鬼哭血風録~相思相殺~【FGO×ドリフターズ・捏造コラボイベント】 作:みあ@ハーメルンアカウント
翌朝――立香は、耳元で鳴り響くコール音で目が覚めた。緊急招集時の、物々しい電子音。いつまで経っても、こればかりは慣れそうにない。
手早く身支度を済ませ、管制室へと向かう。寝癖を残したままサイドで結んだ髪を少し気にしながら、無人の廊下を小走りで駆けていく。いつものように扉の前で認証を済ませ、一歩、足を踏み入れる。するとそこには既に、意外な人物が待機していた。
「あっ。おはようございます、マスター!」
「え?あれ……沖田さん!?」
いつもと変わらぬ笑顔で、挨拶をする沖田。忍びのような白装束に浅葱の羽織、そして帯には愛刀菊一文字則宗と加州清光を携えている。面喰ったように目を瞬かせている立香に、沖田同様、彼女の到着を待っていたロマニが声を掛けた。
「沖田くんを呼びだしたのは、ボクなんだ。君らを招集したのには当然、理由がある。――ここまで言えば、もう大体察しはついているだろうけれど」
困り顔で苦笑してから、ロマニは改めて表情を引き締める。それにつられて、立香の面にも緊張が走った。恐らくあの後、何者かの干渉によって歴史を歪められた特異点か、それに準じる何かが発見されたのだ。それより他に、呼び出される理由は思いつかない。
そして、ロマニは立香の予想した通りのことを、淡々と口にした。
「新たな特異点が、見つかった。その座標は――1869年後期の、日本国北海道。当時、蝦夷、と呼ばれていた場所だ」
「1869年後期…っていうと、大政奉還が起こって年号が明治に変わったその後、ですよね。旧幕府軍と新政府軍が衝突した、激動の時代の末期……」
旧幕府軍、という言葉を聞いた途端、沖田の眉がぴくりと動いた。しかし、彼女はロマニとマスターの会話に口を挟むことはなかった。その先を聞きたいという思いは、立香よりも沖田の方が強くあったのかもしれない。
「――その通り。本来の歴史なら、箱館戦争の終結をもって旧幕府軍が新政府軍に投降し、明治政府を主幹とする新しい日本に生まれ変わった――筈だった」
ロマニはそこで、言葉を濁す。彼の指先がモニターに触れると、近未来観測レンズ・シバによって捉えられた、特異点の映像が大きく映し出された。
そこには、城と言うべき五角形の建造物を中心とした、近代都市の姿があった。規模はそれほど大きくはない。しかし、近隣の港には大型商船が幾つも並び、貿易が盛んなようにも見えた。
「これは……交易都市?」
「そんな所だろうね。この場所は、蝦夷共和国、と呼ばれている。本当なら、成立から僅か半年で地図上から消えていた筈の、幻の都市国家だ」
「ええと、つまり無くなる運命だった国が、そのまま存続してしまっている……?」
「そう、問題はそこなんだ。この蝦夷共和国は、旧幕府軍が徳川家や幕臣たちを住まわせる為に作りだした、言わば彼らの新天地。新政府から独立した交易国を目指して、作られた都だ。
だけど、そんな反乱分子が作った国を、新政府が容認できるわけがない。何より新政府を支援している諸外国にも、示しがつかないからね。翌年には討伐軍が本土から差し向けられて、箱館での戦争に負けた蝦夷共和国はすぐに解体された。しかし――」
言いながらロマニは、沖田の方へと視線を投げる。それはどこか、これ以上先を口にしても大丈夫か、と、彼女に確認をとるような仕草だった。
「……この特異点は何者かの干渉によって、その箱館戦争に蝦夷共和国、つまり旧幕府軍が“勝ってしまった”世界なんだ」
「……――!!」
これには流石の沖田も、音にならない声を発して瞠目した。つまるところ、この誤まった歴史を“修正”するということは、彼女たち新撰組が切に願った旧幕府軍の勝利という結果を、敗北という本来の歴史に塗り替えなければならない、ということを意味する。それは沖田にとって、皮肉極まりない話だった。
「歴史が分岐したのは恐らく、5月12日以降と思われる。そして、ここからが重要だ。城を陥とされる寸前だった旧幕府軍が、本土に上陸した新政府軍を一夜にして全滅させる。そんなことが、ただの人間にできるわけがない。恐らく今回も、万能の願望器たる聖杯、或いは、それに準じる何かの力が働いていると、ボクたちは考えている」
ということは、旧幕府軍側の誰かが――?
