲冑にその身を包んだ冷たい美貌の男。
人類最古の英雄にして英雄たちの王。
英雄王ギルガメッシュ。
ここまではよかった。実際時臣もこの時は近場で見守っていた弟子の綺礼と監督役の璃正神父に「この戦い、我々の勝利だ。」などと慢心染みたセリフを言うくらいに順調であった。
しかし、そこから一拍おいて更に陣が輝きを放つ。
今度は爆風とまるで閃光弾でも投げ込んだかのような光の暴力が巻き起こった。
「っ」
小さく呻いて再び目を開けたとき、そこに立っていたのは先程と違い軽装に身を包んだ英雄王であった。
「ギルガメッシュ。此度の召喚にはキャスターとして招きに応じた。」
別に装いが変わったというただそれだけであれば時臣もここまで気には留めなかっただろう。
クラスがキャスターというのもかなり残念ではあるがそこは自身の配慮が足りなかったのだ仕方がないと割り切ることもできただろう。
・・・問題は、そう。そのキャスターを名乗るギルガメッシュの足元に先程、キャスターが顕れるよりも先に出てきたであろう黄金の甲冑を身に着けた英雄王が転がっていることだ。気絶しているのか動く気配はない。
ーーーどちらが偽物なのか、いや。両方別枠の同一人物という可能性も・・・。
時臣は混乱していた。いったいどちらに礼を尽くしたらよいのか。
そもそもどちらが自身のサーヴァントなのか。
パスは繋がっているはずなのに一向にわからない。
時臣は取り敢えず・・・意識がある方の王(かもしれない人物)に質問する。
「失礼を承知で質問させていただきます。貴方様がかのギルガメッシュ王でございますか。」
その問いにああ、そうだと目の前の王(仮)は即答した。
苛立つ様子もない。どうやらこの場で命を奪うつもりはないらしい。
そのことに内心ほっとした時臣は重ねて質問する。
「でしたら王よ。そちらにおわします御仁は・・・。」
ちらりと甲冑を着込んだ王(仮)に視線を移す。
「ん?ああ、これか」
事も無げに王(仮)はもう一人の王(仮)に視線を向けると・・・その身体を突如出現した黄金の歪みの中に入れ始めた。
「え、っちょ。」
流石の時臣もこれには驚き、優雅も糞もない困惑の声を上げる。
「なに、心配するな。これは
「にん・・・ぎょう?」
言っている間に下半身が全て黄金中に収納された人形?の眉が・・・というより顔面がピクリと動き「うっ」っと短い呻き声を上げる。
「王よ、やはりこの方生きて・・・」
「ふははははっ、そんなわけなかろう。これは身代わりの宝具だ。」
高笑いする王を余所に時臣はハラハラしながらその様を見守る。
・・・まあ、どのみち見守るくらいしか今の時臣にできることなどないのだが。
「っ!!」
何やら黄金の波紋の中で声らしきものが聞こえる。
そして、残すところ頭頂部のみとなった収納作業に異変が生じる。
なんと黄金を纏った手が出てきたかと思うと必死にその飲み込む力に抗い始めたのだ。
「王よ。つっかえてます。」
ここまで来たら本当に何もできない。
結局時臣は最後まで見届けることにした。
「む?・・・ふむ。」
時臣の言葉に何を思ったのかかの王はその抵抗を続ける手と出ている頭を・・・蹴り始めた。ガッゴッバキッと、それはそれは容赦なく、ひたすら蹴る。
しばらく続いたそれは蹴るのがめんどくさくなってきた王が、出ている指の一本を逆方向にへし折ることで生まれた隙に更に蹴りを入れることで終わりを迎えた。
召喚が終わり次第問題の英雄王は与えられた部屋で何か粘土板を読み漁っている。
曰く昔を懐かしむのだとか。
遠坂時臣はまた深い溜息を吐いた。
ーーー本当に
これは、間桐家に2騎目のバーサーカーが召喚される数日前の出来事であった。
はい、というわけでシスコンギルガメッシュの乱入回でした。
ちなみにこの世界はこの作品から連なる世界ではないため主人公含め叙事詩がありません。
つまりどんだけ正体を探ろうとしても無理なわけです。
・・・ギルガメッシュとか混乱するだろうね。なんせこの世界にも叙事詩はあるけど内容全然違うんだもの。
この話の