感想と評価と誤字報告ありがとうございます。
さっき、FGOのニコ生があったようですがまだ見れてません。この後寝る前にタイムシフトで見ようと思います。
今回も引き続き説明回みたいなものです。そして、えっちゃんが少しえっちゃんらしくなってたらいいなと思います。
「アイテムの方はちょっと俺には荷が重いので後回しにしましょう。それよりまずはノートです。情報の共有からやるべきです」
「そ、そうですか?」
食い気味に述べるモモンガに押されながらXオルタは「頑張ったつもりだったんだけどな……」等とぼやきながらノートと巾着を取り替える。頑張ったどころではない。重過ぎである。モモンガの感情を理解できていない様子のXオルタはノートを差し出し、モモンガの隣に席を移す。
「あまり、期待しないでください、ね。もう、20年以上前のことなので、凄く曖昧、だし」
女の子の部屋で1つのベッドの上で少女と男が隣り合い、間に置かれたノートを覗き込む。傍から見れば一昔前のラブコメの一幕にさえ見える。但し、男が邪神を彷彿とさせるガイコツでなければ、という注釈がつくが。
モモンガが1ページ目を開くとまず、下手くそな地図の様なものが目に入る。
「この周辺の地図、ですか?」
Xオルタが頷いて肯定の意を示す。ナザリックを中心に3つの国がある。左側に◼️◼️◼️王国、右側に同じ様に塗りつぶされた文字の横に帝国、下にも法国と書かれた文字とともにやはり黒塗りがある。その下にさらに3つ、場所がわからないという注釈とともに、竜王国、評議国、聖王国と箇条書きされ、それぞれコメントが添えられている。
「ユグドラシルとは随分違うみたいですね。それで、この黒塗りはなんだったか聞いてもいいですか?」
見たままの感想と疑問を投げかけながた。
「えっと、そこははっきり思い出せなかったので……」
ボソボソと呟くXオルタの言葉に納得しながら細かなコメントを見て行く。その中でも特に目に付いたものについて尋ねた。
「この法国っていう国のプレイヤーとワールドアイテム、後下にくっついている竜王国の狩場っていうのはどういう意味ですか?」
「法国っていうのは確か、昔プレイヤーが作った国とかで、ワールドアイテムがいくつかあったはず、です。竜王国はそのまま亜人か何かに狩場扱いされている国だったと思います」
「やっぱり他のプレイヤーがいたんですね。……でも、昔ってどういうことですか?」
「それについては次のページにあります」
言葉と共にXオルタがページをめくった。左ページには設定、右ページには人物名と書かれていた。
モモンガはまず、設定から読み進み、『昔』という言葉の意味を理解する。転移は同時ではない。100年毎に行われる。なら、他の仲間が既にいることや、これから来ることもあるかもしれない。無いはずの胸が期待に高鳴る。さらに先にはアイテムやNPC、魔法についての説明が入る。
――フレーバーテキストでしかない設定が極めて重要な効果を持つ――
モモンガは実際に会ったNPCの様子を思い出して納得し、何故、Xオルタが例の指輪を持っていたのか理解した。効果自体も強力であったが、設定がそのまま事実になれば一部の攻撃にしか使えないワールドアイテムよりはるかに役に立つ場面もあるだろう。
しかし、あんなに溜め込まなくても良かったのに。
その思いを押し殺し、隣のページをみた。そこには数々の名前とほんの少しだけ添えられたコメントが並べて書かれている。
「ナザリックを含めた、小説の登場人物たちの名前です」
順繰りに見ていけば、随分と奇妙な事になっていた。
村娘と覇王や将軍などという言葉が同一人物に対して並んでいる。NPCに添えられた奇妙なあだ名、きっと間違えているだろう食べ物の様な名前や、散見されるカマセの文字、中には厨二病を患っている様なものもある。
余りにもカオスな有様に『デミえもん』ってなんだろう?等と考えながら、すぐに次のページを見た。
――ナザリック内の注意事項――
見開きでデカデカと書かれたその下には見覚えのある、しかし、見たくなかった言葉が並ぶ。それは様々なギミック、主に『るし★ふぁー』謹製のイタズラによるものが並んでいた。そこに続く一言、『フレンドリィファイア解禁によってほぼデストラップとなっています』思わず罵倒が漏れる。
「何やってんだ、あの腐れゴーレムクラフター!」
呆れながら端まで見て気が付く。
――シズに任せればすべて済むと思います――