これもまた、沖田にとって認めたくない状況であるに違いなかった。もしかしたらそれが、彼女がよく知っている人間なのかもしれないのだから。
唯一の救いと言えば、彼女の敬愛する土方歳三はその歴史が分岐した時点で既に戦死している、ということだった。そうなれば、彼が今回の“首謀者”である可能性は限りなく低くなる。
とは言え――旧幕府側に身を置いていた沖田としては、複雑な心境であることに変わりないだろう。沖田を気遣うような視線で一瞥しては、彼女の代理であるかのように立香が問う。
「……なら、私たちはそこへ飛んで、元凶となっている聖杯を回収すればいいんですよね?」
そこまで理解してくれているのなら、話が早い――と、ロマニが肩を竦めた。
「比較的近い時代への転移だから、レイシフトの安定性は保証する。だけどもし、聖杯の力を殺戮の為の兵器として行使している者がいるとすれば――これは非常に危険な探索になるかもしれない。
……行ってくれるかい?立香くん」
念を押すように告げるロマニに、
「もちろん――っていうか、行かない、っていう選択肢なんて、私にあったっけ?」
おどけたように、立香が笑った。こんな時でも朗らかでいられるのは、ここにいる皆に全力で支えられているのだという確信があるからなのだろう。
彼女の答えにロマニは頷くと、早速、本格的なブリーフィングに入った。
「今回は、ここにいる沖田くん、それから例の――島津豊久くんを、同行させて欲しい」
「……なっ!?」
ここまで会話に横槍を入れることのなかった沖田が、その一言に身を乗り出して食いついた。
「何故、あの薩摩人なんです?……生きていた時代がほぼ同じである私はともかく、時代も何も無関係でしょうに」
名指しで指名された協力者が豊久というのが、あからさまに不服な様子だった。幕臣・新撰組にとって薩摩藩島津家は、幕府を見限り寝返った、言わば反逆者である。その元凶とも言える祖先・豊久の同行を沖田が快く思わないのは、至極当然のことだろう。
「沖田くん。きみの気持ちは分かるけど……タイミングといい、日本と言う国といい――彼が突然このカルデアに召喚されたのも、この特異点と何か関わっている可能性がある。それに彼なら、戦力としても申し分ないと思うしね」
これまで主や己たちを幾度となく人理修復成功へと導いてきた、他ならぬロマニの見解である。その男にこうまで言われては、沖田も渋々黙るしかなかった。
実際のところ、新政府の蝦夷攻伐軍には薩摩藩の出の者が多数在籍していた。箱館戦争で陣頭指揮を執った黒田清隆もまた、薩摩藩士だ。言うなれば彼らは、島津家の血を引く彼の子孫たちである。この観点からすれば、豊久もこの特異点に関して無関係とは言えないのだ。しかし、ロマニは敢えてその事に触れなかった。今必要となる以上の情報を与えてメンバー内に不和を生じさせるのは、得策ではない。
「それなら、後の一人は……」
「うはははは!そこで儂の出番じゃな!!」
計ったようなタイミングで聞こえてきたのは、またしてもあの声である。
「ノッブ、何時の間に――って、この台詞、昨日も言った気がする……!」
振り返れば、そこに第六天魔王が悪の総統よろしく、紅蓮のマントをはためかせていた。おまけに島津豊久までが、阿吽の像の如く彼女の横に並び立っている。呼びに行く手間が省けたとも言えるが、この組み合わせは一体何だというのか。確かに泣く子も黙る戦国猛将二人組だけど――そうやって立香が訝しむと、
「茶と甘味でも調達しようと思って部屋から出たら、そこでばったりこやつと出くわしてな。暇じゃからちと昔話に付き合わせたんじゃが、こやつ、薩摩の田舎侍の癖してなかなか分かる奴でのう!」
「形(なり)はどげん可笑しかこつしとっても、信は信じゃ。俺はこの信と、ここでん戦ばすっど!日ん本に仇なす敵(かたき)がこん世界におるなら、俺はその将の首ば取るだけじゃ!」
などと、何時の間にやら奇妙な信頼関係まで生まれている始末であった。これまた波乱を呼びそうな凹凸、否、凸凸コンビの爆誕に、思わず頭を抱えた立香を見て、
「……変人奇人同士、気が合ったんですかね」
と、沖田が声を潜めて囁く。そうやって他人を見る余裕が今の彼女にある事に、立香は胸を撫で下ろした。しかし、それでも。レイシフトで特異点に向かうその前に、彼女には聞いておかねばならない。
「えっと、……沖田さん、平気……?」
「ふふ。主は、やはりお優しい方ですね」
新たな主人と認めた少女から、これ以上なく真剣なまなざしを向けられて――沖田はふっと、儚げな微笑を浮かべた。
「……でも、沖田さんなら心配ご無用ですよ!沖田総司は何時どんな時でも、マスター、あなたの刃ですから。あなたに斬れと言われれば、誰であろうと容赦なく斬ります。それに――」
言葉を切ると、沖田は誓いの羽織の袖を強く握り込んだ。
「今度の敵が、私の同胞であると――まだ、決まったわけじゃないですから」
その言葉は、まるで己に言い聞かせているようでもあった。
「――わかった。沖田さんの言葉、私、信じるよ!」
