さて、皆さん。人の基本的な欲求は大きく分けて3つある。それは睡眠欲、性欲、食欲の3つなのだか...。
その3つはどれか1つが欠ければ何処かに皺寄せが出るほど大事なものだ。大事なものだ。大切だから2回言った。
で、わたしは、前言った通り転生を重ねている
だからその大切さを身をもって知ってる。
特に食欲。泣きたいくらい。
もう幾度目か忘れてしまったが滅茶苦茶飯の不味い国に転生したことがあった。もう絶対あそこには転生したくない。きっと数日と持たず死んでしまう。
だってなんかよくわかんないのと戦って仲間が死んで絶望して飯のあまりの不味さに絶望して、戦況が悪くなって絶望して飯の不味さに絶望して...もう絶望しかねーよ。よくもったよ自分。
ともかくそれほど食欲とは大切なものなのだ。
で、肝心の現在の食事に関してなのだが。
うん、悪くない。美味しい。でも、割りと神代だからなのかまだまだ発展途上のためなのか簡素なものが多い。例えばバターケーキとか、貴重品だけど。他に果実そのままとか丸焼きの肉とか。欲を言えばもっとバリエーションが欲しい。もっと贅沢言えば日本食食べたい。
そしてわたしは思い付いた。無いならつくればいんじゃね?と。
残念ながら遥か昔に食べた日本食は朧気にしか思い出せなかったが、何を隠そう私には千里眼がある。見たいと思ったものが見れる検索機能付き千里眼が。
思い立ったが吉日と早速厨房の方に向かう。
「すみません。ちょっとお邪魔します」
「王。この様なところに来られては...」
まだ年若い、おそらく入ったばかりの料理人がおろおろしながら苦言を言う。
「あ、大丈夫です。直ぐ帰るので」
そのまま終始笑顔を崩さずウルレシュテムはそそくさと立ち去った。然り気無くその手に食材を奪取して。
彼女は既に追い出されることなど予想済みで計画を進めていた。
そう、彼女は秘密裏に簡易キッチンを己の部屋に備え付けていたのだ。もちろん原始的なもののため場所を取り、決して簡易とは言えないのだが。
「あれ?今日は何を作るんですか。お姉さん。」
ひょこりと出入口から顔を覗かせる少年が1人。
輝かんばかりの金髪に神性を顕す紅の眼の紅顔の美少年。我らが子ギル君である。
少し前といっても数年前。彼が生まれたことがわかり、そろそろリミットなのかと染々感じたものだ。
何だかんだで可愛くて可愛くて仕方ない自慢の弟であるのだかこの子。頑なに私とのボディランゲージを拒むのだ。後から分かったのだが彼も転生経験がありあまりなれないのだとか...あれ?君の肉体も魂も神様お手製じゃないの?つーかここfateのメソポタミアかよ。
「今日は肉じゃがもどきを」
「わーい、日本食ー」
彼も日本食を食べたことがあったらしく眼を爛々と輝かせながらこちらに近付いてきた。
不意打ちで抱きつくと顔やら耳やらを真っ赤にして固まる。
...子ギル君。どうか君はそのまま育ってくれ。