D.C. 主題歌の『サクライロノキセツ』
D.C.ゲームの号泣場面で流れる『small cherry』
D.C.P.S.ゲームの春曲『二人だけの音楽会』
自分が今でも聴いてしまう曲です。
思春期の頃、深夜に隠れてD.C.ゲームをやっていた昔を思い出します。
自分だけじゃなかったのが嬉しかったのは秘密です。
「おい、まず理由を話せよ」
各自、今日の放課後に時間を空けておけ、と。
朝のホームルーム後、義之や渉、雪月花の面々に突然言い出した杉並に、義之は言葉を返した。
「ふむ? 同志桜内であれば察することが可能だと思ったけどな」
「どこに察する要素があったんだよ」
「そうか、仕方ないやつだ」
大仰に肩を竦めるしぐさを見せる杉並に、こいつ殴ろうかなと思わず考えてしまう義之。
そんな義之の気持ちを察知したのか、前置きをやめて答える。
紹介したい人物がいる、と。
その言葉に驚いたのは義之だけでなく、他のメンバーも全員である。
「おいおい、お前からそんなこと聞くの初めてだな。 なんつーか、意外だわ」
最初に言葉を発したのは、渉だ。
渉の言葉通り、人を紹介すると言うこと自体が初めてであり、秘密主義の杉並が言うのは、素直に珍しいと思った。
「まぁ、良いんだけどよー。 もしかして女の子でも紹介してくれんの?」
「安心するが良い、板橋よ。 お前は一生独り身だ!」
「そうかぁ、それはよ…くねえ! 何を安心すれば良いんだよっ!」
「まぁ、わたるくんはぁ、いい友達どまりだもんねー」
「きっと、好きな人に告白できずに応援しちゃうタイプね」
水を得た魚のように、渉に向けて話す杏と茜。
何で俺そこまで言われんだよと、叫ぶ渉を見ながら、途中であった話へと戻そうと、小恋が喋る。
「それで、杉並くん。 結局、紹介したい人って誰なの?」
「フッ、それはだな。 俺と同じく、入学当時から非公式新聞部に所属する、我が優秀な同志である!」
まぁ、あまり非公式新聞部の活動に参加しないがな、と。
そう付け足す杉並を見ながら、嫌そうな表情をする義之。
杉並に面倒なことに巻き込まれている義之は、また何かあるんじゃないかと警戒する。
他のメンバーも、何か裏があるんじゃないかと警戒する中、ただひとり、杏は何かに気付いた様に杉並を見つめる。
「……杉並、そういうこと?」
「フッ、言ったであろう」
場をセッティングしてやると、と。
杏の漠然とした質問に、杉並は分かっていたかのように返答する。
杏と杉並のやり取りを疑問を抱きながら見る面々。
そんな周りを気にせずに、杏は自身の答えを返す。
「わかったわ、会いましょう」
「おいおい、さっきの会話はなんなんだ? あれで何か分かったのか?」
「まぁ、ね」
渉が疑問を投げ掛けるも、それ以上は語ろうとしない杏。
そこからは、じゃあわたしも行くー!という小恋を筆頭に、渉、茜、義之もなし崩しに参加の意を述べるのであった。
その後、授業が始まるからと皆が席に戻る中、義之がふと思い出したかのように、杉並に話し掛ける。
「そういえば、杉並。 由夢がお前んとこの――」
魔法の桜の記事を書いた人物に会いたいらしい、と。
言葉を続けようとした義之の言葉を遮り、杉並は分かっていたかのように言葉を返す。
――それでは放課後に朝倉妹も呼ぶがいい、と。
ニヤリと笑いながらこちらを見て、自分の席へと戻る杉並であった。
義之は、杉並の後ろ姿を呆然と見ながら考える。
放課後に会うのは、魔法の桜の記事を書いた人物なのか?