我ながら陳腐な台詞だと思いはしたが、沖田の顔に浮かんだ明るい笑みは、心の底から立香の言葉を喜んでいるように見えた。
「それじゃあ、始めようか。皆、準備はいいかい?」
「ちょっど待ったァ!」
無駄に威勢の良い声で“待った”を掛けたのは、豊久だった。
「その“れいしふと”が、何のことやら俺にはさっぱり分からんど」
その一言に、他全員が踏鞴を踏んだ。考えて見ればつい先日、イレギュラーで召喚されてきたこの豊久が、レイシフトという概念そのものを知らないのは当然のことである。
何とも呆けた顔をしている豊久に、信長が先輩風を吹かせてこう言った。
「良いか、お豊。レイシフトというのはな、肉体の情報を一度、霊子状態に変換して――…って、ええい、やっぱ面倒じゃ!取りあえず、儂らと共に来れば分かろう!」
しかし結局、途中で億劫になったのか、豊久への説明を早々に諦めてしまう信長であった。その脇で立香は、いつものように使い慣れた霊子筐体(コフィン)へと、その小柄な身体を収める。
「ナビゲーションは、ボクとレオナルドに任せてくれ。――成功を祈る!」
目指す座標は、1869年5月12日以降の、日本・蝦夷共和国。
ロマニがトリスメギストスのシステムを起動させると、間もなくして霊子転移の開始を告げる、カウントダウンが始まった。
『――…全行程・完了(クリア)。グランド・オーダー、実証を開始します』
その音声を聞いて、残されたロマニの顔から、緊張がほんの少し薄らいだ。新しい特異点の説明を彼に一任し、何も言わずに待機していたダ・ヴィンチが、件のモニターを眺めながらぽつりと呟きを漏らす。
「なあ、ロマニ。何だか、……嫌な形をしていると思わないか?」
芸術家の細い指が示すのは、蝦夷共和国、その中心部に位置する五稜郭。五角形を描くその形状をなぞりながら、彼女は物憂げな美貌を顰めた。
「五芒星、ペンタグラム――そして」
ダ・ヴィンチが言わんとしている事に気付いて、ロマニがはっと目を見開いた。何故、今の今まで気付かなかったのか。この形、忘れもしない。忘れられようがない――。
「ソロモン王の、魔術印」
口にした名前そのものがおぞましい呪詛であるかのように、暗く、重たく、ロマニの胸にのし掛かった。背筋を冷たいものが走り抜ける。
――立香たちとの唯一の通信手段であるオペレーションシステムがエラーメッセージを吐き出したのは、その直後のことだった。
※※※
「――レイシフト無事成功、はいいんだけど……」
がちがちと歯を鳴らしながら、立香が呟いた。息が白い。いや、それどころか、蒸気すらそのままの形で凍りつきそうな勢いだ。
彼女が現れた先には、カルデアの外を思わせる猛吹雪が吹き荒れていた。10メートル先の視界すらも危ういほどだ。
ここを訪れてまだたったの数分だが、既に手足の先の感覚はなくなっている。北国とはいえ5月なら問題なかろうと、いつもの装いで来てしまったのだから当然だ。このままでは本気で氷の彫刻にでもなりかねない。
「寒ッ!さっむッッ!!なんじゃ、今は皐月ではなかったのか!?」
「蝦夷が最北の地であることを考慮したとしても、これ……真冬、ですよね。雪、滅茶苦茶降ってますし」
「マスター、まだカルデアとの通信は繋がらんのか!?今が何時でここが何処なのか、さっさと特定して貰わんと身動き取れんじゃろうが!」
鼻の先をトナカイもかくやという赤色に染めて、信長が叫んだ。その背後では彼女の外套をちゃっかりと雪避けの盾にしつつ、沖田が鼻を啜っている。
立香は先程から何度も、カルデアの管制室に連絡を取ろうと試みていた。しかしどういうわけか、オペレーションシステムがエラーを吐いて、一向に繋がってくれないのだ。
「……あっちのことも心配だけど、取りあえずこのままじゃ私たちの危険が危ない」
「マスター、もう台詞すらまともに言えてませんよ!?」
「ともかく、儂らが凍死する前に適当な建物を見つけて、中に退避じゃ!」
身を寄せたマスターとサーヴァント二体は、互いに押し合いへし合いしながら、雪道を行く。その様、喩えるなら南極ペンギン大移動、といったところか。彼女たちが寒波に震えながら、じわり、じわりと進む中――ただ一人豊久だけが、この豪雪の中、平然とした顔でのしのしと先頭を歩いていた。
「女子とはいえ、主ゃらは戦に慣れとるち思うたら――軟弱じゃのう」
「……薩州ド田舎の野蛮人と、粋で繊細な江戸っ子を一緒にしないでください」
悪気もなく口にした豊久にカチンと来たのか、沖田は口を思い切りひん曲げて言葉を返す。
「大体ですね、私はまだあなたの事、許してませんから」
「なんのこつじゃ」
沖田の険悪な雰囲気を察して、立香と信長は、うわぁ、と顔を見合わせた。ここで新撰組と薩摩藩の確執など出されたら、良くて斬り合い、悪くて殺し合いだ。どちらにしろ確実に、暖を取れる場所への移動どころではなくなる。
立香は慌てて沖田を宥めようと、怒りに震える肩に手を置こうとした――その時。
「……昨日、私が食堂で頂いてきた、大納言のおはぎ餅」
(――おはぎ!?)
