”CALL” me,Bahamut   作:KC

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FF14に復帰しました。

それが意味する事とは……!



筆が遅くなるってことです。


after_12) 予兆

請負人(ワーカー)と呼ばれる者達がいる。

 

簡単に言ってしまえば冒険者組合に所属しない冒険者、という認識で正しい。

組合が一括で依頼を管理している冒険者と違い、各チーム、各個人で依頼を受け、それを遂行する者達だ。

冒険者であれば組合が行ってくれている依頼の斡旋や、依頼内容の裏どり、難易度の調査のような支援も受けることはできないし、冒険者プレートのような実力を証明するようなものもない。

依頼人との契約からその内容の確認まで、すべてを自分たちでこなさなければいけない分、面倒や危険も多い。

 

その代わりに、冒険者組合が設けているような規則(ルール)に縛られることもないし、依頼料のマージンを取られることもない。

 

冒険者のドロップアウト組、脛に傷のあるもの、規則(ルール)に縛られることを嫌うもの等、彼らは冒険者たち以上に一癖も二癖もある者ばかりだ。

依頼の審査や規則(ルール)が存在しないため、犯罪行為になるような仕事もこなしている。

 

 

 

当然、王国にもワーカーはいる。

 

その日、王都を拠点としているワーカーチームは特定の僻地にしか群生していない希少植物――強い毒性があり、一般には流通していない――の入手の依頼を受け、とある山岳地帯に来ていた。

順調に目的であった植物の採取を完了し、帰還のために下山している途中、見慣れぬ洞窟を見つけた。

 

その洞窟の中は光源が用意されているようには見えなかったが、まるで周囲の岩肌が発光しているかのように洞窟の奥まで見渡すことができた。

奥へと続く岩肌は人工的に作られたような削り口ではないにもかかわらず、自然にできたとは思えないほどまっすぐ伸びている。

 

ワーカーチームはその明らかに不自然な洞窟を怪しく思ったが、未探索の遺跡の類であれば何らかの宝物が眠っていてもおかしくはない。

警戒はあったが、それ以上の欲に目がくらんだ彼らはそのまま洞窟へと入っていった。

 

 

不自然に真っ直ぐで歩きやすい通路を少し進むと、少しだけ広い通路に出た。

その通路の壁には棚のように削られた溝があり、そこにはまるで飾ってあるかのように様々なアイテムが陳列されていた。

 

盗賊が持っていたマジックアイテムを使用し、並べられていた一つ……黒くねじれた杖を鑑定してみると、呪われてはいるものの、恐ろしい量の魔力を内包したアイテムであることが分かった。

ワーカーたちは歓喜した。周囲にはまだ大量のアイテムが陳列されている。

このとんでもない魔力の杖一つだけでもかなりの収穫だ。

大喜びで周囲を漁り始めた彼らは、つい深入りしてしまった。

 

盗賊が呪い除けの布で慎重に鑑定した杖を包み、手に取った途端……洞窟の奥から尋常ではないプレッシャーが押し寄せてきた。

 

ワーカーたちが跳ねるように洞窟の奥に注意を向けたとたん、比較的奥にいた神官が悲鳴を上げる間もなく()()()()()()()()

 

即座に戦闘を諦め、死に物狂いで洞窟の外へと逃げ出した。

 

最も外に近い場所におり、足の速かった盗賊が息も絶え絶えになりながらなんとか脱出する。

その手には呪い除けの布に包まれた杖がしっかりと握られていた。

 

洞窟の中からは、次々と聞こえる仲間達の断末魔。

盗賊は振り返ることなく、ただただ必死で足を動かして洞窟から逃げるように離れていく。

 

結局、彼以外の仲間が洞窟から外に出てくることはなかった。

 

 

 

 

 

死に物狂いで拠点である王都まで戻ってきた盗賊は、一人途方に暮れていた。

依頼主に頼まれていた希少植物は死んだ仲間が持っていた。

 

このままでは依頼は失敗で終わってしまう。

今回の依頼主はきっとそれを許さないだろう。

 

失敗を悟られる前にこの国から逃げ出そうとした盗賊は、杖を売り捌くために裏路地の魔道具商人の元へ向かう途中で姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リ・エスティーゼ王国の裏社会を牛耳る犯罪組織、八本指。

