バカとE組の暗殺教室   作:レール

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女子の時間

なんとか二人の殺し屋を撃破して先に進む僕らだったが、五階の展望回廊をクリアしたところで第二の難所へと差し掛かっていた。

 

『皆さん、この先がテラスになります』

 

「BARフロア……問題の階ね」

 

『はい。此処からVIPフロアへ通じる階段は店の奥にあります。裏口は鍵が掛かっているので室内から侵入して鍵を開けるしかありません』

 

律が得たホテルの内部マップを見る限り、此処から先は通路ではなく店内に入らなければならない。ロビー程ではないだろうが警備員も配置されているだろうし、何よりも一般客が多くいるため人の目がある。

これだけの大人数で店内に入ればまず間違いなく目立つだろう。特にまともに動けない烏間先生とそれを支える磯貝君は嫌でも目につくはずだ。

 

「先生達は此処で隠れてて。私達が店に潜入して中から裏口を開けるから。こういうところは女子だけの方が怪しまれないでしょ」

 

そこで片岡さんから女子だけでBARフロアへ潜入することを提案される。

確かにクラブとかそういう場所での男に対するチェックは厳しいだろう。それを逆手に取ってチェックの甘い女子だけで潜入するっていうのは作戦としては合理的だ。しかし、

 

「いや、女子だけでは危険だ」

 

烏間先生の言う通り、戦力を分散させることも避けたいのにそれが女子だけになるっていうのは僕も少し危ないと思う。それに男手が必要となる可能性もあるかもしれない。

他に案がなければ女子だけで行ってもらうしかないけど、どうしたら現状の最善なんだろうか……。

 

「あぁ、だったらぁ……」

 

と、僕らが悩んでいると何か思いついたのかカルマ君が手を打つ。

そんなカルマ君に視線を向けると当の本人は何処かへ視線を向けており、釣られて全員の視線がカルマ君と同じ方向に向けられる。

 

「え……何……?」

 

「む、ワシらがどうかしたかの……?」

 

そして全員から視線を向けられた渚君と秀吉は戸惑いを隠せずにいた。まぁ意味も分からずいきなり注目されたら戸惑うしかないよね。

渚君や秀吉の戸惑いを無視してカルマ君は自身の思いついた作戦を告げる。

 

「渚君と木下が女子のフリすればいいじゃん」

 

「なんでそうなるの……⁉︎」

 

その内容に渚君から驚きの声が上がるものの、男子が女子と一緒に潜入するにはそれしかないか。特に見た目女子の二人ならよっぽどのことがなければ疑われることはないはずだ。

 

「ワシは別に構わんが、女装道具など持ってきておらんぞ?」

 

「そこは男として構おうよ‼︎」

 

迷うことなく女子のフリを受け入れた秀吉に渚君は愕然としているが、秀吉は演劇で女性役もやってたことだし抵抗感はないのだろう。もしかしたら違和感すら感じていないかもしれない。

 

「んー、木下君の服装は普通にボーイッシュな感じで通せるんじゃない?取り敢えずその口調を女の子みたいにすればいいよ」

 

「確か木下って元は演劇部だったよね?それくらいの演技だったら簡単でしょ?」

 

既に二人が女子のフリをすることは決定事項のようで、矢田さんと岡野さんからのアドバイスが入る。

とはいえ秀吉にアドバイスなんて必要ないと思う。とにかく設定の一つでもあれば何でも演じ分けることが出来るからね。

しかし設定ではなく抽象的なアドバイスを受けて秀吉の役者魂に火が着いてしまった。

 

「ふむ、具体的にはどのような演技をすればいいかの?丁寧な口調か粗雑な口調か、明るい雰囲気か暗い雰囲気か、冷静な感じか溌溂な感じか……」

 

「いやそこまで拘らなくていいから……適当に女の子っぽくしてくれたらいいわ」

 

「適当な演技をするなど役者志望としては受け入れられん。演技する(やる)ならば本気じゃ」

 

普段は周りに合わせる傾向にある秀吉だが、こと演技に関しては珍しく妥協を許さない。そんな様子の秀吉を見て片岡さんも悩まし気である。

 

「変なところで頑なよね、木下君って……じゃあ私の真似をしてちょうだい。それだったら問題ないわよね?」

 

「うむ、了解じゃ」

 

演じるための設定を求める秀吉に対して片岡さんは自分を真似るように指示を出した。唐突に演技する役柄を求められても思い浮かばないだろうし、そもそも今回は設定を凝る必要もないから誰かの真似をさせるのが一番手っ取り早いだろう。

今度は納得して指示を受けた秀吉は声の調子を整えるように咳払いを一つ、

 

 

 

 

 

「『片岡さん、これでいいかしら?』」

 

 

 

 

 

その演技に全員が思わず秀吉を凝視した。

うん?特におかしなところはないと思うけど……皆は何をそんなに凝視してるんだ?