沖田の口から飛び出したのは、意外な単語だった。拍子抜けしたように目を丸くする立香と信長を他所に、沖田は恨めしそうな声でこう続けた。
「食後のデザートにと、みっつも頂いた筈なんです。うちふたつは、日頃お世話になっているマスターと佐々木殿にお裾分けを。そして残る一つは私のおやつ用に、部屋へ持ち帰るつもりでした。
取っておきの玉露と一緒に頂くのを、楽しみにしていたんですよ。ええ、それはもう楽しみにしていたんです。それなのに――」
沖田の手は、腰の菊一文字に伸びていた。ヂギン、と音を立てて鯉口を切ると、暗い雪空に沖田の怒声が響き渡る。
「それが何故!!あなたの口の中に入っていたんですか!!この馬鹿!戦闘民族!!」
余程悔しかったのか、その声は半ば涙声になっていた。この予想外の展開に、さぞかし困惑するだろうと思いきや、
「あげんとこに放っちょったら、誰(だい)でん食うてよかち思うじゃなかが!若か女子が菓子ひとつでそげに目くじら立てて、みっともなかど!」
などと、この薩摩人、大真面目に返している。この返答には、沖田の怒りもますますヒートアップするばかりだ。
「煩いですよ、裏切り者っ!食べ物の恨みこそが、この世で一番恐ろしいんです――薩奸死すべし、慈悲はない!!」
すらりと刀を抜き放ち、沖田は豊久に斬りかかった。完全に冷静さを欠いているとはいえ、剣豪・沖田総司の剣は、数多の死線を潜り抜けて磨かれた殺人剣である。その身に一太刀でも受ければ、如何なる英霊とてただでは済まない。
しかし、それでも豊久はまともに彼女の相手をする気はないらしく、大太刀を抜かぬままその柄で、沖田の胴斬りを右に左にいなしていた。色々と残念な三十路ではあるが、これでも敵兵6万を相手に砦を守り抜いた、紛うことなき豪傑である。薩摩屈指の猛将という評価は伊達ではない。
「沖田め、あやつ……いや、何も言うまい」
「……薩摩への遺恨よりも、食の恨みが勝っちゃったかぁ……」
立香もまた信長同様、事の成り行きをただ呆然と見守るしかなかった。斬り合いの理由があまりにも幼稚すぎて、命がけで割って入る気にすらならない。一番隊組長・沖田総司のこの姿を見て、新撰組隊士の皆さんは何を思うんだろう。顔を見た事もないというのに、彼らへの同情が立香の胸を過った。
そんな他愛のない事に気を割いていると、いつの間にかふたりの武士の姿が目の前から消えている。降雪に煙る遥か前方で、剣戟の金属音が鳴っていた。
「追うか、マスター?このままじゃと、あやつらとはぐれるぞ」
「や、うん、そうなんだけど……あのふたり早すぎて、追いつけるかな」
我武者羅に追い掛けて、結果、自分たちが遭難してしまっては笑えない。取りあえずはぐれても、念話さえできれば何とかなるだろう――立香が判断を下した、その時だった。
「お前たち、何処の国の者だ!」
険しい声に続いて、大きな馬の嘶きが聞こえた。吹き荒れる雪の中から西洋風の幌馬車が姿を現し、ふたりの少女の傍らでその足を止める。幌の中から黒羅紗の戎服と日本刀で武装した男たちが飛び出してきて、立香と信長の周囲を取り囲んだ。
「怪しい女ども、名前と国、それから用件を述べよ。場合によっては、奉行所へ連行することになるぞ」
憲兵というやつか、と、信長が小さく毒づいた。ここが正しく蝦夷共和国だとするなら、言わば敵陣の只中である。出来るだけ目立ちたくはないし、ここで早々に戦闘を吹っ掛けるわけにもいかない。何よりこちらの主戦力は、ふたり仲良くチャンバラの真っ最中だ。
互いに視線を交わすと、立香が口を開く。
「藤丸立香と、こっちは――…」
「第六天魔王・織田の―――はぶっ!?」
馬鹿正直に名乗りを上げんとした信長は、立香によって口を塞がれた。当然の結果である。幾らなんでも隠密行動で名乗る名前にしては、知名度が高すぎだ。
「いとこの、織田信子です!えっと、商売をしている両親と一緒にこの国へやって来たのですが、雪道ではぐれちゃいまして……!」
「……本当か?こんな雪の中、商人が馬車も使わずにいるとは怪しいな」
明らかに疑いの視線を向けられている。流石にこの設定には無理があっただろうか、と、立香が冷や汗を流していると、
「まぁ、待ちたまえ」
再び、幌の中から声がした。背の高い人影が馬車から降りて、立香たちの方へと近づいてくる。波が引くように憲兵たちが道を開け、ひとりの紳士が少女たちの前に立った。
「――きみたち、奇妙な出で立ちをしているね。特に、そちらのお嬢さんが着ておられるのは、どうも…普魯西(ぷろしあ)式の軍装に似ている」
口の上に蓄えた立派なカイゼル髭を撫でつけながら、男が言う。彼はふたりの時代離れした装いに、いたく関心を抱いたようだった。