麻薬取引、奴隷売買、警備、密輸、暗殺、窃盗、金融、賭博の八部門からなる組織で、その規模はもはや単なる犯罪集団の域に収まらない。

平民を始めとして貴族の多くが八本指と癒着しており、もはや国の一部が完全に汚染されている状態である。

 

一つの組織として動いてはいるものの、各部門はもともと別の組織であったため、部門間の仲はあまり良いとは言えない。

表立って敵対するようなことはしないが、助け合うような間柄ではなく、むしろ機会があれば出し抜いてやろうと足を引っ張りあっている部分があった。

 

奴隷売買部門の長であるコッコドールは、両手両足の腱を切断され、達磨状態となってしまったボロボロの男を足蹴にしながら、彼の持っていた杖をしげしげと眺めていた。

 

 

「簡単な草取りすらできない無能の割にはいい杖持ってるのねぇ。どこで手に入れたのかしらぁ?」

 

 

コッコドールは懐から小瓶を取り出し、振って見せる。中に入った青紫色の濁った液体がチャプチャプと音を立てている。

 

 

「あんたたちに依頼した毒草、何に使うか知ってるかしら?あの草の葉から抽出した毒は、精錬して調合すると拷問に最適のお薬になるのよぉ?配分を間違えなければ死ぬこともなく、ただただ苦痛だけを与える素敵なお薬。試してみる?」

 

 

軽く振られたつま先が転がっている男の腹部にめり込んだ。

猿轡を噛まされている為うめき声を上げる事しかできない男は、助けを求めるような瞳でコッコドールを見上げている。

その体には多くの切り傷や打ち身が刻まれており、明らかに拷問の痕が見て取れた。

その目を見たコッコドールは下半身から駆け上る快感を感じながら、目を細めて不気味に笑う。

 

 

「とんでもない魔力を秘めた、呪いの杖……。これ自体は別に使い道はないけど、こういうのを集めてる物好き貴族あたりに高く売れるかしら?」

 

 

呪いを防ぐ滑らかな布に包まれた杖を、大事そうに木箱にしまった。

控えていた拷問役の荒くれを一瞥すると、荒くれは火にくべられていた焼きごてを手に取り、倒れていた傷だらけの男に押し付けた。

ジュウという肉の焼ける音と、男の篭った叫び声が部屋に響く。

 

猿轡を取ると、男は半泣きになりながらコッコドールに縋りついてきた。

 

 

「は、話す!全部話すから!お願いだからもうやめてくれェ!」

 

 

涙と鼻水に濡れたぐちゃぐちゃの顔で懇願する男を見たコッコドールは、満足したように微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

コッコドールは、男から場所を聞き出した謎の洞窟に部下を差し向けた。

他にも多数あったというアイテムを独り占めするためだ。

 

だが、待てども待てども部下たちは帰ってこない。

確認に送った別の部隊も誰一人戻らなかったので、コッコドールは苦い顔をしながらも諦めざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―*―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪夢の夜を経験したエ・ランテルは、少しずつ日常を取り戻そうとしていた。

大きな被害を受けてしまった西区の住宅地は、犠牲者たちの遺体の回収と供養が急ピッチで進められている。

このまま放置すれば新たなアンデッドが生まれてしまうため、何よりも最優先されているのだ。

 

復興作業が続けられる街の中を、サトルが見回る。

彼の歩く鎧の音が聞こえると、周囲の人々が嬉しそうに声をかけてくる。

そのたびにサトルは罪悪感がチクチク心を責めていたが、正直に白状するわけにもいかないので手を振って応えた。

街を救った英雄でありながら気さくに人々に応える彼の姿に、エ・ランテルの住人からの好感度はうなぎ上りであった。

 

嬉しそうにまとわりつく子供たちの列を引き連れ、手を振るたびに周囲から上がる歓声に、逆の意味でサトルの精神は病みそうであった。

 

 

 

 

ギィと擦れる音のなるウエスタンドアを開いて冒険者組合の中に入ると、ソファのあるテーブルの周りに人だかりができていた。

武装した冒険者達が誰一人として音をたてずに、テーブルにあるであろう何かを固唾を飲んで見守っている様は少々異様だ。

 

