感想、誤字報告ありがとうございます。
前書きに書くことが思いつかない。
強いて言えばうちのえっちゃんは病んでます。
FGOでもそんな気配はあった気がするけど
一瞬のうちに残る全ての天使達が消滅した。
使役していたもの達が僅かに反応を示すが、直ぐに硬直して音が消えた。そのような場で呆れたような声が静寂を破る。
「どこにいたんですか?オルタさん」
「や、屋根の上で観戦していました。それで、置いてかれちゃったみたいだったので急いでこっち来ました。ついでに少し演出しようとしたんですが……」
モモンガは納得し、何が起きていたのか説明する。
「転移の範囲外だったみたいですよ。屋内と屋外っていうのが問題なのかな」
「なるほど……。じゃあ、次から気をつけないと」
納得した様子のXオルタにモモンガは告げる。
「そろそろ<タイムストップ/時間停止>が切れるんですけどどうします?」
「了承。じゃあ、私は<霊体化>して裏方やります、ね」
<霊体化>はゴースト系の種族スキルで、不可視化などの隠密効果を持つが、物理的な行動が行えなくなるデメリットを持つ。
Xオルタが霊体化した直後、時間停止が解け、周囲に喧騒が戻ってきた。
◇◆◇
天使を従えていたはずの神官達の指揮官、陽光聖典の隊長であるニグン・グリッド・ルーインは驚愕していた。
目の前の2人組が現れると突如として指揮していた天使達が消滅しているのだ。充分に驚愕に値することではあるがそれはまだ良いことと言えよう。
「な、何故、天使が召喚できない⁈」
全ての天使が消えたため神官達は次の天使を召喚しようとするが、新たな天使が形を成したかと思うとその瞬間、赤雷と共に崩れ去る。
召喚した手応えはあるのに結果として何も残っていない、つまり失敗しているのと同じ結果になっていることに焦る部下達にニグンは檄を飛ばす。
「うろたえるな!天使の再召喚をやめ、別の魔法の準備をせよ!」
そのまま、2人組に向き直る。焦りを押し殺していても理解が及ばない相手とともにいるということはニグンにとって無性に恐ろしかった。
「落ち着かれたようですね。はじめまして、スレイン法国の皆さん。私はアインズ・ウール・ゴウンのモモンガ。そして後ろにいるのがアルベド。皆さんと取引をしたいことがあるので、すこしばかりお時間をもらえないでしょうか?」
余りにも慇懃無礼な物言いに一瞬恐怖を忘れてニグンは眉をひそめる。天使が召喚出来ないのはこの2人組のせいなのは分かりきっているが、向こうの話に乗って情報を得る以外に道はないのだと自身に言い聞かせた。
顎をしゃくり、続きを促したニグンに対し、モモンガは話を続ける。
「素晴らしい。……さて、最初に言っておかなくてはならないことはたった一つ。皆さんでは私には勝てません」
ニグンは反論できない。召喚系の魔法は全て不発、敵の背後には明らかに強いとわかる女騎士、極め付けは得体の知れない魔法詠唱者。自身を含めた部下達の魔力も残り少ない。奥の手である魔封じの水晶も、召喚系である以上どのような妨害に遭うかわからないため使えない。
すべてが自身にマイナスに働いている状況に、思わず神に絶望しかけて、ニグンは目的をこの場から自身が無事に法国の秘宝である水晶を持って報告に帰ることに変える。
「……何が目的だ」
「おぉ、思いの外、素直ですね」
「何が目的だと聞いている!」
苦虫を噛み潰したような表情でニグンは吠える。悲鳴のような声ではあるが怒りが抑えきれなかった。
「少し、やかましいな」
空気が凍る。信じられない程の強者の威圧。全身が締め付けられるような感覚、首が閉まり、呼吸が浅くなる。隣で部下達が倒れて行くのがわかった。
「それで、目的についてだが、――全てだ」
理解できず唖然とするニグンに興味がないかのように、そのままモモンガの言葉は続く。
「お前たちは我らアインズ・ウール・ゴウンが手間をかけて救った村人たちを殺すと公言していたな。我らが目を付けたものを殺すと言ったのだ。その罪をお前たちの全てで償ってもらおうと思ってな」
舌が喉に張り付いたように、顎が上下くっついてしまったように。
モモンガの呆れるような声が響く。
「返事は……できないようだな。はぁ。で、どうなんだ?」
モモンガの手が大きく横に振られると同時に、ニグンは口が動くようになったのを理解して叫んだ。もはや恥も外聞もない。失敗しようと構わない。この場にいて何もせずに死ぬことだけは嫌だった。
「最高位天使を召喚する。時間を稼げ!」
クリスタルを取り出し、周囲に呼びかける。ニグンの目に応える者は写らない。全員が気絶していた。そのままクリスタルは浮き上がり、消滅する。
「え、は?」
「あぁ……もういい。<マス・ホールド・スピーシーズ/集団全種族捕縛>アルベド、これらを今朝の騎士どもと同じようにニューロニストのところに放り込むよう手配しておけ」
「はい、畏まりました」
もはや何もできなくなったニグン率いる陽光聖典が、アルベドの指揮のもと運ばれて消えていく。それに伴い何もない場所から陽炎のようにXオルタが現れた。
「やりすぎじゃないですか?少し可哀想なぐらいテンパってましたよ」
Xオルタの霊体化は相応の感知能力があればちゃんと見える。モモンガには半透明のXオルタが電撃系のスキルで天使を召喚された端から全て始末したり、テレキネシス系のスキルでニグン達を縛り付けたり口をふさいだりしていたのが全て見えていた。
「そうですか?まぁ、上手く行ったんでよしとしてください、ね」
そう言いながら魔封じの水晶を取り出す。テレキネシスで奪った後、そのままアイテムボックスに入れることで突然の消失を演出したものだ。
「期待しないでください、ね。思っていた以上に酷いです」
「……本当だ。うわぁ、なんて勿体無い使い方してやがる」
2人してクリスタルに封じられた威光の主天使の召喚に対して失望をあらわにする。
「村に戻りますか」
「そうです、ね」
「ところであいつの名前聞いてなかったんですけど何だったかわかります?」
「えー、ひどい。たぶん……ニグン? だと思いますけど……」
◇◆◇
ニグンはふと目を開く。
視界に映るのは知らない天井だ。石造りで白色光を放つものがそこに埋めごれている。自分がどうしてそこにいるのか分からず、周囲を見渡そうとする。頭が動かない事に気が付いた。頭だけではなく、手首、足首、腰、胸、といったあらゆる場所が固定されていて、ピクリともできない。叫び声を上げようにも口にも何か詰められた上で固定されている。
ニグンには現状が理解できなかった。目だけを動かし、必死に周囲を確認しようとしていると、声が掛かった。
「あらん、起きたのねん?」
女とも男とも言えない汚い濁声だ。喋り方から考えればおそらく女だろうか?
