これからもよろしくお願いします。
ーーめーなさー
ーーごめーなさい。
ーーーたーはあーーを
ーーー私はーーーを愛せない。
ーーーだかーあなーもわーしを
ーーー
《ワタシ》。
◇ ◆ ◇
ずるずると、ずぶずぶと。
浸かっていく、沈んでいく。
呼び止める声はもうない
呼び留める声はもうない
助けは届かない。
身体に纏わりつく泥は温かい/寒い。
ただ漠然と安心/不安を感じる。
ああ、自分は今とても
このまま眠ってしまおうか。
思考を放棄し、肢体を投地する。
--a---aa---
----Aaaaaaa
ひどく懐かしい。子守歌が聞こえる。
いいや、これはーーー騒音だ。起こす為の誘導だ。
いい加減眠らせてほしい。
重い瞼を開いた。
何もない空間に、女が一人立っている。
誰かはわからない/知っている。
--Aaaaaaaa
彼女はただただ歌い続ける。
「そう。貴女だったんですね。」
目の前の
身体に纏わりつく/侵していくものがなくなる。
そのまま、彼女を抱き留めた。
肩に顔を寄せる。---懐かしい匂いがした。
触れ合う身体は温かい。
耳元でパシャリという音が聞こえた。
ーーーああ、やはり
泥が迫る。
泥が自身を呑み込んでいく。
溶けていく
還っていく
ーーー
ーー
◇ ◆ ◇
「...そう。引き続きよろしく。」
そう言って鳥を放してやる。
いやまあ、端から見れば鳥と話してる痛い人なんだろうけどさ。
ちらりと自身の足元...正確には影のあるべき場所を見る。
そこには影に沿うように泥があった。
しかし、只の泥という訳ではないらしい。
常にぐつぐつと煮たった鍋の中のように泡立ち蠢いている。
「...我ながら酷いな。」
視線を自身の周りにいる鳥たちに向ける。
鳥はすべからく薄灰色の体毛にぎらつく赤の目で統一されている。
この鳥たち、何を隠そう影に擬態しているこの泥に浸けられた生物である。
ちなみに記念すべき第1号は、
この泥、どうやら浸けられた生物を眷族のような何かに変えることができる不思議泥みたいだ。
この契約は術者を母、眷族を子という形で縛るらしく一斉に嘴開けられたときは少し引いた。
意志疎通が出来るようになったときも驚いたが、それもどちらかと言えばただひたすらかあさんかあさんと連呼するだけだったので溜め息をついた。
ざばあっと背後で勢い良く水柱(正確には泥だが)が吹き上がる。
「そろそろこの仮宿ともお別れですね。」
彼女の背後。水柱のたった辺りには何かの腕らしき
「大方エンリル辺りの差し金でしょうが...全くもって君も運がありませんね。
そう、その腕は彼女を背後から奇襲せんと飛び掛かってきたフンババのものだった。
彼女が立ち去って尚足掻いている腕だったがしばらくするとそれも止まり呑み込まれていった。
そうして、彼女は森を出ていった。
無数の鳥と、神々の森の番人を奪って。
という訳で今回はちょいちょい出てきていた泥の正体がわかる話だったのですが...リアルでだともふもふの小鳥がたくさんっていいな...と思ってしまいました。
閲覧ありがとうございます。