嫌に静まり返った空間を掻き乱さないよう、なるべく音をたてずに受付の方に進んでいく。

サトルに気付いた受付嬢は、嬉しそうな笑みを浮かべて立ち上がり、一礼して見せた。

 

 

「お待ちしておりました、"宵の明星"のサトル様。組合長がお待ちですよ」

 

「……どうも、こんにちは」

 

宵の明星という呼び名は、ズーラーノーンの事件解決の様子を見ていた吟遊詩人が街中でその様を歌った際に出たフレーズである。特にチーム名を設定していなかった二人は、瞬く間にその名で呼ばれるようになった。

今さら新しい名前をつけても浸透しなさそうなので、そのままチーム名登録を行ったのだ。

その名を聞いたサトルは過去の過ちを掘り起こされたような羞恥心にベッドを転がり回ったが、一晩たったらかっこよく思えてきたので既に受け入れている。

 

まるで英雄のような扱いを受けるようになって数日が経つが、そちらについては未だに慣れそうもない。

 

 

「リュウが先に来ていると思うんですが……」

 

「リュウ様でしたら、そちらに」

 

 

受付嬢が指し示したのは、先ほどの異様な人だかり。

あまり近づきたくなかったが、二人が揃い次第組合長のところに行くように言われている。

少しだけため息をついて、人だかりのほうへと近づいていった。

 

人だかりを少しずつかき分けてようやくソファーの背もたれが見えるようになると、その向こうに金の刺繍が入った紫のパーカー――リュウの背中が見えた。

机に向かって真剣に何かをしているようで、近づいたサトルに気づく様子はない。

 

ようやく彼のところにたどり着いたので、後ろからトンと肩をたたいて声をかけた。

 

 

「おまたせ、リュウ。見回り終わったから組合長のところに行こう」

 

「あっ」

 

 

静まり返っていた周囲の冒険者たちから息を呑む音が聞こえた。

それと共に、パラパラと音を立てて何かが崩れた。

机に目を向けると、無造作に散らばったトランプのようなカードの山。

リュウは両手にカードを一枚ずつ持ったまま、呆然とした表情で固まっていた。

 

 

「あぁー!」

「惜しいなーあと一段だったのに!」

「そりゃないぜサトルさーん!」

 

 

周りにいた冒険者たちが爆発したように騒ぎ出した。

状況を理解できないサトルはオロオロとするばかりである。

リュウは手に持っていたカードを机に放りだし、うめき声を上げながらカードの山に頭を突っ伏して倒れた。

周囲の冒険者たちから野次られ戸惑うままのサトルに、リュウが顔だけこちらに向ける。

 

 

器用さ(デクスタリティ)があればできるかなと思ってトランプタワー作って遊んでたんだ。あとちょっとで九段完成だったんだよ」

 

「それは……なんというか……スマン」

 

「別にいいよ、ただの暇つぶしだし」

 

 

わさわさと散らばったカードを集め、近くにいた冒険者に渡す。

立ち上がって少しだけ伸びをすると、集まっていた冒険者たちも次第に離れていった。

 

 

「短期間でずいぶんと打ち解けたじゃないか」

 

「五段完成あたりからね」

 

 

受付嬢に案内された部屋では、冒険者組合長のアインザックと、見慣れぬ男が一人。

見た目は完全に肥満しきったブルドックのような姿で、薄い頭皮は窓から差し込む日光を反射して眩く輝いている。

何段なのかわからないほど肥え太った腹を覆う、質のいいベルベットで仕立てられたジャケットが、彼が財を持った権力者であることを主張している。

 

 

「よく来てくれた、二人とも。こうしてちゃんと話すのは初めてだな。私は冒険者組合長のプルトン・アインザック。こちらはエ・ランテル都市長の……」

 

「パナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアだ。よろしく、ふたりとも」

 

 

ぷひー、と鼻から息が漏れている様は滑稽に映ったが、元営業マンのサトルはその事を顔に出したりはしない。

無難に自己紹介をして、勧められた席へとついた。

 

まずは、と前置きをし、アインザックは深く頭を下げた。

 

 

「先の事件の解決協力、誠に感謝する。君たちのお陰で、街全体に被害が広がらずに済んだ」

 

