ギルガメッシュが入るより先回りして風呂の水質を調べていたウルレシュテムは水につけていた手を上げる。
「・・・取り敢えず、感染の心配はなさそうですね。」
ほっと胸を撫で下ろした。エルキドゥの取りこぼしから泥に侵されるとか笑えない。
そんなことを考えていると後ろの方から何やら声が聞こえてくる。
どうやらギルが入ってきたようだ。
「ああ、待ってま・・・」
振り返った先にはZENRAの弟が立っていた。
鎧を纏っていないはずなのになぜか眩しい。
「あ、間違いました。」
扉代わりに隔てていた布を瞬く間に閉める。
驚くべきことに
全裸ダメ。腰タオルOK?
「え、ちょ。姉上?何故閉めるのですか?」
布越しの全力の攻防が始まる。ギリギリと押さえ付けられた布が不吉な音を立てている。
けれどこれもいつまでもつか。ああ、もう布が破けそうだ。
「っ取り敢えず恥じらいを持ちなさい慎みを持ちなさいそして腰元のブツを隠せ。」
「?何故ですか?
思わず絶句する
ついにビリビリと布が引きちぎられた。あ、もうこれ矯正とか無理だ。
幼少の時に他の事と一緒に恥じらいも教えればよかった・・・と少し後悔した。
仕方がないのでZENRAでの湯浴み再開。
今はギルの髪を洗っている。
この時代おそらく主流は水だけか泥なんだろうけど個人的に泥を塗るのは抵抗があったので代わりに花びらを練って泡らしきものを作り石鹸の代わりにしている。
見た目椿に似てるが違うと思う。まあ、いい香りするから気にしないけど。
「痒い所は?」
ブンブンと首を左右に振るギル。勢いが良すぎて泡が飛び散る、やめろ。
そのまま桶の湯で流していく。
と、両腕を肩の高さまで上げ何かを催促するかの様に「ん」と言った。
おい、体も洗えってか。と思いつつさっきの石鹸?水を染み込ませた布を渡す。
「後ろは洗います。けど、前くらい自分でできますよね?」
思い切り不満そうな顔をする弟に笑顔で再度訊ねる。
「で、き、ま、す、よ、ね?」
渋々自分で体を洗いだした。よしよし。
どっかのお狐様も言っていましたが。
姉に勝てる弟などいねーのです。
石鹸をお湯で流して終了。我ながらよくやったと思う。
というわけでエルキドゥに癒してもらおうとくるりと出入り口の方を向く。
瞬間、後ろから何かに引っ張られる。
結果、
服もびしゃびしゃである。重い。
犯人・・・ギルの方を見ると輝かんばかりの笑顔をこちらに向けていた。
「これで湯浴みせざる得なくなりましたね。姉上。」
あとで覚えてろよ。
◇ ◆ ◇
「姉上」
さっきから仕切りにうーとかあーとか言っている弟に「はい」とか「なんです?」とか言っているがいまだに進展がない。
そろそろ切り上げてあがるかと思っているとがしりと腰を掴まれ引き戻される。
俯いたギルがぽつりと呟いた。
「・・・聞かないのですか。何も。」
「聞いてほしかったんですか?」
ごめん。姉ちゃん気づかなかったわ。あれそういう意図があったんだね。
ほんとに会話がなくて困ってるだけかと・・・。
「・・・。」
「聞きませんよ。何も」
また俯いて何事か考え込んでいるギルに返答する。
話題に乗って墓穴掘るのも無きにしも非ず。怖いもの。
主にばれた後の君が。
不意に手を掴まれたというか両手で包み込まれるように握られた。
まってえええ。これ逃がさないってことおおおお!?
嘘だろおいいい。どっから情報が漏れた?尋問後に監禁とかいやだああああ。
「・・・姉上。一緒に神殺しに行きません?」
ついでに人類と言う目の逝っちゃった弟。
お前何言っちゃってんのおおお。つかお前裁定者だろっ。神はともかく人の事は大好きだっていつだっけかのアニオタの友人のD氏(名前忘れた)がいってたぞ!?
「え、いやあの話がよく・・・」
戸惑う
しかし、やはりその眼にハイライトは無い。
「
とろけるような笑顔で弟は切々と考えを語る。
恐らく
なにぶん言っていることがかっ跳びすぎてて若干引き気味です。
「つきましては、
突如、ガパリと床のタイルの一枚が剥がれるとエルキドゥが這い出てきた。
どんなところから出てきてるんだお前。
「えええエルキドゥ貴様っ一体どんなところから出てきているのだっ。」
顔を赤くしてギルが怒鳴る。
いや、その恥じらいをもっと別のところに持って来ようよ。
そんな周囲にお構いなしにエルキドゥは服を整える。
「なんだ、そんなことを考えていたなんて・・・水臭いじゃないかギル。ボクにも一言っておくれよ。」
すごくいい笑顔だ。どうなってんだこの二人。
お姉ちゃんもうついていけないよ。
傍らで二人が盛り上がり、ウルレシュテムが現実逃避を始めようとしたとき。
周囲に轟音が響き渡った。
主人公は身内のしたことは大概のことを許します。
まあ、それが弟と我が子の行動を助長している訳ですが・・・。
このギルガメッシュですが、彼はどちらかと言えば賢王寄りです。気性は。
ただし、姉、朋友に関する執着はとんでもないのでそれを汚すようなことは一切許しません。
偽物が現れたら即抹殺するでしょう。
似たような人物がいれば興味は示すのでしょうが飽きたら即捨てる程度、他の人間は総じて玩具くらいの感覚です。で、ウルク、ひいては世界は彼にとっては玩具箱同然の認識です。
飽きたら棄てる。面白いなら生かしておく。
それを子供の様な無邪気さと大人の様な冷静さで実行するためこの方も質が悪いです。
お読みくださりありがとうございました。