訳が分からずにいると僕の疑問に答えるように寺坂君が驚きの声を上げる。

 

「お前なんだその声真似のレベル……⁉︎ もはや声真似の域を超えてんだろ……‼︎」

 

寺坂君の言うように秀吉は片岡さんの口調だけでなく声色まで真似て演技していた。その声真似は本人の声色と変わらないくらいそっくりである。目を閉じれば本人か秀吉か分からないレベルだ。

 

「あれ、秀吉が皆の前で演技するのって初めてだっけ?」

 

「『そうね。暗殺で演技する必要がなかったからこれが初めてだわ』」

 

「なんか変な感じね……自分が二人いるみたい」

 

まじまじと自分の声真似をしている秀吉を見る片岡さん。そりゃあ自分の声を他人から聴く機会なんて普通はないもんね。

 

「どっちが喋ってるか分かりにくいからせめてこの場にいない人にして」

 

しかし物真似は口調は直せても潜入するには返って不向きかもしれない。同じ声の人が二人いると分かりにくいという速水さんの指摘は尤もである。

 

「っていうかお姉さんの真似をすればいいんじゃない?」

 

「ふむ、姉上の演技をすればいいんじゃな?それならば簡単じゃ。姉上の特徴は把握しておるからの」

 

最終的に矢田さんの提案で秀吉は木下さんの真似をするということに落ち着いた。

さて、あとは女子のフリをすることに抵抗のある渚君だけど……。

 

「僕はちょっと無理じゃないかなぁ……ほら、僕って見た目を格好も雰囲気も男っぽいから」

 

「渚君、現実から目を背けたら駄目だよ」

 

未だに渋っているのでそろそろ覚悟を決めてもらうことにする。潜入するには少しでも人数は多い方が良いし、女子のフリが出来る男子なんて秀吉以外には渚君しかいないからね。

 

「うぅ……いや、でも実際に服は男っぽいのを選んで着てきてるし……」

 

「それなら大丈夫よ。偶々プールサイドに脱ぎ捨ててあった女物の服を拾ってきたから」

 

「それはそれで大丈夫じゃないよ‼︎」

 

渚君の最後の抵抗も虚しく不破さんの活躍によって封じられてしまった。服の持ち主には申し訳ないけど、脱ぎ捨ててあったのなら多少借りても問題あるまい。

いよいよ渚君も観念するか、といったところでカルマ君が不破さんに問い掛ける。

 

「不破さん、女物の服って他に落ちてなかった?」

 

「うん、見た限りでは落ちてなかったけど……なんで?」

 

「いや、もう一着あれば吉井も何とかBARフロアに潜入できるでしょ?」

 

……あれ、なんか話の雲行きが怪しくなってきたような……いや、落ちてた服は一着しかないんだし何も心配することはないよね。

とはいえ黙っていたら次にカルマ君が何を言い出すか分からない。早めに渚君を生贄ーーーじゃなくて潜入に送り出した方が良さそうだ。

 

「いやいやカルマ君、流石に僕が潜入するのは無理だよ。渚君と違って僕は何処からどう見ても男なんだから」

 

「吉井君、現実から目を背けたら駄目だよ。何なら僕よりも吉井君の方が似合うんじゃない?」

 

しかしあろうことか渚君が僕に女装しての潜入を勧めてきた。それも渚君に似つかわしくないような物凄くいい笑顔で。

これはもしかしなくても渚君も僕を生贄に捧げようとしている……?いいだろう、ならば徹底抗戦だ。まさかこんなところで渚君と戦うことになるとはね……どちらがより男らしいか、格の違いを見せつけてあげる‼︎

 

「あ、でも服のサイズ的に吉井君は無理かも」

 

どうやら勝負をするまでもなかったようだ。

渚君は泣く泣く不破さんから女物の服を受け取ると着替えるために建物の陰へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

〜side メグ〜

 

女子+渚・木下というメンバーでBARフロアに潜入した私達は、受付や警備員などに声を掛けられることなく内部へと入り込むことに成功していた。

やっぱりこの作戦は良かったみたいね。あとは問題を起こさず店の奥に辿り着いて、裏口の鍵を開けられれば作戦は成功だ。

 

「ホラ、渚君‼︎ 男でしょ‼︎ ちゃんと前に立って守らないと‼︎」

 