いや、昨日のあのとき居なかったよな。
というか何で由夢が会いたいって――
色々と疑問が出てくるが、教師が入ってくるのを見て席へと戻る。
そして、最後に義之はつぶやいた。
あいつ、やっぱ分かんねえ、と。
これは余談であるが、
昼休みのときのこと。
「ねぇ、杉並くん……あ、あのね」
「花咲よ、お前が会いたい人物は放課後まで待つといい」
呆然とする茜と、高らかに笑って去っていく杉並の、そんなやり取りがあったとか。
episode-4「彼方」
放課後。
義之たちに加え、慌ててやってきた由夢は、杉並に連れられ、非公式新聞部の隠れ家へと向かった。
「さて、ここから入るぞ」
そう言いながら指し示した場所は、グラウンド近くのごみ焼却炉。
その裏側の地面には、扉の様なものが付いており、開けると地下へと降りる階段があった。
ごみ焼却炉の裏側に地下へと続く道があることに驚きを隠せない面々であるが、そんな義之たちを面白そうに見ながら、行くぞと声を掛けて降りていく杉並であった。
「なぁ、非公式新聞部ってなんなんだよ」
「……ふむ、秘密組織だと言っておこう」
渉の質問に、そう返す杉並をみて、なおさら非公式新聞部について謎が深まる面々であった。
地下室の複雑な道を連れられながら歩く中、キョロキョロと周りを見ていた由夢が言葉を発する。
「それにしても、こんな地下があったなんて。 お姉ちゃんたち、絶対知らないだろうな……」
「まゆき先輩たちから逃げられるのも、分からなくはないわね」
杏と由夢が話している中、名案だとばかりに渉が自分の考えを打ち明ける。
「いいこと思いついたぞ! ここの場所を音姫先輩たちに伝えれば、きゃー渉くん、ステキーってなるんじゃね?」
「ないな」
「ないかなー」
「ないわね」
「ないと思います」
即否定するなよっ、と周りに返す渉を見ながら、杉並は余裕そうな表情を浮かべて告げる。
「ふはは、別に逃走ルートは此処だけではないから知られても問題ない!」
「ふあー、ここだけでもこんなに広いのに、他にもあるんだ」
「これ、杉並に置いてかれたら戻れない自信あるぞ、俺」
各々の思いを語りながら、まだもう少し先だと話す杉並に着いていく面々であった。
―――――――――――――――
目的地に辿り着くまでに長いからか、道中ずっと話し続けていたが、ようやく杉並の足が止まる。
「さて、諸君、着いたぞ」
ここに紹介したい人物がいる筈だ、と杉並は告げた。
杉並の視線の先には、一つの扉があり、その横のプレートに『非公式新聞部第二執筆室』と記載されている。
そのプレートを見ていた義之が、杉並の言葉に引っ掛かるものがあったことに気付く。
「待て、いま、はずだって言わなかったか?」
「言ったぞ。 やつの日々の行動を考えると、ここに居る可能性が高いな」
淡々と告げる杉並に対して、手で頭を抑える様にした仕草をしながら、杏は尋ねる。
「待ちなさい、あなた、場をセッティングするって言ったわよね? 向こうに了解を取ったんじゃないの?」
「最初は連絡しようと思ったんだがな…しかぁし!」
その方が面白そうな気がした、と。
ジト目の杏や呆れた目を向ける他の面々など意に介さないかの如く、堂々と言う杉並であった。
「まぁ、居ないときは次の候補に行けば良いのだ……おーい、同志初音よ! いるか!」
ノックしながら大声で扉の向こうに呼び掛ける杉並。
すぐに開けないのだな、と意外な律儀さに義之が感心しているのを他所に、一拍して落ち着いた男性の声が扉越しから聞こえた。
杉並さんですか、手が離せないので少し待ってください、と。
「……なんだ、男かよー」
「渉はひとりで帰ってなさい」
「そうだよぉ、興味ないなら帰っていいんだからねー?」
「あれ…なんか、いつも以上に辛辣じゃね?」
それに一人じゃ戻り道わかんねーよと、杏と茜の冷たい対応に涙しながらつぶやく渉。
杏と茜からしてみれば、目的の人物に会える直前に水を差す渉にはちょっと怒りがあったのだ。
言葉は発しなかったが、後ろにいた由夢も渉に冷たい視線を向けていた。
後ろの渉たちの漫才を気にせず、杉並は返答した。
分かった、と。
「中で待たせてもらうぞ」
おい、ノックの意味ないだろそれ。
義之のツッコミを無視して中に入っていく杉並。
杉並が扉を開けた先には、
至るところに新聞記事が貼られている壁。
中央にある机を囲うようにして重ねられている本の数々。
そして、机の上の書類に何かを記載している男子学生の姿があった。
「杉並さん、それじゃあ私の返答の意味が……」
ないじゃないですか、と続けようとしたのだろう。
杉並を呆れた目で見ようと思った男子生徒は、視線を机から扉側に向け、杉並以外にいたことに目を丸くする。
「同志初音の記事に興味をもったみたいでな、会わせに来た」
そんな大雑把な紹介でいいのかと内心思う義之だが、その話を聞き、嬉しそうな表情を義之たちに見せる。
席から立ち上がり、こちらに向けて、男子生徒は言葉を発した。
――はじめまして
新しく人と知り合うことを喜んでいるのだろうか。
義之や渉、杏、茜、小恋、そして由夢を一人ひとりをしっかりと見ながら告げた。
――わたしの名前は、初音 彼方です、と。
ボーイ・ミーツ・ボーイズアンドガールズな話でした。
渉の扱いが雑なのかと思われる方、そんなことないです。
割りとゲームでもあんな感じです。
杉並色々と知り過ぎじゃないかと思われる方、そんなことないです。
割りとゲームでもあんな感じです。
ヒロインだけでなく、三馬鹿トリオを好きになれるのもD.C.IIの魅力ですよね。