身嗜みはよく、洒落たドレスシャツと蝶ネクタイの上に、信長のそれのような黒羅紗の軍服を羽織っている。先程の憲兵たちの対応からして、かなり高い位の人物だろう。男は顎に手を当てると、不思議そうな面持ちで続けた。
「しかし、私の見てきたものとは、随分と仕様が異なるようだ…きみたち、これは一体どこで手に入れたのかね?」
「これは、儂が下僕に言いつけて専用に誂えさせた特別製じゃ!よって、世界にたった一つしか存在せん一級品ぞ!」
立香が言うより早く、得意満面で信長が答える。これはまずい、と立香は顔色を青くしたが、目の前の男は彼女のことを、どこぞの貴族のご令嬢とでも思ったのだろうか。特に疑念を抱いた風でもなく、人の良い笑みを浮かべてこう言った。
「ふむ、実に興味深い。ぜひ、詳しくきみ達の話を聞きたいのだが……五稜郭の近くにある迎賓館へ、私の賓客として少々、招かれてはくれまいか?」
雪の中で立ち往生していた彼女たちにとって、願ってもない申し出だが――立香は即断することができなかった。悪い人間には見えない温厚そうな紳士だが、彼が蝦夷共和国側の要人だとすれば、彼が敵でないという保障はない。それに、離れ離れになったふたりのサーヴァントの事も気懸りだ。
暫しの間、思考を巡らせてから、
「……分かりました。こちらも雪の中、困っていたので助かります」
立香は、その申し出を受諾した。虎穴に入らずんば虎児を得ず、である。信長も、その決定に異論はないようだった。というより、単に自分の自慢話を聞いてくれそうな人間が見つかって、気を良くしているだけかもしれない。
ついてきなさい、と言って、男はふたりを馬車の中へと導いてくれた。馬が走り出したところで、ふと思い出したように、男が言う。
「ああ、申し遅れていたようだ。私の名は――旧幕府海軍副総裁、榎本和泉守武揚。現在はこの蝦夷を治める箱館政権の総裁でもある」
洋装の紳士――榎本武揚は、目元を細めて人懐こく微笑した。その姿に立香は、強烈な既視感(デジャヴュ)を覚える。
目の前にある光景は、歴史の古い教科書の中で見た、あの有名な写真そのものだった。
※※※
迎賓館、という単語を聞けば大体の日本人が、白亜の壁、緋色の絨毯、舶来物の調度品に、極彩色に輝くシャンデリア――と言った、絢爛豪華な洋館を思い浮かべるだろう。立香たちが案内されたのは、正しくそのイメージ通りの建物だった。
たった三人で使用するには不相応な大広間に通され、ふたりに用意されたのは会食用の大テーブル、その上席。あまりのVIP待遇に立香が委縮しているその隣で、信長は悠然と出された紅茶を啜っていた。この第六天魔王、緊張感というものが無さすぎである。
「阿蘭陀から取り寄せた紅茶は、お口に合いましたかな?」
「はい、とってもいい香りです。それに、このティーセット。まるで芸術品みたいですね」
部屋からは、榎本によって人払いがされていた。男達が何人もたむろしている部屋では、自由に話もできないだろうという心遣いだった。事実、これは立香たちにとっても好都合である。立香は榎本との歓談に勤しむふりをしながら、今回の探索にとって最も重要な話題を切り出す機を、密かに伺っていた。
「……つまり、きみたちは仏蘭西や普魯西といった西欧諸国よりも、遠く離れた国からやってきた異邦人、というわけだね?」
「ええ。そういうことになります。とても小さな国なので、日本ではまだ良く知られていないと思いますが……」
榎本に尋ねられるまま答えた事の大半が適当な作り話だったが、思った以上に相手はそれを信用してくれているらしい。そう素直に感心されてしまうと、嘘をついているこちらは罪悪感さえ抱いてしまう。
「そうか。……私は若い時分から、阿蘭陀、丁抹、仏蘭西と、様々な諸外国をこの目で見てきたが、きみたちの母国はそれ以上に文明の進んだ国のようだ。そのような国と取引ができたなら、この蝦夷の地はますます発展することだろうね」
榎本は、夢見るような瞳で言った。彼の寄せる蝦夷発展への思いは、まるで子供のように純粋なものだった。立香はその様子を見て、本当に彼らのやっていることを無に帰すことが善なのか、分からなくなってしまっていた。ここへ来て榎本と話す前までは、蝦夷共和国の人間というのは皆、富国強兵主義の、血の気の多い連中だとばかり思い込んでいたから。
「……榎本さん。あなたは、この国をどうしたいんですか?」
「ふむ。それは簡単なようでいて、とても難しい質問だね」
思わず口を吐いて出たそれは、立香の心からの疑問だった。榎本はそれを受けて、少し首を捻ってから、
「――そもそも私は、諸外国が言うような“蝦夷共和国”という名称が、あまり好きではないのだよ。新政府の支配から逃れたこの蝦夷は、国家といった狭い枠組みに囚われない、もっと自由な土地であるべきだ」
そう言って、少し身を乗り出す。彼はここから更に、話を続けた。