「無理……前に立つとか絶対に無理」

 

「『潮田君、恥ずかしがってると逆に目立つから堂々としてなさい』」

 

それにしても渚は女装が似合うわね。恥じらってる姿がまた女子らしさを醸し出してるし、自然過ぎて新鮮味が全くと言っていいほどないわ。……まぁ演技だけでこの中に馴染んでる木下が一番女子らしいと言えなくもないけど。

 

「でも木下君、演技したら完全に木下さんだよね。ちょっとしか話したことないけど見分けがつかないよ」

 

「『外見だけなら身内でも間違えるくらいそっくりだしね。でも私以外にも演技が上手い人ならいるでしょ?』」

 

そういうと木下君は渚から視線を外して茅野さんを見た。私は知らないけど茅野さんって演技が上手いのかしら?

話を振られた茅野さんも自身ありげに胸を張って答える。

 

「ふふん、天才女優・茅野カエデって呼んでくれてもいいよ‼︎ ……まぁあの時は菅谷君の変装ありきだったけどね」

 

「あぁ、瀬尾を嵌めた時のやつか。確かにあの時の渚と茅野の演技は上手かったよね」

 

苦笑いを浮かべる茅野さんに対して他の皆は岡野さんの言葉に納得の表情を浮かべていた。

私はその作戦に不参加だったから詳細を知らないのよね。あとで烏間先生に大目玉を食らったっていうのは聞いたけど……他人の声を完全再現できる木下が認めるくらい茅野さんの演技は上手かったのかしら。

そんな風にたわいない会話で自然体を装いつつ進んでいると、急に知らない男子が渚の肩に手を置いて私達を呼び止めてきた。

 

「ね、どっから来たの君ら?そっちで俺と酒飲まねー?金あるから何でも奢ってやんよ」

 

こういう場所だからナンパされることは一応想定の範囲内だけど、女子をお金で釣ろうとするなんて程度の低さが窺えるわね。

わざわざ渚の肩に手を置いたってことはお目当ての相手は渚か。女子の中から女装男子がピンポイントで選ばれたことに何も思わないわけじゃないけど、そういうことなら話し掛けてきた男子の相手は面倒だし渚に任せることにする。

 

「はい渚、相手しといて」

 

「え、ええ?」

 

「あんたなら一人でも大丈夫でしょ。作戦の下見が終わったら呼ぶからさ」

 

突然のことで困惑する渚には悪いけど、相手に聞こえないように小声で指示だけ出して私達は先へ進むことにした。構っても時間の無駄だし適材適所で行きましょう。

しかし渚にナンパしてきた男子を押し付けた甲斐なく別の男性二人が声を掛けてきた。

 

「ようお嬢達、女だけ?俺らとどーよ、今夜」

 

ったくもう、次から次へとキリがないな……ここは角が立つのも覚悟で強く言わないと駄目か。問題は起こしたくないけど長く引き止められるのも得策じゃないし。

 

「あのねぇ、言っときますけど……」

 

と、私が断りを入れようとしたところで矢田さんに肩を掴まれて言葉を止められた。

振り返ると余裕の表情を浮かべた矢田さんがウインクで合図を送ってくる。ここは任せてほしいってことかしら。

そのまま私の前に出た矢田さんは態度を崩さずナンパしてきた二人に言葉を返す。

 

「お兄さん達、カッコイイから遊びたいけど生憎今日はパパ同伴なの。うちのパパ、ちょっと怖いからやめとこ?」

 

「ひゃひゃひゃ、パパが怖くてナンパできっかーーー」

 

矢田さんの言葉にも引くことなく言い寄ってきた二人だったけど、矢田さんが何気なく取り出して弄んでいたバッジを見て血の気が引いていた。

 

「じゃ、パパに紹介する?」

 

あとで聞いた話だとチラつかせたバッジは凶悪で有名なヤクザの代紋が彫られたものをビッチ先生から借りていたらしい。矢田さんが一番ビッチ先生の話を聞いてるからその時に借りたんだろう。

それに怖気付いた二人はそそくさと私達の前から立ち去っていった。

 

「意気地なし。借り物に決まってるのにね」

 

 

 

 

 

「ククク、中々度胸のあるお嬢さんだな」

 

 

 

 

 

ハッとして声の聞こえてきた方へ振り向くと、そこにはサングラスを掛けた口元に怪しげな笑みを浮かべる男性が壁際に凭れ掛かっていた。

クラブみたいな騒がしい雰囲気で警戒が疎かになってた?いえ、潜入中にそんな気を抜くようなことはしない。純粋にこの人の気配の馴染ませ方が上手いんだ。

内心で警戒レベルを上げた私達に構わず男性は話し掛けてくる。

 

