デスゲームと化した世界で俺はこの世界をエンジョイする。   作:黒様
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03 この世界は本当にゲームチック

それが起こったのは、山口を殺害した時だった。
『テッテレーン』とやけに明るい音が脳内でした。そしてドサッとそれなりに質量を持ったものが落下してきた音もしてきた。
志龍は右胸ポケットに仕舞ってある自分のスマホを見る。あんな軽快な着信音にした覚えは全くなかったが、一応念のためだ。
予想通り、かの軽快な音楽はスマホから発せられたものではなかった。
パッと見たときに両親からの不在着信が入っていたが、今はそんなことをしている場合じゃない。
安全が確保できしだいかけ直すことにすると、志龍は田中の死体の近くに妙なものがあるのを発見した。

「段ボール……だよな」

それはこの空間では異様に浮いている、やりようによっては全身を隠せるのではないかというほどの大きさの段ボールだ。某傭兵に渡せば素晴らしいステレスプレイを見せてくれるのだろうが、志龍にそんな趣味はなかった。
嫌な予感が全力で警鐘を鳴らすが、見ないわけにもいくまい。ちなみに段ボールには神天とご丁寧に日本語で書かれていた。実に勤勉だ。
それをゆっくりと開けると、なかにはポツンと5型サイズのタブレット端末が入っていた。
名前は愛神。

「愛神?」

なぜそんなへんてこな名前になってしまったんだ。と志龍は真剣に悩むが、

「まぁ現状は落ち着いて物事考えることがベストだな」

と、五階に戻ろうとするが、

「問題はこれだよなぁ……」

志龍がいる部屋に転がっている二つの死体。山口と田中の物だ。
現状で、これを生存者に見られたら間違いなく俺は犯人扱いだ(実際そうだ)。
それでも、このままの状態でスタコラサッサーは不味い気がする。最悪なパターンは時間経過で復活するという物。ゾンビものならありそうで怖い。
だから、何とかしてこの死体二つをちゃんと抹消しておきたいが……。
そんなことを考えていると、愛神の電源が入った。そこには、

「カメラで撮ってみましょう……か」

何かチュートリアルが始まってしまったようだ。とりあえず愛神の指示通りカメラアプリを作動させる。幸いにも操作方法はスマートフォンと変わらなかったので簡単に操作は行えた。
そして、パシャリと死体二つを撮ってみると、

「死体が消えた……!?」

死体は溢れた血液すらも残さず、きれいさっぱり消失していた。
いったいどういう仕掛けだと聞くのは無粋だろう。ここはもう今までの常識が通じるような場所ではないのだから。

「最初の方針通り、五階に籠城しよう。これはそれからいじろ」

そう言い、彼は未だに激闘が繰り広げられている階下の音を聞きながら、階段をかけ上がっていった。



「あっぶねえ……」

五階の階段の防火扉を閉めながら、志龍はそう呟く。
その理由はもう防火扉の向こう側になってしまったが、階段を上がってくる女ゾンビが見えたためだ。
田中を殺害したときにも思ったが、ゾンビは知能が圧倒的に低いようだ。少なくともノーマルゾンビは、防火扉を開けられるほどの知能を有してはいない。
女ゾンビが防火扉前についたのであろう。呻き声は聞こえど、防火扉が開けられる様子はない。
志龍が五階に着いてすぐに四階から五階に上がってこれる場所を閉鎖して回っていた。
これで元から五階にいたゾンビは兎も角として、新しくゾンビが追加されるようなことはひとまずなくなった。

「さてと、次は……」

志龍が向かったのは、この五階よりもさらに狭い場所でありながら食料問題も解決してくれる場所。
家庭科準備室のとなりにあるカフェテリアだ。
ここ、私立親原高校は小さな丘の上に建設された高校だ。特に五階からの眺めは圧巻の一言で、そういった景色を楽しみながら昼食を摂られるようにという計らいでそれは作られたらしい。
一階にも食堂はあるにはあるのだが、こっちの方が飯がうまい上に、デザート類も充実している。真面目な理由でいうならば、一階は死屍累々の大惨事だろうからここに立て籠ろうとした所存。
家庭科準備室の隣まで歩いてきた志龍は扉をに手を掛けるが、

「くっそ……開かねぇ」

それも考えてみれば当然だ。
ここの開店時間は四限目の授業が終了した直後。それまでは従業員しか入れないのだ。それならば生徒が入る場所は当然閉まっている。

「かぁ~……どうすっかな。そうだ」

志龍は扉にもたれながら、存在を忘れていた愛神をいじろうとする。
この道は一本廊下で、ゾンビが近づいて来ても気づくことができるだろう。
ということで、志龍は愛神の入っていた段ボールを改めて見ると、