「あ、いえ……なんというかその、結局被害は出てしまいましたし……間に合いませんでしたし……」

 

「……謙虚なのだな。君たちが居なければこの街は今頃死都となっていたのだ。誇るべき偉業だよ、これは。それこそ英雄と呼ばれるべき、な」

 

 

呆れたように笑いながらアインザックが差し出してきたのは、二枚の新しい冒険者プレート。そのいずれも、美しい翡翠の輝きを放つ魔法銀(ミスリル)で出来ていた。

 

 

「死を撒く剣団の件、そして今回の件を含め、君たち"宵の明星"は十分な実力を持っていると組合は判断した。今日から君たちは、ミスリル級だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話を終えたアインザックは、二人が退出していったのを見て大きく息を吐いた。

ミスリル級への昇格までで納得してくれるか悩んでいたが、受け取ったときのサトルの顔はとても複雑な表情だった。やはり、功績に対して小さな報酬だと取られてしまったようだ。

彼らの功績を考えれば即アダマンタイトへの昇格でも可笑しくないところだが、やはり実績と信頼の不足が痛い。

直接危機を救われたエ・ランテルでは英雄扱いだが、ここまで華々しい功績だと伝聞だけでは嘘くささしか感じられず、他の組合からは反発も起きるだろう。

彼らの素性調査についても街の復興を優先させるために手が付けられていないが、そもそも彼らは旅人であると語っている。素性や背景の知れぬものを街の危機を救ったからと言って手放しに信用するわけにはいかない。

 

とはいえ、素性が知れないという理由で評価をしないなどということがあれば、エ・ランテルに根を張っているわけではない彼らはすぐにこの街を出ていってしまうかもしれない。

この世界において、力とはそれだけで正しさ足りえてしまうのだ。

強者は、冒険者組合に限らずあらゆる組織が欲しているだろう。

高い報酬をちらつかせ、彼らを引き抜こうとする輩が現れてもなにもおかしくはない。

 

これらの事情を考え、エ・ランテルの冒険者組合が単独で出せる最大の報酬がミスリル級への昇格であったのだ。

 

今、この街はとても不安定な状態だ。

最大の戦力であったミスリル級冒険者達のうち、"クラルグラ"はリーダーの引退によって解散。

"虹"と"天狼"はそれぞれメンバーを一人ずつ失い、元"クラルグラ"のメンバーが穴を補う様に所属したばかりで、まだチームとして万全の戦いができる状態ではない。

 

ミスリル級以上の力が必須となるような危機などめったに起きるものではないが、万が一が起きてしまえばエ・ランテルだけでは対処できなくなってしまう可能性がある。

 

彼らがこの街に居ついてくれれば、少なくともそのような心配はなくなる。

 

 

「ミスリルでは完全には納得してくれなかったようだが……仕方がないね。とりあえずは今の昇格と、君からの依頼の話を受けてくれただけでも良しというところだろう」

 

 

パナソレイの口調は、先ほどまで間の抜けた鼻息を漏らしていたのと同一人物とは思えないほどしっかりとしていた。虎の様な眼光にはもはや先ほどまでの面影はなく、実力のある為政者の風格を醸し出している。

 

 

「そうですな……。せめて、他のアダマンタイト級のお墨付きが得られればこれ以上の昇格にも表立って反対するものなどおりません。彼らの人柄や実力であれば、名声などあとからでもついてきましょう」

 

 

冒険者組合長から二人に直接渡した特別な依頼。

形だけでもいいので、彼らに足りない信用を補うための苦肉の策。

 

 

「あとは()()()が気に入ってくれることを祈るのみです」

 

 

アインザックの口にした飲み物は、とうの昔に冷め切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―*―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、やってしまった……マッチポンプで昇格だよ、しかも街で最高位だよ……。最悪だ……」

 

 

会議室を後にし、アインザックからの依頼の詳細について受付嬢が用意している間、サトルはアインザックの予想とは異なる意味でどんよりとしたまま手にしたミスリルのプレートを見ていた。

 

 

「まぁいいじゃない。話を聞く限り遅かれ早かれ起きていた事だし、ンフィーレアや漆黒の剣も無事だったし。むしろ、僕らがいるタイミングで処理できてよかったって思っとくべきだって」

 