「だがそういうハッタリは先程のようなチンピラにしか通じんぞ。裏の世界に足を踏み入れるなら注意した方がいい」

 

「……おじさんはここの組長さんと知り合いなんですか?」

 

場慣れした様子の佇まいとヤクザの代紋を見ても動じない余裕……明らかに格上だわ。バッジが借り物だってことも聞かれてるはずだし、ここは私達は前に出ず矢田さんに任せた方が良さそうね。

ただこの人は私達の中でも交渉術に長けた矢田さんでさえ手に負えるような相手じゃなさそうだった。

 

「いや、生憎そこの組長との直接的な面識はない。しかし間接的な情報は持ち得ているよ。……君達の情報もね、()()()()()

 

その一言で私達の間に緊張の糸が張り詰める。

矢田さんの名前を知ってるってことはこちらの素性は知られていると考えた方がいいでしょう。そしてこの島で私達の素性を知っている相手なんて犯人側くらいしか思いつかなかった。

さっきの殺し屋は人通りのない展望回廊だったから騒ぎにならなかったけど、こんなに人の多い場所で争えば間違いなく騒ぎになる。頭の中でどうシミュレーションしてもこの場を穏便に切り抜けられそうにない。

万事休すか……と思っていると相手は両手を挙げて敵意がないことを示してきた。

 

「そう警戒しなくていい。懸賞金百億の首を狙う君達に興味があったから見掛けて声を掛けただけだ。今日は噂の化け物も来ているのかね?」

 

私達は警戒しつつも顔を見合わせて目の前の男性の言葉の意味を考える。

私達の素性を知ってる時点で裏の人間なのは間違いない。でもよくよく考えると私達を見つけたにも関わらず仲間に連絡せず話しかけてきた理由が分からなかった。

ってことはもしかして本当にただの偶然で犯人とは無関係……?

状況を判断できず押し黙った私達を見て男性は悟ったように挙げていた手を降ろす。

 

「……まぁいきなり知らない男にこんな場所で声を掛けられて警戒するなという方が無理か。一先ず名刺だけでも渡しておこう」

 

そう言って懐から取り出した名刺を矢田さんに手渡してきた。

矢田さんも最初は戸惑っていたけれど、男性の顔と差し出された名刺を見比べておずおずと受け取る。

 

「香辛料輸入・卸販売 有限会社・笑顔 代表取締役・早坂久宜さん……ですか?」

 

「表向きはそうなっているが、実際には何でも扱う貿易会社と思ってくれ。麻薬・武器に限らずご所望とあればどんなものでも輸入してみせるよ。まぁ政府の後ろ盾があるうちは必要ないと思うが、必要となれば懸賞金の後払いで取引に応じよう」

 

要するに早坂さんは密売人ってことかしら。

殺せんせーのことを知ってるなら来年の四月には地球が破壊されることも知ってるでしょうし、政府とは別角度で協力……いえ、商談を持ち掛けてきたってことね。対触手武器は政府から支給されるけど、今回みたいに今後も人を相手に暗殺が邪魔されることはあるかもしれない。私達が殺せんせー暗殺に失敗すれば死ぬだけ、暗殺に成功すれば儲けになる。しっかりと先を見据えた取引ね。

 

「……それで、引き止めておいてなんだが何か用があってこんなところに来たんじゃないのかね?」

 

と、そこで早坂さんに言われて私達は思っていたより時間を取られていたことに気付いた。

 

「そうだわ‼︎ 早く裏口にいる皆を引き入れないと‼︎」

 

「すみません、早坂さん。私達、先を急ぐので失礼します」

 

早坂さんが今回の犯人と関係ないなら申し訳ないけど時間を取られている余裕はない。犯人との取引まで時間が迫ってるし、犯人の待つ最上階までまだ幾つか乗り越えるべき場所もある。

私達は頭を下げて一礼すると足早にその場を後にしようとするが、

 

「……待ちたまえ」

 

離れる間際に先を促してくれたはずの早坂さんから待ったの声が掛かった。

まだ何かあるのかと失礼ながら急かすように早坂さんの顔を見たが、当の本人は何か引っ掛かることがあったのか軽く考え込んでいる。

 

「今、裏口から皆を引き入れると言ったかね?」

 

