早朝、四時。目が覚めて隣を見ると未来が私を抱き枕にして、一緒に眠っている。私の腕はベッドに手錠で繋がれている。未来はヤンデルと思うのだけど、間違ってないよね? まあ、この程度で私をどうにか出来ると思っているのなら、間違いだけど。
「ほいっと」
力を使って、瞬時に移動してベッドから離れる。未来には変わりに枕をプレゼントしておく。
「さてと」
着替えを取り出してシャツを着て、パーカーとスカートを着る。それから、階段を降りて外に出る。未来の家は一軒家なので、庭がある。そこで準備運動をして、日課になっている早朝訓練を行う。
「っと、その前に細工をしておかないとね」
指に傷をつけて出した血で、家の塀に文字を描いていく。家の周りに仕掛けを施したら、これで完成。後は修行だ。あっ、でもその前に連絡をいれよう。携帯を取り出して知り合いに連絡する。
「やっふぉー、元気~」
『何の用だ、魔法使い』
「姿からしたら、そっちが魔法使いっぽいけど。えっとね、ペンダント三つ欲しいなって。ついでに日本に送って」
『俺は便利屋ではないのだが……』
「いいじゃん。私と目的は一緒でしょ」
『ちっ、いいだろう。それよりも、例の聖遺物が見つかったら寄越せよ』
「もっちろんだよ」
『今、送った。そちらの都合の良い時にまた来い。強化してもらいたい物があるからな』
「了解だよ」
通話を終えると、目の前にペンダントが三つ、出現した。それに仕掛けを施しておく。
「よし、修行だ。しっかりと強くならないと」
世界を破壊する拳にするためには憎悪の正拳突きかな。アニメって凄いよね。本当に修行になるし。まあ、感謝ではなくて憎悪だけど。ちなみに明鏡止水は私には無理だけどね。でも、東方不敗は覚えたいな。来いっ、ガンダァァムってやってみたい! そうか。作って貰えばいいんだ。メールで送ってみよ。すると直ぐに返信が来た。馬鹿か、貴様って言われちゃったよ。酷いよね。
「ん? 設計図を寄越せ? 作ってくれる気、あるんだ。よ~し、渡しちゃうぞ!」
ネットで調べたのを送っておく。この時、私はこの事を後悔する事になるなんて、思わなかった……まる
「ひびきぃいいいいぃぃぃぃっ!!」
修行をしていると、叫び声が聞こえてきた。早朝から迷惑だなぁと思っていると、玄関の扉が思いっきり開いて未来が飛び出してきた。
「あっ、居た……良かった。良かったよぉ……」
直ぐに抱き着いてくる未来。
「居なくなったかと思ったじゃない!」
「ちょっと朝練してただけだよ?」
しかし、心配をかけたのは事実だから、ここはプレゼント作戦でいこうと思う。
「はい、未来」
「これはペンダント?」
「うん。お守りだよ。だから、基本的に肌身離さずに持っておいてね」
「わかった」
「未来は学校に行かなきゃいけないんだよね」
「うん。本当は寮なんだけど、響が見つかったって聞いたから……」
「それじゃあ、早く戻らないとね」
「でも……というか、響も学校に行かないと駄目じゃない」
「どっか編入試験でも受けようかな」
「じゃあ、私が行っているリディアン音楽院高等科はどうかな?」
「音楽院か~。確かにそれなりには歌えるけど……」
「歌えるの?」
「うん。リズムに乗って戦うと調子はいいからね」
「戦うって……ううん、聞かせて」
「いいよ。“Feuer! Schießen! Feuer! Los!”
“Achtung! Deckung! Vorrücken! Halt!”」
Los! Los! Los!という曲を歌っていく。これが一番好きだ。
「ひっ、響? 上手いけど、上手いけど! それに目が怖いよ!」
「戦場で歌う奴だからね」
今でも思い出すね。彼等と戦った時は死にかけたよ。頑張って戦って仲良くなってこの歌を教えて貰ったけど。
「まあ、ダメ元で受けてみるよ。私って中学から出てないからね」
「うん……頑張ってね」
「英語とかはペラペラなんだし、ちょっと頑張ればどうとでもなりそうだけどね。っと、そうだ。おばさんたちに渡す物を渡したら、学校まで送ってくよ。ちょっと見てみたいし」
「うん。一緒に行きたい」
その後、食事をしてペンダントを渡してから未来と一緒にリディアン音楽院に到着したのだけど……へぇ、地下か。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ。
じゃあ、私はこれで帰るね。街の探検とかもしたいし」
「うん。ちゃんと電話に出てね。あ、おすすめの店もあるよ」
「任せて~。じゃあね~」
さて、未来と別れて裏路地に入る。フードを被ってから、街を探索する。お好み焼き屋に入って食事を取ってから外に出る。ゲームセンターに入ったりして、色々と遊んでいると気付けば夜になっていた。
『響、今何処にいるの? お母さんがまだ帰ってきてないって……』
「うん。今帰ってる所だよ……」
夜の公園を電話しながら進んでいく。すると、目の前にコスプレ少女が現れた。この街は変態が多いのかな?
「お前が立花響だな。ちょっとツラ貸せや」
「やだ。帰ってる所だし」
「そういうなよ。強制だ」
「じゃあ、その聖遺物くれたら考えてあげる」
「コイツが欲しけりゃ、力づくで奪うんだ」
「わかった。そうするね」
瞬時に運動能力を強化して相手の後ろに移動して蹴りを放つ。吹き飛んで電灯を圧し折る。
「てめぇ……」
「どうしたの? お望み通り、殺して奪ってあげる」
『響っ! どうしたの響!』
「未来、ごめん。ちょっと遅くなるって言っておいて」
『ちょっとっ!?』
携帯を切ってポケットに仕舞う。
「おらぁっ!」
変な鎧を着たコスプレ少女が鞭みたいなのを放ってくるので、掴んで引っ張り寄せて顔を思いっ切り殴る。
「ふべっ!?」
吹き飛んだのをまた戻して、殴る。気分はサンドバックかな? 手は少し痛いけど、まあ問題ないね。
「てめっ、やめっ! がぁっ!?」
「えっと、そうだ。これをやってみよう。私のこの手が真っ赤に燃える。お前を倒せと轟叫ぶ!」
「え? ちょっ、なんで燃えてるんだ!」
ちょっとした魔法で燃やしているだけで、簡単なトリックだよ。そんな事をしていると、空から大きな剣が降ってきた。なので、このコスプレ少女を盾にして防ぐ。