失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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エルキドゥのエトさん化が止まりません。
主に外見が。

エルキドゥにはバーサーカーの適性もあるという話をどこかで耳にした記憶がありますがさて、何処だったのやら...。


森と母子

 

「ねえ、母さん。」

 

木から木へ跳び移りながらエルキドゥがウルレシュテムを呼ぶ。

今は獣の殻(という名のエトのフクロウ姿)を被っての戦闘訓練を行っているため、跳び移る度に木がメシメシと嫌な音を立てているがエルキドゥもウルレシュテムも別段気に留めない。

 

「僕が闘うことになるかもしれない母さんの弟って...」

 

「ギルガメッシュ。」

 

「そう、そのギルガメッシュってどんな人?」

 

エルキドゥの何気無い問いにウルレシュテムは遠い目をしながらしばし考えて、再度口を開いた。

 

「...姉思いのいい子ですよ。」

 

「か、母さん。大丈夫?なんだかこの間解体した豚みたいな荒んだ目になってるよ!?」

 

「ああ、うん、ダイジョウブ。ダイジョウブ。」

 

 

エルキドゥは徐々に変わっていく母の様子を見て口をつぐむと攻撃に転じることにする。

 

背中にあたる部分から鎖と大きな円錐の様な土塊を射出する。

 

最初はこの巨体と敏捷性を活かした力押しの攻撃ばかりをしていた。が、母の所有する雷撃を打ち出す『ナルカミ』。

この武器はいかんせん射程が広くなかなか隙ができない。そこでエルキドゥは単純な力押しではまず届くことはないと悟り闘い方を試行錯誤し出した。

 

この格好で闘っているときに直接噛んだり潰したりといった攻撃だけでなく遠距離からの攻撃手段があった方がより闘い方の幅が広がるのではないかと思い開発した結果がこの投擲にも似た射出だ。

こころなし母の目が爛々と輝いていたのが不思議だったが、きっと期待してくれているのだろうと思うと嬉しくなった。

 

気分が高揚していくのを自覚する。

この感覚こそ母が前言っていた暴走なのだろうと頭の片隅で理解した。しかし、理解したからと言って実際に押さえ込むかといえば必ずしもそれがイコールで繋がっているのかといえばそうではない。

エルキドゥは理解した上でその衝動に身を任せた。

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

暴走し、手当たり次第に射出を繰り返してくるエルキドゥの攻撃をかわしつつ、表情にこそ出さないもののウルレシュテム自身も暴走していた。

 

教えてもいないのに赫子(違う)の射出まで...。

よく自力でそこまで到達したよエルキドゥ。

さすが自慢の我が子。うちのエルキドゥはすごいんだ!

 

内心ヒャッハー!と叫ぶ。

 

エトのフクロウ姿にしたのは思いつきだったがまさかここまで大成するとは...。と喜びを噛み締める。

 

これで有馬対エトの一戦に洒落込むこともめじゃなくなった。ビル所か建物すらないけど!周り木ばっかりだけど!!

 

考えつつも決して攻撃の手はゆるめない。

 

ウルレシュテムがナルカミから雷撃を放つ。とそれを避け、かつ一気に距離を縮めようとエルキドゥがウルレシュテム目掛けて跳躍する。周囲にはエルキドゥの放った射出物がウルレシュテムの周りを単純だが堅固な壁が取り囲むかのようにそびえていた。

 

絶対に避けられないように。

 

が、ウルレシュテム自身避ける、逃げるといった選択肢はない。何か策があるという訳ではなく突っ込めばなんとかなるくらいの単純さで次の一手のために態勢を整える。バカである。

 

しかし、昔から馬鹿となんとかはなんとやら。

そんなバカだからこそ案外無理じゃね?みたいな事も成し遂げられたりする。実際歴史であれ神話であれ中心になって動かしているのはだいたいバカだったりする。良く言えば常人には到底至ることの出来ない発想を持つ天才だ。

 

衝撃とともに舞い上がった砂埃が治まる前に甲高い悲鳴じみた絶叫が辺り一面に響き渡った。

 

ぼとりと巨大な腕が衝突地点から少し離れた箇所に落ちる。

叫びながら自棄になっているのかいないのかエルキドゥはウルレシュテムに突進する。

それをレイピア型に変形したナルカミを突き刺すことで止めたウルレシュテムはそのままナルカミを横にずらして傷口を拡げる。

内部で砲撃形態に変形させ雷撃を打ち込むと、中のエルキドゥを殻から引きずり出した。

 

わあ、構造までそっくりだ。

実際の行動とは裏腹に上機嫌に解体を進める。

 

「っ...か、あさ、ん。」

 

エルキドゥが眩しそうに目を擦る。

動けないところを見るにナルカミの雷撃のダメージがまだ残っているらしかった。

本人が抜けるとすぐに殻は土に還る。

 

「跳躍から着地までのムラがありすぎる。狙って下さいと言っているようなものです。」

 

「は、い。」

 

 

「折角遠距離からの射出攻撃が出来るようになったのですから跳躍までの不足分を補うなり活用なさい。」

 

言ってふと思う。これ、エトさんと有馬さんっていうより排世と有馬さんじゃね?...ま、いっか。

 

ああ、エルキドゥかわいい。尊い。と、ボロボロになりながらも真剣に自分の話に耳を傾ける我が子の頭を撫でながら。さて、次はどんなシチュエーションで訓練(遊ぶか)にするかと考えを巡らせた。

この元女王。やはり頭のネジが何本か外れている。

 

 

 

 

 

 

 




エルキドゥがエトさんの羽赫の様に飛ばしているのはあくまでも自身の纏う殻から作り出した土塊です。
けれど込める力の量によっては水晶みたいなものになったりする。益々主人公は喜びますね。
もちろん生身のままでもFGOのときのように抑止力を使って戦うことは出来ますが単純に力押しでいくならフクロウのときの方が性能...というより使い勝手がいいという設定にしています。
なんせ、主人公はわりと簡単に剥離させましたが普通の攻撃ではあの殻を貫通所か傷付けることすら難しいからです。殻自体が加護付きの鎧みたいなものなので、それこそ消耗を待って本体が出てきたところを狙うしかありません。

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