「勿論、それを統制するという意味での支配層は、絶対に必要だ。そして、未だ我らの新政権を認めようとしない新政府軍や、彼らに与する外国の侵攻を退ける為の武力も、不可欠だ」
口にした持論に、絶対的な自信があるのだろう。その凛とした物言いからは、誰にも譲れないという強い意志が伝わってくる。そして榎本は最後に、こう締め括った。
「……私は蝦夷の地を、他者の侵略にも屈しない、強く、自由な国にしたい。西洋人たちが亜米利加に渡り、新たな国を拓いたように、幕臣たちが皆で夢見た新天地を、この箱館に作りたいのだよ」
立香は、改めて榎本の瞳を伺い見た。支配者というものが抱きがちな野心や私欲、傲慢さといった類のものが、彼からはまるで感じられない。政治家というよりも、彼の思考は哲学者のそれに近かった。
その時、扉を叩く音がした。秘書官らしき相手が扉越しに、榎本に次の予定を告げている。胸元から取り出した懐中時計を開いて時刻を確認すると、榎本はふたりの少女に向き直った。
「――さて。私もそろそろ、職務に戻らなければ。何せ、ようやく施政が軌道に乗ったばかりの大事な時だ。片づけなければならない事が山積みなのでね。
藤丸立香くん、織田信子くん。ふたりとも、楽しい時間をどうもありがとう」
榎本は西洋式に則って、彼女たちに握手を求めてきた。それぞれが差し出された手を握り返すと、彼は品のある口元に穏やかな微笑を浮かべた。
「この館の客室には、好きなだけ滞在して行ってくれて構わない。ただ――」
扉を開け、出ていこうとした榎本が振り返る。先程浮かべていた笑顔とは一変して、男の眼光は今までに見た事のない鋭さを孕んでいた。その迫力に気押されて、立香は思わず返答の言葉を呑み込んだ。
「もうすぐ、この箱館は戦場になるだろう。命が惜しければ、この館の外へは一歩も出ない事をお勧めする。
……きみたちが、私たち蝦夷島政府の良き理解者であってくれることを、切に願っているよ」
ぱたん、と、重厚な扉が閉ざされる。立香は暫くの間、男の残していった言葉を反芻していた。彼は途中から、否、もしかしたら最初から自分たちの正体を知っていたのではないか、と、そんな疑念が去来する。
信長が皿に残った焼き菓子を一口齧りながら、主に問うた。
「――どうじゃ、マスター」
「うん。……多分、間違いないと思う」
「うむ。じゃろうな」
ふっ、としたり顔をして信長が頷く。
「実際に聖杯と接した事のある儂には、気配で分かる。要するに、“こいつはくせぇッー!聖杯の匂いぷんぷんするぜぇッーーーッ!!”と言う奴じゃ」
普段ならば即座に突っ込みを入れている所だが、しかし、立香にそれらしい反応はなかった。その表情は暗い。
「でも、……本当にこの歴史、修正しなくちゃいけない事象なんだろうか」
「む?――阿呆、何をぬかしとるんじゃ、今更」
いつになく後ろ向きな立香の言葉に、信長は呆れたように片眉を跳ね上げた。
「あの男の理想に、絆されたか。そなたもまだまだ青いのう」
信長は唇に付いた焼き菓子の欠片をぺろりと舌で舐め取ると、人形造りの愛らしい面貌を蛇の如く獰猛なそれに変えて、嗤った。
「武力の肥えた国の行き着く果てなぞ、古今東西変わりはせぬ。即ち――」
「……戦争と、侵略」
「然りじゃ!」
立香の鼻先に信長が、ずい、と白手袋の指先を突きつける。
「あの男。今はああして聖人君子の皮を被っておるが、一皮剥けば妄執の鬼よ。群衆の目は騙せても、この第六天魔王・織田信長の目は誤魔化せぬわ。
あれは己が理想を遂げる為ならば、大陸丸ごと血で染めることすら厭わぬじゃろう。それを外道と思わぬままにな」
信長の言葉は、立香の中にあった心の靄を取り払うだけの説得力があった。そうだ。自分は己の理想に執着し、聖杯によって心を歪められた者たちの末路を、幾度となく見てきたではないか。
「己の成すことが良き事と微塵も疑いもせぬ奴が、一番性質が悪い。幼子に善悪の判断がつかぬのと同じことじゃ。
――そういう者は、誰かが親になってその尻を叩いてやらねばならぬ」
見た目とは不釣り合いに老成した信長の喩えが妙に可笑しくて、立香が笑った。そう言えばこの人、子供を持った親なんだな――改めて、そう認識した瞬間だった。
「……ノッブって、たまに良い事言うよね」
「たわけ!儂の言葉はいつだってカルデア流行語大賞最有力候補じゃ!」
立香の表情が、いつもの溌剌としたそれへと戻る。
「それじゃ、行こっか。まずは外に出て、他のふたりと合流しよう」
「うむ。じゃが……その前に、やらねばならんことがある」
頭に疑問符を浮かべている立香に向かって、信長がきっぱりと言い放つ。
「――防寒着の調達じゃ!」
その提案に、異論はなかった。
※※※
「随分、遠くまで来ちゃいましたね。――あなたの所為で」