「そうかもしれないけどさ……」

 

 

どんよりとしたサトルに対して、リュウはかなり飄々としていた。受け取ったプレートを指でピンとはじいてはキャッチを繰り返して手慰みにしている。

 

 

「単に死霊(レイス)を撒いただけだったら多少衛兵が大変なぐらいだったのをあそこまでやったのはあのハゲの人達でしょうが。むしろ死霊(レイス)達が教えてくれたおかげですぐに飛んでこれたんだから万事OKよ」

 

「ドライだな、リュウは……」

 

()()ゴンだからね」

 

 

なーんちゃって、とお道化ている彼の頭を軽く小突くと、その場所を軽くさすりながら舌を出して笑っていた。

最近のリュウを見ていると、元来の彼よりも幼稚になっていっている気がする。自分が骨だけの姿である時に人の死に鈍感になるのと同じで、少年の姿になっている弊害なのだろうか。

 

 

しばらくすると、受付嬢が上質な紙で作られた封書を持ってきた。エ・ランテル冒険者組合の紋章が入った封蝋が押されている、組合長からの正式な文書である。

受付嬢はその封書を高そうな紫色の布できれいに包むと、恭しくサトルへと渡してきた。

 

 

「こちらが、今回運んでいただく組合長からの書類になります。これを王都の冒険者組合に届けていただいた上で、あちらの組合の指示に従ってください。すでに組合長同士で<伝言>(メッセージ)によるやりとりは行われておりますので、話はスムーズに進むかと思います。恐らく、王都に数日ほど滞在していただくことになると思いますので、そちらの準備もお忘れないようにお願いしますね」

 

「わかりました、お預かりします。数日の滞在があるとのことなので一度拠点に戻って準備をしたうえで、明日の朝発ちたいと思います」

 

 

受け取った封書を懐に入れるふりをしてアイテムボックスに入れ、組合を後にする。

滞在時間を含めると、数週間の旅路になりそうだ。カルネ村のほうにもその件を伝えておかなくてはならない。

 

夕方、カルネ村に一度戻って荷物をまとめた彼らは、遠出すると聞いてぶー垂れるレティをなだめるのに二時間を費やした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

エ・ランテルの北門に集まる馬車の列の中に二人はいた。

二人だけで行こうかと思っていたが、ちょうど王都のほうへ不足した物資を購入しに行く商隊があるというので、同行させてもらうことにしたのだ。

大規模な事件の直後であることも手伝ってか、特級の戦力である二人を商隊の面々は歓迎してくれた。

街の復興や町民たちの不安もあり、街の戦力である冒険者は現在引く手あまただ。

特に実力のあるチームは多くが負傷してしまっていることもあって、商隊規模に対して防衛戦力が心許なかったのだ、と話してくれた。

 

驚いたことに、防衛戦力の中には漆黒の剣の四人も含まれていた。

心許ないと言われて少々苦い顔をしていたが、彼らは依頼として商隊の護衛についているわけではなく、旅客として王都まで同行する対価に襲撃があった際に助力する、という契約のようだ。

 

 

「この間の一件で組合からかなりの報酬がもらえましたが、今のエ・ランテルだと物資の補給もままならないですからね。いい機会だし、補給や装備の更新のために一度王都へ行ってみよう、ってことになったんです。やはり人が多いので、商品の種類は豊富だと聞いていましたから」

 

 

嬉しそうに語るペテル達の首元には、金色になったプレートが輝いていた。

 

 

「というかお二人とも!ミスリル級になってるじゃないですか!おめでとうございます!」

 

「ミスリルかー、正直オリハルコンやアダマンタイトだっておかしくない偉業だったと思うんだけどな?」

 

「何、早いか遅いかの違いである。ご両人ならすぐにまた昇格するに違いないのである!」

 

「……私としては銀かよくて金くらいだと思っていたんですけど……」

 

「お二人が金級になっちゃったら他の金以上の冒険者がみんな辞めてしまいますよ」

 

 

笑いの絶えない平和な旅路は続いていく。

野盗やモンスターに襲われることなく、彼らは王都へとたどり着いた。

 

 

 

 




またしばらくお待たせするかと思います。、
コメント返しも遅くなりそうなんじゃ。ごめんなさい。

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