しかし、動かない視界に入り込むのはおぞましい化け物だった。膨れ上がった溺死体に灰色の蛸を乗せたような姿を持つ異形。ほとんど裸の上に黒い革でできた帯を申し訳程度に纏っている。人間であれば体の要所を覆うだけの物はおぞましさしか感じないが、一方この化け物のおそらく最も見たくない部分を隠してくれている。
「うふふ、目覚めは良好かしらん?」
「ハァハァハァ」
口枷からわずかに漏れる呼気のみがニグンの返答手段だ。目の前の魔神、もはやニグンに自分が相対していた存在が魔神ではないという考え方は無かった、を無視しても意味はない。性格や喋り方から僅かではあるが人間性というものを感じられる。どうにか騙してここから出るためにニグンの頭脳は過去の人生で最も回転する。まずは口枷から外させなければ。
「じゃあ、まずは、お姉さんの名前を聞かせてあ、げ、 る」
甘ったるい濁声で続く。
「ナザリック地下大墳墓特別情報収集官、ニューロニストよ。まぁ拷問官とも呼ばれているわん」
優しそうに、楽しそうに告げる。
「さて、さて。今回は早めに情報まとめないといけないのん。至高のお方々が待っていらっしゃるからこれ以上説明していられないわん。だから、残念だけどあなたの相手をしている暇はないのよね……」
心底悲しそうに言う怪物に、ニグンは安心する。この怪物が相手にしないと言うことは、拷問にかけられないといことだ。
しかし、ニグンの思考は文字通りそこで止まる。
「だからねん、<ドミネート/支配>。手早く答えて欲しいわん」
微かに聞こえる独り言を耳にニグンは死を悟った。
「……至高のお方々が直々に捕らえてくださった相手にこの程度で済ませるのは残念なんだけどねん……」
◇◆◇
その後、第9階層スウィートルーム、スパリゾートナザリックの男湯の奥にモモンガは隠れていた。具体的には大量のトラウマアイテムを持ってきたXオルタからである。
隠れながらモモンガはXオルタのことを考える。
10年以上自分は彼女の本心に気が付けなかった。仲間に隠し事をしていたことによる彼女の罪悪感は相当なものだろう。その日々はきっと楽しかった分だけ罪の意識を刻み込んでいったはずだ。
そう考えながらユグドラシルでのXオルタの行動を思い出す。
今だからこそわかるが思い返せばずっと以前からあの人は狂気的だった。
異常な量の課金。一時期はPKすればほぼ、課金アイテムをドロップする異形種として有名だったらしいとほかのギルメンに聞いたことがある。
アインズ・ウール・ゴウンの前身であるナインズ・オウン・ゴールに入った時も、別の仲間達が出会う度にPKされているプレイヤーがいるといったことが原因だったはずだ。迎え入れる時に行ったPKKでは相当な利益が出たのを覚えている。
では、今のXオルタはどうなのだろうか?
随分と箍が外れてきたような気もする。それはいいことだろう。しかし、それだけなのか?夜空を見上げながら話した「そのための準備」。まだ、聞いていなかったが聞くべきではないかとも思う。ギルメン全員を連れ戻す。それは引退してアカウントを消した相手、つまり、ほぼ確実にこの世界に来ていない相手も含むということだ。
そこまで考えたところで背後から声が掛かる。
「モモンガ様、Xオルタ様が話したいことがあるとのことです。そろそろ使い道について聞いて欲しいとおっしゃっていました」
セバスの声に応じる。ちょうどいい機会だ。仕方がないだろうが、序でに自分の悩みについても聞いてもらおう。転移後の悩みの原因はだいたいがこの友人なのだ。モモンガは意を決して湯船を出た。
「1時間後、私の執務室に来て欲しいと伝えてくれ」
この三日間で整理して執務室として使えるようになった自室を思い浮かべ、再び自身の黒歴史と相対することの決意を固める。
Xオルタの方がパンドラズ・アクターより黒歴史としてタチが悪いのではないかと懸念はどうにか押し殺せたと思う。
えっちゃんのスキルはオルト・ライトニングと念動力オルタ・チョークです。
例の銀河的名作の騎士たちの能力を意識してスキルは設定してあります。
これ書き始めてからとびとびに資料になりそうな部分を読み返しているんですがアインズ様可愛すぎ問題が浮上してきました。
ヒロイン力でうちのえっちゃんが負ける。どうしよう。