「あんふたりとも、すっかり逸れてしもうたのう――主ゃの所為で」
塹壕にも似た簡素な洞穴の中、焚かれた薪の前で座り込む男女が一組。ふたりを見て、仲睦まじいカップルだと想像する人間は一人もいないだろう。両者共に据わった目をして、互いの事を牽制するように睨み合っている。
「……あくまでも一時休戦、ですからね。事が終われば、必ずそっ首斬り落としますから」
「まっこと面倒な女子じゃのう。その執念深さ、まるで蝮じゃ。こりゃ主ゃに好かれた男は、冥途に行けども苦労ばすっど」
「――なっ!?本ッッッ当に失礼な人ですね、あなたは!」
がたっ、と勢い勇んで立ち上がれば、弱々しく燃える炎が風で揺らぐ。やっとの思いで付けた火種を、今失うわけにはいかない――沖田は渋顔のまま、地面に座り直した。
「――吹雪が収まったら、マスターたちを探しましょう」
「そげじゃな。……しかし、なあ。主ゃ、気にならんかったが?」
「……何がです?」
「こいだけの太か都に、人っ子一人、町人がおらん。ないごてじゃ」
豊久の指摘に、沖田ははっとなった。言われてみれば確かに、彼女たちはここへ至るまで誰一人として人というものに会っていない。この大雪で外出を控えているにしても、交易の盛んだというこの都に行商人の一人すら歩いていないというのは異常だった。
(……この薩摩人。単なる戦馬鹿というわけでもなさそうですね)
己でも気付かずにいた事実を察していた豊久に、沖田はほんの少しだけ見解を改める。それと同時に、怒りに任せて剣を振りまわし、冷静に周りを見るという習慣を忘れていた自分が恥ずかしくなった。
「……確かに、妙ですね。これではまるで、皆が戦に備えて籠城している時のようです」
「ふむ。主ゃでん気付いちょったか」
馬鹿にされたような気がして、沖田は一瞬、むっと唇を結んだが、すぐに真面目な思案顔となってその先を続ける。
「……ロマニさんの話では、新政府が負けて滅んだ、とは言っていませんでした。だとしたら、先の戦で負けた新政府が、再び蝦夷へ攻伐の軍を差し向けるという可能性もあるのでは?」
「つまり――こん都の戦は、まだ終わっちょらん。そげんこつか」
「ええ。戦というものは、どちらか一方が降伏するか、一人残らず鏖殺されるまで終わりませんから」
一しきり沖田の見解を聞いて、豊久は白い歯を見せニッと笑った。無邪気な子供のような、人好きのする笑い方である。
「ただの癇癪持ちの娘かち思うたが……考えちょることは、一端の武士(もののふ)じゃなかか」
「あなたに褒められても、全然嬉しくないです」
沖田は素気なく言うと、そっぽを向いた。静まり返った洞穴の中、薪が火花を散らす時のぱちぱちと言う音だけが響く。数分間の沈黙を破ったのは、豊久だった。
「のう。沖田ち、言うたか」
「……なんです」
「主ゃ、あの土方ば好いとうとか?」
「―――ふぁへっ!?」
唐突すぎる問い掛けに、沖田は素っ頓狂な声を上げて目を見開いた。白い顔が、みるみるうちに耳まで赤く染まっていく。
「ひじっ、ひじかたさんを、すっ、すっ、すすす、好き、だなんて!そそそ、そんな、そんなことっ、あるっ、あるわけ…ッ!!」
「……袖、燃えとうぞ」
「ひゃあぁっ!?大事な羽織があぁっ!?」
篝火に袖が炙られていることすら気付かぬほどの動揺ぶりに、豊久は何を言うでもなくただ、軽く肩を竦めた。沖田は若干焦げた羽織をしょんぼりと見詰めながら、赤い顔で黙り込んでいた。
「まあ、なんじゃ。主ゃの気持ちがどっちでん、俺には関係なか。ただ……」
何かを言い掛けて留めた豊久の方へと、沖田が顔を向けた。
「――あいのこた今でん想うとう女子がおるなら、土方もちいとは救われるんじゃなかち思うた。そいだけじゃ」
そう言って、豊久は新しい薪木をくべる。燃えあがる炎の赤に照らし出された男の表情には、どこか親しみのようなものが混じっていた。沖田は少しの間思案した後、静かに口を開く。
「……私自身、よく分かりません。恋だとか、愛だとか。そういうのとは無縁の世界で生きていましたから。それに、あなたの知っている土方さんと、私の知る土方さんが同じとは限りません。……でも――」
数多の言葉から一番最適な表現を選び出すようにして、沖田はゆっくりとした口調で告げる。
「今でも、傍に居たいと思う人は……あのひと、ただ一人だけです」
沖田がそう言い切ると、豊久は「そげかぁ」と口にして晴れ晴れと笑った。そして、腕組をしながら頷いて、
「もしまたあっちに戻って土方に会うたら、俺からそいば言うてやってもよかど」
「――けっ、結構です!絶ッッ対に止めてください!ていうかあなたが言うと、かなり曲解されて伝わりそうですし!?」