その一言で私は失言してしまったことを察した。

しまった、幾ら早坂さんが犯人と関係ないとはいえ不穏な言葉を漏らしたのは私のミスだ。気持ちが急ぎ過ぎた。

考えを終えた早坂さんが携帯を取り出した瞬間、再び私達の間に緊張の糸が張り詰める。早坂さんの行動次第では多少騒ぎになっても実力行使に出るしかない。

が、臨戦態勢に入った私達を見た早坂さんは手だけで私達を制すると何処かへ連絡し出した。

 

「……ユキ、何か異常はあったか?……ふむ、そうか。……いやなに、その子達の知り合いのお嬢さん方と話をしていてね。その子達は放っておいて構わない。好きにさせておいてやれ」

 

それだけ言うと早坂さんは通話を切って携帯を懐にしまう。

 

「別に()()は君達が何をしようと関与するつもりはない。騒ぎを起こして得をしないのはお互い様だ。あとはバレないように上手くやるといい」

 

今の通話を聞く限り、どうやら裏口で待機してた皆は早坂さんの部下か何かに見つかっていたみたい。それを早坂さんが止めてくれたようだ。

 

「あ、ありがとうございます」

 

私達はお礼を言うと改めて裏口の鍵を開けるために店の奥を目指した。

その後はナンパを押し付けていた渚と合流して何とか警備員の目を欺くことに成功する。私達はその隙を突いて皆を外から招き入れることが出来た。

 

「皆、大丈夫⁉︎ 早く中へ入って‼︎」

 

私の姿を確認した皆は素早く裏口から侵入すると横手にあった階段で上へと登っていく。

全員を招き入れて鍵を掛け直し、私も皆を追って階段を登っていると最後尾にいた吉井君から声を掛けられる。

 

「いやぁ、人に見つかって危なかったから助かったよ。よく分からないけど皆が何かしてくれたんでしょ?ありがとう」

 

よく見ると分かれる前と後で吉井君の服が汚れててあちこちに軽い擦り傷が出来ていた。もしかして早坂さんの仲間の人と戦ってたのかしら?

 

「ううん、こっちこそ時間が掛かっちゃってごめんなさい。でも何事もなくて良かったわ」

 

「いやー、本当に何事もなくて良かったよ。あとちょっと遅かったら爆散してたかもしれなかったし」

 

「え、爆散……?冗談よね……?」

 

かなり危険な目に合ってたっぽい発言の真偽を問い掛けたけど、遠い目をしている吉井君を見て冗談じゃないことは何となく察することができた。

早坂さんに呼び止められたのは寧ろラッキーだったのかもしれない。そう思いながら私達は次の階へと足を進めていくのでした。




次話 本編
〜明久の時間〜
https://novel.syosetu.org/112657/42.html



片岡「これで“女子の時間”は終わりよ。皆、楽しんでくれたかしら?」

秀吉「今回はまさかの人物が登場しておったの。というか知らない者もおるのではないか?」

不破「ジャンプの某探偵漫画に出てくるあの人ね。私達の漫画を読んでて早坂さんを知らないなんて潜りよ」

片岡「それは流石に言い過ぎじゃないかしら……。でもBARフロアで呼び止められた時は冷や汗をかいたわ」

秀吉「完全にあの場での流れを握られておったからな。敵対関係にならなかっただけ良しとしよう」

不破「男子達は同じく某探偵漫画のあの人と敵対してたっぽいけど?」

片岡「まぁそれも早坂さんが止めてくれたから良しとしましょう。これ以上の敵対は無意味だわ」

秀吉「そうじゃのう。ああいう人種は敵に回しても良いことなどないぞ」

不破「そりゃまぁそうよね。切れたらロケットランチャーぶっ放されそうだもん」

秀吉「それは稀有な対応じゃろう……」

片岡「それはそうと、私は木下君の特技にも驚かされたわ」

不破「怪盗1412号やルパン三世顔負けの変声術だもんね。私も教えてほしいくらいだわ」

秀吉「じゃが殺せんせーの暗殺にはあまり役立たんぞ。完全に対人対応スキルじゃな」

不破「それでも教えてほしいの‼︎ 特殊技能は漫画好きの憧れでしょ⁉︎」

片岡「そこまで熱くならなくても……」

秀吉「まぁ演技を教えるだけなら構わんが、変声術となると習得できるかは別の話じゃぞ?」

不破「やった‼︎ 約束だからね‼︎」

片岡「それじゃあ今回はこの辺りでお開きにしましょうか。次回も楽しみにして待っててね」





明久「え、僕死にかけたのにまさか描写カットされるの……?」

殺せんせー「ヌルフフフフ、安心してください。次の話で私達サイドのお話もやりますよ」

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