失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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神「今ならいけるっ」
主人公、爆睡中。
神「覚悟ー。」
高濃度の魔力による攻撃。
ざばあっと泥。呑み込まれる攻撃と本体。
主人公目を覚ます。
「あれ?なんか増えてるような・・・?」

だいたいの刺客の真相はコレ。


鎖の病

ーーーどうかどうか、幸せに。

 

金の糸をすきながら

 

ーーーどうかどうか、喜んで。

 

優しい風が吹き抜ける。

 

 

 

 

ーーーどうかどうか、

 

 

 

 

ーーーーーー(わたし)幸福な生(憐れな死)を下さい。

 

 

 

 

繋ぎ(滅び)の女王は玉座で微睡む。

 

 

いつかの願いを、夢見ながら。

 

 

 

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

「・・・エルキドゥの様子はどうだ。」

 

玉座からの王からの呼び掛けに、医師は首を左右に振った。

 

「ダメです。どころか、あの方の黒い血に触れてしまった者も姿を消しました。」

 

 

事の始まりは2、3日前。

エルキドゥが病に臥せってしまったのが最初だった。

熱病にでもかかったかのように、高熱に魘され体の節々は赤く脹れていく。解熱作用のある薬を飲ませるなどあらゆる手で治療にあたっているが全く効果がない。

そして、黒い血の様なものを度々吐き出す。

 

血にしては色がおかしいので専門の者に探らせてみたがその者はその日の内に姿を消した。

それからもエルキドゥの世話をしていた者が次々と失踪。

共通点はいづれもあの血に触れた者。

 

「あまりあの方の手を煩わせたくはなかったが・・・」

 

致し方あるまいと言って王座を立つ王に周囲が慌てて制止する。

 

(オレ)の心配は無用だ。聞きに行くだけだからな。」

 

「・・・何処に行こうというんですか。ギルガメッシュ王」

 

柱の影からするりと男が顕れる。

全身を白の装いで包んだ男・・・ヘアフスが。

 

「丁度いい。貴様もこい。ヘアフス。」

 

ヘアフスの問いに答えないまま王が歩き出した。

 

ヤツ(エルキドゥ)の制作者・・・姉上の所へ行く。」

貴様なら居場所くらい知っておろう?とギルガメッシュがどこか皮肉気に付け足した。

 

「・・・御意。」

ヘアフスが応えるとほぼ同時に一陣の風が駆け抜ける。

発生源となった天舟に乗ったイシュタルが、周囲を置いてきぼりにしたまま口を開いた。

 

「その案は却下よ。」

 

正確には。というところで一端言葉を切り天舟から降りる。

 

「もう、実行は不可能になった。とでも言うべきかしら」

 

「・・・どういう事だ。」

 

不穏な空気の中ヘアフスが平坦な声で問う。

イシュタルはちらりとヘアフスを一別しただけで視線を戻した。

 

「彼女は神々(わたしたち)人類(あなたたち)の敵になった。・・・少なくとも我が父アヌはそう判断したわ。」

 

そんなことがある訳無いだろうという雰囲気の周囲にイシュタルが続ける。

 

「・・・そうね。私もいまだに半信半疑よ。けれど事実、彼女は森の番人を奪ってキシュを制圧。そこを拠点にして諫めにきた神も人も片っ端から殺して回ってる。」

 

「ほう?・・・(きさまら)の寄越した神も人も・・・ではなく、か?」

 

ギルガメッシュが口を開く。その顔にはニヒルな、且挑発的な笑みが浮かんでいる。

まだ隠していることがあるだろう、と。

 

その笑みにイシュタルは溜め息で応対した。

 

「・・・話が早いんだか遅いんだか。ええ、そうよ。確かに彼女が始末して回ってるのはあくまでこちら側から手配した刺客。けど、それにもちゃんと訳があるんだから。」

「なにも、別に森を荒らして出ていったくらい。(わたしたち)の中の誰かが、それこそ神罰として何らかの罰を与えればいいし。キシュの一件なんて言わずもがな。別に人の国が一つ滅ぼうが神全体(わたしたち)にとっては別にどうでもいい。・・・問題はそこに用いられた手段よ。」

 

いつもとは違う真剣なイシュタルに皆身体が硬直する。

と、不意にギルガメッシュが待てと話を一端切り、人払いをした。

 

「・・・あら、気が利くわね。もう少し早いほうがよかったんでしょうけど。・・・で、話を戻すわね。問題なのはその手段よ。わたしにはよくわからなかったけれどアヌ含め古参の神は母なる泥だと言っていたわ。始まりの泥とも。・・・ともかくウルレシュテムが本来は既に存在しないはずの泥を持っていて、それによって世界が滅びに向かっているとでも思って納得なさい。」

 

ここでイシュタルの眼光が心なし鋭くなってギルガメッシュを見た。睨んでいるかのような女をものともせずギルガメッシュはだからなんだと言いたげに見返す。

 

そう、彼にとって今大切なのは朋友であり姉である。

神も人も。今の彼(・・・)にとっては二の次だ。

 

「で、アヌ神からアンタへ、ウルレシュテム討伐の命が来てる。他にはシャマシュ含め各神の加護の籠められた装身具や武器。」

 

ふざけるなと言いたげな表情のギルガメッシュにイシュタルは努めて冷静に告げた。

 

「エルキドゥの病が、ウルレシュテムのせいだとしても?」

 

「なんだと。」

 

苛立たし気にギルガメッシュが切り返す。

 

「さっき話してたわよね。エルキドゥの吐き出す黒い血を触ったヤツがいなくなるって。」

 

「・・・それがもし、泥だったとすれば?」

 

「そもそも制作者がさっき言ったような状態だからって既に作製が終了しているはずのエルキドゥが同時期に病に倒れること自体がおかしいと思わない?」

 

「わたしには生憎泥についての知識はないわ。だからここからは臆測で話させて貰うけど。例えば、意図的に混入させておいた泥に急激に魔力を流し込んで殻が耐えきれずに爆散。飛び散った泥からウルクをーーっ」

 

イシュタルが慌ててその場を飛び退く。

先ほどまで彼女が居たところには複数の鎖が突き刺さっていた。

 

「相変わらずあっぶないわねー。」

「っうるさい。母さんを、悪く言うな。僕が・・・許さない」

 

鎖の出所である部屋の出入り口にもたれ掛かるように緑の麗人・・・エルキドゥが立っていた。

フラフラとした足取りでギルガメッシュに近付く。

 

 

「行こう、ギル。母さんのところに。行って確かめるんだ。真相を。」

 

 

こうして、謀らずも糸の思い描いた通り。

鎖と楔が動き出した。

 




・・・このイシュタル。エルキドゥ創作秘話を知ったらどう思うのだろう。
ちなみにちょろっと設定公開。

我が家のギルガメッシュは二人います。我と僕が。
・・・両方とも読みはオレなんですけどね。

閲覧ありがとうございます。

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