飛び出してきたとんでもない提案を、全力で首を振って沖田が拒否する。薩摩人に借りを作るのが嫌とかいう以前に、この男を土方に関わらせるとなると、何故だか嫌な予感しかしてこない。そもそも敵同士なのだし。それに――。
「……自分の口から、伝えたいので」
沖田は今にも消え入りそうな声で、そう付け加えた。豊久はひょいと眉を動かし、口端を吊り上げる。
――と、その直後であった。
どぉん、と、彼方で落雷にも似た音が轟き、地面と壁が震える。ふたりは共に得物を取り、顔を見合わせた。緊張が走る。
「――主も聞こえちょったか。あの、雷ごた音は……」
「砲撃の音、ですね。……行ってみましょう」
頷き合い、豊久と沖田は火の消えた洞穴を後にした。
※※※
――五稜郭、総裁官邸。
西洋建築に改められた邸内は、不気味なほどに静まり返っている。まず、人の気配がない。気配はないが、人の形をしたものたちはそこに“在る”。
明りを消した執務室、その凍てついた窓から箱館の夜を眺めながら、榎本武揚はその背後へと、独白のように呟いた。
「――きみは、どう思うかね?土方くん」
暗がりの中に、男がいた。波打つ黒髪が、黒羅紗の外套が、漆黒の闇に溶けている。不健康に白い肌だけが、薄ぼんやりと浮かび上がっていた。
土方と呼ばれたその男は、無言のまま榎本の背を見詰めている。底無し沼のように淀んだ暗灰色の瞳からは、一切の感情を伺い知ることはできない。
「彼女たちは、いずれ私やきみの前に立ち塞がることになるだろう。だが正直、私は彼女たちを殺したくはない。
勿論、心情的なものもあるが――何より、彼女たちの背後にある知識や文明を手にする事ができれば、蝦夷の開拓は一気に躍進するだろう」
カイゼル髭の毛先を指先で整えながら、榎本が振り返る。一拍の間を置いて、土方は漸くその口を開いた。
「……俺は、そういった政(まつりごと)に興味がなければ、学もない。それを考えるのは、榎本さん、あんたの仕事だろう」
その答えに、榎本は苦笑する。出会った日とまるで変わらぬ愚直な盟友に、榎本は確かな頼もしさを覚えていた。
「俺にできるのは、人を殺すことだけだ。故に――」
言いながら、土方は二振りの愛刀を手に、踵を返す。洋式の外套がぶわりと広がり、翻った。歪な形を持って蟠る蒼白い靄のようなものが、去りゆく男の身体に纏わりついていた。
「邪魔するものは総て、斬り捨てるまでよ」
刀の唾が鳴る。地獄から還った復讐の鬼が、身も凍えるような眼光をぎらつかせていた。
【鬼哭血風録~相思相殺~ To be continued…】
【あとがき、という名の駄文~シリアスな余韻を楽しみたい方は、閲覧注意~】
……ということで、ついにやっちまいましたよ、自分で。FGO×ドリフコラボイベントストーリー。結局、構想立ててから前編の執筆終わるのに2カ月近く経ってました(その間に他の描いたり書いたりしてた所為ですが!)。
まず最初に思い浮かんだのは、お豊と土方さんがFGO参戦した場合、敵味方両陣営に分かれるんだろうなーということでした。主人公で漂流者である豊さんは間違いなくカルデア側につくだろうし、そうなったら土方さんはやっぱり敵鯖のアヴェンジャークラスとして登場だよなぁ…と。私が今まで描いてきたイラストと小説は、土方沖田共闘戦線、といういうものばかりだったのですが、イベントで実装されるとしたら、確実にこの二人は殺し愛、愛する者よ死に候え、になるしかないんだろうなぁ、と思ったのです。でも、それはそれで美味しい気がする……!
これから続々、この二人の複雑な心中にもスポットを当てていきたいと思いますので、この二人の関係に興味のある方は是非、ご期待くださいませ!また、これからは戦闘シーンをがっつりと入れていきますので、豊さんやノッブの活躍もどうかお楽しみに。
……ぶっちゃけ、ソロモンのペンタグラム=五稜郭の都市伝説ネタやりたかったのと、お豊とノッブを会わせたらどんな反応するのか想像してみたかったのと、Fateで榎本武揚さん出したかったのと(話の都合上、泣く泣く鯖化は断念しました)、宝具・××で○○○○ぶっ放す土方さんを描きたかっただけとも言う(後のネタバレなので伏字)。なので概ね満足!
最後に、何故ノッブが信長と別人で、土方さんだけ同一なのかっていうガバガバ設定についての補足。
人々の中の織田信長像は、空飛んだりビーム撃ったり美少女だったりと限りなく多彩。それに比べて、土方歳三という人物像は万国共通と言って良い程、割と似通っている。よって、ノッブとのぶのぶは別人のようにそれぞれの世界に現れ、土方は同じ姿で現れたのである。――という、無茶苦茶なこじつけ理論でした…!(逃げ)
ともあれ、このような駄文まできっちりと読んで頂きまして、ありがとうございました!興味を持って下さった方は、また以降でもお会いできたら幸いです!それでは。
【あとがきという名の駄文・完】