『絶対に壊れません』と書いてあった。
左様ですかと思い、右側にある電源ボタンを改めて押す。
表示されている画面は対してスマホと変わりはしない。
メールや電話といった基本的なアプリも備わっていた。
なんかデザインはアン○ロイドっぽいな、というような馬鹿なことを考えながら志龍は見覚えのないアプリを起動させる。

『はじめての方へ』
『ステータスチェッカー』
『総合売却カウゼー』
『総合販売ウルゼー』
『掲示板』
『ミッションチェッカー』

以上の六つだ。
カウゼー、ウルゼーはものすごく単純であったがまずははじめての方へというのをタップする。

要約すると現在の状況は、ゾンビものあるあるの細菌兵器や感染爆発によって起きたものではないということ。
ある事情から、世界のルールが書き換えられたことによって起きている現象であるということ。
その変化とは大まかに分けて以下の三つだ。

・魔物の自然発生……人を食らう魔物と呼ばれる存在が発生するようになった。
・レベルアップ………生物が他の生物を倒すと起こる現象。魔物が倒せば身体能力などが向上する。
・死体の魔物化………死亡した生物の死体が魔物として復活するようになってしまった。

そして、この端末は魔物を倒そうとする勇気ある人の手元に送られてくるアイテムなのだそうだ。

一通り読むと志龍は思う。
ゾンビものかと思っていたら、RPGだったでござる――と。
分かりやすくいうならサハイバルホラーが異世界転移ものに変わったぐらいだ。

(まぁいいけどな)

志龍にとってゲームとは魂の伴侶。
レベルアップなぞというシステムは志龍にとってプラスにはなれど、マイナスにはなり得ない。

(まぁそうなりゃ、『ステータスチェッカー』だよな)

そう思い、志龍はステータスチェッカーを起動させる。


【ステータス】
名前 星帝志龍(ほしみかどしりゅう)
性別 男
種族 人間
年齢 16
Lv, 2
職業 無職★2

HP 14 MP 16
STR 15 CON 14 INT 15
DEX 17 APP 13 POW 16
SIZ 13 EDU 12

知識  60 幸運 80

技能 鈍器 27  忍び歩き 15  聞き耳 32 隠れる 11
スキル なし
所有GP 300+120
所有SP 20

戦歴(最新の四件表示)
達成したミッションがあります。
レベルアップ。無職★1⇒無職★2
人間 Lv,1 撃破 経験値5  SP20獲得
ゾンビLv,1 撃破 経験値10 SP10獲得

志龍は今までのゲーム経験と、『はじめての方へ』の内容からステータスを検討する。
まず職業だが、皆最初は無職として登録されておりレベルを五まであげると、自分にあった職業を提案されるらしい。
レベルは魔物を倒したり、素材を回収することにいってレベルが上がるらしい。その他には、職業にあった行動をするなどだ。
次にHPなどといったものだが、これは肉体の性能を数字化したもので、人間の最高値は21だそうだ。となると自分のステータスは結構高めなのではないかと、志龍は考える。
次に技能についてだが、これはその技能を使用する度に熟練度が上がってき、精度が増していくとのことだ。
ここで、志龍はウルゼー、カウゼー、掲示板をすっとばしてミッションを確認する。
すると、たくさんのミッションが書いてあったが達成してあるのを見るとこれだけになった。

『世界変化後、一時間以内に魔物を撃破する』
『世界変化後、一日以内に魔物を撃破する』
『初めて魔物を倒す』
『世界変化後、殺人を犯す』
『傍観者に気に入られる』

この、傍観者というのが気になったが今考えても仕方のないことだろう。
スマホゲームあるあるの報酬一斉獲得を見つけると、それを素直に押す。するとSPが10600、GP50+50、新職業解放、傍観者特製ガチャチケット×1を獲得した。
10600という数字か多いのか少ないのかは分からないが、新職業とガチャチケットは素直に気になる。
あとで調べてみることにしよう。
次に志龍は『総合売却カウゼー』を起動する。
このアプリは倒した魔物の一部――いわゆるドロップアイテムをSPと交換できるそうだ。
このことに志龍は後悔した。せっかく好きなゲームっぽい素材剥ぎ取りという作業ができたというのに、それを棒に振ってしまうとは……!!
志龍は若干涙目になったが、それでも気分を切り替えて愛神を見ると、素材を回収してみようということでやり方がわかっていた志龍はそのままパシャリ。
段ボールは消え代わりに300SPがステータス欄に追加されていた。
『総合売却カウゼー』を見ると、(かね)もSPに変えられるらしいので志龍は財布に入っていた一万円札をパシャリ。すると一万円札は消えSPが100追加されていた。
1SP=100円換算のようだ。これでSPは11020SP。
現金換算すると1102000円。超金持ちである。