小さく書かれている一言にそのNPC、プレアデスのCZ2128・Δの設定を思い出す。何とかなりそうだということに安堵し、先のページに進んだ。
次のページは見開きになっていた。
「そこが最後です」
確かに右ページには途中までしか書いておらず、次のページにも何もないようだった。
一方、左ページの最初の数行には確かに今までに起きたことが書いてある。最初の1行目に書かれた言葉に堪え切れずモモンガは言った。
「……俺って1人の時もアルベドの胸揉んだんですか?」
「そうです、よ。打ち明けるまでの内容はできる限り実現する様に頑張りました」
胸を張るオルタにモモンガはなんとも言えない気持ちになり、昨夜の自分の努力を振り返る。
「……わかっていたなら黙ってないで、もうちょっと助けてくれれば良かったのに……」
「っ!たとえ分かっていても、出来ないことはあるんです。……あんなスゴイ物見せられたら、誰だって混乱します。仕方ないこと、です」
憤慨しながら言い訳するXオルタをしり目に続きを読み進める。主観が混ざり、曖昧な部分も多いが、明らかに無視できないこともある。中には、シャルティアの洗脳やエントマの敗北等の断固として阻止する必要があるものもあれば、セバスが彼女を拾って来る、といった祝福すべき?事も含まれている。その中でもとくにモモンガの目についたものが一つ。
――ぼっちを拗らせたモモンガさんが改名してアインズ・ウール・ゴウンを名乗る――
直ぐに起きるということが気になる一方で、何よりも恥ずかしいと思う。モモンガにとってこのノートをしっかりと読むことは自身の黒歴史を見返すことよりも恥ずかしいことになりそうだ。そう思い、ノートを閉じた。
「ありがとうございます、オルタさん。これは凄く役に立つと思います。とりあえず、宝物庫にしまい話し合いの時にでも取り出すという方針でいきましょう」
「……NPCには見せないんです、か?一応コピー機能とかついたゴーレムを用意してあるんですが……」
何言ってやがる、コイツ
モモンガは気がついた。
ユグドラシルでプレイしていた頃Xオルタは部屋を学生寮の一室に作り替え、教科書や参考書を置くと言ってリアルの本を丸ごとデータ化して取り込んだり、ロールプレイやフレーバーテキストの設定を組むことが好きなかなりゆとりのある、所謂ガチではないプレイヤーだった。だから今までは気がつかなかったのだろう。これらは全て、今この時の為の布石だったのだ。
モモンガは今まさに、真に理解した。目の前にいるこの友人、Xオルタは極度の効率厨である。例えば、それが目的に必要であれば、大恩ある相手であっても襲いかかるくらいのことはしてしまう、そんな狂気を抱えているとモモンガはやっと理解したのだ。
「い、いや、いくらNPCでもこれは流石に見せないほうがいいと思いますよ。ほら、俺たちに対する見方変わりそうじゃないですか」
「でも、絶対にNPCの方が頭良いしうまく使えると、思います」
正論ではある。しかし、受け入れたくないモモンガは切り札を切る。
「だったら、パンドラに渡しましょう。それなら頭の良いNPCが持っているし宝物庫に置いておけます。良いですよね?」
「モモンガさん、パンドラは表に出ないじゃないですか。それじゃあ、死蔵と同じだと思います、よ。だったらデミウルゴスだけにでも渡した方がいい筈、です」
黒歴史の一括封印作戦、失敗。
間違ってはいないが、やはり受け入れられない。さらなる対抗手段を練る。
「なら多数決です。アインズ・ウール・ゴウンは多数決を重視するギルドでした。それに習って今回も当事者である私達とパンドラにデミウルゴス、これだと偶数なのでアルベドを加えて5人で。どうですか?これならいいでしょう?」
「……多数決、ですか。他の守護者も加えるなら、賛成です。アルベドだけだと必ずモモンガさんの意見についちゃう」
「っ、わかりました。守護者を全員集めて多数決です。そこでパンドラかデミウルゴス、どちらに渡すか決めましょう」
僅かな光明、それにモモンガは縋った。縋ってしまった。
モモンガならば時をおけばより良い案が出せただろう。だが、待てなかった。一刻も早く未来の黒歴史を隠したいという感情に逆らえなかった。
モモンガはそれが後々自身にとって大きな悲劇となることを知らずに。
モモンガ様とえっちゃんの争いが今、始まります。
ちなみにモモンガ様が冷静なら思い浮かぶだろう案として検閲してから渡すこととか考えてました。
ところで、この2人、まだ転移から10時間もたってないんですよね……
ニグンさんはいつ来てくれるんだろう?