「ぐへへ……」

と気持ち悪い声が漏れるが、それを咎めるものはこの場にはいない。
この勢いで『総合販売ウルゼー』を起動する。先に『掲示板』を見てもよかった気がするが、ネタバレをくらうのも嫌だったので、こちらを優先した。

(まぁ、『掲示板』は見なくても良いっぽいし)

武器や防具、日用雑貨や食料、薬など様々なものが変えたが志龍の気を引いたはスキルのところだった。

獲得経験値増加……2000P
必要経験値減少……3000P
レベルアップ適正…4000P
………

などと様々なスキルがあったが志龍の目的のスキルは下の辺りにあった。

努力の天才
技能の熟練度増加率が上昇する。職業適正技能は二倍。

こういう増加率アップ技能だ。増加率アップ技能は低いレベルの時から習得しておくと、強くなりやすい。個別にあげるスキルもあったにはあったが、こちらの方がコスト的にお得だったのでこちらにした。
あまったSPではほとんどスキルを購入することができなかったので、志龍は残りの1020SPは残しておこうと思い、愛神の電源を落とす。
田中の例から行けばゾンビはそれほど強くない。レベルアップが怖いが、ここは五階。まだ下のゾンビたちが登ってきていないためまだ安全だろうとは思う。
志龍は新たな技能を得るためレベルアップに勤しもうと立ち上がり、五階を散策する。
この階には視聴覚室、第一理科室、家庭科室、美術室及び多目的室が四つあり、志龍が現国を受けていた教室や武器をパクった世界史の教室もそこに含まれる。
この校舎は第一棟、第二棟の二つに別れており志龍が現在いるのは第二棟だ。こちら側には視聴覚室、家庭科室、多目的室が二つある。
まず志龍は家庭科室を調べようとした。
調理実習を行っていれば完成した料理があるかもしれないからだ。カフェテリアの飯のは劣るかもしれないが、正直言って空腹がもう限界である。なんか食わせろ。
そんな思いで家庭科室の扉に耳を当てる。

(おっ? なんか耳がよくなった気がする)

これが聞き耳技能かと感動していると「ォォォ……」という呻き声が部屋の中からしてきた。こっそりとドアを開けながら、中を見てみると女子生徒ゾンビが一体いた。
損傷はひどくない。顔も胸も足もそこそこ。だが、

「このまま放っておくわけにはいかないからな」

と、自分を奮い立たせ家庭科室の扉を開く。
するとゾンビは志龍に気づいたようで、こちらに走ってくるが、

(身体能力は生前とほとんど変わらないのか)

田中と山口がゾンビを引き剥がし逃走できたという時点で想像はしていたが、目の前のゾンビを見て確信した。
こちらへ走ってくるゾンビの速度は女子生徒の基準のほぼ平均ぐらいだ。陸上部の短距離選手すらも軽々と追い抜かせる志龍のDEXならば、易々と逃げることができるだろう。
だが、志龍は逃げない。
しっかりと後ろ手で家庭科室のドアを閉め、後方の憂いをなくすと、

「漢に後退の二文字はねぇッッ!!」

と言いながら女ゾンビの突進を盾でいなすと、背後から脳天に向かって鉈を振り下ろす。
骨を砕くまだなれない感触が伝わり、志龍は鉈を引き抜く。脳みそをぶちまけながら女ゾンビは倒れた。

「今日の俺は紳士的だ。運が良かったな」

今までプレイしてきたなかで一番と言っていいほど大好きでありながら、トラウマにもなったキャラクターのロールプレイングをしながら志龍は素材を剥ぎ取った。剥ぎ取った後の死体はSPに変化させた。
正直言ってどこが紳士的なのか、自分で言っているのにまったく分かっていないが、まぁこういうのは気分の問題だ。自分をハイにするためには必要なことだ。
その後もゾンビに遭遇し、そのすべてをなんなく討伐していった。そのうち二体は背後から忍び歩きで近寄ってからの不意打ちで沈めた。少しでも技能値をあげるための努力は欠かせない。
そうやっているうちに鉈も随分と使いなれてきた。このまま行けば、複数を同時に相手取っても戦えるのではないか。にやにやが止まらない。
そして、ハイになった志龍は視聴覚室の扉を開けた。
――聞き耳もなにもせずにだ。

(…………)

確かに志龍は複数を相手取っても戦えるのではないかと思ったが、それは二、三体のはなし。今開けた視聴覚室にいるゾンビの数――二十体以上は無理だ。
思考停止している志龍に、一番近くにいた男ゾンビが襲いかかってきた。